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★ドンの屋敷でお嫁さんを探していたのが、コルネオじゃなくてザックスだったら

…という、ウンチみたいな妄想です。アホが住む土地ですね!

 

 

ドン・ザックスの館

〜お嫁さん探し〜

 

 

言っておくけど、不本意なんだ。

女装なんて。

 

 

「この骨太のおなごだ!」

 

そう、ドンと呼ばれる男に指をさされたとき。頭の中が、真っ白になった。

――だって、そうだろ?

 

ピンクのAラインドレスを着たエアリスは、フェミニンな可愛らしさがあって、とても愛らしい。

青いマーメイドドレスを着たティファは、その豊満なスタイルが存分に生きていて、健康的な美人だ。

二人とも、どちらとも選べない魅力がある。

男として、なんとも贅沢な選択だ。

 

それなのに、よりにもよって。

 

いったい、何を血迷ったのか。その男は、俺を選んだ。

その男――『ドン』の噂は、この館に潜入する前から、さんざん聞いていた。

ウォールマーケットを中心とするここらの市場を仕切る地主、ドンは女好きで有名で、

幾人もの女を囲っているのだという。

高級娼婦だったり、血統書つきのお嬢様だったり。

そんなドンは女の趣味にうるさく、周りが結婚相手を見つけるよう進言しても

なかなかその眼鏡に叶う相手がいないのだとか。

 

そんな、最低な男の噂

 

 

 

 

 

金髪のオマエ。オマエだって!違う、そっちの黒髪の子じゃなくて…オマエ!」

てっきり、ティファが選ばれるのだと思っていた。

男であるならば、巨乳がいいだろう。ないよりは、ある方がいい。

当然、俺の胸にはパットが詰められているけど、Aカップ仕様だ。

女装を手伝ってくれたエアリスが、「私より大きいのは、だめ。悔しくなる。」とかいう

理由で、小さめのパットを入れたのだ。

…女の子って、よくわからない。いや、今はそんなことより。

 

「おれ…いえ、わたし、ですか?」

「そう!名前、なんてーの?」

「クラウ…ディアです。」

 

ドンは、俺の髪(ウイッグだけど)を耳にかけて、顔を覗いてくる。

げげげ!まずい!

こんな間近で見られたら、さすがに男だとばれるんじゃないだろうか。

 

「睫毛、すっげー長え…これって、付けマツゲってやつ?」

「いえ…天然、です。」

実は、マスカラ(っていうんだろ?あの液体)も塗ってない。

金色のマスカラは手に入らなかったから、ビューラー(っていうんだっけ?)で上げただけだ。

 

「派手な見た目に見えるけど、こうして近くで見るとさ、化粧ほとんどしてないんだな。」

実はリップメイクと、薄いピンクのチークを入れただけだ。

どこまでもジロジロと見てくる男の視線に、さすがに耐えられなくて、

思わずぎゅっと目をつぶる。

「そういうとこも、天然なの?」

「…え?」

そっと目を開けて男を見上げると、男が何でか頬を染めている。

 

 

「すっげータイプ!クラウディア!オマエ、俺のお嫁さんな!」

余命?

よめ?

…嫁?!

 

 

――これは悪い夢だ!

 

 

 

 

 

 

そもそも、何でこんなみっともない女装をして、ドンの屋敷にいるのかといえば。

神羅の情報収集の目的で、この組織に潜入した…向こう見ずのティファを助け出すために、

このドン・ザックスの屋敷へとやってきたわけだ。

女装をして、ドンの「嫁候補」として。

…そこまでは、良かった。

 

あくまで、俺の計画では。

たぶん巨乳のティファあたりが選ばれて、俺は警備兵や手下どもをぶち倒し、神羅の情報を聞き出す。

ティファは、大きい声じゃいえないけど、俺でも恐いと思うほどの強さだ。

スケベ男で有名な金持ち親父ひとりなんて、一撃でのしてしまうだろう。

そう、思っていたのに。

 

想定外だった。

まさかドンと呼ばれる男が、こんなに年若くて、戦闘向きの男だったなんて。

ドンは、20代半ばの、長身で引き締まった体躯――

それは、男の俺が羨ましいと思うほどの戦士のそれだった。

 

エアリス的にいえば、

「昔の自分だったら、好きになってたかも。今は、もっと放っておけないタイプがいいの。」

ティファ的にいえば、

「論外!いかにも遊んでそうじゃない。私は、もっとうじうじタイプが好きだから。」

――とのことだ。

でも、二人の言う理想のタイプって、おかしくないか?

そんな『放っておけない』『うじうじ』した男なんて、俺だったらなりたいとも思わないけど。

…なんだ、この親近感?

どこかでそういう男、いなかったかな。

 

 

 

 


 

 

「や…待て!じゃなかった、待ってください!」

「待てねえよ。せっかくの初夜だぜ?クラウディアちゃん。」

この…エロおやじ!

 

俺が選ばれてしまった、その夜。

ドンの寝室に呼ばれて、今まさに…いかがわしい行為が行われようとしていた。

もちろん、貞操を捧げるつもりなんかない!

情報を聞き出したら、こいつの息子をちょんぎって、犬の餌にしてやる。

 

「待って…焦っちゃ、ダメ。少し、お話しない?」

 

さんざんエアリスと練習をした、リミット技。上目遣い!

これで落ちない男はいない、とエアリスが言っていた。

女の子って、いろいろ知ってるんだな。

 

「う…くそ、かっわいいな…!」

男が赤くなる。こいつ、アホ男だ。もう一押し!

「ね、お願い。夜は、長いんだから…ね?」

男は、髪をがしがしとかいて、目を泳がせる。

耳まで、真っ赤。いったい、どこまで想像してるんだ?

 

男は緩めていたバスローブの紐を縛りなおし、ベッドサイドに腰をかける。

そしてそのまま、俺の肩を抱き寄せる。

「いいよ、わかった。話、しよっか。」

やった!なんか距離が近すぎる気がしなくもないけど。

これで神羅の情報を聞き出せる。

そんでもって話を聞きだした後は、こいつをメタメタにぶん殴って…

 

「クラウディアちゃんはさーどんな男が好み?どんなとこ、デートいきたい?

「は?」

 

男の仕草で、ドキっとするとことかある?

「ちょ、」

 

「ちなみに、今までの経験人数は?

「ちょっと、」

 

「まさか処女とか…言わないよな、こんな可愛いんだもんなーくっそー」

「おいまて、」

 

好きなエッチの体位とかある?

「はあああ?!」

 

「ちなみに俺、けっこう自信あるから!そのへんは安心して!」

「いいかげんに」

 

しろ、と言おうとした瞬間。腕をひかれて、ベッドに押し倒された。

何がおきているのか、理解できないまま――

男の顔が近づいてきて。あろうことか、唇を奪われそうになる。

それを、とっさに顔を背けてかわす。

「や!やだ!はじめて、なのに…!」

ファーストキスなのに、男となんて冗談じゃない!

 

「え??初めて?キス、したことないの?」

「……!なんだよ、ばかにしてんのか…!」

同じ男として、小馬鹿にされた気がして。怒りを覚えた。

相手の男は、俺を女だと勘違いをしているわけだけど…。

でも、これは男の沽券に関わる、重要な問題なんだ。

 

「なんだ、じゃあ、もしかして。エッチもまだ?」

「あ、当たり前…!」

そんなもの、単語を聞くのでさえ恥ずかしい。

女の子とキスだってしたことないのに、それ以上なんて想像も出来ない。

可愛い!可愛い可愛い!オマエのこと、すっげえ大事にする!」

そう言いながら、男が再度、唇を重ねようとしてくる。

 

 

「ちょっと、待って!その前に、神羅のこと、教えて、よ…!」

 

 

思わず、本題を口にしていた。

まずい、露骨すぎたか?!

「神羅?さあ、昔タークスのヤツと、女の子ナンパしてたぐらいで。あんま知らないし。」

「え…?」

「あ!でも、大丈夫!これからは、ナンパなんて絶対しない!クラのことしか見ないから!」

いつのまにかクラとか親しげに呼ばれてるし。いや、そんなことじゃなくて、

「いや、そういうことじゃなくて…神羅と、繋がってる、んじゃ…?」

すごく、嫌な予感。もしかしなくとも、この男と神羅って…。

「ああ、引退した親父がさー、なんか神羅のお偉いさんと悪い取引してたみたいなんだけど。

その親父も、病気で引退してさ。今は、神羅とはまったく。」

 

おいおいおいおい!

 

ちょっと待て!じゃあ俺は何のために、みっともない女装をして。

何のために、このドンに食われそうになってるんだ。

え?食われ…?

 

「いただきます!」

「や…だめ!やめ…て!ドン、やめてくださ…」

 

男の大きい手が、ドレスの中に入ってきて、下着に触れる。

やばい、それ以上されたら、本当に男だってばれる…!

ばれてしまったら、この男にどうされてしまうのだろう。

殴られる?殺される?

……嫌われる?

 

 

――いったい、何を考えてるんだろう。何の心配を、

 

 

「ザックス。」

「は…?」

「俺の名前、ドンじゃなくて、ザックスって呼んで。オマエは?」

「え…?」

「クラウディアちゃん、じゃないんだろ?」

そう言って笑う男は、少しも俺を責める風でもなく、警戒する風でもなく。

 

男に食われる趣味なんかない。

男の嫁になるつもりなんか、もっとない。

だけど、だけど、だけど。

名前ぐらいなら、教えてあげてもいいかな?

 

「……クラウド。」

 

何がそんなに嬉しいんだか、男は目を細めて。その名前を何度も何度も、繰り返し呼ぶ。

「クラウド、」

「なんだよ、バカザックス。」

「俺、オマエのためなら何でもできるよ。世界にリボンをかけて、プレゼントしてやる。

「センスゼロ!…そんなんで、俺がなびくと思ってんの?」

 

ザックスは、少し考えてから。

「じゃあ、キミのためなら死ねる、とか?」

「夢見が悪い。センスゼロ!」

 

キミの恋の奴隷だ?

「気味が悪い。センスゼロ!」

 

未来永劫、離さない!

「重い。センスゼロ!」

 

 

 

……でも、全部本気だよ。=@

 

 

 

そう、耳もとで囁かれて、不覚にも胸が高鳴った。これってもしかして、

 

 

 

 

 

 

言っておくけど、不本意なんだ。

…恋に堕ちる、なんて。

 

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO いただいた拍手に、心からの感謝をこめて。(2010412 初出)

この後、ドンザックスはクラウドのお尻をおいかけて、旅のメンバーに加わるはずw

 

 

 

 


 

 

 

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