*ザックスとクラウドが国民的アイドルだったら…という頭の悪いラブコメ・現パロです。
  二人の出逢いについては、pixivのシリアス番外編でちょっと触れてます。ので、よろしければどうぞ。


「トモダチ」でも「恋人」でも足りない。
心でも体でもない、魂で繋がっている…
そんな二人の関係は、そう、

―――Under Lover
(月刊MUSIC ULTEMAGAZINE巻頭ページより抜粋)





俺は、家では野党だ。政権は与党が握っている。

「クラウド、今日天ぷら食いにいこうぜ!」
給料入ったばかりだから、ちょっと贅沢して雰囲気のいい料亭に行かないか、と。
車のキーを揺らして誘えば、てっきりクラウドも頷いてくれるかと思ったのに。
「俺、おでんが食いたい。」
あっさり俺の意見に『NO』と返す。

「天ぷらがいい。こないだオマエも行きたいって言ってたじゃん。」
せっかく予約したのに。ししおどしのある庭が見える、静かで趣のある席をずっと狙っていて、ようやくとれたんだ。
「おでん。」
「や、少なくてもおでんはないな。」
最近暑くなってきたし、冷えたビールに天ぷらのかき揚げ――そっちの方がいいに決まってる。

「おでん。」
「やっぱ、天ぷらだって、」
「おでん。」

もはや『おでん』の三文字しか語らなくなった相手に、俺が勝てるわけがない。
結局今夜俺は、「やっぱおでんで正解だな!」と汗をかきながら、大根をふうふうしているはず。
唇にビールの泡をつけて、美味しいねって笑うあの子を見ていたら、きっと俺の胃袋は大満足なんだ。







結局、野党だから。


週末はどこに出かけようかって、ベッドの中で相談し合う。
「海にいこっか!」
「山がいい。」
「や、今度は譲らない。絶対海。暑くなってきたし、ビキニの女の子もいるかもよ〜?」
「山がいい。山菜とってる、元気なおばちゃんがいるかもよ。」
「だから?!」
結局、俺の意見なんて、あってないようなもの。
今度の土曜日は、「山、最高!」って言いながら、俺はクラウドの手を引いて歩くんだ。
山菜採りをしている元気なおばちゃんに一礼をすれば、「可愛いカップルだねえ」って目を細められて。
山頂にたどり着く頃には、もう我慢なんかできない。
「好きだー!!」って声の限りに叫べば、「ばかじゃない」って笑うその横顔、それだけで俺の心は満足してしまう。




新しいソファを買おうとすれば、あいつは黒がいいと言う。
だから俺は、わざと白がいいって反対したりする。本当はどっちでもいい。
どっちでもいいけど、あいつの「お願い」っていう上目遣いを俺は待っているだけ。
甘えるのが苦手で、一人でも平気ですって顔で強がっていて、でも本当は誰よりも寂しがりやで不器用な君を――
世界一甘やかしてあげたいだけなんだ。

どんなお願いも聞いてあげる。俺にできることだったら、何でも叶えてあげる。
我儘を言ってもいいし、拗ねてもいいよ。最後には絶対、俺が折れてあげる。
掃除が苦手でも、朝ひとりで起きられなくっても、Gがつく虫を殺せないって俺におしつけてもいいよ。
…その代わり、ひとつぐらい俺が決めてもいいだろ?ひとつだけ、だからさ。



「なに?」
「―――ずっと、こうやって、一緒にいような。」



夕焼けでくっきりと浮かぶ二人分の影。
この影の伸びる先には、白い屋根の家が待っている。
俺たちが喧嘩したり笑いあったり、あくびが出るほど退屈で、けれど歌いだしたくなるような幸福な毎日、それが待っているんだ。
昨日そうだったように。今日そうだったように。明日もあさっても、10年後も、100年後だってきっと。

「……。」
繋いだ手に力をこめれば、クラウドは興味ないって顔をしながら。
ぎゅっと、握り返してくる。







俺は、生涯野党だけど。――反対意見は認めない。








*************


「―――っていう、あのCMやばかったよね!!!」
「神羅ハウスのでしょ?!見た見た!なにあれ、ついにあの二人結婚しちゃったわけ?!」
「やーん!あのざっくんのスーツ姿、超セクシー!」
「クラウドのパジャマ姿の方がツボだよっ!萌え袖!!」
「あのパジャマ、絶対おそろいだよね!」
「山でクラウドが、おんぶ強請るとこ好き!ザックスも文句いいながら、超嬉しそうだし。」
「クラウド好きだーとかって叫んじゃってさ。あの後ザックス、超照れてたし。あれってマジじゃないの?!」
「最後のシーンで、手を繋いで帰るところ。クラウドの涙に、私までもらい泣きしちゃったよ…!
あんだけツンツンしといて、最後に泣いちゃうとか…あの子なんなの?!どんだけツンデレ極めてんの?!」
「それを優しく見つめるザックス…包容力やばいよね!さすが抱かれたい男ナンバー1!!」
「本当、さっさと結婚しちゃえ!!!――『Under Lover』!!」






Under Lover=\―恋人未満、を意味するその言葉。
朝のニュース番組や昼間のトークバラエティ、夜は歌番組ヤドラマ、そして繋ぎに流れるCM――
まさに24時間目にするその名前は、国民の老若男女全てが知っている。
半年前にCDデビューをした、超人気アイドルユニットグループの名前である。
彼らの魅力を表現するならば、まずは歌唱力、ダンス、キャラクター、ビジュアル、さらには演技力まで…
一言で言い表すことなど到底できない。それこそ多面的な引力が彼らにはある。

しかし何といっても、人々が魅かれてやまないのは。
二人の仲の良さ≠ナはないだろうか――



Under Lover≠ヘ美形男子二人で構成され、ともにメインボーカルを務めているが、
セクシーで男性的な声を持つザックスと、透き通った中性的な声を持つクラウドはその声質が真逆であり、
相反するからこそ互いの声が引き立ち、そして誰しもを魅了するハーモニーが生まれるのだという。



まず一人目のザックス=フェアは18才。
黒髪に精悍な顔つき、186pという高身長に鍛えられたボディバランスを持つ彼は、もともとモデル出身。
抜群の運動能力とリズム間で魅せる、彼のアクロバティックなダンスは、コンサ−トにおいて一番の華である。
そして天性のコミュニケーション能力で、トーク番組やラジオ放送で笑いをとるのは当然、
以外なところで、ニュースやドキュメンタリーでもその雑学や知識、それに愚直なまでの正義感を見せるものだから、幅広い年齢層の女性から熱い支持を得ているようだ。
人好きのする笑顔はたまらなく爽やかで、漫画のように白い歯が光る男。
そして男性的な肉体美をもち、女性には紳士で優しく、きっとセックスだってとびきり上手いはず――
ベッドの中、あの甘いバリトンで愛を囁かれたら…と、女は思わず夢想する。
ちなみに、先月の着ボイスのダウンロードランキングは彼の「メール、いらっしゃいませー!」が堂々1位である。

一度でいいから彼に抱かれてみたい、と。
妙齢の女性のハートを罪深いほどに打ち抜いたのが、ザックスという男であった。



そして二人目が、クラウドストライフ。16歳。
眩しいほどの金髪に、陶器のような白い肌。長い睫毛にガラス細工のように美しいアイスブルーの瞳。
ザックスとは対照的に、儚い雰囲気の美少年である。
その愛らしさはそこらの女性アイドルでは叶うはずもなく、清廉であるのにどうにも色気があり、恋人にしたい女性ランキングに、性差の壁をぶち破って1位なってしまったという不憫な栄光を持つ。
そんなクラウドはミステリアスな部分が多く、彼の過去はあまり明かされていない。
もともとは孤児院で育ち聖歌隊で歌っていたとか、会員制の超高級クラブで歌っていたとか。
かつては俳優希望で汚れた業界人により、強制的にAVを撮られたことがあるとか…
限りなく信憑性も根拠もないような噂ばかりが、先行している。
加えて、彼は多くを話すことは無く、ポーカーフェイスを地でいく男だ。謎は深まるばかりである。
けれどそんな言葉の少ないクラウドが作詞をし、歌いあげるラブソングは、優しく、切なく、狂おしいほどの愛に満ちていて…ときに涙を流して歌うその姿に、男も女も恋に堕ちる。
ドラマやCMでの演技力には定評があり、またトーク番組やクイズ番組での「天然」を思わせる突飛な発言も話題である。
冷淡で理知的に見えるその外見からは考えらないようなギャップ、たとえばクリスマスイブの夜はサンタクロースが空を普通に飛んでいると信じている等――(マニアックなことは知っているのだけど、誰もが知っているような常識を知らないのだ)、そんなところが不思議で可愛いと皆の笑いを誘う。
逆にボケ担当かと思わせるザックスが突っ込むものだから、その掛け合いが実に面白い。
繊細で表現力のあるダンスを得意とするクラウドは、ザックスとは異なり、それほどアクロバティックで過激な動きはない。
だがその細すぎる腰をくねらすたびに、たまらなく形のいい小さな尻を揺らすたびに、誰しもが劣情を抱いてしまう。

一度でいいから抱いてみたい、と。
まっとうに生きてきた男たちの道を罪深いほどに外してしまったのが、クラウドという少年であった。
…ちなみに、性別は正式には発表されておらず、実のところは不明である。






*********



二人は互いを一番の「トモダチ」と宣言しており、その仲の良さは衆知の事実である。
コンサートでは、ザックスがクラウドを後ろから抱き締めて歌ったり、感極まってくるとクラウドを姫抱きにして ザックスがお姫様本人に殴られたりと、そんな二人のやりとりはファンにとってライブのこのうえない醍醐味である。
テレビの歌番組でも、後ろの席でザックスがクラウドの頬をつんつん突いていただとか、逆にクラウドが彼を引き寄せて何かを耳打ちしていただとか、お茶の間では毎日そんな発見で騒がれる。
女性関係のパパラッチが多いザックスは、週刊誌で撮られたアイドル女性との事実無根な噂を問われるたびに、
「俺はクラウドに恥じることはしない。」「クラウドより魅力的な子なんていない。」「女の子はみんな好きだけど、クラウドは愛してる。」
と、濃すぎるのではないかというほどの友情を見せつけたりもした。


「――好きな女の子のタイプ?そんなの、クラウドでしょ。あいつじゃないともう勃起しないし。」


さすがにこのコメントには、後から事務所より訂正が入ることになる。
「彼は、クラウドの作詞に興奮すると言いたかったんですよ。歌が恋人というやつですね。言葉足らずで申し訳ない。」と、マネージャーが汗をかきながら説明していたのは記憶に新しい。
ちなみにこのマネージャーのカンセルという男、情報取集能力が凄まじく、敏腕で有名であるが…
なにかとゴシップの多い二人(とくにザックス)に苦労しているため、彼女を作る余裕もないのだとか。不憫である。






何はともあれ、女性とは「仲のいい男の子同士」というものに好感を持つ生き物ではないだろうか。
険悪であるよりは、やはり和気あいあいと話している方が見ている分にも楽しいし、ほっこりと温かい気持ちにさせられる。
さらに一部の女性は、「仲のいい男の子同士」というものに異常な興奮を覚える生き物もいる。
仲良く絡み合う美形(←ここ重要)の二人組に、いわゆる萌えという無限の可能性を感じ、
どっちが攻めでどっちが受けで、どっちがSでどっちがMで、ヘタレ攻めで誘い受けか、はたまた鬼畜攻めで最後にはラブ&ピースもいい、などと…
妄想という小宇宙(コスモ)を形成するのである。
――そう、それは腐女子、という住民だ。

ザックスとクラウド。二人が仲良く寄り添えば、女性たちは歓喜し、男性たちは悲鳴を上げた。
いずれにしろ、それらファンの叫びはUnder Lover≠フ人気をさらに広く、そして濃いものへとしていったのである。






そしてついに、この夏――Under Lover%人が主演の映画が公開された。
【CRISIS CORE ―FINAL FANTASY VII】というタイトルは、いわずもがな、某有名ゲーム作品を実写化したものである。
英雄になりたいと夢を追ってソルジャーになった青年ザックスが、美しく薄幸な少年兵クラウドと友情を育み、傷つき、愛して、そして――
彼の持つ誇り、夢、勇気、愛…降りしきる雨の中、その全てを受け取ったクラウドが。
死にゆく親友を抱きしめながら咆哮する衝撃のラストシーンは、劇場内の観客全ての心を打ち砕き、皆が狂ったように泣いたという。

苦しい時を経て、奇跡的に死んだはずの友が生還し、二人で約束していた何でも屋を営む――
そんな続編を待望するファンの声は、後を絶たない。
奇才と謳われるルーファウス監督は、先日のエッジ映画祭にて、
「楽しみにしているがいい、我ら神羅カンパニーの再建だ。」と次回作を匂わすコメントを残している。らしい。








とか、そんなアイドルパロをYoutubeのザックラアイドルMMDを見て、つい妄想してしまいました。
やりたい放題ごめんなさい。_(:3」∠)_(2014.05.19初出  C-brand/ MOCOCO)


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