C-brand

 

 


 

 

 



 

  

 

 

【ご注意】

@      ザックラ同室設定、相性最悪のルームメイトです。

ザックスがクラウドにメロメロ〜!な、いつものノリはありません。

A      とか言って、どーせそのうちデレッデレになるんですよね。ざっくん…

B      露骨な性的描写あり(予定)。18歳以上の方の閲覧推奨です。

 

 

 

LIAR1

君に、猫は嫌いだと嘘をつく。

 

 

どうしても「相性の悪い相手」ってのは、いる。…らしい。

 

 

自慢じゃないが、故郷のゴンガガでも、ミッドガルでに出てきてからも。

人間関係に困ったことなんて、一度もなかった。

一度会えばみんな友達、一度口説けばみんなカノジョ。

得意の笑顔とトークで、誰とだって仲良くやってきた。

 

上官からも、気に入られていてウケがいい。

師匠のアンジールには、「オマエには、手をやいたもんだ」、と酒を飲むたびに遠い目で語られるけど、

まあ、今となっては笑い話だ。

 

後輩からだって、結構慕われている。それは俺の自惚れじゃなくて。

実際、後輩の飲み会なんかに、ソルジャーの中では俺だけが誘われたりする。

まあ、客寄せパンダといったらそれまでだけど、俺が参加すると女の子の参加率が高くなるから…

っていうのもあるかもしれない。

でも、男同士の飲み会だって、俺はよく呼ばれる。後輩の恋愛相談にのることだって、ざらだ。

 

言うまでもないけど、女の子にも人気がある。

今をときめく売れっ子ソルジャー、しかもこの甘いマスク。

女の子は神様です!の精神のもと、フェミニストっぷりは徹底している。

優しく真摯に、そしてムードを大事にすれば。女の子ってのは、すぐ体を許してくれるもんだ。

 

 

 

 


 

「さいっていだな。」

 

―――きた。

俺にすぐ噛みついてくる、シャム猫が一匹。

高級そうな毛をふわふわさせて、大きな目をぐりぐりさせて、小さな顎とツンとそらして。

「またオマエかよ。…なんでオマエ、すぐ俺につっかかってくるわけ。」

同じ部屋に住んでいるシャム猫――もとい、後輩のクラウドは、俺の頭を悩ませる唯一の相手だ。

「アンタが、俺の前でくっだらない電話、してるからだろ。」

「盗み聞きかあ?ガキが聞くには、まだ早いっての。」

「は?!アンタが後から入ってきたんだろ!俺はここで勉強してるんだ。邪魔すんな。」

「オマエこそ、俺の恋路の邪魔すんなっての!」

 

日曜の午後、珍しく予定が空いていて、電話で女の子をデートに誘っていた。

ジェシカちゃん(看護婦さんね)は夜勤があって無理、アンナちゃん(人妻ね)は旦那が出張から帰ってきたから

無理、マリーちゃん(神羅の受付嬢ね)は「今日生理だから無理」ときた。

食事だけなら、という返事に、ヤれなきゃ意味ないだろと思ってやんわり断ったら、

この可愛気の欠片もないシャム猫が噛みついてきたってわけ。

 

共用スペースのリビングにある、二人掛けのソファ。

いつも、これでもかってぐらいお互い端っこに座って、距離を図ろうとするんだけど。

しょせんは同じソファ――嫌でも、互いの行動が目に入ってしまう。

いっそ、自分の寝室に入ってしまえば、摩擦もないんだろうけど。

こっちが気を遣って、屋に閉じこもるってのは面白くないし、そもそも性に合ってない。

リビングのソファは、俺が買ってきたお気に入りだし。遠慮するなら、相手の方だろう。

それをこいつに言うと、「俺の部屋は、アンタのとトコと違ってテレビがないんだよ!」とか、

「部屋に窓がないから目に悪い。」とか言い返してくる。

 

 

結局は、あれだ。互いの縄張り争い、ってとこか。

 

 

今まで、どんな相手とだって、それなりに上手く付き合ってきた。

人当たりの良さだけは自信があるし、友達も多い。ついでに、彼女も多い。

それが、こいつ相手だと…どうもうまくいかない。

同室になってから、約1年。最初は俺だって、仲良くやろうと笑顔を振り撒いてみたもんだ。

だけど、笑顔で挨拶した最初の瞬間からそっぽを向くし、

互いを知ろうと、強引にメシに誘おうとしたら、腕をひっかかれたことだってある。

さすがの俺も、手に負えない。まるで王室のお高い猫。

こういうのは「ツンデレ」とは呼ばない。ただの「ツンツン」っていうんだ。

 

今となっては、顔を合わせれば喧嘩ばかりしている。

趣味だって全然合わないから、テレビのチャンネル争いだって日常茶飯事。

俺はお笑い番組が見たいのに、クラウドのやつときたら「世界遺産20選」とか…

お前はセカンドライフか!ってぐらい、ジジ臭い番組を好む。

 

唯一、週末の動物番組だけは、お互い好きで一緒にリビングで見てるけど。

実はその時間が、一週間の楽しみだったりする。デートも、その日は絶対いれない。

だって、俺は無類の動物好き。――とくに、猫が好きだ。

だけど、それをこいつには言わない。

動物番組を楽しみにしてるなんて知られるのはシャクだし、猫が好きなんていったら。

まるで、ふわふわで目がぐりぐりしててツンとお高くとまってる、誰かさんを好きだって、言ってるみたいだ。

…だから、絶対に。猫が好きだなんて、言えない。

 

 

 

 


 

「…別に。別に、アンタが何人の子と遊ぼうと勝手だけど、でも」

いつもいつも、こいつは、人の目を見て喋ろうとしない。

嫌なものは見ない、っていうその態度に、また腹がたつ。

――俺は不潔だとでも?不満があるなら、そう口に出して言えばいい。

「でも…女の子が、可哀想だ。」

こいつにしては珍しく、俺に意見してきたから、少なからず驚いた。

普段は、俺が話しかけてみたって、華麗にシカトしてみせるのに。

 

「なんでだよ。お互い満足してんだから、需要と供給は成り立ってんだろ?」

「成り立ってない。向こうは本気でも、アンタは遊びなんだろ。」

「遊びじゃねえよ。ちゃんと好きだし、俺なりに大事にしてる。」

ただ、それが一晩限定ってだけで。その夜だけは、本気で恋をしている。

…つもりだ。

 

「ザックスは…」

「え?」

 

「ザックスは、何もわかってない。」

 

こいつに。クラウドに、名前を呼ばれたのは、そういえば初めてだった気がする。

いつも俺のことを「アンタ」って呼ぶだけで、ひょっとすると、俺の名前を知らないんじゃないかと思っていたから。

胸のあたりが、一瞬はねた。

「なにが、」

 

 

 

「想ってる相手に、想い返してもらえないのって。……きっと、すごく悲しいよ。」

 

 

 

そう言うクラウドと――目が、合った。

「どうでもいいけどね」と慌てて付け加えて、次の瞬間には、目を反らされたけれど。

その時、知った気がした。

知りたくないけど、知ってしまった。

 

 

 

――この子の心の中に、誰かがいる。

絶対に叶わない恋を、クラウドは。

 

 

 

くだらないな、と思った。

人は、自分のために生きている。

自分の欲しいものを手にいれて、自分のしたいことをして、自分が気持ちよくなって。

そうあるはずなのに、不毛な恋をするなんて、あまりに馬鹿げたことだ。

そう思うから、クラウドの言葉も、その心も。―――ひどく、滑稽。

 

その愚かさに、身に覚えがあるような、気がした。

もうずっと前から知っているような。

…そんな気さえしたけれど、気付かないふりをした。

 

 

 

そして、「ばからしい」と。鼻で笑った。

 

 

 

 

すぐひっかいてくるし、噛みついてくるし。

追いかけると逃げ出すくせに、

他の子を追いかけると泣きそうな顔。

 

猫ってのは、本当に可愛げがない。

…だけど本当は、ふわふわの毛を撫でてみたかった。

 

あくまで、猫の話だぞ?

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (201144 初出)

1話のみ、ブログより転載です。

  

 


 

 

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