C-brand

 

 


 

 

 



 

 

a phantom killer -parallel ver.-

sunchildさま より、頂きました!

 

 

Sunchildさまが運営されるサイト「memories」の7777HIT企画にて、リクエストさせていただきました。

現代パラレルで「ストーカー被害に悩む大学生クラウドと、正義漢に燃える新人警官ザックス」という

ちょおおおおおおおマニアックな設定でお願いしてみました!萌えるううううううううううう><

 

 

俺もクラウドを、付けまわしたいんだと思う。

――うん、俺も付けまわしたい。

MOCOCOより (●^q^●)

 

<前編>    

ここは、憧れの地、N.Y

アメリカ警察の中でも揺ぎ無い強さを誇るNYPD(ニューヨーク市警察)で、

ザックスは期待のルーキーとして注目を集めていた。

 

「動くな!NYPDだ!」

左手にバッジを、右手にスミス&ウェッソンを構えてポーズを決める。

がらんとした空間にはザックス以外誰もいない。

「・・・・・・・・・・・・」

やおらポーズを解いて、デスクに腰掛けて溜息をこぼした。

 

ここはマサチューセッツ州、ボストン市。

片田舎から都会の警官に憧れて飛び出したものの、やはりエリートの壁は高く。

仕方無しに半端に都会なここに就職した。

まだペーペーの自分に大事件の担当など回ってくるはずも無く、毎日デスクにかじりついて電話番、

住民の対応に時間を費やす毎日。

ここに来てからまだ一度も現場を経験したことがない。

 

「はーあー。こんなんじゃ腐っちゃうって」

体力だけが取り柄なのよ、オレ。

肩をコキコキ鳴らして本日三杯目のコーヒーを入れに立ち上がった。

 

 

 

Prurururur,と外線がなったのはその時だった。

これからブレイクタイムだっつーのに、と舌打ちして受話器に手を伸ばした。

「ハーイ、こちら貴方の街の便利屋さん。何かお困り?一人じゃ抜けない?」

この場に署長のアンジールがいたら、間違いなく鉄拳制裁をお見舞いされてるところだ。

電話の向こうは沈黙。そりゃそうだ。

「ハロー?事件ですかー、事故ですかー?」

ザックスの声にやっと呆然状態から抜け出したのだろう、それから受話器から低い声が聞こえてきた。

 

『…アンジールさんはいない?』

いや、低いけれどちょっとハスキーにも近いその声はなんというか…色っぽかった。

同性なのに、何故かアソコが反応してしまった。

そんなに溜まってないはずだけど今夜あたりオンナノコひっかけて楽しんでこようかな、と考えを巡らす。

『もしもし?聞いてんのかアンタ。アンジールさんはいないのかって』

イライラした声が耳に届いて、ザックスはコッチの世界に呼び戻された。

 

「あぁ、アンジール?あいつならってまずお前が名前を名乗れよこの不審者め」

女の子にはフェミニスト顔負けに優しいザックスだが、男相手には容赦ない。

『アンタ、態度悪すぎ。クラウドって言ってくれればわかるよ』

「クラウド?お天気な名前だな。ファミリーネームをどーぞ」

『……』

 

ファックユー、と罵られたがいつもの事だ。

フルネームで言わないなら切るぞと言うと、向こうは渋々「クラウド・ストライフ」と名乗った。

なんだそりゃ。どこのゲームの主人公だよ、と吹き出してから、その名前に記憶の糸が引っ掛かった。

「あー…、アンジールにそういや頼まれてた」

ほとんど一人言のように言って、無意識に煙草に火をつける。

「今ニューヨークの会議に行っててしばらく留守するから、代わりに見てやってくれって言われてたんだ、オレ」

『…ハァ?』

冗談じゃない、アンタみたいなくそったれに用はない、他のまともな奴に変わってくれ、と

まくし立てられて大人しく引き下がるザックスではない。

「あいにくと、ここにはオレしかいないんでね」

『お留守番しか能のないお子様には手に負えないんだよ!』

カチンときて言い返そうと口を開けたときだった。

クラウドの後ろで何かを激しく叩く音がした。

 

ドンドンドン!

 

息を飲む音がリアルに伝わる。

「おい、どうし…」

『この際アンタでいいから、早く来てくれ!住所は――』

言われた住所を慌ててメモに取り、無人になるのも構わず署を飛び出した。

 

泣きそうに震えた声。

同じ男なのに、態度も最悪なのに。

何故か思ってしまったのだ。

 

 

――守ってやりたい、と。

 

 

 

 


 

クラウドのアパートに着くと、携帯にかけようとして番号を控えてなかった事に気付いて舌打ちした。

周りに不審者らしい人物はいない。

一応あたりを警戒しつつ、外付けの階段を登っていった。

チャイムを押した。…音が鳴らない。

 

「クラウド?オレ、ザックスだけど」

言ってから、そういや電話で自分の名前名乗ってなかったっけ、と思い出した。

けれど直ぐに鍵とチェーンが外される音がして、ドアが開くやいなや中へと引きずり込まれた。

「ずいぶん積極的なとこ悪いけど、オレノーマルなんで」

「知ってる。俺もいたってノーマルだから問題ない」

手早く鍵とチェーンを元に戻して、ドアに耳を当てて外の様子を伺っていたクラウドだったが

ようやく安心したらしい。ザックスへと向き直って改めて自己紹介をした。

 

「来てくれてありがとう。ザックス」

「なんでオレの名前知ってんの?」

「アンタの事は、アンジールさんからたまに聞いていたから」

そう言ってニヤリとするあたり、ロクでも無いことばかり聞かされてるんだろうな、

ということは容易に想像できる。

 

目の前に立つ青年は、…青年という言葉が当てはまるのか甚だ疑問に思うところではあるが。

ブロンドヘアに青い瞳はこの国じゃ珍しくもなんともない。

ただ、透けるように白い肌と、薄紅の唇、細い顎。

女物の服を着れば彼を「彼女」と呼んでも全く違和感はなさそうだ。

自由奔放にはねまくった髪は、セットなのか元からなのか判断がつきにくい。

まじまじと見入ってしまったせいか、クラウドが嫌そうな顔をして後退りする。

 

「やっぱりアンタも、」

「いや、全くその気ないから!ホントマジ勘弁して。女の子大好きをモットーに生きてるから!」

「…女を食い物にして生きてるタイプか。それはそれで最低だなアンタ」

がく、と脱力してもういいやとスルーして、そもそもの問題にとりかかる。

 

先程クラウドが言った「アンタも」の言葉に引っかかりを覚えて、聞いてみた。

「もしかしてストーカー被害に遭ってるって、相手は野郎だったり?」

「アンジールさんから何も聞いてないのか?」

クラウドが言うには、この半年間誰かに付け回され、盗撮盗聴無言電話と、

ありとあらゆるストーキング行為を受けていたらしい。

付き合ってた彼女もストーキングの相手が男と知り恐れをなして逃げ出し、

友達とよべる人たちも巻き添え(闇討ち、殺人未遂などなど)を食ってからはずっと独りでいたという。

正直生きるのも辛くなって、ダメもとでうちに電話してみたらたまたま署長のアンジールが出て、

それからちょくちょく話を聞いてもらい、部屋を見に来てくれていた。

アンジールがそんな事をしていたなんて、まったくもって初耳だ。

クラウドは大学に通っていたが、そんなことがあってからは休校届けを出して出歩くことをやめた。

でも今日、食材を買いに出た隙にまた部屋に入り込まれていたらしい。鍵だって変えたのに、だ。

それで怖くなってアンジールに助けを求めた次第で。

 

「盗聴器が…」

指した先、テーブルの上には小さな機械が二つ。

ピン、とザックスの野生の勘が働いた。

「多分、これだけじゃないぜ」

ベッドの下、部屋のライトの隙間、トイレ、バスルームをくまなく探してみたところ出るわ出るわ、

盗聴器と盗撮カメラのバーゲンセールかと思うくらいにあちこちから見つかった。

「……」

多分、全く気づかずに放置されていたのもあったのだろう。

長いこと相手に自分の私生活がダダ漏れだったことにクラウドはショックを受けているようだった。

ベッドに腰掛け、両手で顔を覆ってうなだれるクラウド。

ザックスは無意識の内に思ってもいない言葉をするりと口にした。

 

「なぁ。オレの部屋に来ないか?」

言ってから、なんでオレは初対面のこいつを部屋に上げようとしてるんだ、と変に焦った。

胡乱な目を送ってくるクラウドに必死に弁明する。

「他意はねぇよ!とりあえずここはもうダメだろ。引き払ってしまった方が身のためだし。

一人でホテル住まいじゃ金もかかるし安全とは言えねぇだろ?」

クラウドのスカイブルーの瞳が揺れていた。

「でも…今度はアンタに迷惑が」

「アンタじゃなくてザックス、な。全然迷惑してないって。これでも警察官よ?腕に自信ありますって」

言って力こぶを作って見せれば、ようやくクラウドが安堵の息を漏らし、僅かに微笑んだ。

「それなら…。頼っても、いい?」

その微笑はザックスが今まで出会ってきたどのオンナノコ達よりも儚く、眩しく、そして綺麗に瞼に焼き付いた。

 

 

これは―――これは、間違いない。

 

 

まさに今、ザックス・フェアは24にしてホンモノの恋に堕ちた。

相手は22歳、年下の大学生…正真正銘の男、だった。

 

 

 

 


 

「男の一人暮らしなんだ。とっ散らかってるのはご愛嬌で」

「ああ、アンタの部屋、想像着くな」

「ザ・ッ・ク・ス!いい加減名前で呼んでくれよ」

「いいからさっさと中に入れ」

オレの部屋だっつーの、とブチブチ言いながら鍵を開けた。

 

ザックスの住む部屋はさすが警察官なだけあって収入がいいのか、

クラウドの住まう安アパートとは全く違っていた。

玄関からすぐ部屋、なわけはなく廊下が続いて左右にバスルームやリビング、寝室も独立してあったり。

汚いと本人が言う割りにはきちんと片付いてて、見た目と反して意外ときれい好きという印象を与えた。

「意外、とか思ったろ今」

言われて肩をすくめてみせた。

表面上クールに振る舞ってるが、自他共に認める鉄仮面ぶりにクラウドは一ミリも動かない顔から

よく読めたな、と感心した。

 

「なんで分かったって顔されてもなー。まるわかりだぜ?」

これにはさしものクラウドも、目を丸くした。

「俺、鉄仮面とか氷の女王とか言われてるくらい、あまり顔に出ない方なんだけど」

「うん。顔には出なくても心ん中ではいろいろ考えてるだろ?」

それ、オレにはしっかり伝わってるからさ、とコーヒーを手渡されながら目を見て言われてしまっては、

諸手を上げて降参するしかない。

さすがはアンジールの秘蔵っ子といったところか。

クラウドは初めて会ったにも関わらず、この男のことを信用し始めている自分に驚いた。

それどころか好ましいとさえ思っているのだ。

…だからといって、最初にからかわれた言葉を忘れたわけではない。

これでも結構根に持つタイプのクラウドであった。

 

「そうやっていつも女の子口説いてるのか」

「うんうん、だいたいそれで落とされて…っておい!」

「とにかく、俺はいつまでここに寝泊りすればいいんだ?」

ノリツッコミは華麗にスルーされてしまった。

ガクッと肩を落とすも、立ち直りが早いのが持ち味のザックスである。

「あぁ、それについては一旦署に戻ってアンジールからこれまでの調書もらってくるから待ってくれ。

相手の目星を付けたら、」

そこで区切るとザックスは、意味ありげな視線をちらりとおくって寄越した。

「現行犯が一番手っ取り早いんだけどな」

「冗談!」

「わーってるって!そんじゃ証拠固めからしないとだから、一ヶ月はかかるかもな」

そういや留守番だったのに開けっ放しできちまったから、どのみち戻らないとと言って

ザックスは署へと車で行ってしまった。

 

残されたクラウドはリビングのソファに座ってテレビのリモコンを手にとった。

電源を入れた瞬間携帯が鳴り、驚いてそれを取り落としてしまった。

驚いてしまった自分を気恥ずかしく思い、それを取り繕おうとディスプレイも見ないで電話に出た。

「ザックス?何だよ忘れ物か?」

 

『……ザックスというのか今の男』

 

目を見開いて立ち上がり、慌てて周りを見回した。

窓にはロールスクリーンがあって外から中の様子は伺えないようになっている。

それでも無防備な空間にいるのが恐ろしくなり、クラウドは音を立てないようにそっと寝室へと向かった。

『部屋を移動したって無駄だ。お前の居場所はミリ単位で把握してるからなぁ』

下卑た笑い声が耳障りで、構わず通話を切ると電源を落とした。

それでもこの携帯に発信機か何かが取り付けられているのかもしれないという考えに至ると、

証拠の事も忘れて洗面所に走り水に浸けた。

 

「…っ!」

恐怖に震える腕を押さえ込み、ズルズルとその場にへたりこんだ。

まだ耳の奥であの男の笑い声がリフレインしている。

耳を塞いでうずくまり、ぎゅっと目を瞑った。

ただひたすら、ザックスの帰りを待ちながら。

 

 

 

 

 

どれくらいの時間が過ぎたのか。

キュキュキュ、とタイヤの擦れる音が響き、家の前に横付されたスポーツカーから飛び降りたザックスが

玄関の鍵を開けるのももどかしく家の中へとなだれこんだ。

「クラウド!どこだクラウド、無事か!?

そんなに広くない住処を、早足で駆け抜ける。

次々と部屋のドアを開けては覗いて、ようやくザックスは洗面所で丸く縮こまったクラウドを発見した。

「クラ、」

声を掛けようとして、洗面台に張られた水に浮かぶ携帯に目を留めた。

 

「…電話、来たのか?」

両膝に顔をうずめていて顔は伺えない。金のたてがみが僅かに揺れて、頷いたのだと暫くしてから思い至った。

肘に食い込んだ指の、力を入れすぎて白くなった爪先をそっとほぐすように解いていく。

なすがままのクラウドは、ずっと無言を貫き通している。

ザックスはクラウドの顔を見ないように、両腕を自分の肩に回し抱き寄せた。

 

「怖かったろ…?ごめんな、一人にして」

鼻をすすって首を左右に振るが、腕から伝わる震えは止まらない。

なんとなくそうした方がいい気がして、ザックスはクラウドの頭を撫でた。

ずっと、怯えていたのだろう。アンジールがいない今、彼にとって頼れる人なんていなくて。

初対面からして印象は最悪とまではいかなくても良いとは言えない奴だったが、

こうして見せてくれた弱さにクラウドの隠れた一面を垣間見た気がした。

 

口が悪いのは、人間不信に陥ってるせいだ。

本当は、繊細で…こんなにも脆い。

署からクラウドの携帯に掛けようとして、全く繋がらない状況に焦りを覚えたザックスは、

同僚に全ての雑事を押し付けて文字通り飛んで帰ってきた。

道中ハンドルを握りながら感じた恐怖に似た感情。

クラウドの身に何かあったのでは、という恐れ。

だがそれ以上の極度の不安状態に、クラウドは晒されていたのだ。

「大丈夫、もう大丈夫だから。クラウド…」

何度も何度も、頭を撫でつける。

 

そうしてしばらくすると、クラウドも落ち着いてきたらしい。

おずおずと廻されていた腕を解いて、肩に手をかけ小さく「ありがとう…。もう、平気」と口にした。

だがそれにザックスは眉を顰めた。

俯いたままのクラウドの頬を両手でしっかり包むと、無理矢理顔を上げさせる。

 

「バッカ!全然平気じゃないだろ!?

 

思った通り、スカイブルーの瞳は涙に濡れていた。

金の睫毛が雫を湛えて、瞬きをした拍子に弾かれてザックスの手へと落ち、甲を伝う。

真剣な眼差しで、心の奥まで見透かされそうになってクラウドは目をぎゅっと瞑った。

決して、「そのつもり」でいた訳ではない。

なのに、ザックスが唇を触れ合わせてきたとき、何故か厭だとは思わなかった。

男のストーカーに付け回されて気持ち悪いと思っていた。

だけどザックスに抱きしめられても、こうしてキスされても嫌悪感は感じない。

瞼を開ければ、変わらないザックスの顔がそこにはあった。

「こんな時に言う事じゃないかも知れないけど…。会ったその日じゃ信じてくれないかもしれない、けど、」

 

 

 

――俺、クラウドの事、好きだ。

 

 

 

そう言って、また唇を塞がれた。

クラウドは自分の中にある感情がまだ「like」か「love」かわからなかった。

だから、ただ黙って今度は自分からザックスの背中に手をまわした。

分ることは、今自分が頼れるのは目の前にいる男だけなのだと言うこと。

 

そうして、心を預けるように流されるまま躰をザックスに委ねた――。

 

 

 

 

 

ブラウザを閉じてお帰りください。

Sunchildさまより頂戴!(201067

 

 

 

 


 

 

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