★「ドン・ザックスの館〜お嫁さん探し〜」の続きです。ティファ視点。
おふざけですので、怒らないでください!
ドン・ザックスの館
〜お嫁さん争奪戦〜
…幼馴染って、損よね。タイミングが難しいのよ。
「この骨太のおなごだ!」
本当は、ちょっと自信があったの。
青いマーメイドドレスは、ベアトップになっていて、胸が強調されるデザイン。
普段はあまりしないけど、今回はメイクだって気合いいれた。
派手なドレスに負けないよう、ゴールド系のアイシャドウに、ベージュピンクのルージュ。
クラウドだって、褒めてくれたのよ?
「ティファが、女のひとに見える。」って。
…あれは、クラウドなりのほめ言葉よね?そうよね?
だから、ドンに選ばれるのは、てっきり私だと思ってた。それなのに――
ドンの屋敷は、至るところに悪趣味な装飾が施されていた。
いかにも、成金男の屋敷ってかんじ。
案内人に招かれるまま、一番奥の部屋に3人で入っていくと。
部屋の中心、高級そうな黒皮のソファに腰かけた男が、口笛を吹いた。
「ヒュー!美女揃いじゃん!」
おそらく、この男が「ドン」と呼ばれる男ね。噂どおり、軟派で軽薄そうではあるけれど…
私が想像していたのは、金のごついネックレスに胸毛モジャモジャ、あげくビールっ腹のタヌキ親父だと思っていたけれど
その男は私の期待を裏切って、まだ20代中頃の若くて背の高い男だった。
兵士のように筋肉質だし、ダンサーのようにスラリとしている。
「いい?」
彼と目が合った瞬間、そう問われた。…何が「いい」のかしら。
「なにが、ですか?」
「おっぱい。E?」
「はあ?!」
まず第一声に、胸のサイズを聞かれたのは生まれて初めてだった。
もっと他に聞くことないわけ?名前は、とか。出身はどこか、とか。
どうやらこの男は、私の一番嫌いなタイプのようだ。
自信家で、節操なしで、デリカシーのない最低な男。
――女の敵!
「そっちのピンクの子も、可愛いね〜。めちゃくちゃスレンダー!」
「わあ、ありがと〜。」
エアリスは、ニコニコと可愛く笑っている。
私にしか聞こえない小さな声で、「ねじり切っちゃおうかしら」と呟いていたけれど。
私とエアリス、二人の女に軽蔑されているにも関わらず、よっぽど空気の読めない男なのか…
彼は、フーミンとシズカ(←古いネタ)って究極の選択じゃね?!とか一人で盛り上がっている。
そうして男の視線が、私たちの後ろに隠れるようにして立つあの子≠フ方へ向いた。
「…え?」
「え?」
2人の視線が交わって、まるで時間が止まったように。
先ほどのような軽口をいっさい叩かずに、瞬きひとつしない。
むしろ、呼吸することすら、忘れているかのように――ただ彼≠見つめていた。
何?この感じ。…すごく嫌な予感がする。
「決めた…」
「え?」
「この骨太のおなごだ!オマエしか考えられない!」
何度も言うけど、選ばれる自信があったの。昨夜は、頑張ってコラーゲンパックもしたし。
それなのに、それなのに――ドンが嫁に選んだのは、私でもエアリスでもなかった。
「…え?俺、じゃなかった、わたし、ですか…?」
そう、男であるクラウド≠セった。
ちょっと待ってよ!
クラウドはどんなに可愛くたって男(たぶん)なんだから、アンタの嫁になんかにならないのよ!
クラウドは、私のお嫁さ…じゃなかった、お婿さんになるのよ!
こっちは7年超しの恋なんだから。
クラウドも、まさか自分が選ばれるなんて想像していなかったのか、
目をぱちくりして小首を傾げている。
ちょっとちょっとちょっと!なにそれ、やばい可愛いじゃない!
ドンもそのクラウドの天然な仕草に、すっかりデレデレ。
初孫を可愛がるじいさんみたいに、目を細めてニコニコニコニコしちゃってる。
…これは、まずいかもしれない。
――私の好きな人が、男の嫁になっちゃう!
もはや、当初の目的なんかどうでもいい。(神羅の情報?何それ美味しいの?)
今はただ、クラウドの純潔を守ること、それが私の使命。
だって、約束したんだもの。クラウドは、覚えているかしら?
そう、あれは7年前よ――村の給水塔の上で交わした、二人の約束。
「私がピンチのときには、助けにきてくれる」って。
それは、私が一方的に求めた強引な約束だったけれど、クラウドも小さく頷いてくれた。
「約束するよ」って、恥ずかしそうに彼が笑ったこと。本当に嬉しかったんだよ。
だから私も、そのとき心に誓ったの。
クラウドの貞操のピンチには、助けにいくって!
「メテオストライク!」
「うわあ!」
「ドルフィンブロウ!」
「ぎゃあ!」
「ファイナルヘブン!!」
「ひいいいいお助けをッ!」
なぜ序盤であらゆるリミット技を使えるのかは、スルーしてちょうだい。
(そんな大人の事情より、クラウドの貞操の方が大事でしょ?!)
クラウドとは別の部屋に連れてこられた私たちは、ドンの手下たちに悪戯されそうになった。
でも、しょせんは雑魚ども。
私は素手でそいつらをボコボコに返り討ちにして、エアリスはサンダガを5連発ぐらい放ってた。
…テンションあげすぎじゃない?エアリス。
「ティファ!なにのんびりしてるの?!早く行かないと、間に合わないよ!」
あの温和でマイペースだと思っていたエアリスが、私を振り返ってそう叫ぶ。
そうか…エアリスも、必死なんだ。クラウドを守りたい一心で。
彼女とはまだ出逢ったばかりだけど、想いは、私と同じなんだね。
私にはわかるよ。
エアリスも、クラウドのこと――
「早くしないと、クラウドの受けが見れなくなっちゃう!」
…え?え?!
「生よ?生でやおいよ?!しかもクラ受けよ?!」
やおい?くらうけ?なにそれ?なんなの?!
これは、まさか―
「エアリス、あなた、まさか…」
ピンクのリボンに、ピンクのドレス。ふわふわな砂糖菓子みたいに、愛らしいエアリス。
だけど、彼女は、
…腐女子、だった。
想いを伝えられるのは、言葉だけじゃないよ。
だから、私は闘うの。
貴方を勝ち取るために、闘うの。
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