C-brand

 

 


 

 

 



 

 

、はじめました。

 

 

【 ご 注 意 】

*ザックスが年上リーマン、クラウドが大学生かつコンビニのアルバイト店員という現代パラレルです。

*後半シリアス予定でしたが、その前にラブラブデート編を書きたくて…!

というか、やつら勝手にいちゃつき出して…!

すみません、終わりませんでしたああああ!とりあえず今回はいちゃつけザックラ!

 

 

 

キミと出逢うまで。

きっと僕は世界一、馬鹿な男だったと思うんだ。

 

 

 

【中編】

 

「あれ?クラウド、今日シフト入ってたか?」

「…違う、今日は休み。」

「なんだ、これから大学か?苦学生大変だなー」

「……今日は、講義も休み。」

ホットのミルクティと微糖コーヒーのペットボトルをレジに持っていくと、「いらっしゃいませー、だぞと」と

やる気のない挨拶で迎えたのはレノだった。

普段は店員側であるが、今日クラウドは客として馴染のコンビニで買い物をしている。

 

「ってことは、なんだ。デートか?そういやなんか今日は可愛いかっこだな。」

「別にふつうだし。」

「相手どんな子?美人?おっぱいでかい?飲み物だけじゃなくてコンドーさんも買ってけよ。」

「近藤さん?誰それ。」

「こらレノ!お客さん相手に何をやってる!」

「げっ、店長。客っていっても、クラウドだぞ、と。」

「今日は大切なお客さんだろう。レジはいいから、お前は品出しをしてこい。」

「へいへい…了解ですよ、と。」

 

「脱童貞がんばるんだぞと」といらぬ冷やかしを口にしながら、レノはバックヤードへと姿を消す。

代わりにレジ打ちをしてくれた店長アンジールは、「二人分」の飲み物を見て何を思ったのか、

その眼元を和らげた。

「今日は車で出かけるのか?」

「たぶん…。」

飲み物のほかに、レジカウンターの上にはレモン味のタブレットがある。

それが車酔い防止のためであること、それに目敏く店長は気付いたようだった。

 

「そうか。今日は晴れるらしい。きっとドライブ日和だぞ。」

カウンター手前に置いてあるポケットチョコ数袋と、コンビニ一番人気のミニサイズのから揚げを

袋にいれると、それをずいと渡される。

会計は飲み物とタブレットの代金しか払っていないのに、どうしてこんなに増えているのか。

「楽しんでおいで。学生の本分は、勉強と、」

「青春ですか?」

アンジールは大きく頷くと、クラウドの頭をニット帽の上からがしがしと撫でた。

 

 

 

――恋だよ。

 

 

 

アンジールの視線に従って、窓ガラスの向こうに目をやると。

ちょうどコンビニの駐車場に、ゆっくりと黄色のスポーツカーが入ってきたところだった。

運転席の男の顔は、太陽に反射して確認は出来ないが。

こんなコンビニに不釣り合いな車で登場する男なんて、一人しか考えられない。

「良かったな、クラウド。」

さあ行っておいで、と。背中を押す店長に礼を言うと、見送られる恥ずかしさに早足でコンビニを出た。

 

同じタイミングで車から降りた男――ザックスは、こちらに向かって手を振ってくる。

きっとまた、ご近所の噂になるに違いない。

 

コンビニ前、超イケメンスポーツカーでキターー!≠ニか、そんなかんじで。

 

「クラウド、おはよ!」

そういえば、いつも「お疲れ」と声をかけられていたから、朝の挨拶は新鮮に感じる。

でも何よりも新鮮に思えてしまうのは――ザックスの私服姿≠セ。

普段は会社帰りであるから、スーツ姿の彼しか見たことがない。

ミリタリー系のコートにジーンズ、遊び心のある鮮やかな青いヘッドホンを首に下げるそのカジュアルな

服装は、ファッションに疎いクラウドから見てもとてもオシャレで、そして普段よりも若く見える。

 

「すげえ可愛いな。その帽子!めっちゃ似合ってる。」

白いニット帽のボンボンで手遊びしながら顔を覗き込まれても、返す言葉がなかった。

ふわりとさり気なく漂うコロンの香り、それはいつもと同じなのに。どうしてだろう、目が離せない。

「クラウド、どうした?眠い?朝はやすぎた?」

茫然とザックスに魅入るクラウドに、彼は勘違いをしたらしく目の前で手の平を左右に振って見せた。

 

10時、コンビニの前で待ち合わせ――

 

あの雪の日、彼と連絡先を交換してから、一日数回ラインで、一日一回電話がくるようになった。

そして「今度一日かけてデートしようぜ」なんて、社交辞令かリップサービスだと思っていた約束が、

こうしてすぐに実現されたのだ。ザックスは見た目通り、バイタイリティのある男だった。

 

「…車、派手すぎ。」

まさか、ザックスの私服姿が格好良くて見惚れたなんて言えるわけもなく。

そんな可愛気のない返事しか、クラウドは返すことが出来ない。

「あ、やっぱり?バイクで迎えにくればよかったかな。」

たしかに派手だけれど、ザックスはその存在感のあるスポーツカーにさえ見劣りしていない。

ザックスだからこそ似合う車なのだ、きっと。

 

「これ、宇宙船イメージしてるんだって。なんか夢があるだろ?そういうの好きなんだ。」

助手席の扉を当然のように開けて、クラウドをリードしてくれるその手。

それは大人の余裕を感じるのに、無邪気な笑顔はあどけなくて、そのギャップが悪くないと思う。

「車、好きなの?」

「んー、こいつが好きなだけで、別に車が趣味ってわけじゃないかな。地味に電車通勤だし。

 休みの日も、バイク使うことの方が多いし。本当いうと、久しぶりに乗るからって、

 今朝慌てて洗車したんだ。」

「俺、車に乗ったことない。」

「え?!」

「父さんいないから、家に車なかったし。俺もまだ免許とってないし。タクシーも高いから使わない。」

大学へは、自転車で通っている。アルバイトは徒歩。田舎からでてきた貧乏学生の現実だ。

 

「友達の車にも乗ったことねえの?」

「誰かと遠くに出かけたことない。田舎から出てきてそんなに経ってないし、あんまり知り合いいないし…」

「恋人、の車も?」

「そういうひと、いない。……いたこと、ない。」

そっか、とザックスは嬉しそうに微笑むと、助手席に身を乗り出してシートベルトを閉めてくれる。

 

 

 

「…初めては、絶対優しくする。」

 

 

 

運転のことだよ。

そうウィンクされて、それ以外のことを考えてしまう自分が恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 


 

 

船や電車でも酔ってしまう体質だから、きっと車も酷く気分が悪くなるだろう。

そう思っていたのに、ザックスの運転が穏やかであるからか、車内を流れる心地よいBGM

リラックスできているのか、はたまたレモン味のタブレットのおかげか。車酔いすることはない。

それに、会話が途切れることもない――

狭い車内で二時間近く、そんなに会話など持つわけがないと昨夜は悩んでいたのに、

無用の心配だったようだ。ザックスは感心するほど話題が豊富な男で、ネタはいくらでも湧いてくる。

それは人生経験故か、彼の生まれ持った人間力故か。

「俺のこと知ってほしい」

あの日、そう言われた通り、彼は自分のことをたくさん話してくれた。

 

ザックス自身田舎の出で、クラウドと同じように大学進学をきっかけに都会に出てきたこと。

メディア系の仕事をしていて、身なりに気を遣っているのは新入社員の時に上司にそう指導されたから。

働いて、もうすぐ7年目。

うち海外赴任の時期が長かったから、数年ぶりに母国へ戻ってきた今は新人の気持ちで働いている。

毎日が新鮮であるけれど、やっぱり疲れることもある。

――けれどコンビニで、クラウドの顔を見ればそんな疲れなどどこかへ行ってしまうのだと。

 

慣れた風にハンドルを握りながら、ときおりコーヒーや唐揚げを強請って、口をあーんと開けるその様に

クラウドの表情も緩んでしまう。他人とのコミュニケーションが苦手だったはずなのに、

彼が相手だともっと話を聞きたいと思うし、逆に自分のことを語るのも全く苦ではない。

ザックスが話し上手であることはわかっていたけれど―――それ以上に、実は「聞き上手」で。

強制はせず、柔らかい口調で「じゃあクラウドは?」と尋ねてくるその言葉に、不思議なほど抵抗なく

自分のことを話してしまうのだ。

 

 

 

二時間程かけてドライブをして、辿り着いたのは海。

ちょうど昼時だったから、砂浜に降りる前に食事をしようと二人の乗る車は寿司屋へ入る。

何が食べたいかと聞かれた際、脂っぽいものが苦手だと答えたクラウドの言葉に

「すげえ可愛い。女子か。」とからかうように笑ったものの、ちゃんとニーズには応えてくれたらしい。

 

「海の近くの寿司屋って、美味いんだよ。」

「そうなの?俺、寿司自体、食べたことない。」

「え、寿司も初めて?」

「貧乏人なめんな。俺の最大の贅沢は、おでんに牛スジ追加することだ。」

「ごめん涙出てくる…!今日は好きなだけ食ってくれ、お兄さんの奢りだから!」

 

一度も寿司を食べたことがないというクラウドに、ザックスは注文した皿から必ず半分わけてくれた。

初めての味に、「美味しい」と素直に感想を口にすれば、喜んだのはザックスだけではない。

ねじり鉢巻きをした店主も嬉しそうで、「真っ直ぐに褒められると、嬉しいもんだねえ…」と、

無精髭を生やした一見頑固そうに見えたその男は、ニカリと人好きのする笑顔に変わる。

そして注文などしていないのに、海老の入った香り良い茶わん蒸しをひとつ、クラウドの前に置いた。

 

「俺様の奢りだ。食っていきな。」

「えーおっちゃん、俺のは?」

「どうせその子にあーんしてもらいたいんだろ、一個で充分じゃねえか。」

「なるほど!でかした、おっちゃん!」

「兄ちゃんよ。言っておくけど、俺はまだ32歳だぜ……」

 

恥ずかしげもなく、一口ちょーだい!と口を開いてくるザックスに戸惑ってしまう。

いくらカウンターには二人しか座っていないとはいえ、テーブル席のほうには家族連れやカップルもいる。

車の中でお菓子を食べさせるぐらいなら、慣れないながらも可能だけれど、

こんな公衆の面前でそんな恋人同士≠ンたいなこと出来るわけもない。

 

「なんだなんだ、ずいぶん初々しいな。まだ恋人ってわけじゃねえのか?」

「こ、恋人なわけ…っ」

「おっちゃん、そういうのやめてよ!今日告白するつもりなんだからさー。」

冗談なのか、本気なのか。

わからないけれど、クラウドの持つスプーンをぱくりと咥えたザックスは「隙あり!」と勝ち誇った笑みだ。

いったい、この男はどこまで本気なのだろう。どこまで、期待していいのだろう。

「兄ちゃん、じゃあ精力つくようにアナゴ食っていけよ!」と店主がからかい始めるのに、

他のテーブルで配膳していた上品そうな女性が盆で男を叩いた。

 

「シド、お客様に失礼でしょう。」

「…だってよう、若い奴ら見てっとこう、応援したくなるじゃねえか……」

威勢の良かった店主の声が、小さくなっていくのに思わずクラウドも笑ってしまう。

 

この寿司屋の店主も、コンビニ店長のアンジールも、フリーターであるレノでさえも。

人との関わりが、悪くないと思えたのは「彼」と出逢ってからだ。

きっとこれまでクラウドは、人の優しさに気付かないで生きてきた。

もったいないことをしてきたと、今ならそれがわかる。

 

『恋をすると世界が変わる。』

そんなことを何処かで聞いたことがある。

もしその定義に当てはめていうならば、クラウドは今、正しく恋をしていることになる。

彼と食べる食事は美味しくて、彼と交わす言葉は心地よくて、彼と眺める世界は美しい――

世界は、少しの大袈裟でもなく、180度変化してしまったのだから。

 

 

 

 

 


 

食事の後、砂浜に降りてみたいとクラウドが言えば、それは後のお楽しみ、と。

5分ほど車を走らせて連れてこられたのは、海辺にある水族館のテーマパークだった。

食事の時に、クラウドが動物園や水族館にいったことがないと話したことで、気を回してくれたらしい。

「クラウドの初めて、俺が全部もらっちゃうから。」

そう冗談っぽく笑いながら手を引いてくれるザックスに。

実は手を繋ぐのも初めてだなんて、そこまでは教えてあげない。

 

休日を満喫しようとする家族連れは多いものの、都会の水族館に比べればそれほどの混雑ではない。

パンフレットを見ながら、見たことのない沢山の魚を見て、イルカやシャチの愛らしいショーを見て。

歓声をあげる幼い子供のように、ザックスはくるくるとその表情を変えていく。

クラウドよりもずっと年上のくせに、少年のような男だと思う。

笑って、笑って、もっと笑って。

ザックスが本当にいい笑顔をするものだから、クラウドも笑顔になってしまうのだ。

 

 

 

「――彼女とも、こういうところに来た?」

聞いた後で、激しく後悔した。

ザックスのことなら何でも知りたくて、その過去さえも気になってしまって――

聞くべきことじゃないとわかっているのに、口から零れてしまったのだ。

その答えを知ったところで、クラウドは傷つくだけだ。ザックスも、気分を害するだろう。

過去を尋ねられて抵抗のない男など、きっといないはずだから。

 

せっかく楽しく過ごしていたのに、クラウドがその空気を壊してどうするだろう。

今度こそ砂浜に出ようと、海岸に向かって車を走らせていたザックスの横顔に向かって。

クラウドは慌てて自分の言葉を訂正する。

「ごめん、今の、なんでもない。」

「…クラウド、」

眉を歪ませるぐらいはするかと思ったのに、ザックスは優しく目を細めただけだった。

 

「デートぐらいはしたことあるけど。まあ、前に言ったけど、童貞じゃないし。」

「……」

「けど、海に連れてきたり、助手席に乗せたり、そういうのはしたことない。」

「…え?」

「こういうこと言うと、嫌われちゃうかもしれないけど。俺、けっこー酷いやつでさ。

女の子とデートとか面倒で、せいぜい飲みとか食事とか、まあ買い物とか映画ぐらいなら行ったけど。

あとはホテルばっか。」

言ってることは最低男そのものだけれど、それを告白してくる以上は、彼も自分の過去を

後悔しているのかもしれない。

「海に行きたいとか、山に行きたいとか。今度は動物園も連れてってやりたいとか。

 そういう風に思うのって、初めてだった。アポロに乗せたいとか、いつか、部屋にもきてほしいとか…

 そう思えるのは、世界で一人だけだよ。」

「…アポロってなに。」

「こいつの名前。」

そう、優しくハンドルを叩くザックスを見上げたとき、運転席側のカーウィンドウから光が射し込んだ。

 

眩しくて目を細めると、ザックスが笑った。

「間に合ってよかった。」

「間に合う?」

「ここ、世界一って言われてる夕日の名所なんだって。……綺麗だな。」

窓の外を眺めるザックスの横顔は、あまりに眩しい。とても、眩しかった。

 

海岸沿いに車を止めると、「おいで」とザックスはそっと手を引いてくる。

真冬の砂浜は人ひとりいない。二人きりの、世界だった。

夕日が海に沈んでいく。

真っ赤に染まる水面は喩えようのないほど美しく、けれどこの夕日もあと数分もすれば

海へ完全に隠れてしまう。それは仕方のないことなのに、時間が止まって欲しいとさえ思う。

 

もっと見ていたい。

この美しい世界を、彼と二人で、ずっと見ていたい―――

 

「今まで俺、何見てたんだろうな?」

 

ザックスが、寂しそうに笑った。彼はときおり、そんな風に影を見せる。

それはクラウドには手の届かない、大人であるような気がして。どうしようもなく、切なくなるのだ。

「綺麗とか、楽しいとか。…愛しい、とか。そういうの俺、全然知らなかった。」

「…俺、だって。」

言葉が震えてしまう。その短い返答が、今のクラウドには精一杯だった。

「オマエと出会うまで俺、世界一馬鹿な男だったと思うよ。」

「…おれ、だって…っ」

 

世界はこんなにも美しいんだってこと。世界はこんなにも愛しいんだってこと。

なにひとつ知らなかったのは、クラウドだって同じだ。

 

 

 

 

藍色の海と、白い砂浜に光の筋が通る。

夕日が沈む、奇跡のようなその最後の輝きに―――重ねるように、「好きだ」と彼は言った。

 

 

 

 

それは涙で、世界の美しさや愛しささえもぼやけた、瞬間。

 

  

 

 

 


 

「いいかクラウド、部屋に入ったら、絶対カギかけろよ。チェーンも忘れんな。」

アパートのエントランスで交わされるのは、いつものお約束といっていい会話だ。

 

「わかってるよ。ザックス、心配性すぎない。」

「当たり前だろ、俺の恋人は世界一可愛いんだから。」

「こ、恋人…っ?!」

「え、俺ってもしかしてフられたの?!」

 

数時間前に。

海辺で、彼に告白をされて――その後クラウドはもう、泣き崩れてしまって何も言葉を返せなかった。

ただ、ザックスのコートで包まれて、ずいぶん長い間抱きしめられて。

それに少しの抵抗もすることもなく、彼の逞しい胸に顔を埋めていたのだ。

当然ザックスとしては、言葉なくともクラウドの答えが肯定であると感じるだろう。

そしてそれは、間違っていない。

 

「でも、俺…男、だよ。」

「今更だろ、そんなの。ここまで夢中にさせといて、オマエ何言ってるんだよ。」

「でも、でも…。俺、ど、童貞、だし…」

「ばか、それ、むしろすっげえ嬉しいから。」

「そうなの?」

「オマエの初めて、全部貰えるってことだろ。」

何やら恥ずかしい方向に話が行ってしまった。

耳まで赤く染めるクラウドに、ザックスは帽子のボンボンを撫でながら囁く。

 

 

「大事にするって言っただろ?今すぐヤりたいなんて言わない。いくらでも、待つから。」

 

 

その甘すぎる囁きに、クラウドは弱い。

心臓だけじゃない、腹の下の辺りが切なくなるような、そんな感覚――これは、もしかすると。

もしかすると、彼に自分の全てを、奪ってほしいということではないだろうか。

…今はまだ、そんなこと、言えない。

好きだという言葉ひとつ、彼に伝えていないのだから。

 

「…これ、あげる。」

チャリ、と手の平で鳴ったのは、シャチのぬいぐるみがついたキーホルダーだった。

それを見てザックスは、目を見開く。

「え、クラウドが買ったの?今日?水族館で?」

「………ザックスに、お土産。渡したくて…」

恥ずかしくて目を合わせられず、石畳の床を睨むように見つめることしか出来ない。

 

 

「俺、すっげえかっこ悪くない?嬉しいけど。死ぬほど嬉しいけど。」

 

 

「なんでかっこ悪いの?」

スポーツカーに乗せてくれて、美味しいものを食べさせてくれて、行きたい場所に連れていってくれて。

夕日の沈む海辺で、まるで絵に描いたようにロマンチックな告白をしてくれた。

格好悪いわけがないのに。

「デートの最後にお土産とか。オマエ格好良すぎるだろ。俺がすっげえ、かすむっての。」

それでも本当に嬉しそうに受け取ってくれたザックスは、ポケットから鍵をひとつ取り出すと、

その場でキーホルダーを付けてみせる。

 

 

「ありがとな。本当に、大事にするから。…こいつも、オマエも。」

 

 

そんな風にまっすぐに言葉にしてくれることは、やっぱり慣れなくて恥ずかしい。

けれど自宅の鍵につけてくれたこと、それが嬉しくて。

また泣き出してしまいそうで、けれども男なのだからと耐える。

ザックスのことだから嫌な顔をしないとは思っていたけれど、さすがにこんな子供趣味のものは

使ってはくれないだろうと考えていたのだ。それでも、揃い≠フものが、何か欲しかったから。

 

「なあ、クラウドのは?」

お揃いでクラウドの分も買ったこと。それは秘密のつもりだったのに、彼にはばれているらしい。

見せてくれと乞われるまま、素直にバッグから取り出すと、ザックスはそれを奪っていく。

「俺だって、かっこいいとこ見せたいからさ。」

そう言って、彼は何かをクラウドのキーホルダーにつけているようだ。

 

 

 

 

「通りの先の、レンガ作りのマンション。1107号室。…いつでもおいで。」

 

 

 

 

 

丸く愛らしいシャチの横で、誇らしく揺れる。

それは、ザックスの特別を意味する―――世界でひとつしかない、彼の部屋の合鍵だった。

 

 

 

 

  

 

 

 

NOVEL top

C-brandMOCOCO (2014.01.26

どうしよう現パロ妄想楽しすぎるハアハア…><

新しい変態の扉をひらきました。

 

 

 

 


 

 

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