【ご注意】
@ ザックラ同室設定、相性最悪のルームメイトです。
ザックスがクラウドにメロメロ〜!な、いつものノリはありません。
A とか言って、どーせそのうちデレッデレになるんですよね。ざっくん…
B 露骨な性的描写あり(予定)。18歳以上の方の閲覧推奨です。
LIAR.2
手錠プレイなんか趣味じゃない。
これって、悪夢だ。
いったい何がどうして、こうなってしまったのか――本当にただの悪夢だっていうなら、早く覚めてほしい。
言っておくけど、俺は女の子が大好きだ。
男なんだから当たり前だろうという話なんだけど、世の中自分の常識だけが全てじゃない。
中には…俺の周りにも、男もいけるってやつはままいる。
皆まで言わなくてもわかるかな。
「いける」っていうのは、むさい男同士で恋愛のアレコレができるかどうかっていう話だ。
なんといっても、女枯れした軍部。
そういう一風変わった恋愛のカタチ≠ェ生まれても、まあ可能性としてゼロじゃない。
それを想像して、面白いかと言われれば一向に面白くない。
少なくとも、野郎同士のXXXなんて、その単語をきいただけで鳥肌がたつ…
それぐらいには、楽しい話題ではない。少なくても俺にとってはそうだ。
だからといって、偏見があるわけじゃない。
恋愛ってのは、自由なもんだ。
人妻相手にスリルを求めようと、ホステス相手に有り金全部貢ごうと、
それこそ男相手にときめいてしまったとしても。
モラルもインモラルも含めて、個人の自由だ。
人様の恋愛に口出しできるほど、俺だって清い生活を送っているわけじゃなし、
そもそも人がどんな恋愛をしていても、どんな趣味があっても、どんなフェティシズムに走っても、全く興味はない。
持つべき意見もない。
楽しければいいんじゃない?気持ち良ければいいじゃない?それが率直な感想。
でもそれはあくまで――
俺が、安全な位置からの傍観者だったら…ていう話だ。
当事者として、俺を巻き込もうっていうんなら、俺は断固としてそれを拒否する。
偏見だ差別だと批難されようとも、俺は声を大にして叫ぶね。
「男なんか絶対に好きにならない!」って。
とどのつまりは。
俺は、男相手には勃たない。
絶対。
神に誓って、絶対!
ああ、そろそろ、冒頭の件について触れようか。
「悪夢」の始まりは、俺とあいつ≠フ些細な喧嘩だったと思う。
何が原因だったか。どっちが悪かったのか。…はっきりとしたことは、思い出せない。
思い出せないぐらいに、とるにたらないような、つまらない意地の張り合いだったともいえる。
だけど、タイミングが悪かった。非常に悪かった。
とにかくそれに尽きる。
「軍法会議にかけられなかっただけ、ありがたく思え。」
神羅の英雄――俺の直属の上司であるセフィロスが、いつものように銀の髪をなびかせてそう言った。
いや、なびくはずの長い銀髪が、俺の視界には映らない。
「一週間だ。せいぜい、自分たちの愚行を悔い改めることだな。」
「愚行って…。セフィロス、そっちのが似合ってんぞ?2割は男前に見えるし!」
「ほう、死にたいらしいな。」
ニヤリ、と笑う英雄に背筋が凍った。目が笑ってない!
「ノーサー!!」
今、俺を見下ろすセフィロスは――
あのトレードマークである長いなが〜い銀髪を持ち合わせていなかった。
これは、いったいどうして神羅の英雄が「爽やか短髪ヘア」になってしまったかという、忌まわしき話だ。
聞きたいか?
きっと後悔すると思うけど、聞きたいか?
俺は、そう、後悔している。今から遡ること、ちょう4時間前の愚行だ。
俺のルームメイトであり、この世で最もそりの合わない相手。
クラウド≠ニ、非常につまらない喧嘩をした。
普段部屋の中で言い争ってばかりいるけど、一歩部屋の外に出ればあまり口を利かない。
というより、他人のふりだ。
外ではあくまで「上司と部下」であり、そのスタイルを徹底して貫き通すクラウドは、
俺と廊下ですれ違っても、ミッションで同行しても、敬礼こそすれそれ以上の会話をしようとはしない。
だけど今回は、少しだけかってが違った。
Bランクのミッション帰り、輸送トラックの後部車両の中。
もう一台の輸送車にあぶれた俺たちは、二人きりになった。
他に同乗している一般兵もソルジャーもいなかったから、
つい部屋の中の縄張り争いをここにも持ち込んでしまったのだ。
車酔いしているらしいクラウドの体調を気遣ったつもりで、彼の背をさすってやったのが火種になった気がする。
ああ、そうだ。
親切心でやったことなのに、「触るな」とあいつに腕をはねのけられて、むっとして。
「可愛くねえ」とか、「弱っちいヤツ」とか、言わなくていい嫌味みたいなことを俺が言ってしまった。
冷静に考えれば、俺にも大いに否があった。
いや、俺が悪かった。
あいつが何を言われて腹がたつか、何を言われて傷つくか。…少し考えればわかることなんだから。
俺の言葉が、クラウドの神羅ビルなみに高いプライドを刺激してしまったんだろう。
案の定食ってかかってきたクラウドに、つい俺も条件反射でつかみかかって、取っ組み合いになった。
それなりに力をいれる必要があるぐらいには、クラウドもなかなか根性があるというのか…
とてもじゃないが、この子からそんな力が出てくるとは誰も想像つかないだろう。
車酔いして顔色が真っ青なくせに、それに女の子みたいな(女の子よりも?)可愛い顔してるくせに、
なんつー腕力。それに根性。
この愛らしい見た目に騙されたら、痛い目をみるところだ。
でも、しょせんはソルジャーと一般兵。
俺が少し本気になれば、クラウドなんて簡単にのせるってもんだ。
「ほっせー腕!もっと肉くえよ、肉!」
本当は、結構やるのね…と吃驚していたんだけど、そんな表情はおくびも見せずに。
いかにも余裕があります、って声で笑ってみせた。
「…ふざ、けんな…っ!俺だって…」
負けん気の強いクラウドが、歯を食いしばって俺に抵抗を続ける。
(なんか、この状況。)
輸送トラックの屋内、薄暗い閉鎖された環境。二人きり…。
そして、女の子みたいに(女の子よりも?)可愛いクラウドに覆いかぶさって、
その細い両の腕の自由を奪い、彼は屈辱のためか大きな瞳に涙を浮かべ――
なんか、なんか、なんていうか、
(えろくないか?)
なんて、突拍子もないことを考えてしまう。
いやいやいや、待て!俺はいたってノーマルだ。
男に興味がないどころか、金を払ってでもお断りしたい。
男相手なんて、挨拶のキスもハグも勘弁だ。セックスなんて、想像もしたくない。
想像もしたくないってのに、
「ザ…、はな、せ…っこの、」
でも、悔しそうに顔を歪めるクラウドの顔。苦しそうに乱れる呼吸。
それに、俺の体の下にあるクラウドの小さな体――
なんていうか、不自然なほど自然に、二人の体が重なっている。
まるで、ちょっと強引なエッチをしているみたいに、
(…やべえ。俺、まさか勃…)
「盛るな、やかましい。」
突如、俺の背後からふってきた声に、ぎくりとした。
(あれ?)
この輸送トラックの中には、俺とクラウド二人「だけ」ではなかったのだ。
「発情期か、子犬。」
そういえば、あの『神羅の英雄さま』が一緒の任務だった――
隅っこで居眠りしてたから、つい目に入れてなかったけど。
「さ、盛ってなんかねえよ!なんで俺がこんな可愛くないやつに…」
ついむきになって、セフィロスに向かって俺が言い返したその瞬間。
クラウドが小さな声で、何かを呟いた。
「え、」
クラウドの手首が熱い。そして、強い光。
それが「ほのお」系の魔法の発動なのだと気づいたときには、遅かった。
「うおっ!」
クラウドの体の上から跳ねあがり、ぎりぎりのところでその閃光から逃れるので精一杯だった。
一般兵とは思えない速い詠唱、それは認める。
だけど、この至近距離で魔法なんて――無茶苦茶すぎる!
たいした炎じゃないけど、それでも当たれば軽く火傷するぞ。
「あっぶねえな!この狭い空間でマテリア使うバカがいるか!」
「どうせ避けるんだろ!なんてったってソルジャー様なんだからな。」
「俺は避けれても、トラックが燃えたらどうすんだよ!」
「だったら避けるなよ!」
「熱いだろが!」
そんな言い争いをしているとき。…ふと、大きな事態に気がついた。
そういえば、俺が炎の魔法を避けた後、車体に魔法が当たるような振動も破壊音もなかった。
俺の後ろは、そういえば……
おそるおそる、まるで機械じかけのおもちゃのようにギギギ…と音をたてて振り返ると。
「……まあ、それなりに熱かったな。」
英雄が、炎を背負っている。
言っておくけど、イメージ映像でもなんでもなくって、本気で炎を背負っている。
いや、「背負っている」というより…
「ちょ…セフィロス!髪が燃えてんぞ!右!違うそっちは左だ!」
セフィロス自慢(かどうかは知らないけど)の髪が、見事に炎上していた。
そう、だから何度も言うけど、マジでタイミングが悪かったんだ。
(ああ、空気が重い…)
セフィロスの腰まであったロングヘアが、クラウドが放った「炎」の魔法のせいで、
右側だけちりちりなウェービーヘアになった。
そのあまりにシュールなヘアスタイルに、おそるおそる俺が「お客さん、カットしましょうか」と提案すると、
「やれ」と無表情のまま俺に命令する。
ああ、このカットが終わったとき。俺は正宗によって、綺麗に首をカットされているのだろうか。
言っておくけど、炎を放ったのはクラウドであって、俺ではない。
それなのに、なんで俺が命の危機に陥ってんの?これ、どういうこと?
その、クラウドはというと。
普段の無表情は相変わらずだけど、心なしか血の気がひいて青白くなっている。
英雄に謝罪することすら出来ないのか、暫く立ち竦んだあと、メモ紙を取り出して何かを綴り始める。
「ちょ…おまえ、遺書かいてんじゃねえよ!」
この子、無表情だけど、そうとうテンパってんね。
とか、そういうのに気を捕らわれていたら。
チョキチョキチョキチョキチョキチョキチョキチョキ…
(あれ?あれれ?)
――ロングヘアがトレードマークの英雄サマは、いったい何処にいったのでしょう。
すっかり短髪の…爽やかイケメンになっていた。
つまり、あれだ。
「お客さん、短く見えるけど、一週間もすればちょうどいい長さになりますよ!」
そう、切りすぎちゃいました。
ああ、死亡フラグ!!!
――まとめると、こうだ。
クラウドの罪は、マテリアを使って英雄の髪を炎上させたこと。
俺の罪は、英雄の髪をカットし過ぎてしまったこと。
二人の罪は、そもそも輸送トラックの中で、ガキみたいに喧嘩をしたこと。
そりゃ、ちょっとは反省してるよ。
クラウドとの喧嘩だって、あんな風に力に訴える必要はなかった。
いつもみたいに、あいつが食って掛かってきた時に「はいはい、」と言って、軽くいなせば良かったんだ。
だけど、
「だからって!なんだよこれは!こんな罰ゲームがあってたまるか!!」
「うるさいぞザックス。罰ゲームではない。正式な処罰だ。」
「どう考えてもアンタの趣味だろ!このドSソルジャー!」
「きゃんきゃん鳴く子犬にはお似合いだな。その首輪は。」
「首輪じゃねえし!腕輪だし!」
科研に戻ってきて、任務の後の簡単なメディカルチェックを受けた後。
白衣姿の連中に押さえつけられて、手首に悪趣味な腕輪が嵌められた。
いったい何だと寄しんでいると、俺と同じく調整を終えた英雄が壁にもたれて口を開いた。
「これはお前たちへの贈り物だ。」と。
「これ、アンタの仕業か?!」
「オマエの仲のいい一般兵と揃いだ。喜べ。」
「はあ?何いって――っていうか、この怪しい腕輪なんなんだよ?」
新しいデザインの防具かと思ったけど、マテリア穴がついていない。だけど、魔晄の反応をわずかに感じる。
中心にごく小さな石が埋め込まれていて、そこが青く光っている。これは、何かのマテリアなのか?
ソルジャーと違ってメディカルチェックはなく、俺のすぐ近くでただ待機していたクラウドが、
彼自身の腕輪に触れながら、おそるおそる…一言だけ、英雄に尋ねた。
「この石…はかい≠フマテリア…ですか?」
「ほう。クラウド、といったか。よく知っているな。」
「はかい〜?なんだその物騒な名前は。」
「…マテリア教本の18章に載ってるだろ。もともとは白い石で、魔力をいれることで青く光る。
術者が「破壊」を命令すると、炭素と結合して大きな爆発を起こす…って、」
「おま、セフィロス!俺たちを殺す気かよ?!」
ドSどころか、鬼畜じゃん!いや猟奇爆弾魔だ!快楽殺人者だ!
あんな冗談みたいないないざこざで、本気で命をとろうとするなんて。
「安心しろ、そんなつもりはない。その石が爆発を起こすのは、俺が命令する他にもうひとつある。
その石は、元来一つの組織を二つに分裂させている。その二つの組織が一定以上の距離をとると――」
「とると?」
「ドカン、だ。」
「ははは…ハハ?」
ちょっとちょっと、そこ笑うとこじゃないの?最近都会で流行の、ブラックジョークってやつじゃないの?
なんで俺一人で笑ってんの?
と、思ったら。ものすっごく嫌な笑い声が近づいてくる。
「クァクァクァ!ちょうど、サンプルを探しててな。いい実験台がいて助かったよ!」
いつも牛乳瓶の蓋みたいなメガネをかけた宝条博士が、高らかに笑う。
いや笑うとこだって言ったけど、そういう笑い方はマジやめて。
ただのマッド・サイエンティストにしか見えないから!
「一週間、これをつけて生活しろ。おまえら二人ともだ。」
セフィロスを怒らせても爆発、無理矢理腕輪をはずそうとしても爆発するという。
つまり、これはあれなのか。
俺の腕輪の石と、クラウドの腕輪の石。
それはもともと同じ組織でできていて、一定の距離をとると爆発して俺の…俺たちの命はない。
(一定の距離…?)
ああ、聞きたくないけど、聞いておかなくてはいけない。ごくり。
「一定の距離、って。何キロ…?」
「安心しろ、生活に困るレベルではない。」
「あ、そうなん…」
「1メートルだ。」
開いた口が塞がらない。
比喩じゃなくって、俺は口をあんぐり開けたまま、たっぷり10分間は固まっていたと思う。
ああ、悪夢だ…
相性最悪のルームメイト。
目が合うだけで喧嘩して、肩が触れただけで睨み合って、チャンネル争いも縄張り争いも日常茶飯事。
趣味も性格も面白いぐらいに合わない、そんなやつと同室だっていうだけでついてないのに。
そんなどうあっても「そり」の合わない奴と、24時間カケル7日間、べったりしないといけないって
――このうえない拷問だろ!
しかも、女の子ならともかく、相手はむさい野郎だ。
…いや、「むさい」というのは激しく語弊があるな、どちらかというと男くさいのは俺の方であって。
あいつからは、むしろいつも花みたいな甘い匂いがする。
ふわふわの髪が香るのか、柔軟剤の匂いなのかわかんないけど。
とにかくこいつは、汗臭さとは無縁で、見た目も香りも清廉な少女のようではある。
(いや、そうじゃねえだろ!)
1メートルだぞ。そんなの、うっかり距離を離しちゃって、ドカン。なんてこともあり得るだろう。
でも「うっかり」じゃすまない。こっちは(クラウドもだけど)命がかかってるんだ。
「――だから、これを使う。言っておくけど、不本意なんだからな。」
「……何これ。どこから持ってきたわけ?アンタって、こういう趣味…」
「ちげえよ!これはタークスのダチから借りたの!こういうプレイも、たまには女の子も喜ぶかなって…」
「最低。」
「だあ!だから女の子に使いたかったわけで、おまえと使いたいわけじゃねえ!本当、災難…」
「俺からすれば、災難どころか厄災だ。業火の生贄だ。ソロモンの悪夢だ。」
そこまで言うか。
俺の左手首、そしてクラウドの右手首には、例の悪趣味な腕輪。
そして、その互いの腕を繋ぐのが――銀色の『手錠』。
タークスの悪友・レノからおふざけで貰った、いわゆる大人のオモチャ≠セ。
こんな色気の欠片もないことに、よもや使う日がこようとは…
まあ、たかが一週間じゃないか。
大きなミッションも入っていないし、部屋で大人しくしていればあっという間だろ。
元来の能天気さは、こんなときに心強く作用する。
そうそう、この王室の気高いニャンコさまに、これだけは言っておかなきゃな。
「クラウド、いいか――」
他人同士が共同生活をする上で、我慢や辛抱は付き物なんだ。
「俺の傍から、絶対に離れんなよ。」
自分で言っておきながら、なんか恥ずかしいセリフだな。
「……そっちこそ。ふらふら女の子のとこ、出かけんなよ。バカ犬。」
そう返すクラウドの言葉。
なんか、少し照れくさいような、こそばゆいような、そんな気がするのって俺だけ?ねえ俺だけ?
そんなわけで、ものすっご〜〜〜〜く不本意ではあるけれど。
相性最悪なルームメイトと24時間密着せざるを得ない、なんとも奇妙な共同生活が始まった。
あのさあ、男なんだから。
手錠プレイに興味があって何が悪い!
なんて言ったら、オマエは「この変態」って
俺をばい菌扱いするのかな…
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