ご注意: 残酷な表現を含みます。
周りは俺を「羨ましい」という。――人生に成功したと。
Life2.愚か者
幼少時代から、ソルジャーになるのが夢だった。
生まれ育った南の離村。
家の裏には、小さな森が面していて、朝から晩までその森を「冒険」していたものだ。
子ども同士でチャンバラをしたり、小さな猪を追いかけて「モンスター退治」をしたり。
木の枝を剣に見立てて、遠い未来に、想いを馳せた。
こんな小さな森ではない。もっともっと大きな世界で。
誰よりも強く、誰よりも自由に――剣を振るう。
皆から賞賛される、英雄になりたい。
――ガキの頃は盲目的に、ただそう思えた。
15歳の春、家を出た。
何も持たない寂れた村に、未練などない。家族に感慨もわかない。
年老いた親は、一人息子の俺に林業を継がせたいらしかったが、俺はそんなつもりは毛頭なかった。
俺は、その程度で納まる男じゃない。
ただおざなりにレールを敷いて、子どもの価値すら見出せない親達に、たいした愛情があるわけもない。
だから、全てを捨てた。
そして捨てたもの以上の「全て」を手にいれるために、ミッドガルで神羅に入隊した。
一般兵時代は、ただ早くソルジャーになりたくて、いつも上を見ていた。
男であるならば、強くありたい。
それにソルジャーってのは、金もある。女にももてる。
全てを手に入れる、英雄になりたい。
――男なら当然の欲を持って、そう思った。
上に這い上がるために、多くのモンスターを討ち、多くの敵兵を殺した。
数字が全てだと、すぐに知った。多くを殺せば、その分評価された。
「殺生」に慣れるのは気分のいいことではなかったが、誰かがやらなくてはいけないことだとも思った。
そういう風に、人殺しを正当化した。
ソルジャーになるのは、そんなに難しいことではなかった。
何度も何度も、過酷な戦場から生還しただけだ。
とにかく多くの敵を撃ったし、斬った。
それが強さと評価され、俺は17歳でソルジャーになった。
あのセフィロスに次いで、最年少だと周りは騒いだが、俺だって「英雄」になるんだから
当然のステップだった。
――ソルジャーになって、最もリアルな現実≠知ったのは、何回目の任務だったか。
ソルジャーは確かに、強かった。
ソルジャーは特別な手術…肉体操作を施された兵士だ。
一般兵とは違う、超人的な肉体を持つ「それら」が戦地に投入されれば、
どんな戦況下であっても、必ず良い結果を出した。
だけど、その裏で。
戦場は、人を狂わせる。力は、人を歪ませる。
…それともそれが、人のサガなのだろうか?
狂気に満ちた戦場では、倫理観もモラルもなかった。
俺が見たのは、ソルジャーの真実――
「一晩で何人殺れるか」を賭ける、戯れのゲーム。
捕虜を鼻歌まじりに拷問する。
無力な子供をなぶり殺す。泣き叫ぶ女を集団で犯す。
その真実を目のあたりにして、自分がどう感じたかのかは思い出せないけど。
驚愕か失望か興奮か――
わからないけど、どれも当てはまるような気もする。
とにかく俺の中で、何かがきしむ音がした。
…歪んでいく音。
そうして俺は、遠くないうちに、人であることを捨てた。
自分もそのインモラルの世界に浸かった。
別に、強く望んだわけじゃない、でもそうなることがひどく自然なことに思えた。
狂ったのは。
たぶんソルジャーだから、ってわけじゃない。
人はみんな、一皮むけば同じで。
力さえ得れば、誰もが欲する。――他人を、支配すること。
人ってそういう、どうしようもない生き物なんだろう。
…じゃあ、俺がなりたかった『英雄』ってナニ?
1stになるのが英雄になることなら、きっとそんなに難しいことじゃない。
今より多く人間を殺して、今より女を犯すだけだ。
そう考えると、ひどく笑える。
俺はたったそれだけの男に、なりたかっただけなんて。
Find “him” in this world.
早 く 「 彼 」 を 見 つ け て 。
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