ご注意:@ザックスが鬼畜です。ソルジャーが非道です。
A当サイト内にて唯一、完全なハッピーエンドではありません。
B超、亀並み更新予定です。
C殺傷表現等、グロテスクな表現を含みます。
D露骨な性描写が入ります。(予定)18歳以上の方の閲覧推奨です。
…別に、生きていたって。
死んでいるようなものだったけどな。
Life1.生きる意味、死なない理由。
――何のために生きてるかって?
それ、愚問でしょ。
答えさすなよ、面倒くさい。
死ぬのも面倒くさいから。だから、生きてんじゃないの?
そうやって明日もあさっても、なんとなく生きていくんだよ。
そう、俺の人生ってこんなもんだ。
笑顔作って、嘘を吐いて。――友達「ごっこ」は俺の得意分野。
「ザックス!聞いたぜ、おまえ2ndに昇進したって?!」
いつものトレーニングを終えてシャワールームに入ると、入れ違いで出てきた同僚に、肩を叩かれる。
一般兵時代からの同期の、栗毛のソルジャー。
「おう!さっすが俺様、だろ?」
…つーかただ相手を殺しまくってたら、2ndになってただけだし。
どれだけ手を汚したかで、評価はされる。全ては数字だ。――殺した数の。
「このやろ、すぐに俺も追いつくからな!」
笑いながら言う気のいい同僚は、俺の昇進を、本気で祝福しているみたいだ。
人の幸せって、嬉しいか?
正直なところ、理解できない。
どっちかといえば、人の不幸は蜜の味、だろ。
オマエ、いい奴なんだね。
そういやコイツ、前に一緒になった戦場で、村の殲滅を命令されたとき。
子供は殺せないって、後方に離脱したことがあったっけ。
「当然!頑張れよ!」
頑張ったら、どうにかなるというのだろうか。
心にもない、無責任な発言を、俺は何の躊躇いもなく口にする。
この男みたいな奴は、永遠に3rdどまりだと思うけど。
もしくは近いうち、死んじゃうんじゃない?
何のために、とか。何でこんなことを、とか。
そういう余計なことを考えてると、殺られるのが戦場だ。
俺なら、殺れる。
女子供だろうが、上司だろうが、同僚だろうが。
少しの感慨もなく。躊躇いもなく。後悔もなく。
――だって迷うのも、面倒くさくない?
その男がかつて口にした、「子どもは殺せない」といった言葉。そう言って流した涙。
あまりに、くだならない。
誰かがやらなくてはならないことを、その男は放棄して逃げたのだ。
ただ己の手を汚したくないがために。結果は変わらない、村の連中は皆死んでいく。
それを知っているのに。
偽善に、吐き気がした。
だから、俺の人生ってそんなもんだ。
笑顔作って、嘘を吐いて。恋人「ごっこ」も、俺の得意分野だ。
「ザックス、もう帰るの?」
まだ息もが整わない女が、そう俺の背後から声をかけてくる。
適当に転がりこんだ、女の部屋――
女の部屋ってのは、どれも一様なもので、吐き気のする化粧品の匂いで満ちている。
「また、くるよ。」
手早くシャツを羽織りながら、そう笑顔で答える。
溜まったら≠ニは言わない。
「泊まっていけばいいのに。」
女が、俺のシャツの裾をつかむ。いかにも男が好きそうな、甘えた仕草だ。
きっとこの女は、男をよく知っているのだろう。
俺のことは、何一つわかっちゃいないけれど。
「帰りづらくなること、言うなよ〜。」
…なんて、冗談。
出すもん出したのに、これ以上ここに居る意味なんかない。
腕枕でもしろって?モーニングコーヒーが飲みたいって?
女って面倒くさいこと、この上ない。
「この後、任務なんだ。だから名残惜しいけど、今日はここまで。」
なんだかんだと、適当な理由をつけて部屋を出ようとする。
「ザックスって、いつもそう。ねえ…仕事と私、どっちが大事なの?」
その女は、頭の悪そうな見た目どおり、馬鹿馬鹿しい言葉を口にする。
仕事と、女。どちらも必要なものだ。でも、大事なものじゃない。
俺には、大事なものなんかない。
「ごめんな、俺もほんとに帰りたくないんだって!わかるだろ?こんなに、好きなんだから…さ。」
まったく、単純なバカ女だ。そんな安い言葉で、単純に喜んで。
「今度いつ会える?」なんて浮かれてやがる。
後ろから女に抱きつかれる。正直なところ、かなり不快だ。
思い上がった女は、好きじゃない。
…あのね、女はキミだけじゃないし。
スラムでナンパして2,3回やっただけの女で。
名前も、なんていったっけ?
まあ、なかなか性欲の強い女で、処理には便利だけど、ね。
あんま動かなくて良かったし。
「キミがピンチの時には、いつでも飛んでくるよ。」
俺はアンパンのヒーローかっての。
そんな風に冗談めかして言っても、女は嬉しそうにキスを求める。
…ソルジャーとやれて、そんなに嬉しかった?
金もある、力もある『ソルジャーの恋人』は、女にとって、さぞやブランドだろう。
キスをする気にはなれず、俺は適当な愛を囁きながら、女の部屋を出た。
ドギツイ香水の匂いに、吐き気がした。
夜のスラムを抜ける。
色とりどりのネオン、色とりどりの人間。色とりどりの誘惑。
酒にクスリ、ギャンブルに女。
スラムで手に入るのは――ひと晩の愉悦、快感、興奮。
この街は「何か」に似ている、と思う。
何でも手に入りそうで、その実……何もかもが、手に入らない。
嘘で固められた、人間関係。
暴力と性欲、他には虚無しか残らない、それは。
似ている、と言うか。
――その腐った街は、俺の人生そのものだったんだ。
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