彼に汚い自分を知られるのが、恐かった。
……恐かった。
(side Cloud )
――少年は、美しい。
それは、この世のものとは思えないほどに。
まばゆいほどのブロンドに、白く透き通るような肌、ピンクの形のよい唇。
細く長い手足、スラリとした体躯、折れそうなほど細いウエスト。
そしてどんなマテリアにも、宝石にも勝る輝きを放つ、アイスブルーの瞳。
彼が街を歩けば、男も女も振り返る。
そして男はその美しさにただただ見ほれ、女は自分自身に失望する。
その美しさが、彼の人生を非凡なものにさせていた。
少年――クラウドは、汚れている。
その自覚が彼自身に、あった。
彼の不幸の始まりは、生まれ育った小さな村の教会だった。
彼は幼い頃から美しく、それ故同年代の子供にはじかれ、常に独りだった。
母子家庭の母親が働きに出ている間、話し相手になってくれたのが教会の神父である。
「クラウドは、まるで天使のようだね。」
神父はいつもそう言って微笑んだ。
クラウドは神父を、顔を知らない父のように想い、慕う。
母親が信心深いのもあり、神父の説話に興味を持ち、クラウドも神を強く信じた。
しかし少年が8歳のとき、それはクリスマスの聖夜に起きる。
慈愛を説き、他者への暴力を否定する神父に、少年は犯された。
聖堂の裏の小部屋で、オルガンの音色と神父の荒い息遣いを聞いていた。
聖堂では、人々が神に祈りを捧げている。
殴られ、無理矢理暴かれながら――自分も神に、ひたすら祈った。
だが救いはない。
そこにあるのは、絶望だけだった。
神父はその後もクラウドをねじ伏せた。
誰かに、助けてほしいと思った。
だけど母親には言えない。
幼い彼には自分に起きたことの意味もよくわからなかったが、知られてはいけないことだと思った。
ある日、村長に相談した。母には言わないでほしい、と言いながら。
幼馴染の父親である村長に、クラウドはあまりよく思われていない。
だが曲がったことが嫌いな、厳格な彼なら、神父の奇行を止めてくれると思った。
だがクラウドに向けられた言葉は。
「おまえが誘ったんだろう。」
わずか8歳の少年にとって、それは衝撃的な言葉だった。
その後も、幾度となく神父に犯された。
だけどもう、助けは求めなかった。
母には言えない。
村長も助けてくれない。
――そもそも、神様にさえ捨てられたのだ。
そんな自分に、救いなんてあるわけがない。
13歳の春、雪解けの季節を待って故郷を出た。
この悪夢から、ただただ逃れたくて。
ミッドガルに出てきて、軍に入隊した。
何かに抗える、力が欲しかった。
――なあ、ザックス。
あの時はまだ、力があれば何かが変わると思ってた。
どこに逃げても自分は自分だってこと、知らなかったんだ。
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