C-brand

 

 


 

 

 



 

 

 

【トモダチ以上恋人未満。シリーズ@】

 

 

※神羅時代、恋人未満なザックラ。長編小説とは全くの別設定と思われます。

/原/則/之さんの『冬が始まるよ』をイメージしました(どこが?汗)

 

    が始まるよ。キミと僕の冬が。

 

 

冬が始まるよ。ほら、また僕の傍で。

すごく嬉しそうにビールを飲む、横顔がいいね!

 

 

ぷしゅっ

 

 

缶ビールのぷるタブを開けて、クラウドが景気よくビールを飲む。

クラウドの少女のような外見上、酒に弱そうに見えるのに、

飲ませてみると結構ペースが速い。

特別強いわけではないが、おいしそうに飲んでいる。

この苦味がたまらないよな、と男らしいことをよく言いながら。

 

「ぷは!うまい!」

そのコメントも、全く男らしい。

だが、唇のはしについた白い泡を舐め取る様は、くらっとくるほどに可愛い。

 

「クラウド、まだ乾杯してねえだろ!」

鍋をコンロにかけながらザックスが言う。

ちなみに今夜は、クラウドが食べてみたいとダダをこねたみぞれ鍋。

ザックスは『みぞれ鍋』なんて聞いたことがなかったが、料理本をひたすらめくり、

なんとか夕飯に間に合った。

おいしそうに湯気があがる鍋を覗きこみながら、クラウドは笑う。

その可愛い笑顔だけで、ザックスとしてはもうほろ酔いの気分だ。

 

「今さら何に乾杯するんだよ。」

…俺達の、今後の発展に?」

肩をすぼめて冗談っぽく言ってみせたが、ザックスは本気だった。

 

 

 

 

はっきり言おう。

――ザックスは、クラウドに恋をしている。

 

クラウドと知り合ってから、半年がたつが――

口を利いてもらえるようになるまで3週間。

メールの返信がくるようになるまで1ヶ月。

部屋に来てくれるようになるまで3ヶ月。

ノリでハグをしても殴られないようになるまで、5ヶ月かかった。

 

そう、つまり――ただのトモダチだ。

ザックスとしては、家に無防備にあがりこむ愛しい彼を、どうにかしてしまいたいという

欲は当然あった。

実際、何度もいやらしい気分になったし、妄想でいけないことも沢山した。

とくにクラウドが泊まりにきて、彼のパンツを洗濯してあげたときはやばかった

だが鼻にティッシュを詰めるだけで、実際クラウドに手を出したことはなかった。

紳士でいたいから、というには無理がある鼻ティッシュ

有体に言えば、ただ勇気がなかったのだ。

 

今までさんざん女の子と遊んできたザックスだが、でも今回はかってが違う。

クラウドはどんなに可愛くても男だし(ときどき自信ないが)、

当然だがザックスを友達としか見ていないから。

 

…いや、もしかしたら。

ザックスを都合のいいメッシーとかアッシーとか思っている可能性すらある。

実際、ザックスの顔を見るたびに「めし」とか「茶」とかせがむ。

その亭主関白ぶりすら、ザックスにとっては可愛い子悪魔ちゃん!

とか思ってしまうのだから重症だいや末期だ

 

 

 

 

「せっかくの記念日なんだから、こう景気よく乾杯したいわけよ。」

ザックスが自分の分のビールも開ける。ザックスは少し甘口が好きだが、

彼の前で男らしくありたいという見栄が働いて「すっきり辛口」を選んでしまった

…辛口が、男らしさを定義づけるかは謎だが。

 

「何の記念日だよ?」

「んー…俺とクラウドが出会ってから6ヶ月と11日目の記念日?」

 

「記念日でも何でもないし。そういうの平日って言うんだよ。」

クラウドは呆れ顔で言う。

コタツのせいか、ビールのせいか、ほんのり頬が染まっているのが可愛い。

 

ザックスにとっては――クラウドがおいしいと言ったから、今日はビール記念日。

なんて、誰かの『サラダ記念日』を心の中でぱくってみる。

こんな図体のでかいソルジャーが、それこそ不気味かもしれないが。

 

 

 

「ならさ。」

クラウドがぐいっとビールを飲み干し、勢いよくテーブルに缶を置く。

みぞれ鍋がぐつぐつと湯気を出して、ザックスにはクラウドの顔がぼんやりと見えていた。

 

 

――が、突如、唇に柔らかい感触。

 

 

目を見開いたまま、硬直する。

クラウドの唇と思しきものが、ザックスのそれに押し付けられる。

ディープではないが、触れるだけという軽いものでもない。

確かにクラウドの柔らかい唇が重なって。

離れる瞬間、彼の舌が少しだけザックスの唇を舐めた。

 

 

――おいしい?」

 

 

「ほえ?」

ザックスは、とっさにマヌケな声を出す。

今まで恋愛のれ≠フ字もなかったクラウドからのキスで、驚いたのもある。

そしてそれ以上に、クラウドの唇があまりに柔らかくて気持ちよかったから。

惚けていたのだ。

 

「お、おいしい!」

この素晴らしき状況を理解して、ザックスは慌てて答える。

かっこよく不敵の笑みを浮かべて言うつもりが、どもってしまうは、顔は赤いはで。

情けないにも程がある。

 

クラウドはそんなザックスをけらけらと笑って、

貴方がおいしいと言ったから、今日は記念日。

そう言う可愛い可愛い酔っ払いは、ザックスの缶ビールをぶんどり、

また美味しそうにあおった。

 

もはや自分がどんなに乙女チックだろうとヘタレだろうと、ザックスは構わない。

にやける顔を少しも隠そうとせずに、クラウドにせっせとみぞれ鍋をよそった。

 

 

 

 

今年の冬も、来年の冬も、その次だって。僕の隣でビールを飲んで。

 

――キミがいてくれれば毎日が、記念日。

 

 

 

 

たくさんのキミを知っているつもりだけど。

これからも僕を、油断させないで。

 

 

 

 

NOVEL top

C-brandMOCOCO いただいた拍手に、心からの感謝をこめて。(20081227

 

 

 

 


 

 

inserted by FC2 system