C-brand

 

 


 

 

 



 

ドン・ザックスの館

〜Serious version〜

 

 

ご注意

*無印時代?ザックラパラレルです。

*いちおうシリアスなので、ありえない設定に吹かないでくださいw

*ザックスが最初、かなり鬼畜です。拍手のドンザックスシリーズとは、別の話です。

*性描写あり。(予定)18才以上の方の閲覧推奨。

 

 

人は、わる。

なものなど、どこにもありはしない。

 

act1 金色の戦士”

 

 

 

 

友人は、死んだ。

はずだった。

 

 

 

 

 


 

殺し以外なら、何でも請け負う

 

ミッドガルで名の知れた「何でも屋」――その存在の名前は周知されているが、

しかし「何でも屋」の自身の情報は皆無といってよい。

多種多様な噂は、存在している。

2メートルを超す大男だとか、片腕が機械銃になったサイボーグだとか、

特異体質によりビースト化するだとか――どれをとっても、真実など無さそうなただの「噂」ばかりだ。

 

ミッドガルのプレート下。7番街スラムの居酒屋セブンスヘブン≠ノ、その男はいる。

だが、それを知っているのは、ごく一部の人間だけだ。

 

 

 

 

「だから、ここはそういうお店じゃないの!」

可愛い顔に似合わず、負けん気の強い黒髪の女店主――

ティファは、自分の倍はあろうかという男の腕を捻りあげた。

「いてえなっ!くそ、気の強い女だ。」

 

最近店に入り浸っている大男は、どうやら店主のティファを気に入ったらしく、ほぼ毎晩店に酒を飲みにくる。

粗暴な態度が気になるが、飲食代は払うし、気がよければ店にいる客全員の会計を持つこともある。

とにもかくにも、金のある男だった。

「お客さまは神様」のサービス精神のもと、過剰なスキンシップやアプローチにも

笑って受け流していたティファだったが。…今日は、さすがに黙っていられなかった。

 

「私、何度も言ってるわよね?ここは、女の子のお尻を触るお店じゃないの。」

「俺は、天下のソルジャーさまだぞ!お高く止まりやがって!」

男は、神羅の誇る精鋭軍属である、ソルジャー≠轤オかった。

神羅は、今や世界を手中に治めている大企業であり、

そしてそこに属するソルジャーといえば、金も地位も、当然人間ばなれした力もある。

男が自らをソルジャーと名乗った瞬間、店中が凍りついた。

 

「ちょっと、ティファちゃん、やばいよ。ソルジャー怒らせちゃったら…」

人の良さそうな丸い顔をした男が、横からそう助言するが、それ以上は何もできない。

「ティファは悪くないわよ。痴漢は犯罪なの!ウカツ、じゃすまないのよ!」

ティファの友人らしい栗毛の女が、横槍をいれるが、酒に酔ったその大男の腕によって口を封じられた。

 

「ぐ…!」

「ジェシー!」

大男は、ティファに加勢したジェシーと呼ばれた女の首をつかみあげ、力を込めた。

「は!女のくせに、何ができるって?」

 

「ちょっと、やめて!ジェシーを離して!用があるのは、私なんでしょ?!」

ティファが必死で止めに入ると、男はにやりと下卑た笑いを作る。

「そうだな。お前が一晩、俺の女になるっていうなら、こいつを助けてやってもいい。」

男の野蛮な要求に、顔を青ざめながらもティファは頷くしかなかった。

人間兵器であるソルジャー相手に、力で叶うわけがない。

ティファも、ジェシーであっても――そこらの女性とは違い、それなりに腕に自信があったけれども、

この男を相手に抵抗することは意味のないことに思えた。

彼ら「ソルジャー」が、いかに常人離れした力を持っているか…ティファは誰よりもよく知っている。

 

(ここに、彼がいたら――)

「いいねえ、気の強い女が怯える顔、たまんねえよ。」

男の黒く汚れた指が、ティファの頬をなぞる。

皮捲れした自らの唇をひと舐めし、厭らしく笑った。

その息は酒臭く、ティファは思わず身震いする。

(約束、したのに…)

そのときティファの脳裏によぎったのは、この男とは正反対の白く細い指先、薄く形のいい唇、

そうして、まるでユリの花を思わせるような切ない香り――…

 

「……くるわ。」

「あ?」

「私がピンチのときには、絶対にきてくれる。」

 

そうして、ティファは目を閉じた。

言葉にすることで、それは確信に変わっていた。もう何も恐れることはない。

ただ、彼を信じればいいのだ。自分の想いを信じればいい。

いつかした二人の約束≠、ただただ信じれば――

 

 

 

 

「…ソルジャー?自称、だろ?」

 

 

 

 

男なのか、女なのか。

何ともいえない存在感のある声が、静まり返った店内に響く。

重量感のあるサバイバルブーツが、ゴトゴトと床を鳴らした。

「…女?」

大男を含めた店内の全ての者が、店の出入り口を振り返る。

そこにいるのは、黒いマントを被った男。

…いや、男用のマントを頭から被ってはいるが、その肩はひどく華奢で――女であることが予想された。

 

「クラウド!!」

 

ティファが、叫ぶようにその人物の名を叫ぶ。

黒いマントが音もなくひらりと落ちて、そこに現れたのは。

 

 

 

金色に輝く、戦士だった。

 

 

 


 

店の中は、奇妙な静寂に包まれていた。

誰ひとりとして、言葉を発することができなかったのだ。

その金色の戦士≠ノ、目を奪われていて――…

 

光を撒いているのは、金色の髪だった。

混血の多いミッドガルにおいて、栗毛や黒髪は多いけれど、混じりけのないプラチナブロンドは珍しい。

白い肌は、まるで生まれたて赤ん坊のように透き通っていて、しかし血の気の感じられないその白さは

どこか人のものとは思えない。それは生命すら感じられず、人形のようでもある。

そうして、深い蒼に輝く瞳。

まるで、不思議な力を宿す「マテリア石」そのもののような――

 

その沈黙を破ったのは、その戦士自身のブーツの音だった。

ゴト、ゴト、ゴト…

一歩、二歩、ゆっくりと大男とティファに近づいていく。

目の前までやってきたとき、そのあまりの美貌に、大男は思わずごくりと喉を鳴らした。

 

「その汚い手、離してもらおうか。」

 

「あ…?」

ティファの腕を強引につかんでいた大男は、戦士の言葉どおり力を抜いて解放した。

もはや、力が入らなかったといっていい。

大男の関心は、ティファではなく、その美しい金色のひとに移っていたから。

 

「ははは…今日はついてるな!絶世の美女とはこのことだ!」

 

大男の言葉に、それが自分を指しているのだと理解していないのか、戦士は小首を傾けた。

その瞬間、金の髪がふわりと揺れて、花のような――

いやそれ以上に甘く、しかし清廉な香りが大男の鼻腔に届く。

「お前は俺のもんだ!こっちにこい!」

興奮した男が、美しい戦士の腕をつかもうとして、空をつかむ。

 

「え…?ぐあっ!!」

 

 

 

それを見ていた全ての者が、何が起きたか理解できなかった。

気付けば大男は床に突っ伏していて、戦士は涼しい顔で(というか無表情で)

まるで何事もなかったかのように、カウンター席に腰かける。

 

「ティファ、強いのくれないか。」

「…え?あ、うん!………っていうか、死んだの?」

「まさか、鳩尾に一発入れただけだ。」

「そう…ありがと、クラウド。」

ティファも切り替えが早いのか、そそくさとカウンターの中に入り、「クラウド」のために酒を作りはじめる。

頬を少し染めて、嬉しそうにクラウドに話しかけるその表情は、どう見ても恋する女。

 

ジェシーは「うかつ…うかつ、だわ。ドキドキする。これって何?」と一人呟いているし、

人の良さそうな丸い顔をした男は「クラウドさん、かっこいいなぁ…俺もダイエットしようかなぁ…」と言いながら

皿の続きを食べ始める。

その横に座っていたノリのいい男は、クラウドの隣に移動して、「クラウド!おまえなかなかやるな!」と

自分の酒を強引に勧める。

 

 

 

賑やかな声、人々の笑い声が、店内に戻る。

ここは、スラムで一番の美味くてリーズナブルな料理と、可愛い店主の笑顔が迎える小さな酒場だ。

そうして、時々、運が良ければ――

美しい金の戦士の後ろ姿を拝めるのだ、と。

美味しい料理と楽しい話題を求めて、そして件の人を一目見てみたいと、店内はいつも満員。

それは、ここらでは誰もが知っている話だ。

 

…だが、それ以上のことを知るのは、ごく一部の者だけ。

つまり、この金色の男の正体は、皆知らない。

 

 

 

 


 

「今日はついてるぞ。絶世の美女と、酒が飲めるなんてなっと!」

まるで、先ほどの大男を真似したかのような台詞。

それに振り向きもしないで、クラウドは無表情でグラスに口をつけた。

「タークスか。」

「今日は休暇だぞと。有休消化中。」

「それなら、俺に用はないな。消えろ。」

「おいおい、まだ告白もしてないのに、ばっさりなんてひどいぞ!乙女心は繊細なんだぞ、と」

赤毛の男がおちゃらけていうのを、クラウドはじろりと睨みあげる。

 

「あーあ!レノ、クラウド怒らせちゃった!」

足元から聞こえてくる幼い少女の声。

大きな目をした可愛らしい少女が、腕を組んで「レノ」を見上げる。

「悪かった、悪かったって!オマエ、そういう冗談嫌いだもんな。」

「うるさい。俺は静かに酒を飲みたいんだ。」

「まあ、そう言わずに。話があるんだよ。古い友人の、よしみでさ――」

 

古い友人≠サの言葉に、クラウドの目がわずかに和らぐ。

こう言われるのに弱いことを、レノはよく知っているのだ。

 

「…アンタと、友人だった覚えはない。」

「あ、ひっでえな!いつも、3人でバカやったじゃんか。お前もあのときは可愛かったよな〜

レノさん、レノさんってキラキラした目で見てくれてさ。それが、今じゃまるで氷の女王様…」

「3人?レノと、クラウドと…あとの一人は、あのサングラスのおじちゃん?」

少女が、興味深々という風にレノに問う。

 

「ルード?いや、あいつは仕事馬鹿だし、何よりクラウドがいるっていうと、絶対こなかったんだぞと。

あいつ、可愛い女の子が苦手だろ?ほら、クラウドって、そこらの女よりよっぽど…」

「マリンに変なこと吹き込むな。」

もっと聞きたい、と駄々をこねるマリンの髪をクラウドがそっと撫でると、

彼女は満足したのか嬉しそうに客の注文をとりにいった。

 

 

 

「あのときは、良かったって…そう口癖にする大人には、なりたくなかったんだけどな。」

 

 

 

レノの言葉に、これまで無表情だったクラウドが、少し悲しそうな顔をした。

「戻りたいのか?」

「そりゃあ、若いってのは、いいもんだろ。俺、すげえ女の子にモテたし!

昔はオールだって余裕だったけどさ、今じゃ肝臓が悲鳴を…」

「ジジくさいな。」

「お前、自分はまだ若いと思ってると痛い目みるぞと!お前だってあと5年もすりゃ…」

くすくすと笑うクラウドを、店内の人々は驚きの目で見ている。

その注目に気付いていないのは、クラウド本人だけ。

ティファもレノも、久しく見れたクラウドの笑顔に嬉しく思いながらも、その鈍さにため息が漏れる。

 

 

 

「それに…あいつも、いたしな。」

 

 

 

そう、レノが一言いった瞬間。クラウドの表情が強張った。

ティファは慌てて、クラウドのグラスに二杯目の酒を注ぐ。

「…昔話に興味はない。帰ってくれ。」

無表情というより、今度は怒りを孕んだ表情、声色。

 

「言っただろ。昔のよしみで…何でも屋さんに、依頼なんだぞ、と。」

「有休中じゃなかったのか。」

「オフだぞ、と。だからこれは、俺個人の依頼だ。」

真剣なレノの眼差しに、クラウドを少し時間を置いてから小さく頷いた。

「…受けるかどうかは、内容と、報酬しだいだ。」

 

レノは、らしくもなく慎重に、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「ウォールマーケットの頭領、ドン≠フ噂――聞いたことあるか?」

「知らない。」

「最近、世代交代したって噂ね。今のドンは、若手でかなりのやり手だって聞いたけど…」

ティファが、レノに先を促す。

 

ドンといえば、ティファ自身が目下調べている最中の男だった。

ティファは、何を隠そう「反神羅」を掲げるレジスタンスの一員。

こうして神羅に属するタークスのレノとだって、本当は関わるべきではないのだ。

それでも、奇妙な友人関係をやめることはないのだろう。

ティファ自身、タークスという職種に警戒はするものの、レノ個人を嫌いなわけではないし、

少なくてもクラウドにとって、数少ない友人の一人であるようだから。

 

「ああ、金と、女に埋もれてる。それに、頭もきれる。前代のタヌキじじいとはそこが違う。」

神羅に大金を援助しているというドンは、ここスラムを取り仕切る大地主で、

同時に裏の金を動かす犯罪組織の頭でもある。

いわゆる神羅にとっての「必要悪」であり、地上げや薬物売買、違法な売春宿の経営など

――それらが全て黙認され、そうして金が神羅に流れる仕組みになっている。

 

「ドンは、元軍人らしい。それも、並みの兵士じゃない。」

「それって…」

「ソルジャーだ。たぶん、いや、絶対。」

 

「さっきの男みたいに、自称じゃないのか。」

ソルジャーを偽証する者は、ここ最近急増している。

青いコンタクトをつけて筋肉質な体つきであれば、それなりに見えるものだ。

「俺は見た。間違いない。」

「見た?」

「青い目で、黒髪。俺のことなんて、覚えちゃいなかったけどな。」

 

 

 

 

「…覚えて?」

 

 

 

 

「女を何人も侍らかして、高い酒を飲んで、それに、俺のこと殺そうとしたけど、だけど…」

「……?」

レノはクラウドの方に向きなおり、目を一度伏せたあと、意を決したように言う。

「あいつだった。」

「え?」

 

 

 

 

「あいつが…ザックスが、生きてた。」

 

 

 

 

ガシャン!

クラウドの握るグラスが、手の平で粉々に砕ける。

「ふざけるな!冗談はやめろ!」

その静かな雰囲気からは想像できない大声で、そう叫んだ。

「レノ、クラウドはそういう冗談は嫌いだって…」

ティファが慌てて仲裁に入るが、

「冗談じゃない!!」

クラウド以上に大きな声で、レノも叫んだものだから、ティファはそれ以上は何も言えなくなった。

 

 

「…冗談じゃないけど、冗談みたいに、俺はあいつに殺されかけた。」

 

 

「………………」

クラウドも、ティファも。何も言葉が出てこない。

「なあ、クラウド。お前に言おうか迷ったけど、でも、」

「――俺は、信じない。」

「クラウド!待てよ!」

クラウドが席をたち、木でできたバーの入口に手をかけたとき、後ろからレノがすがるように言う。

 

 

「クラ、あいつに会ってみてほしい。何があるかわかんねえけど、お前のことなら覚えてるかも――」

 

 

クラウドは、振り向かなかった。

「そういう風に、呼ぶな。」

「え?」

 

 

 

「クラって、呼ぶな。」

 

 

 

それは、いつかの日に。「友人」から呼ばれていた、自分の名前だった。

瞼の裏に蘇る懐かしい日々、鼓膜を撫でる愛しい音。

 

 

 

もう二度と聞くことは叶わない、大好きな人の、声。

甘く、切ない、悲しい旋律――

 

 

 

 

 

時は流れて、人は老いて、世界は変わって。

不変なものがこの世に無いというのなら、

どうしてこの気持ちは変わらないのだろう。

 

少しも変わらない。

 

もう一度、君に呼んでほしい。

君が呼ばないなら、この名前に

何の意味もないんだよ。

 

 

 

 

 

  

NOVEL topLOVE top

C-brandMOCOCO (201195

リクエスト、順番通りでなくてすみません、すみません…

 

 

 

 


 

 

 

inserted by FC2 system