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★「ドン・ザックスの館〜お嫁さん争奪戦〜」の続きです。クラウド視点。

おふざけですので、怒らないでください!

 

 

ドン・ザックスの館

〜結婚初夜?〜

 

 

…アンタのことなんか、興味ないね。

どうせ、この仕事が終わったらお別れだ。

 

 

 

ベッドの下には、くしゃくしゃになったシーツ。

その上に、毛皮のボレロやら、ストッキングやらが重なるように落ちていく。

なんて器用な男なのか――まさに、一瞬だ。

ほんの一瞬で、自分の身につけているものがどんどん奪われていく。

 

「やめ…やめろよ!」

 

これ以上脱がされたら、さすがにまずい。

ザックスの手がスカートの下、レースのランジェリーにふれたとき、本気の力でその手を叩いた。

男は目を数回ぱちくりさせてから、何を考えているのか少しの間動きを止める。

 

「ああ、着たままがいい?

「はぁ?!」

「クラウドによく似合ってるもんな。この紫のドレス!」

 

ボレロを奪われ、露わになった首筋を男の舌に舐め上げられる。

「ひ…!」

「クラウド、すっげえ綺麗。どこもかしこもスベスベじゃん。」

突然の出来事に驚愕していると、男がドレスのスカートを思い切りまくり上げてくる。

油断した…あろうことか、抵抗を忘れたほんの一瞬の間に。

俺は男に両足を広げているマヌケな体制になったのだ。

 

「いい趣味だな。やらしいランジェリーつけちゃって。」

「ちが…!」

こんな女物の下着、誰が好き好んでつけるか!

あのとき、ドレス屋で。エアリスが有無を言わさずにこの下着を押し付けてきて、

俺のボクサーパンツまで取り上げたもんだから…しょうがなく身につけたんだ。

ノーパンよりはマシだと思ったから。

 

「や…!」

男が、吸い付くように足の付け根にキスをしてきた。

「……え?ちょ…!」

そうして、あろうことか、下着の上から――

中心の小さく丸みをおびたそこを、甘噛みし始めたのだ。

それ以上は、駄目だ。

絶対に他人に触れられていい場所じゃない。

そこを咥えられてしまうなんて、言語道断だ、ありえない!

 

 

 

「この、野郎…っ!切り落とすぞ!!」

 

 

 

バシン!!

 

嫌悪感というよりも男としてのプライドが先行して、

衝動的に男の頬をぶん殴った。

男同士で、果たしてどこまで出来るのかは知らない。

だけど、それがどんな行為であるにせよ、体を受け渡すなんて出来るわけがなかった。

俺にだって、プライドがある。モラルもある。

 

 

 

 

 

「…クラウドって、結構力あんのな。」

 

 

 

 

頬をさすりながら、へらへらとザックスは笑う。

何でもないように笑っているけれど、それはどこか寂しげで。

…その表情を見たとき、殴ってしまったことを少しだけ後悔した。

「……ご、めん。」

謝る筋合いなどないはずなのに、どうしてか謝罪してしまう。

俺は何も悪くない。男なんだから、受け入れるなんてできない、当然だ

だけど―――

 

 

 

 

「クラウドが謝ることじゃないだろ?ごめん、ちょっと、急ぎすぎたな。」

オマエ初めてなのに、と。

そう優しく目を細められると、どうしてか顔に熱が帯びていく。

男が、今度はそっと指先を絡めてきた。

それだけじゃない、俺の髪を撫でてきたり、旋毛に顔を埋めてみたり、

「クラウド」「クラウド」と何度も何度も愛おしそうに名前を繰り返したり。

 

 

…なんでこんなに、優しいんだろう。

 

 

そんな風に優しくされると、拒絶し辛くなるから困る。

いっそ強引にしてくれたなら、やめろと言ってぶん殴れるのに。

 

 

 

 

こんな風に指先を絡められたら、握り返すしかないじゃないか…

 

 

 

 

少しだけ。

ほんの少しだけ指を絡めてみると、ただそれだけなのに、ザックスは大袈裟に反応する。

「すっげえ!今、好きな子と手を繋いでる!!

「ぶ!」

意外にもピュアな発言に、思わず吹き出すと男は首を傾げる。

「ちょ…!そこ、笑うとこじゃないから!」

「…だって、」

 

だって、あの『ドン』のセリフとは思えない。

何人もの女をはべらかして、食い散らかしているんじゃなかったのか?

ザックスが、少し照れくさそうに…でも、俺から少しも視線を反らさずに言う。

 

 

「なあクラウド。俺、オマエと手つなぎたい。キスしたい。…エッチもしたい。」

――ずっと、一緒にいたいよ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

――興味ないね。

 

「ちょ…!即答?!そこはオマエ、恥ずかしがりながら頷くとこだろ?!」

何を期待していたのか、ザックスはこれ以上ないほどに慌てている。

でも、ここでこいつに流されるわけにはいかないんだ。

だってザックスは――ウォールマーケットを支配する『ドン・ザックス』であって

ずっと一緒にいるわけではない。…いられる、わけがない。

 

アンタなんか…興味、ない。

 

自分に言い聞かせるようにそう繰り返すと、ザックスが大きくため息をついた。

「ふーん、そう。」

さも興味なさそうに、ザックスが言う。

「クラウドがそう言うなら。まあ、無理にヤってもしょうがないしな。」

その言葉に、何故か苦しいような、悲しいような――なんとも表現できない感覚に襲われた。

しょせんは、その程度…

少し毛色が珍しいから、俺に興味を持っただけの、その程度のことだったのだ。

彼にとってみれば。

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺、もう行くから…。」

 

これ以上、ここに留まっていても仕方がない。

ザックスは神羅と繋がっていないのだし、倒すべき敵でなければ守るべき仲間でもない。

これ以上一緒にいる意味はない――

「あ、待って。忘れ物!」

 

ザックスが、床に落ちた俺の衣服を手にとる。

それを受けとろうとして、ザックスに腕を捕まれる。

「……なに、」

「クラ、忘れ物だって。」

「だから、それよこせよ。」

ザックスの反対側の手に持っているボレロは、

エアリスが後で譲ってほしいと言っていた「ラビットファー」だ。

これを持ち帰らなければ、あのロッドで突かれるかもしれない。それは嫌だ。

「よこせってば!」

 

 

 

 

いいけど…まさか、俺を置いていく気?

 

 

 

 

「は?」

「あ、5分待ってて。今荷物まとめてくるから。通帳と印鑑どこだっけなぁ〜」

「はあ?」

「あと勝負パンツと、ゴムと…」

「はああ?」

「あ、ゴムない。まあいっか、クラウドとするときはがいいし…

 

聞こえない。聞こえない。俺には何も聞こえない…

き こ え な い 。

「…ザックス、言っておくけど、俺たちの旅は遊びじゃないんだ。」

そう、これは俺自身の戦いでもあるし、星の運命をめぐる戦いでもある。

 

――ザックスが、目をふせた。

「…俺だって、真剣さ。」

真剣な顔をすると、その雰囲気はまさに戦士の顔で、その表情にどきりとした。

 

 

 

俺は真剣に――クラウドを嫁さんにしたいんだ。

 

 

 

言うと思った。思ったけど…!

がっくりと項垂れて、もう何を言い返すのも面倒になって半ば投げやりに。

「好きにすれば。」

そう言った瞬間、頭に手を回されて何かを唇に押し付けられた。

「ンンン…ッ!?」

 

本当に「好き」にされてしまって、唇を噛みつかれ、舌を追いかけられ…

信じられない。

初めて、だったのに――

こんな窒息しそうなほどに、求められてしまうなんて。

 

 

 

 

 

「…はな、し…」

「嫌だね。一生、離さねえよ。」

「そ、んな…っ」

 

もしかすると。

こいつは、とんでもない「獣」かもしれない。

彼が、このウォールマーケットを支配する「ドン」として名を馳せていたのもわかる。

欲しいものは、どんな手を使ってでも手にいれる――

俺はこのとんでもない男に、捕らえられてしまったのか。

彼が、にやりと口元を釣り上げて笑った。

 

「クラウド、覚悟しとけよ?」

 

ぞくり、身体が栗だつ。

体が震えてしまうのは、この男が怖いのか、それとも何かを期待してしまうからなのか――

それはきっと、両方、かもしれなくて。

 

 

 

「俺の―――ラブ?注入っ!!

 

 

ちゅ!と軽快な音をたてて頬にキスをされたその時。

アホかぁッ!!!

と、鋭い突っ込みをいれたのは、俺ではない。

ドアをけ破って入ってきた、ティファの拳だった。

ザックスの後頭部を殴打し、俺の額とザックスの額が勢いよくぶつかる。

「いってええええええ!おい、クラ、大丈夫か?」

「大丈夫じゃない…。」

 

大丈夫じゃない。いろいろと、大丈夫じゃない。

どう考えてみても、おかしな状況だ。

ティファは「クラウドは私の嫁なのよ!奥歯ガタガタ言わしてやんぞ!」と怒り狂っているし、

一緒に飛び込んできたエアリスも「ばかね!やっちゃえばこっちのもんでしょ?

このヘタレ攻め!と、同じく怒りをザックスにぶつけている。

ザックスは二人の女性になじられ、拳やロッドで突かれ…

両手を降参のポーズのまま、動けないでいる。

 

「よ〜っく、わかった!この競争率の高さ。おまえ、すげえもてんのな。」

「え?どういう意味?」

「うん、燃えてきた!!

ザックスの言っている意味がわからなくて、首を傾げる。

 

 

 

「それはね、クラウド。専門用語で言うところの――

クラウド総受けってやつよ。」

 

そう言うエアリスのどや顔に、どうしようもなく泣きたくなった。

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい、すみません。

俺、総受けには、なりきれませんでした。

 

…と言って逃げ出した、二十一歳の冬の夜。

 

 

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO いただいた拍手に、心からの感謝をこめて。(2011.12.11 初出)

クラウドの初体験は、ハイウィンドの中か、チョコ房か、神羅ビルの監禁部屋か。

旅の途中で、ザックスの理性がいつ切れるかによると思います!

 

 

 

 


 

 

 

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