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【 ご 注 意 】

*「美 女 と 野 獣」 パロディです。が、結局、原作童話は関係ありません。

*性描写あり。ぬるいですが、露骨な淫語などはありますのでご注意ください。

*亀更新。

 

 

野獣の胸を、銀の杭が貫きます。

 

血を吹きだしながら、最期を感じた男は初めて

「助けてくれ」と懇願しました。

お前など助けるものか!人々は怒り狂います。

 

――――を 助けてほしい

 

…その消えゆく声は届かず、

 

 

Story14.報復

 

 

ザックスがこの城に棲みついたのは、2年ほど前なのだという。

 

各地へ飛び火した「ソルジャーの残党狩り」の勢いを避け、ミッドガルから遠く離れた北部の村――

ここ、『ニブルヘイム』へと流れ着いたのだと。皮肉にもニブルヘイムは『魔女狩り』発生の土地であり、

神や悪魔を信じるシャーマニズムの思想がとても根深い。

故に本来であれば、ソルジャーもとい悪魔≠ニ呼ばれたザックスにとって、近寄るべき場所ではない。

人非ざるものとしてザックスは――200年前に老婆が魔女として迫害を受けたように――

村人たちに命を追われる危険があるからだ。

 

「――でも、それはむしろ都合が良かった。ここに住む人間たちの信仰が、俺にとっては。」

「……ニブルヘイムの信仰…?」

「ああ。村の伝説…伝承って、いうのかな。それを皆、信じているから。だから、誰も俺に近付かない。」

村中の者が信じる、古い言い伝え。

ニブル村の人々の信仰こそ、ザックスを守る見えない檻≠ノなったのだ。

 

 

 

むかしむかし、ニブル山には醜く凶暴な一匹の野獣がおりました――

 

 

 

険しい山麓地帯に位置するニブルヘイムは物理的にも閉鎖的空間に存在し、

故に伝統に重きを置く、保守的な村だ。

科学の発達は進むどころか排除され、目に見えぬモノの存在を畏れ、ひれ伏す。

穀物が不作であれば、それは野獣が腹を空かせているからだとして、山へ家畜を差し出し。

疫病が流行れば、それは野獣が「色」を求めているのだとして、山へ人間を差し出した。

――生贄。

山の上の古城には、恐ろしい野獣が棲んでいると…皆がそう信じて。

 

「ここはただの、廃城だったんだ。200年前かな…失脚した貴族が亡命して、

 隠れて住んでいたらしいけど。流行り病を恐れて、結局ここを後にしたらしい。」

「流行り病…」

たしかに200年前といえば、流行病で多くの人が亡くなった史実がある。

その病は魔女の力によるものとして、魔女狩りが行われたのだ。

 

「村の連中は、誰もここには寄り付かない。…だから、ここに隠れてた。ニブルヘイムの伝説通り、

2年前からここは、『本当に』化け物の棲家になったんだよ。」

違う――この城に、化け物なんていなかった。

ここにいたのは、優しくて泣き虫で、独りぼっりに怯える男がただひとり。

それをクラウドは、知っているのに。…知っているのはそう、クラウドだけなのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

朝日が昇るまで待とう――― そう、ザックスは言った。

でも、クラウドはそれを肯としなかった。

ザックスの姿を知るのが先でも後でも同じこと。そんなことで彼への想いが変わるはずがない。

それよりも早くひとつになりたい。

そうして彼を抱き締めたまま、朝日の中「おはよう」と言ってやりたいのだ。

 

「でも…、でも、オマエを抱いたあとで、やっぱり……後悔、させたくないし、」

「馬鹿にするな。」

この期に及んで、クラウドが彼を拒絶するなどありえない。

ひとの形をしていても、していなくても、それがザックスであることが大事なのだ。

 

「まあ、アンタの顔が好みじゃないってぐらいは、言うかもしれないけど。」

そう冗談を言えば、ザックスは引きつっていたような声色を少し和らげてくれた。

「ひでえな。じゃあさ、クラウドの好みって、どんなの?」

冗談の延長なのだろう、

こちらの軽口に付き合ってくれるザックスは、彼なりに緊張を解こうとしているのかもしれない。

「好み…外見ってこと?」

「うん。」

なんといっても小さな村で、かつ日々の生計をたてるのに精一杯であったクラウドは、

これまで恋愛経験は皆無といってよい。

だから「好みのタイプ」を唐突に問われても、正直よくわからない。考えたこともなかった。

目の前にいる彼を想像してみると、いつの日か見た『夢』を思い出した。

 

姿を見たことはない。けれどきっと、彼は―――

 

「…よくわかんないけど。どちらかというと…黒髪がいい、かな。」

「俺は、金色の髪が好き。」

「切れ長の青い瞳で、獣みたいに鋭いけど。俺と話すときは、優しい目をする。」

「くりんくりんで、ビー玉みたいな瞳が綺麗だな。

透き通ったアイスブルーでさ、きっと光の下で見たらもっと、キラキラしてるんだ。」

「筋肉質で、腹筋割れてたり…そういうの羨ましい。」

「俺はほっせえ腰、引き寄せんのが好き。」

「低い声で名前、呼ばれると、心臓ドキドキする。」

「ざっくす≠チて、舌ったらずに呼ばれると、かなりくる。」

 

好みも何も、これでは互いが好きだと告白し合っているようなものだ。

恥ずかしくなって俯いてしまうと、ザックスに腰を勢いよく引き寄せられた。

彼の胸板に顔を押し付けた状態で、自分よりも少し余裕のある心臓の音を聞いていた。

「どう?俺の腹筋。気に入った?」

余裕のある彼が悔しい。

 

「…なんか、洗濯板になりそう。」

「ぶっ!色気ないこというなよ。もっとこう、男を感じて欲しいっていうか、ときめいてほしいっていうか、」

「ザックスは、」

「うん?」

「ザックスは…俺の体で、ちゃんと興奮するの?」

聞き辛いことを思いきって言葉にした瞬間、激しいぐらいの力で抱き締められた。そして、

 

 

 

 

「オマエの体だけだ。死ぬまで。」

 

 

 

 

「俺…男だし。」

「知ってる。」

「胸ない、し。」

「それも可愛い。」

「い、いれるとこ…も、変なところ、しかないし。」

「ばか、そこが可愛いんだよ。」

 

彼の膝の上に乗せられたまま、激しく口づけられる。

ザックスの熱い舌が、クラウドの舌に巧みに絡みつき、そのまま吸い上げられる。

相手の唾液と自分の唾液が、どちらのものかもわからぬほどに交じり合っていく。

それに少しの嫌悪も感じないのは、こんなにも愛しているからだ。

彼も同じなのかと思うと、自分の口内を犯すこの舌さえも愛おしいと感じる。

(…そう、いえば、ザックス……)

「ざっく、す、」

「うん?」

奪われた呼吸の間で、かろうじて彼に呼びかければ、ザックスは甘い声色で返してくれる。

「ね、きいても…いい?」

「いいよ。」

思った以上に、躊躇いのない返答だった。もう、何も隠したりはしない――そう、決意しているのだ。

 

こんなことを聞けば、彼の傷に触れてしまうのではないかと…不安はある。

けれど彼の過去を全部知りたい。無理と知っていても、彼の全てを、全部知りたかった。

「ザックスは拷問で、舌を…舌を切られたって言ってた。でも――」

暗闇であるから、感触でしかわからない。

けれど、ザックスの失ったはずの舌も、歯も、おそらくは正常に機能しているように感じる。

クラウドの問いに、彼は少しの不機嫌さも出さずに、そして事実を隠そうともせずに即答した。

 

「ドーマクが、俺を治した。――そのせいで、彼は処刑されたんだ。」

Dr.ヨハン=ドーマク?」

ヨハン=ドーマクといえば、元軍医師であり、今もその研究は稀有とされている

魔法治療≠フ先駆者である。

その後ジャーナリストに移行して、ソルジャー狩りを批判したため処刑されたのだと。

そう、レノが言っていたはずだ。

 

「ああ、もともと俺は医療班で入隊したから。その時に知り合って、俺のこと孫みたいに可愛がって

 くれた。厳しくて頑固一徹、ってかんじだけど、面倒見がいいひとでさ。回復魔法も医療技術も、

 全部俺はドーマクから教わったんだ。」

書斎にドーマクの著書が多かったのは、意図的に集められたものだったのだろう。

 

「でも結局、俺はソルジャーの手術を受けて、医療班を抜けた。たぶん、もともと医療は

向いてなかったんだろうな。軍に居た2年の間――人を治すよりも殺すことの方が多かったから。」

「…そ、」

「お前は殺す方が向いているって、殺しの天才だって。…皆、俺にそう言ったよ。」

「そんなことない!」

思わず声を張り上げてしまう。誰だって、たとえザックスだって、彼を悪くいうのは許せない。

 

「…そんなこと、ない。ザックスのかけてくれた魔法、すごく、優しかったもん。」

 

初めて緑の光に包まれたときの感覚を、きっと忘れることはできない。

それほどに、あの魔法は温かく、優しく、まるで彼に包まれるような。そんな安堵感を感じたのだ。

「リジェネなんて、初級魔法だよ。ちょっと勉強すれば誰でも使える。」

「――使えないよ。」

魔法のことも、医療のこともクラウドは詳しくない。本で得た程度の一般知識しかない。

でも、それぐらいはわかっているのだ。

 

魔法は、マテリア石があれば誰でも使えるわけではない―――難解な呪文の詠唱や魔法陣を

描くことは当然だが、それ以前にどうしても不可欠な「発動条件」があること。

 

「魔法は、使うひとの性格や心が一番大事だって。…ドーマクの本に書いてあった。」

たとえば、相手を攻撃する魔法は、相手を憎まなければ威力が出ない。

その負の念があって初めて、他者を攻撃することが可能になる。

回復魔法も然りだ。『相手を慈しむこと』、それが最低限の発動条件のはず。

「回復魔法は――治したいって思わないと、使えないんだろ。ザックスはあのとき、」

クラウドの風邪を治してくれたとき。

初めて会ったあの日、さんざんなぶられ、腹が痛いと訴えたときでさえも。

 

「俺のこと、治したいって思ってくれたんだ。…ごめん、本当は、初めて会った日から、ずっと知ってた。

ザックスが、優しいひとだって。」

 

優しい魔法をかけてくれた、そのときから。

「……クラウド…。」

もう、名を呼ぶだけで精一杯なのだろう。ザックスは震える言葉を飲み込むように押し黙った。

そして、しばらくの沈黙の後、

 

 

 

 

「愛してる。」

 

 

 

 

どちらの唇が紡いだ言葉なのかは、もうわからなかった。ただ自然に、愛の言葉が零れ落ちていく。

ドン、と少し強引に押し倒された体は、大きなベッドに沈んでしまいそうになる。

でも、このまま溺れ死んでしまってもいい。彼に抱かれたまま、この愛に溺れてしまいたかった。

「…ごめんな。抱きたい。」

力強い抱擁とは真逆の、消えてしまいそうなか細い声だった。

それがクラウドの頬に、涙と一緒に零れ落ちてきて、答えのかわりに彼の背に腕を回す。

ごめん、ごめんと。

激しい愛撫のむこうで、彼の謝罪が聞こえる。

――もしかすると。

彼が本当に隠したいものは、時間や魔法で癒せる顔の傷ではない。

 

 

…そんな気がした。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「っと、あぶねえ!」

ザックスの腕で抱き留められて、クラウドも慌てて彼の体にすがる。

「クラウド、暴れすぎ。そんなに動くとまたベッドから落ちるぞ。」

「だって…だって…」

「じっとしてらんないぐらい、気持ちいい?」

「いや…!おちんちん、舐めないで……っ!」

 

彼の言葉どおり、身体がいうことをきかぬほどに気持ち良かった。

何度もこの広いベッドからずり落ちてしまいそうなぐらい、よがってしまう。

だって、ザックスがその舌で。

男にとって最大の弱みであるそこを、しつこいぐらいに舐め上げてくるのだから。

ゆるく歯まで立てられて、普段なら絶対口に出来ぬような言葉が出てしまう。

 

「クラウドの口からおちんちんとか、やばいんだけど。そのとろ顔もやばい。どんだけ可愛いんだよ。」

「やあ…口、はなして…いや、でちゃうっ」

「クラウドのミルク飲みたい。出していいよ。」

「やだ…やだやだぁ!」

「そんなにいや?」

「だって…っ、きす、まずくなるもん。」

「…本当、おまえやばいわ。」

 

キスを求めるように両手をのばせば、ようやく彼の口内から解放される。

そしてザックスは覆いかぶさるようにして、今度は優しく口づけを始めた。

「ふあっつ、ん!ふああ!」

キスは優しいのに――クラウドの小ぶりなペニスを握るその手の動きは、荒々しさを増していく。

舌で這うように舐められるのも我慢できないぐらいだったけど、彼の大きな手で強弱をつけて

擦られるのもたまらなく気持いい。

 

くちゅくちゅとクラウドの先走りで濡れた音が部屋中に響いて、自分がいかに淫らかを思い知る。

「クラウド、すっげえ濡れてる。」

そんなの、言われなくてもわかっているのに。

彼のキスを受けて、彼の掌で擦られて。体が悦ばないわけがない。

「いっちゃ…う、もう、」

「うん、イっていいよ。ただし、」

ぞくりと鳥肌が立つ程に、低くセクシーな声で囁かれる。

「――イくときは、俺の名前を呼ぶこと。」

「あん!ふぁん!ざ、」

「うん、クラウド。」

「ざっくす…っ!!」

 

びくん、と体が弓なりに反って、本能に抗えないまま射精した。

クラウドの出したものをその右手で受け止めたザックスは、愛おしそうにそのまま数回擦り上げてくる。

「まって…おれ、イった、から…」

「すっげえ敏感になってる。可愛い。」

ヌチャヌチャとゆるく擦られるだけで、全身に耐えきれぬほどの衝撃が走る。

「やだあ…おちんちん、へんになっちゃう…っ」

「……本当は誘ってんだろ、オマエ。」

 

 

 

このままでは、またザックスに一方的にいかされてしまう。

自分だって、彼にしてあげたいのに。男だし。愛しているのだし。

「まって、まって!おねがい、まって!」

また達しそうになって、必死の思いで彼をとめる。

「なんで?気持ちよくない?…恐い?」

「ちがう…おれも、したいから。ざっくすのこと、きもちよく、したい。」

「え?―――えっ?!」

 

手探りで、彼の腹へと顔を寄せる。

そうしてそのまま、彼の信じられぬほどそそり立った『それ』をわし掴んで、そのまま。

「うわ!クラ、いいって。俺はいいって…!」

「ひもひよく、ないの…?」

「銜えたまま喋るなよ!気持ちいい、気持ちいいけど!無理すんなって、」

「むりらんか、してない…!」

「そ、そんなしゃぶりつかれるとやばい、マジでやばい…っ」

必死で彼の竿に奉仕する。思っていた以上の大きさを誇っていたそれが、

クラウドの小さな口の中でますます体積を増していく。

先走りに濡れた先っぽも、熱した鉄のように固い肉棒も、膨れた両の袋も、

その根元にある茂みでさえも、全てが愛しくて。クラウドはそれを一生懸命、唇や舌で愛撫する。

 

「こら、はなせって…!」

離してやらない。だって、

「く…っ、でる、でちまう、から、」

だって、全て自分のものにしてやりたい。

「……っ!!」

口内に吐き出されたその熱い放流を、少しの戸惑いもなく飲み込んだ。

予想していたよりは、ずっと嫌な味じゃなかった。

自分のものを(彼の唇経由でだが)舐めた時は、あんなに不味いと感じたのに。

 

「ごめん、オマエの口に出して……。もしかして、飲んだ?」

落ち込んだようなその声色に、クラウドは悪戯が成功したような気分で笑ってしまう。

「うん。だって…ザックスだって、前に飲んでたし。」

「あのなぁ…俺はいいんだよ。クラウドのなら汚いわけねえし。でも、俺のは飲んじゃ駄目だろ。」

「なんで?」

「なんでって…そんなの、死ぬほどまずそうだし。」

「別にまずくないよ。」

「まずいだろ。」

「まずくないもん。」

「いやいやまずいって。」

「まずくない!」

それを証明するため、ザックスの肩に腕を回して口づけを強請った。

嫌がるだろうかとも思ったが、彼は当然のように唇を重ねてくれる。

「…やっぱ、クラウドのが美味いな。」

苦い、と苦笑しながらも。精液にまみれた口内を清めるように、何度も舌で舐め上げてくる。

 

彼の膝の上で抱き上げられているからわかる。

一度欲望を吐き出したはずの彼の性器が、再び力強い硬度をもち、

クラウドの小さな尻を押し上げていること。この体を、欲しがってくれていること―――

 

 

 

 

「いれて。」

 

 

 

 

それらしい情緒のある誘い文句も、男が悦びそうな卑猥な言葉もわからない。

ただストレートに、簡潔に、願いを口にしただけなのだが。ザックスにとっては、それで充分だったらしい。

クラウドの体を四つん這いにさせ、余裕のない手つきで尻を掴むと、そのまま両手で割り開いた。

そして、

「…っ!そ、そんなとこまで、な、なめないでいい…っ」

ようやく挿入してもらえるかと思ったのに、ザックスはそこを愛しそうに舐め始めたのだ。

そういえば、初めてレイプされたあのときも――ザックスにそこを舌で弄ばれた。

あの時は、ただクラウドの自尊心を傷つけ、辱めることが目的だと思っていたけれど。

「あっ、あ…っ!あんっ!ぁあっ!」

 

まるで、唇を食むかのような優しく丁寧な愛撫に、みっともない喘声を我慢できない。

恥ずかしい――こんな、きっと醜いだろう尻の穴まで彼に視られて、女のような声を上げて、

もしも彼の気を削いでしまうことになったら。

そんな羞恥や不安も、彼の執拗で巧みな舌遣いを前に、徐々に露散していく。

ぐ、っと舌先で尻穴を割り開かれた時には、必死で耐えていた理性をついに手放した。

「も、いい…から!」

「まだ、駄目だ。」

「いい、もう、舐めなくて、いいから…っ!」

「こんなちっちゃい尻…ちゃんと慣らさねえと、絶対怪我するだろ?」

 

かつて同じことをされた時には、恐ろしくて、気持ちが悪くて、憎くて。そして自分が情けなかった。

でも今は、「愛しているから」こんなことまで出来てしまう彼に、素直に嬉しいとさえ思ってしまう。

「恥ずかしいだろうけど…もうちょっと、我慢な。」

「我慢、出来ない…出来ないよっ」

「我慢、我慢。」

 

 

 

 

「いや!我慢、出来ない……、いれてほし…っ」

 

 

 

 

「…この、ばか!」

だって、はやくザックスに気持ち良くなってほしい。自分だけ愛されているのは嫌だ。

同じぐらい、いやそれ以上に、愛してあげたいから。

「おねがい、ざっくすのすきにして…っ!はやく…!」

「クラウド!!」

後ろから力強く抱きしめられて、その腕を強く握り返す。

「……ほんとに、挿れて、いいの?」

ぴたりと合わさった彼の胸から、ドクドクと激しい鼓動が聞こえる。

返事をしようとしても、唇が震えてうまく言葉にできない。だからただただ、必死で頷いた。

 

「痛くしないから。絶対、オマエに酷いことしないから…。」

クラウドの髪に口元を埋めるようにして、そうザックスが囁く。

別に、いつかのように性急に突っ込んで、好き勝手出し入れしてもいい。

――それでザックスが、気持ち良くなってくれるなら。

けれど、彼はそうしない。人を壊すよりも、人を守ることしか知らないかのように、

その手は優しくクラウドの後肛を撫で上げる。

 

「ん…っ、」

「痛い?」

「へいき、もっと…」

「ん、2本入れてみてもいい?」

慎重すぎるぐらいに。ゆっくりと、指が挿し込まれていく。

「ふ…ん、あっ、んんっ、」

内部を傷つけぬようにと、酷く優しい指先。

けれどそれでも、その指を前後に出し入れされると、やはり苦しくて生理的な涙が滲む。

「ごめん…やめる?別に最後まで出来なくても俺、」

「やめない…!やめないで!」

そう必死で請いながら振り向くと、そこにちょうどあったらしい彼の唇に捕まった。

 

「んんん…っ、は、ん…っ」

「クラの中…すっげえ、柔らかいのな。ちょっと力いれたら、突き破っちゃいそう…」

「ん、あ…、あっ、」

「こんな狭いのに、俺、あのとき無理やり突っ込んで…本当ごめんな。」

「…ふ、んんっ、だまって…っ、」

「こことか、クラの腹のどのへんなのかな?ここ、可愛いおちんちんの裏のあたり?」

「ひぃ…っ!あ、なんか、へん…っそこ、さわっちゃ、だめ!だめ…っ!」

「ここ?ここグイグイされるの、好き?」

「はぁん!だめ、だめぇ…っ!」

深く挿れられたザックスの2本の指が、ある一点を押し上げる度に、たまらなく全身に甘い痺れが走る。

シーツに顔を押し付けたまま、首を左右に振り乱して、その与えられる刺激から逃れようともがいた。

――が、ザックスが逃してくれるわけがない。

 

「やあん!だめ…!死んじゃう…っ!!」

「指だけでそんな蕩けてたらさ、ここに俺のおちんちん挿れちゃったら…どーなんの?」

露骨な言葉に、全身が総毛だった。

やっと、ザックスとひとつになれる――

きっとそれはあの日のように、身を裂かれる痛みを伴うだろうけれども、それすらも幸福だと思った。

痛くてもいい。壊れたっていい。…この人になら、きっと殺されたって構わない。

 

 

ぐり…っ、と、熱い切っ先が宛がわれた。

 

 

尻をザックスに向かって持ち上げ、彼が貫き易いようにと力を抜く自分は、なんて浅ましいのだろうか。

けれど、誰に軽蔑されたっていい。

これが非生産的で、背徳的で、家族を裏切る行為だとしても。それでも。

 

 

 

 

 

ザックスと同じになれる。もう独りだなんて言わせない―――

 

 

 

 

 


 

 

 

ドンドン!

「ひっ?!」

時計の秒針さえも聞こえぬ、静寂の中。

その二人きりの世界を破ったのは、部屋のドアを乱暴に叩く音だった。

相変わらず何も見えぬ視界で、しかも互いに衣服を身に着けていない。

あまりに無防備な状況では、人の心理上臆病になってしまうのは仕方がないもので、

思わず肩を震わせた。それをザックスは「大丈夫、レノだよ。」と言いながら、肩を撫でてくれる。

 

「ザックス、邪魔して悪いんだぞ、と。」

ドアの外から呼びかけてきたのは、ザックスの言うとおりレノだった。

「ほんとだよ。今、マジでいいとこだったんだけど。……なんかあったか。」

「今、服着てるか?お前じゃなくて、クラウド。」

「着てない。」

「じゃあ、さっさと着せてやれ。そんでベッドの中か、クローゼットに隠しとくんだぞ、と。」

「…………………ああ。わかった。」

 

ザックスの体温が遠ざかる。そしてそのまま、柔らかいセーターを頭からかぶせられた。

「…ザックス?どうしたの…?」

「ん、大丈夫だから、クラウドは心配すんな。冷えるからパンツも履いて。あ、自分で履ける?」

下着やボトムと思しき布を渡されて、言われるがままそれを身に着けると、

ザックスも衣服を着ているようで衣擦れの音が聞こえる。

 

「念のため、クローゼットに入ってほしい。寒いかもしれないから、毛布いっぱい持って行って。」

「…どういうこと?」

「大丈夫、すぐ戻るから。」

「ザックス!!」

答えになっていない。責めるようにザックスの名を呼ぶと、代わりにレノが扉の向こう側から応えた。

 

 

 

 

「人間だぞ、と。」

 

 

 

 

「………人間?」

「人間の気配がする。ザックスはお前に夢中で気付かなかったみたいだが――今は、わかるだろ?」

「…ああ、そうみたいだな。」

それは、クラウド以外の誰か人間≠ェ、この城に侵入したということだろうか。

 

「ザックス。俺が追い出してくるか?」

「いや、俺が行く。村の連中か、賞金稼ぎか……どのみち、用があるのは俺だろ。」

ザックスの声が離れていく、それが怖かった。

相手が何者かはわからない。けれど、何者であれザックスの味方ではないはずだ。

「ザックス、俺もいく…。邪魔は絶対、しないから。」

「クラウド。いい子だから。ここで待ってて?」

「やだ…!だって、もしザックスが、」

もしもザックスの身に、何かあったら。

 

 

 

「わかってる。もうオマエが悲しむことはしない。………誰も、殺したりしないよ。」

 

 

 

違う――本当は、言いたいことはそうではなかった。

「もう絶対に、ひとを殺さない。」だから安心しろと、ザックスはそう繰り返す。

けれどクラウドにとっては、むしろそれが恐かったのだ。

そのザックスの優しさこそが、彼の身を危険に及ぼすのではないかと、漠然と予感がしたから。

 

「俺も行く。駄目だって言われても…勝手に付いていく。」

「おいクラウド、」

「ザックス。こいつ、きっと頑固者だぞと。縛るなりしないと、絶対付いてくるぞ、と。」

「クラウドを縛れるわけねえだろ。」

「じゃあ―――連れていくしかないんだぞ、と。」

ザックスは小さな溜息をついたものの、「レノから離れるなよ」と了承した。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「お前は誰だ。何をしている。――――人間の女。」

 

 

いつの日か聞いたザックスの冷たい声が、エントランスホールに響いた。

螺旋階段の上の踊り場から、階下を見下ろすと、薄暗いエントランスに人影が見える。

白のマントは女性もので、そのシルエットは華奢だ。ザックスの言うとおり、女性なのだとわかる。

 

「あ、あ、あなたが…や、野獣…、なの?」

 

返ってくるのは、震えた少女の声。

よく知るその声に――クラウドは、耳を疑った。まさか、

「質問しているのは俺だ。何をしているかと聞いている。」

いったいどうして、彼女がここにいるのか?

「わ、私は……あ、あなたの……………」

少女の言葉は、次第に泣き声に変わる。

不安を煽るような闇と、青く光る「野獣」の眼に怯えているのだろう。

ザックスが、鼻で哂った。

 

 

 

「そうか。お前も、生贄――か。」

 

 

 

少女――クラウドの幼馴染であるティファは、わあっと声を上げて泣きだした。

「………っ、いや、わたし…わたしは…っ」

「どうせその女も、村の連中に売られたんだろ。勝手なやつらだぞ、と。」

レノは少女への同情というよりも、村の人々への侮蔑の感情を露わにしている。

15歳、まだ大人とはいえない初心な少女を、生贄として差し出すなど――

それが信仰故だとしても、たしかに、残酷な行為だ。

 

 

 

 

「せっかくだけど。アンタ、俺のタイプじゃねえから。帰って。」

 

 

 

 

身勝手に差し出された『生贄』の存在に、ザックスは憤るか、あるいは傷つくかと思っていたけれど。

クラウドが予想していたよりも、彼ははるかに軽い口調でそう言った。

「た、タイプじゃないって……なに?なに言ってるの?」

「だから、アンタじゃ勃たねえんだって言ってんの。意味、わかるだろ?」

「……!」

「俺が人喰いじゃないってことぐらい、アンタもわかっているはずだ。

アンタは村のやつらに、俺に足を開いてご機嫌取りしてこいって―――そう言われてんだろ?」

「…っ、…………はい…。」

 

 

「くだらねえ。」

 

 

「いくら俺の機嫌をとったって、村の病は治らない。」

「でも…でもっ、パパが、パパが病気になって……!私にあなたの相手をしろって、みんな言うの!

わたし、このまま帰ったら…、きっと、酷い目にあう!」

「だろうな。」

生贄が役目を投げ出して、無事に帰還するなど…謀反でしかない。

クラウドとて同じ立場であったからわかる。家族にさえ危険が及ぶかもしれない。

だから、安易には帰れないのだ。

 

「お前が殺されようと犯されようと、興味ねえよ。消えろ。」

 

「でも…!あなたなら、病気を治せるんでしょう?みんな言ってるわ、野獣のかけた呪いは、

野獣にしか解けない…だから、あなたの怒りを鎮めるしかないんだって!」

ティファは感情的に、そう叫んだ。

それは、野獣に助けを求めているのか、恨みをぶつけているのか――

「どうして、そんな酷いことをするの?村のみんなが…父さんが、クラウドが!何をしたっていうのよ!

人の命を奪って平気でいられるなんて…やっぱりあなたは、皆が言うとおりの、」

「ティファ!」

思わず、彼女の言葉を制止してしまう。

それ以上、彼女に酷い言葉を言ってほしくない。ザックスに傷ついてほしくない。

 

 

 

「違う、ティファ。村の病気は、ザックスのせいじゃない。」

 

 

 

踊り場から身を乗り出して、ティファに話しかける。

こちらは暗闇であるから、彼女から姿は見えていないだろう。でも、気付いたはずだ。

この声の主が、本来であればこの世に生きていないはずの、人物であることを。

 

「…その声…クラウドなの?!」

「うん、俺だよ。」

「無事なの?野獣のところに、生贄にいったから…私てっきり…っ」

「ザックスが、助けてくれたんだ。」

「だれ?…野獣?」

「ザックス、だよ。ティファ。そう呼んであげて欲しい。」

「……。」

彼女は戸惑いを隠せぬようだったけれど、クラウドが生きている事実には喜びを見せる。

 

「…じゃあ、村の病気は、いったいなに?どうしたら治るの?」

昔から、クラウドのことを疑わない素直な幼馴染だった。

クラウドがそう言うならばと、彼女は受け入れる。

「…たぶん、目に見えない『ウィルス』が原因なんだ。誰かの力じゃない。」

あくまで、それはクラウドの導き出した結論に過ぎないけれど、きっと、そうなのだろう。

いつだったかザックスが教えてくれたように…目に見えないウィルスが人を蝕んだ結果なのではないか。

「ウィルス?聞いたことないわ。」

 

 

 

 

「ペスト―――だと、俺は思う。…そうだよな?ザックス。」

 

 

 

 

「ああ」小さくザックスは頷いた。

「ここの書斎で調べたんだ。もともとネズミの病気で、その血を吸ったノミが人間を刺すと感染する。

ペスト菌が血液とともに体中をめぐって皮下出血をおこし、黒い痣のような腫れが全身を覆う…

他にも高熱、嘔吐、下痢、めまい、幻覚…ニックの症状と当てはまる。」

正解か不正解かを求めるように、ザックスを窺えば。

彼はそれらを肯定した上で、症状を淀みなく付け加えた。

 

「正確には、肺ペストでも腺ペストでもない。変異種の心房ペストだろう。――なんといっても

致死率が極めて高い。それに感染率も高い。接触感染・経口感染で、体内に菌が入れば

ものの数時間で発症する。3日で全身に皮下出血による黒斑が出る。5日で皮膚が死滅する。

治療をしなければ、96%の確率で7日以内に死に至る。」

7日?!ど、どうしたら治るの?!」

ティファの問いに、クラウドもザックスを見上げた。

病気の正体はわかっても、どうしたら治るのか――それは、クラウドもわからない。

知っているのは、きっとこの場で、医療に最も精通しているザックスだけ。おそらくは。

 

「本来なら、抗菌薬治療――が望ましい。でも、そんなもの俺には精製できない。

それこそ、ミッドガルにでも行かないと治療は出来ないだろ。まあミッドガルに行っても境門入る前に

隔離されて、病原として処刑されるのがオチだけどな。あそこはそういう国だ。」

「あ、あなた…お医者様なの?!だったら、他にパパを治す方法、」

ティファは、そう縋る。クラウドが生きていたことで、彼への恐怖が幾分無くなった様だった。

 

 

 

 

「治す方法はある。でも、俺は治さない。人間を助けることは――もう、しない。」

 

 

 

 

「どうして…?!治せるかもしれないんでしょ?それなのに、見棄てるなら…助けようともしないなら、

そんなの人間のすることじゃないわ!そんなの、そんなのは」

「ティファ、」

「――本当に化け物じゃない!」

「ティファ!!」

 

本来であれば、クラウドはティファの肩を持つべきだった。

自分とて、村の為、家族の為にここへ赴き、彼に助けて欲しいと懇願したのだから。

けれど、本当は――もう、気付いている。

 

 

 

 

 

「ティファ。ザックスは…助けないんじゃない。助けられないんだ。」

 

 

 

 

 

相手を「治したい」と思えなければ、魔法は発動しない。

これまでの偉業を成し遂げてきた名医たちが、古から存在する魔法医療に限界を感じ、

科学での医療研究に舵を変えてきたのは、おそらくそこに起因している。

「魔法医療の限界」――それは、人間の、人間らしさにあるのだ。

 

ひとは、慈しむことが出来る。そして、憎むことも出来る。

 

酷い仕打ちを受け、両親を惨殺され、命を追われ。

人として扱われることなど無く、化け物として畏れられ、孤独の中に生きてきた。

 

 

 

 

そんな人々をもう、彼は愛せない。だから、魔法が発動しない。

 

 

 

 

人間たちは、自らが犯してきた罪の報復を、今、その身に受け入れる時なのだ。

「………………化け物で、ごめんな。」

ひとを愛せぬその野獣は、まるで彼自身が一番その事実に苦しむかのように。

そう一言、懺悔した。

 

 

 

 

愛しい、俺の野獣――

 

ひとを救えなくて辛いと、貴方は言う。

ひとを愛せなくて悲しいと、貴方は言う。

 

俺は、生きていれば

汚れない人間なんていないと思うから

 

涙や血にまみれた貴方は

誰よりも人間らしい。

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (2014.04.20

説明くさくてすみません、寸止めえっちすみません。

 

 

 

 


 

 

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