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6月 1日。

 

 

 

sunchildさんからいただいたお話「6月1日。」の続きを、勝手に書いてしまいました。あわわ…

あれから3年後、ザックラ前提でデンゼル→クラウド風です。

デン坊の反抗期ってかんじで。うん、完全にオチを見失いました。無力すぎる…

 

貴方を超えたときに、

伝えたい想いがあります。

 

 

「今夜は、帰らないから。」

『え?お友達と一緒なの?今夜はあなたとマリンの――』

「もう、18なんだ。いつまでもベッタリってわけにはいかないだろ。」

家族とも、マリンとも、そして…あの人とも、

『でも、クラウドが寂しがるわ。クラウド、今日のこときっと楽しみに』

「クラウドにはあいつがいるだろ!」

 

ブツ、と携帯電話の電源をオフにする。それだけでは落ち着かなくて、

普段ポケットに入れておくそれを、バックの奥底に放り込んでファスナーをしっかり閉めた。

これでもう、余計なことは考えてなくていいだろう。

 

「デンゼル、電話終わったの?」

「ああ、行こうか。」

細い腕を絡めてくるその女の子は、エッジでは珍しい金の髪をふわりとなびかせる。

その髪は彼を思わせるような――というより、彼に似ているからこそ、この子を選んだのかもしれない。

 

 

今夜、一緒に過ごす相手として。

 

 

 

 


 

61日、今日はデンゼルとマリンの誕生日――

デンゼルは18才になり、マリンは15才になる。

マリンはまだあどけなさを残すものの、美しく聡明な少女に成長した。

彼女は昼間、ハイスクールに通い、夕方からはセブンスヘブンでティファの手伝いをしている。

美人店主で有名なティファと、血の繋がりこそないけれど、その愛娘であるマリン。

二人の笑顔を目当てに店を訪れる男性客は、珍しくない。

そうであるに関わらず、二人に浮いた噂がひとつもないのは何故なのか。

 

ティファは、なんといっても理想が高い。

それもそのはず、ティファの想い人は、地球を救った英雄その人である。

いわゆる『この世で最も強い男』であって、彼女自身も『この世で最も強い女』であるかもしれない。

そのティファの理想は「ピンチのときに助けにきてくれるヒーロー」であるのだから、

その眼鏡に叶う男など、どこにもいるわけがないのだ。件の英雄――『クラウド」以外には。

 

一方で、マリンもお年頃なわけなのだが、彼女も理想が高かった。

彼女いわく、男には『3C』なるものが必要なのだという。

クラウドみたいに優しく、クラウドみたいに美人で、クラウドみたいにバイクが似合う男、

それをマリン的には3Cと呼ぶらしいのだが…

そんな男が彼以外に存在するわけがなくて、そこらの男では出る幕がないのも頷ける。

それに加え、マリンにはバレットという「親ばか」がもれなく付いてくる。

彼女を食事に誘おうものなら、バレットの右腕ギミックアームによって蜂の巣にされてしまうかもしれない。

 

そして、デンゼル――も、成長した。なんといっても、今が一番の伸び盛り。

つい最近、その背丈は自分の養父であるクラウドをも超し、バイクの免許も取った。

マリンのいう『3C』、これに最も近いのはデンゼルであったかもしれない。

実際、デンゼルは結構モテる。

高い身長(まだまだ伸びている)、きりりと整った目鼻立ち、ほどよく鍛えられた体系、癖のある赤毛、

そして養い親の影響か…同年代の子に比べクールな雰囲気。そしてフェミニストだ。

「可愛い」少年だったはずが、いつからか「かっこいい」青年と表現されるようになった。

 

デンゼルとて、男だ。

同年代の子よりも大人びているとはいえ、色恋沙汰に興味がないわけではなく、

それなりには経験してきた。

その内のほとんどは相手からのアプローチでなんとなく…という程度の恋愛ではあったが。

デンゼルなりに恋をしてきたし、その中でフラれることも、フることも経験してきた。健全な男子なのだ。

でも――それは本当に、健全、といえるのだろうか。

 

 

 

 

違和感を感じたのは、数年ほど前からだった。

「デンゼルって、金髪の子がタイプなの?」

マリンの何気ない指摘に、心臓がドキリとして。

デンゼルは手にしていたティーカップをひっくり返してしまった。

別にそんなんじゃないと否定すれば、マリンはじっとこちらの眼を見つめて言うのだ。

「デンゼルって、私以上に理想が高いよね」と。

緑色の深い瞳は、全てを知ってか知らずか、まるで心を見透かすかのようで。

 

実際、デンゼルがお付き合いしてきた女の子たちは金髪の子ばかりであったが、タイプはそれぞれで

美人な子もいればボーイッシュな子もいたし、積極的な子もいればしとやかな子もいた。

彼女たちはクラウドとかすってもいない。似ても似つかない。

 

だから別に。別に、彼ほどの理想を求めているわけじゃない。

 

そんなんじゃないけれど、それでも。

もし彼女たちがクラウドだったらどんなにいいかと――そう、いつだって考えていたのだ。

 

 

 

 

 

 


 

10に満たないころから、クラウドを親のように、兄のように慕っていた。

いや、デンゼルには亡くなってしまったけれど、記憶の中で忘れることのない大切な父がいたし、

兄というほどクラウドを真近に感じることも出来なかったかもしれない。

父や兄というよりも、クラウドは『絶対無敵のヒーロー』と呼ぶに相応しい存在だ。

 

長い足でバイクに跨り、しなやかな細い腕で大剣をふるい、その長い睫毛をふせて酒を飲む。

かっこいい、大人の男だ。そして美人だ。

どれだけ美人かといえば、もちろん好みもあるかもしれないが、ティファよりも綺麗だとデンゼルは思う。

ティファもスタイル抜群、大きな瞳が愛らしく、笑顔が似合う素敵な女性だけれど、

クラウドはミステリアスでまさに「見たことがない」と表現できる美貌だ。

まるで透き通ってしまいそうなその美しさ。金の髪も白い肌も、現実離れしているぐらいに、

 

「クラウドの肌ってさ、まじで透き通っちゃいそう!」

そう言いながら、毎日のようにクラウドの頬にぐりぐりと頬ずりをする男―――

その男こそ、デンゼルのヒーローであるクラウドを『独り占め』しようとする天敵である。

「ちょっと…やめろよ。子供たちが見てるだろ。」

「見てなくてもクラウド嫌がるじゃん。なんで?俺のこと嫌い?俺はクラウドのこと好き!大好き!

頬っぺたぐりぐりしたいし、ちゅっちゅしたいし、なでなでしたいし、それにクラの中ぐいぐいしたい。」

「ば…ばか、やめろよ!き、教育によくないだろ!」

「最近のハイスクールじゃ、コンドームのつけ方だってちゃんと教えるんだぞ。隠すよりも教える。

俺がクラウドをどれだけ愛してるか教える!それが俺の教育方針!」

「あほか!」

 

クラウドの怒った顔、照れた顔、余裕のない顔。そして笑った顔。

いつだって人形のように整った表情を崩すことはなかったから、そんな顔は家族であっても知らなかった。

―――ザックスという男が、この家にくるまでは。

 

 

 

ザックス=フェア。クラウドを守って死んだ、彼にとってのスーパーヒーロー。

 

 

 

…であるはずが、どういうわけかその男は生きていた。

ある日突然、クラウドの恋人だといって我が家に上り込み、しばらくするとクラウドを攫っていって、

数十メートルしか離れてはいないけれどそこで『何でも屋』の事務所を構えた。

2階は二人の住まいになっていて、ティファは毎晩のように食事を差入れにいくし、

マリンもデンゼルもしょっちゅう遊びに行っていた。そこが小さい頃からの、遊び場でもあった。

 

でも、寝室に入ることは許されない。

その理由を理解するのは、デンゼルにある種の知識が身についてからで、

つまり二人はそういう関係なのだと改めて意識するようになると、

少しずつクラウドに会うのが躊躇われるようになり、デンゼルは距離を置くようになった。

 

男同士で、とか。そんなことに偏見があるわけじゃない。

そうではなく、彼を直視するのに罪悪感が芽生え始めたのだ。デンゼルの中で勝手に。

 

――夢の中で、彼を抱いたことがある。

自慰のときに、いつだって想い浮かべるのは彼のことだ。

女の子と寝たときに、クラウドの名を呼んだことが何度あったか…

これって、健全なことなのか?

  

 

 

 

養い親に、恋をしている。それが健全であるわけがない。

 

 

 

 

 

 


 

何が普通で、何が普通じゃないのか。

どこまでが愛で、どこからが恋なのか。どこから、許されないことなのか。

わからないけど、この想いは正しいことじゃない。

クラウドが知れば、きっと彼は悲しむだろう。あるいは、気持ちが悪いと軽蔑されるかもしれない。

 

「今夜は帰らない」と。

そうティファに電話をしたのは、もちろん今夜のことを忘れていたからじゃない。

ティファが家でご馳走を作ってくれていることは知っていたし、

クラウドは仕事をいれずに夕方から店に顔を出すとも言っていた。

ザックスはケーキ担当とか言って、今年はでかいのを作るのだと計画していた。

バレットもユフィもシドもヴィンセントも、店にくる予定だ。

リーブは仕事の都合でどうしてもこれないようだが、手書きのメッセージカードが今朝ポストに届いていた。

今夜は、きっと賑やかな夜になる。

…はずだったのだが。

 

6月1日、毎年恒例。

セブンスヘブンを貸切で行う、デンゼルとマリンの誕生日パーティーを、

当事者のデンゼルがすっぽかしたのだ。

 

 

 

 

「デンゼル、お誕生日おめでとう!」

キャンドルが優しく揺れる、バーのカウンター。

少し背伸びをして入ってみた店は、実は以前クラウドに連れてきた貰ったことがある。

グラスの中の氷を揺らすその仕草が、本当にかっこ良かった。

 

隣で淡いブルーのカクテルを飲んでいるのは、去年卒業したハイスクールで知り合った少女だ。

その子に今夜誘われて、デンゼルは迷った末にその誘いにのった。

もう18才なのだ。いつまでも家族と過ごす誕生日なんて、かっこ悪いし――

(…クラウドには、あいつがいるし。)

クラウドのことを考えないように、といつだって思っているはずなのに。

彼のように綺麗な金髪の女の子と、彼の飲んでいたものと同じ酒を頼み、

彼が今頃がっかりしてやいないか、そんなことばかり考えている。

 

もう、子供じゃないのだから、と。

背伸びをしてあおったバーボンは、あっという間に体を支配していく。

酔い潰れたデンゼルを置いて、彼女がタクシーで帰ってしまったのは、日付が変わったときだった。

 

 

 

 

 

 


 

「…迷惑かけてすまなかったな。」

「いや、背伸びしたい年頃なんだろう。また連れておいで。」

 

バーテンダーの声と、そして…

意識の隅で、あの人の声が聞こえてきた。あの人の甘い匂いも香る。

「クラウド…?」

「デンゼル。18になって、いくらアルコール解禁っていってもな。飲み過ぎだぞ。」

そう溜息をつく吐息が、頬にかかって、その距離の近さに心臓がはねる。

 

「クラウド!?」

自分がクラウドに腕をまわし、かつがれているのだと理解したとき。

思わず飛びのいて、その勢いでもって尻もちをついてしまった。

「ほら、いい子だから。大人しくしてろ。外にバイク止めてあるから。」

「…クラウド、どうしてここに……」

「バーテンから連絡があったんだ。おまえが潰れてるって。」

「う、ごめん…」

 

なんて、情けないのだろう。家族と過ごすはずだったパーティーをすっぽかし、

背伸びをして飲んだバーボンで酔い潰れ、呆れた彼女にはおそらくフラれ、

そうしてまるで迷子になった小さな子供のように、親に迎えにきてもらうなんて。

 

 

 

 

クラウドは、その長い足でバイクにまたがる。

そうして愛用のゴーグルをかけて、後ろに乗るようにと合図する。

 

…こんな風に、かっこいい大人になるにはどうしたらいいのだろう?

 

女の子とキスをしてみても、バイクの免許をとっても、バーボンを口にしても、この距離は縮まらない。

少しでも近づきたくて焦っているのに、クラウドはもっと先を歩んでしまう。 

毎日毎日、彼はかっこよくなる。美しくなる。今も少しも、その歩みを止めることなく。

 

 

絶対に年の差は埋まらない。

絶対に、彼が親で自分が子であるという事実は変わらない。

 

 

いっそ、言ってしまいたかった。

全て想いのたけをぶちまけて、そうして、彼にすっぱりと振ってほしかった。

「子供に興味はない」と。そう、いつもの無表情で、想いを跡形もなく砕いてほしかった。

 

二人をのせたバイクは、夜の風を切って走り抜ける。

 

クラウドの細い腰。

自分よりもはるかに華奢で、女のそれかと思わせるような細腰に、後ろからしがみ付く。

図体は彼よりもでかくなったのに、それはまるで父親におんぶをねだる子供のようで。

「俺、クラウドのこと、好きなんだ…」

バイクの走行音と風の音に隠れて、そう告げた。

聞こえるわけがないと知っていたのに、クラウドから返事をないことがどうしようもなく虚しかった。

虚しい、悔しい。

 

 

好きだという気持ちひとつ、彼に伝えることのできない自分が。

 

 

 

 

 

 


 

二人の乗るバイクがセブンスヘブンの店についたときには、だいぶ酔いは醒めていた。

店の入口に立って、二人を待っていたらしいザックスと目が合う。

「おつかれさん。まだ中はどんちゃん騒いでるけど…デンゼルは水飲んで、横になった方がいいな。」

歩けるか?と。差し伸べられた手を、振り払った。

その手はデンゼルよりも大きく、視線もはるかに高いところにある。

明らかな差を、見せつけられた気がした。

 

「なんだよ、アンタは…何でも持ってるからって…」

「デンゼル?」

「クラウドに選ばれたからって、余裕ぶってんな!」

 

ザックスに恨みがあるわけじゃない。いや、クラウドを我が家から攫って同棲し始めた時点で

死ぬほど恨んだけれど、それはクラウドが望んだことでもあるから許さないわけにはいかない。

もともと、ザックスのくったくのない笑顔も、元ソルジャーであるというのも頷ける兵士らしい体格も、

かといってスラリと高い身の丈も、彫が深く精悍な顔つきも、器用に料理をこなしてしまう手先も、

それに何の恥じらいも戸惑いもなく、クラウドに愛を叫ぶ性格も――

全部全部、気にいらないのだ。

 

 

だってそれは、まるでクラウドに相応しい『かっこいい大人』、そのものだったから。

 

 

「…余裕なんかねえよ。」

デンゼルの後ろに立つクラウドに、少し目線を外して。ザックスは目を細める。

「いつも、誰かに持ってかれないか、愛想つかされないかって、心配だし。」

世界一の恋人なのだから当然だけど、と彼は笑う。

「だから俺は、毎日クラウドにアプローチしてんの。好きだ愛してるって、必死で伝えてんの。

クラウドの前じゃかっこつけるし甘えるし、俺のこと何度でも惚れてもらえるように努力してんの!」

 

 

だから俺、どんどんかっこよくなるだろ?と。

 

 

「どこがだよ」などと悪態をついてみたものの、悔しいけれどザックスの言葉どおりだ。

ザックスは、かっこいい。

デンゼルのヒーローであるクラウドが、ヒーローだと憧れるぐらいなのだから。

 

 

 

 

「…デンゼル、誕生日おめでとう。」

ふいに降ってきた愛しい人の言葉――そうして、優しく頭を撫でられる。

まるで、父親がわが子にそうするみたいに。

 

「…クラウド。笑わないで、ほしいんだけど、」

「うん?」

きっとこの人は、自分がどんなに滑稽でも笑ったりはしないのだろうけど。

 

「俺…俺ね。……俺、クラウドが、大好きだよ。」

ザックスのようにはいかない。

あんな風に、胸を張ってこの想いを告げることができたなら。

だけど、格好悪くても、伝えたかった。

クラウドは困った顔をするかと思ったのに、ただ嬉しそうに眼元を緩ませた。

 

「俺もデンゼルのこと、好きだよ。…デンゼルには大切な父さんがいるけど、

俺もおまえの――父親、だと思ってる。俺なんかじゃ、頼りないかもしれないけど、」

 

好きだよ、って言葉が、嬉しくて寂しいのは、どうして?

クラウドにとっては、自分は家族なのだ。…それ以上でもそれ以下でもなく。

この想いに気付いてもらう余地すらない。

 

 

「………頼りなくなんかない。だってクラウドは俺の…ヒーロー、だから。」

それは嘘じゃない。だけど、少しだけ、その言葉に想いを隠した。

 

 

 

 

店の入口に立つザックスの横を通り過ぎる時、文句を言われるかと思ったけれど、彼はそうしない。

「誕生日おめでとう。おまえはいい男になるよ。」

そう一言、祝いの言葉だけを口にした。

 

 

 

 

 

 


 

それから店に入って、ユフィやシドに「マセガキ」だの「隅におけねえな」などと笑われて、

バレットに頭をわしわしとガサツに頭をなでられ、皆からたくさんの「おめでとう」を言われた。

ただし――ティファには本気のゲンコツを入れられ、思わず頭を抱えながら痛みに抗議する。

ティファは腰に手を当て、まるで悪戯をした子を叱る母親のように、

 

「クラウド、寂しがってたわよ。デンゼルが家族と誕生日を過ごしてくれない、って。」

「…クラウドが?」

クラウドが、そんな風に思うのだろうか?ティファの思い違いじゃないだろうか。

「ザックスが、デンゼルも年頃だからって…宥めてくれてたけど。」

「そう…」

 

「デンゼル、約束して。たまにはハメを外してもいいから、最後にはここに戻ってくるって。」

「ここって――」

 

 

 

「家族のところ。クラウドのこと、泣かしたくないでしょう?」

 

 

 

それは、他でもないクラウド自身が、ずっと求めていた『居場所』でなかったか。

幼い頃はそれがわからなかったけど、歳を重ねてようやく、彼の心が見えてきたというのに。

デンゼルのことを家族だと言ったクラウドの言葉は、どれだけの想いがこめられていたのだろう。

 

 

どれだけ、愛してくれているのだろう。

 

 

 

 

 

寝室の窓から、ザックスとクラウド――彼らが寄り添って帰っていくのが見えた。

月明かりに照らされる二人の後ろ姿は、まるで窓が額縁となっているかのよう。

まさに「絵に描いたように」お似合いで、美しい。

 

頭ひとつ分ほどの身長差は、恋人としてあまりに自然なシルエットで、それがやはり羨ましいと思う。

あと、5センチ?10センチだろうか?

どれだけ伸びれば、あんな風になれるのだろう。

でも、身長だけじゃない。彼の隣で相応しくあるためには――

 

 

 

「好きでいていいんだよ。」

 

 

 

突然かけられた言葉に振り向くと、いつから入ってきたのかそこにはマリンが立っている。

今の言葉は、どういう意味なのだろう。

彼女の緑の瞳は、デンゼルの心の内など全て、知っているのだろうか。

「クラウド、かっこいいよね。私も大好きだよ。」

「…マリンとは違う。」

 

だって、この気持ちは、そんな無垢な憧れではない。

綺麗なだけだった想いの上に、あるべきでない独占欲とか嫉妬とか、汚い色の感情が覆い被さる。

 

「そうかも。でも、デンゼルのこと応援してるよ。」

マリンは昨日までとは違う、少し大人びた笑みを浮かべる。

彼女が笑うと、トレードマークのピンクのリボンがふわりと揺れた。

 

 

 

「そうやって、男はかっこよくなるから。」

 

 

 

こうなりたいという人を、こうありたいという理想を、追いかけること。

大切な人を守れる、世界一のヒーロー

そんな大人になるために、日々切磋琢磨して――そうやって、男は逞しくなるのだ。

 

 

ザックスとクラウドが、そうやってかっこよく歳を重ねたように。

そうやって、誰かのヒーローになったように。

今もなお、二人が歩みを止めないように。

 

 

――なあ、クラウド。

 

大きな剣をふるうことは出来ないけど、

貴方を守るためなら なりふり構わず

木の棒だって振り回す。

今はまだ 我武者羅だけど、笑わないで。

 

いつか貴方のような

世界一の男(スーパーヒーロー)になってみせるから。

 

(今はまだ、届かなくていい。)

(期待して 待っていて。)

 

 

 

 

ブラウザを閉じてお帰りください。 

C-brandMOCOCO (2012.6.17)

そういえば、父の日なんですね!クラウドがパパ風ふかすのも好きです。

 

 

 

 


 

 

 

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