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THERMAE(テルマエ) MIDGAR(ミッドガル) 

過去拍手シリーズ

 

テルマエ○マエのザックラパロディ(とか言って、原作とはもはや関係ないものに…)

・クラウド…古代都市ローマ在住。若きテルマエ(共同浴場)建築士。尻が可愛い。

・ザックス…現代都市ミッドガル在住。(自称)みんなの正義の味方、ソルジャー2ND

 

Story3.時代を超えたトキメキ

 

 

「――散れ。」

 

ザックスの笑みが消え、そう一言放った瞬間、その言葉通り、

まるで蜘蛛の子が散らすようにソルジャーたちは逃げ出していった。

「おい、大丈夫か?おまえ…」

風呂場のタイルに投げ出されたその華奢な少年に、ザックスは手を伸ばす。

そのときザックスには、その小さな尻が向けられていて…思わずごくりと喉がなる。

 

(いやいやいや待て!俺は女にしか興味ねえし!

これじゃあいつらと一緒じゃねえか…しっかりしろ俺!)

尻が可愛いからなんだ。女には、もっといいものがたくさんついている。

例えばほら、おっぱいとか、柔らかい唇だとか、それにやっぱり上目遣いで見上げてくる表情とか。

そんなことを考えながら、尻への煩悩を消そうと努めていると、

件の少年がゆっくりと振り返る…

 

バッキューーーーーン!!

 

そんな発砲音がして、ソルジャーでありながら不覚にも心臓を撃ち抜かれてしまったのだ。

その上目遣いで見上げてくる、愛らしい少年に。

 

 

 

 

 


 

ザックスは、その謎めいた美少年を自宅のマンションに連れて帰った。

 

どうやら衣類を盗まれてしまったのか、着るものがないらしい少年に、自分のシャツを貸してやる。

ちょっと大きめのデザインのシャツだったのもあり、少年にはますますぶかぶかで、

膝まで隠れてしまっている。一枚でまるでシャツワンピースのようだ。

その格好で神羅の廊下を歩いてきたわけだが、皆がこの可愛い少年に視線をやって、

男たちはただただ見惚れ、女たちはただただ悔しがっていた。

「ザックス!その子どこの課だよ?!ずりいぞ!」とか

「次は私とデートしてくれるんでしょ?その子本命じゃないわよね?!」とか

投げかけられる言葉は右から左へ受け流す。

 

…というか、ほとんど聞こえていなかった。

手をひくと恥ずかしそうについてくる、この美少年にすっかり意識を奪われて。

 

 

 

 

マンションのリビングで、その子にコーヒーを出してやると、彼はコーヒーを飲んだことがないのか

ひとつ小首を傾げてそれに口をつける。

すると苦かったのか、涙目になって視線で訴えてきたので、

頭を撫でてやってからミルクとシュガーをたっぷり入れてやった。

それをスプーンでかき混ぜてまた勧めると、今度は大丈夫なようだ。

眼を細めて、美味しそうに飲んでいる。

 

「…やばい可愛いって。」

思わずそう感想をもらすも、彼には言葉の意味がわからないようだ。

簡単な単語さえもわからないのだから、おそらくは異国からミッドガルへ出てきたばかりなのだろう。

 

「俺、ザックス!」

 

そうジェスチャーつきで声をかけると、少年はたどたどしくも繰り返した。

「ザ、ックス?」

「そう、ザックス!おまえは?」

 

自分の名を問われていることを理解したのだろう。

少年は、部屋の大きな窓から空を指差して答える。

 

「…クラウド。」

 

鮮やかな青い空の上、柔らかそうな雲が、

まるで少年のようにそっと浮かんでいた。

 

「クラウドか。…なんていうか、そのまんまだなぁ。」

つかめそうで、つかめない。

 

 

――でも、つかみたい。

 

 

 

 

クラウが好きそうだと思って、棚から引っ張りだしてきたチョコレートの入った箱。

その箱を開けると、ふわりとカカオの香りが鼻腔を擽る。

(あ、こいつの香りに似てる…)

甘く、切なく、愛らしい。ザックスは基本、甘い菓子を好まないが、

チョコレートだけは好きだ。ブラックのコーヒーとよく合うから。

 

「はい、アーン!」

素直に口を開くクラウドに、チョコレートの粒をひとつ。

その甘さに目を見開き、そしてやがては目を細めて嬉しそうな顔をする。

もしかすると、チョコレートを食べるのも初めてなのだろうか。

 

「ザックス、ザックス」

ザックスのシャツをくいくいと引っ張って、まるで「もう一個」と強請るその表情は、

なんていうか凶悪なぐらいに、

「オマエなぁ…そういうの、男心をくすぐってるって、わかってないだろ。」

そう不満を漏らしながらも、その言葉の意味をクラウドがわからないことにやっぱり安心して、

またひとつ、チョコレートを彼の唇へと運んだ。

 

そうすると幸せそうに顔を綻ばせて、また「ザックス」と自分の名前を繰り返し呼ぶ。

もしかするとクラウドは、チョコレートを「ザックス」だと勘違いしているのだろうか。

それも、悪くない。

 

 

チョコレートを強請るように、自分を強請ってもらえたらどんなにいいだろう。

 

 

 「いくらでもくれてやるから。…オマエになら、全部やる。」

箱の中のチョコレートを食べ終わって、もう一度その名を強請られたら、

今度はその愛らしい唇にキスしてみようか――

 

そんな不埒なことを考えながら、でも結局クラウドに泣かれるのが怖くてそんなことは実行できず、

コンビニにチョコレートを買いに走ることになるのだけど、それは少し後のこと。

 

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO いただいた拍手に、心からの感謝をこめて。(2012.06.11 初出)

 

 

 

 


 

 

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