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ご注意:

おふざけ駄文ですみません…

ブログにUPしようかと思ったのですが、長いのでサイトに載せてしまいました。

 

 

これは、2.14事件に関する

とあるソルジャーの考察である。

 

 

戦争――

歴史は繰り返す、とはよく言ったもので。

人々は奪い合い、傷つけあい、争いを繰り返す。

国益のため、正義のため、宗教の相違…何かを手にするために、他者の何かを搾取する。

 

今も、世界のどこかでそれは起きている。

 

それと関係ないといえば全く関係ないのだが、その日、神羅軍内部において大きな「内乱」が起きた。

後に人々はこれを、『2.14事件』と呼ぶ。

そう、それは214日…世間でいうところの聖バレンタインデー=B

その日は、終日、軍内部が不穏な空気に包まれていた。

 

勘のいい諸君達なら、この違和感に気が付いただろうか――

彼らが、その手に「所持しているもの」はいったい何か。

 

警備中の兵士も、訓練中のソルジャーも、高級スーツを身に着けた上層部の者でさえ、

その手には紙袋を持っていたり、尻ポケットが膨らんでいたり、胸ポケットに花をさしたりしている。

眼は血走り、呼吸は荒く、何かをぶつぶつと呟く男たち…

まるで呪文のように(いや呪詛とでもいうべきか)繰り返されるその言葉は、ある一般兵の名前――

 

「クラウド」の名前である。

 

 

 

 


 

 

「うわ!どいつもこいつも、目がいっちゃってんな…」

 

ソルジャー専用の執務室。

超薄型のノートパソコンには、社内の様子がなかなか高い解像度で映し出されている。

コーヒーを片手にそれを眺めながら、思わず肩を竦めた。

 

214日午後未明。

軍内の独身男たちが(中には既婚者もいるようだが)血眼になって探しているのは、

たった一人の少年兵だった。

入隊してわずか2日で、ファンクラブが結成されてしまった異例の一般兵。

それは、他でもなく――

 

「おっと、クラウド発見。」

 

軍内の防犯システムにハッキングして(俺の真似するなよ?上にばれれば減給モノだ。)

ビル内のカメラ映像を確認していたら、ようやく件のチョコボ頭を見つけた。

どうやら彼――クラウドは、終日エアポートの警備だったようで、たった今内勤が終わったところのようだ。

誰もいないロッカールームでメットを外し、軍服を脱ぎ始める。

さっきからなかなか見つからないと思っていたら、ずっとメットを被っていたらしい。

メットを被っている兵士は皆一様に見える。

その中から、彼を即座に見つけることが出来るのは、犬みたいに鼻が利く俺の親友ぐらいだろう。

 

「いかんいかん、ストリップショーじゃあるまいし。」

 

さすがに、着替えを覗くのはよくない。

クラウドの生着替え…そりゃあ、男として全く興味ないわけじゃない。

だけど、覗きやら痴漢やらは、男としてあまりに情けない行為だ。

それに、こんなことがばれたら、あいつに殺されるし…。

 

端末の電源を切ろうとしたその時、思わず手が止まった。

カメラに映し出された彼が、自身のロッカーを開けた瞬間。

数えきれないほど大量の包みや箱――

色とりどり、大小さまざまなそれが、そのロッカーから溢れて落ちていく。

みんな考えることは一緒。

直接彼に「それ」を渡す勇気のないやつらが、彼のロッカーに『例のブツ』をぶちこんでいったのだ。

 

つまりは、バレンタインの『チョコレート』(メッセージカード含む)。

 

「すっげえ、まるで二次元だな…」

学園の王子様(生徒会長とかw)の下駄箱を開けたら、ドサドサっと大量のチョコレートが

あふれ出て…っていう、少女漫画なんかにありがちなシチュエーション。

それが実際に起きているのだから、これは驚きだ。

しかもこれらの送り主は、みんな男であるはず。(ロッカールームは女子禁制だ。)

 

そう、朝からずっと、軍内の男どもが目を血走らせていたのは。

今をときめくアイドルこと、クラウド・ストライフ2等兵に――

チョコレートやプレゼントを渡し、そうして想いを遂げたいという野望故だった。

 

ロッカーに詰め込まれたものや床に散らばったもの。

それら大量のチョコレートを前に、クラウドはたっぷり1分間は固まっていた。

いったいどうしてそんなものが自分のロッカーに入っているのか…おそらく、彼はわかっていないのだろう。

周りを見渡して誰かに助けを求めてみても、あいにくロッカールームにはクラウド一人だけ。

誰も、このプレゼントの山の意味を教えてはくれない。

 

しばらく悩んだ後、結局そのプレゼントの山を散らかしたままにするわけにもいかず、

適当な紙袋に乱暴に詰めこんで片付け始める。

困った顔をしていても、もともとの性格が律儀で真面目なのだろう。

 

「でも、あいつが煩そうだなぁ…」

 

こんな大量のプレゼント、自宅に持って帰ろうものなら…

一緒に住んでいるルームメイト兼「彼の恋人」は、心中穏やかではないはず。

普段は蚊にさされようと、敵にサンダー当てられようと、女の子にビンタされようと

あっけらかんとしている鈍い男だけど、クラウドのことになるとそうはいかない。

ちょっと目を離したすきにクラウドがナンパされてただの、

道端で知らない男が彼のこと見てきて視姦したただの、

犬が彼の脚にまとわりついて腰を振っただの…そんなことでいちいち大騒ぎしている。

 

つまり、クラウドに心底惚れているのだ。

俺の腐れ縁であり、この子の恋人である―――ザックスは。

 

クラウドも、鬱陶しいほど一直線な恋人を持ったせいで、きっと苦労していることだろう。

おそらくは今夜も…そのチョコレートの山に嫉妬して、キャンキャン吠える犬に頭を抱えるはず。

入隊当時はクールビューティーと騒がれていたクラウドだけど、ザックスの前では表情が豊かになる。

呆れたり、困ったり、怒ったり、照れたり、そうして、笑ったり…

それはこれまでの無表情よりも(すました顔も可愛いけどね)ずっとずっと可愛い。

とくにはにかんで笑った顔は、俺でさえもぐらついてしまったぐらいに愛らしい。

(あ、ザックスには言うなよ?煩いから!)

 

クラウドとザックスが付き合い始めてから1月と少ししか経っていないが、

彼の表情が以前と大きく変わってきたことで、周囲の反応もまた変化してきている。

 

つまり、クラウドの笑顔が増えたことで。

それが不幸してというのか、ここ最近、ますます彼の人気が急上昇している。

…これまで以上に、野郎どもにモテているのだ。

 

俺の個人的統計によると、この一か月でクラウドが男に告白されたのは33人だ。

ちなみに、その統計はメールや電話が13人、手紙が4人、直接告ってきたのが12人。

襲い掛かってきたのが3人、いきなりコートを広げて下半身を見せてきた変態が1人だ。

 

あ、その話題をすれば。

今もまた、どっかの男がクラウドに言い寄っている。

帰宅前――資料室で趣味の読書をしているらしい彼に、

何かプレゼントらしいものを差し出す男を発見。

人気のない埃臭い資料室…

場所が場所なだけに、危ないことにならないかと警戒してカメラの映像を見る。

 

音声までは拾えないけど。唇の動きだけでも、ある程度の会話はわかる。

言い寄ってくる短髪の男は「初めて見たときから可愛いと思ってたんだ。」とかそんな告白をして

手に持っていたプレゼントと思しき瓶を渡す。

それをクラウドは困る、俺は男だと拒絶するが、男はしつこくその瓶をクラウドに押し付ける。

「俺の全てをこれに詰めたんだ。貰ってくれるまで離さない。」と食い下がる男――

 

男の目つきはかなりやばい。

捕まれたクラウドの白い腕が、痣になるのではというほどの力だった。

おそらく体格から察するに、その男はソルジャーだ。

これは、助けにいかないとまずくないか?

そう思うものの、俺のいる執務室から資料室まではかなりの距離。

近くにいる警備兵に無線で知らせるべきか――

いや警備兵じゃ、上官であるソルジャー相手に何もできやしない。

 

息を呑んだその時、男がクラウドから離れた。

そうして大人しく扉から出ていく。

どうやら、クラウドが渋々そのプレゼントを受け取ったことで、男の本懐は遂げられたらしい。

それ以上のことには発展しなかったようだ。

 

やっぱり律儀なクラウドは、それを捨てることもできずに、紙袋にしまう。

とりあえず、大事にいたらず良かったけど。

「…でも、なんだ?あのプレゼントは?」

カメラごしだと詳しくはわからないが、チョコレートではない。

ジャムやお菓子などが入った瓶か、薬品の瓶のように見える。

 

 

 

あの男の追い詰められた目。

なんだか、嫌な予感がする。

 

…その直感が間違いではなかったことを、数時間後に俺は知ることになるのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 

今は生活の中あらゆるところに、コンピュータ技術が使われている。

監視カメラや衛星カメラだけじゃない、あらゆるコンピュータの電子回線を利用(ハッキング)して、

映像情報や音声情報を得ることが可能。

言っておくけど、これは覗き行為なんかじゃない。

可愛い後輩であり、親友の恋人であるクラウドの安全のために、

ちょっと老婆心でことの行く末を見守ってあげている、それだけのことだ。

他意はないぞ、誓って。

 

そう、今俺が自室のノートパソコンから見ているのは――

彼らの住むマンションの一室、リビングの様子。

「クラウド、今日何かあった?眉間にしわ寄ってるぞ。」

「別に…何も。」

「嘘つけ。可愛い顔が台無しだぞ。ほら、笑って!」

そう言って、じゃれるようにソファの上で飼い主にじゃれる大型犬。

 

「…ちょっと…や、くすぐった…あはは!やめろって!」

クラウドも悪くないって顔。

やっぱり外とは違って、家の中では恋人にだいぶ甘いらしい。

「で、何があったの?話してよ。」

ちゃっかりクラウドの膝枕をゲットしたザックスが、彼を見上げながら再度尋ねる。

優しく笑うザックスについに折れたのか、クラウドはぼそりと呟いた。

 

「……また、むさい野郎に迫られて……」

 

「またかっ?!そいつ誰?なんかされなかった??」

クラウドは、一般兵といえど優秀な兵士だ。そこらの男なんて、簡単にのしてしまう。

だけど、ザックスとしては気が気じゃないのだろう。

彼の体に異変がないか、上から下まで確認する。

その視線が気恥ずかしいのか、クラウドは「見んな」と言って、ザックスの顔にクッションを押しつける。

 

「別に、何もされてないよ。ただ、今日は変なプレゼント、いっぱい押し付けられてさ、」

「それって、チョコレートか?!」

 

がばりと起き上がったザックスが、面白いぐらい慌てている。

「…うん。なんでわかるの?」

「なんでって、今日バレンタインじゃん!そりゃオマエのことだから、ちょっとは貰ったかなって

思ってたけど…」

「『バレンタイン』?何それ?」

「え?知らないで貰ってきたのか?!」

 

ニブルヘイムから出てきて1年にも満たないクラウドは、バレンタインの慣習を知らないらしい。

「バレンタインっていうのは、大好きな子に、チョコとかプレゼント渡すの。そういう日。」

「は?!好きな子????」

「ちなみに、クラは何個もらった?」

「わかんない。……100はない…と思うけど…」

たしかにあの後も、クラウドは何十人もの男に捕まってチョコを渡されていた。

部屋に直接宅配便で送られたものもある。

「げ!俺より貰ってんじゃん!だめ!全部没収!!」

 

そう言って騒ぐザックスは、プレゼントの山を広げて中身をチェックし始める。

おそらく目立つやつには、後で制裁を与えるつもりなのだろう。

プレゼントの内容は、チョコレートがほとんどではあるけれど、他にもいろいろあるようだ。

テディベアのぬいぐるみや、フラワーブーケ。

チョコボの目覚まし時計だとか、マニーマウスのマグカップだとか、そんな手軽なものから。

逆に老舗ブランドの食器、アクセサリー、高級腕時計なんていう高価なものもある。

しまいには、スポーツカーのキーなどというとんでもない物まで。

それに――

 

「なにこれ?女の子のし、下着じゃん!」

ザックスが広げた総レースのランジェリー(色は黒だ。センスはなかなか悪くない。)を見て、

クラウドは目を白黒させる。

下着だけじゃなく、コスプレ用のセーラーやミニスカポリス、バニーガールの衣装なんていうのもあって、

まったく男という生き物の愚かしさに溜息が出てくる。

 

「………これ、クラウドがつけたら絶対可愛いよな。」

 

ふわふわのウサ耳を手に、真顔でウサ耳クラウドを妄想するザックスに、二度目の溜息が出る。

男って、本当愚かな生き物だ。

…俺もちょっと、クラウドにそのウサ耳つけてほしいなぁなんて思っちゃったし。

 

 

 

 

 


 

鼻の下をのばしていたザックスの目つきが、瞬間変化する。

 

その視線の先には、クラウドの手の中――透明なジャムの小ビン。

内勤の後、資料室でクラウドが押し付けられた例のものだ。

 

どうやら、それは「白いジャム」。

ただし、ただのジャムじゃない。

これはまさか…

 

「ク、クラウドッ!これ誰に貰ったんだ!こんなひどいもん!」

ザックスがそう叫ぶのも無理はない。

「え?なに?このジャムって、そんなにまずいの?…知らない男が、鼻息荒くしながら

 渡してきたんだよ。」

「捨ててきなさい!いや、俺が捨てるから、よこしなさい!」

クラウドがあまりに無知なもんだから、ザックスはまるで母親みたいな言い方になる。

だって、それはどう見たって、

 

「それ、恐怖の白ジャムだろ!!!」

 

恐怖の白ジャム――それは、数年前にニュースで話題になったジャム。

某清純派アイドルに想いを寄せる、いわゆる「ストーカー」と呼ばれる男が、

自家製の白ジャムを贈りつけたという事件があった。自家製、つまりは男の手作り。

その白ジャムの成分は、いわずもがな…その、つまり、

 

「なにそれ?何で恐怖≠ネの?」

「だから、それは…あれ、なんだよ!」

 

わからない、という風に小首をかしげて、そのビンを覗き込む。

その仕草は猛烈に可愛いんだけど、ザックスとしては許せることじゃない。

「よこせ!そんなもん、目が腐るから見るな!」

「え?目に悪いの?」

などと見当違いのことを言っている。なにこの子の天然っぷり、可愛い。

 

「なに?中身なんなの?」

「だから、あれ、だって…」

さすがに、はっきりと教えるのも憚られるようで、どうしても言葉を濁してしまう。

たしかにクラウドが知ったら、ショックを受けるだろう。男にこんなものを贈られたなんて…

 

「教えてよ。」

「……うん、えと、その…やっぱり、今度な。」

「教えてくれないなら、明日のザックスの朝食のパンに、これ塗ってやる。」

「ひいいいいい!それだけは勘弁して!!」

「だったら、教えろ!」

 

ずずいと迫ってくるクラウドに、それでも頑なに口を閉じるザックス。

だがそれも、クラウドの一言で、あっというまに陥落することになった。

 

 

 

ザックス…意地悪しないでよ……。」(うるうるお目目!!!)

 

 

 

可愛い可愛い可愛い!意地悪なんか、絶対しません!と、尻尾を振る犬のように。

白ジャムを奪って生ゴミいれに投げこむと、ザックスはクラウドの腰を抱き寄せる。

うお!こうしてみると、クラウドって恐ろしく細い腰だな…

ザックスの両手の平だけで、一周出来てしまいそうだ。

 

「あれ、クラウドの嫌いなもの。」

「え?」

「俺がそれ飲んだ後、クラウドにチューすると、いやいやする。」

「…え」

「そんなの飲むなって、いつもぽかぽか殴ってくる。」

「……」

「俺のは、クラウドが飲んでくれるのにな?まあ、下のお口でだけ」

「うわあああああああああああああ!!!」

 

クラウドが、悲鳴に近い声をあげる。

ザックス…もう少しデリカシーのある言い方はないのか?

相も変わらず空気の読めないこの男に、俺は3度目の溜息をついた。

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (2012213

クラウドは神羅のアイドルだったと信じて疑わない。

 

 

 

 


 

 

 

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