【ご注意】
@ ザックラ同室設定、相性最悪のルームメイトです。
ザックスがクラウドにメロメロ〜!な、いつものノリはありません。
A とか言って、どーせそのうちデレッデレになるんですよね。ざっくん…
B 露骨な性的描写あり(予定)。18歳以上の方の閲覧推奨です。
LIAR.3
一緒に風呂なんて、拷問だ。
のどかな休日の午後。
穏やかに流れる、平和な時間――…
「おい、引っ張るなよ!痛い!」
「引っ張ってんのはオマエだろ!こっちのが、いてえっての!」
「こっちに寄るなよ!ソファ狭いだろ!」
「馬鹿か!これ以上離れたら爆発するだろ!好きでくっついてるわけじゃねえし!」
「うっさいバカ犬。」
「なんだと〜?このニャンコヅラ!」
…平和な、時間?
昨夜は、規則正しく23時には就寝――
というか、この「現実」を受け入れられなかったもんだから、お互いさっさと眠りについた。…というのが正しい。
ミッション自体はそんなに難しくないものだったけど、いろいろあったから心も体も悲鳴をあげている。
目が覚めたときには、セフィロスの髪を炎上させたことや、悪趣味な『爆弾もどき』を腕に取り付けられていること、
それにクラウドと手錠で繋がれ、こうして同じベッドで眠らざるを得ないこと…
「実は全部夢でした!」っていうオチかもしれない。いや、きっとそうだ。
そんな淡い期待を抱いたまま、二人、泥のように眠ったのだった。
そうだ、これはきっと、「まさかの夢オチ」――――だったら良かったんだけど。
朝、自分のベッドの上で目を覚ますと。
俺の目の前5センチのところに、もの凄い可愛い寝顔があった。
思わず悲鳴をあげてしまいそうになって、それを寸でのところでかろうじて飲み込む。
悲しいかな――やっぱり、昨日の一連の出来事は夢じゃなかったらしい。
「あー、まぶし…」
7時間近く寝たからか。あるいは、朝日を反射させてキラキラ眩しい、目の前の金髪のせいか。
一気に脳が覚醒して、目が冴えていく。
煌めく金の髪に、艶めく白い肌、白いシーツ……正直、眩しすぎて目が痛いぐらいだ。
寝起きの目に、これは優しくない。
(こいつって、睫毛まで金色だったんだ…)
睫毛までキラキラと光っている。そりゃ、こっちの目が痛くなるってもんだ。
クラウドの寝顔を見たのは初めてだった。
そういえば、こんな至近距離でクラウドの表情を見ること自体、初めてだと思う。
いつも目を合わせただけで喧嘩するか、ツンと顔を反らされるかのどちらかだったから。
(…すっげー、透き通っちまいそう。)
よくよく見れば、本当に綺麗な顔だ。
クラウドの見目の良さは、軍内でも評判がいい。
神羅には事務職にも、受付嬢にも、タークスにだってレベルの高い女の子がいる。
そうであるに関わらず、男であるクラウドを狙う兵士・ソルジャーは少なくない。
今までソルジャー仲間でも「そこらの女より断然可愛い」とか「金払ってでも一発お願いしたい」とか
クラウドのことを言っている連中を見たことがある。
そういう奴らに俺は「しょせん男じゃん。趣味わりい!」と一笑してきた。
でも、こうしてみると――あんまり笑えない。
まるで生まれたての赤ん坊のように、真っ白で滑らかな肌。
化粧水や美容液を肌にはたきまくってる女の子たちが、こぞって羨ましがるだろう。
今は閉じられいるけど、大きな大きな瞳。
透き通ったガラス珠みたいで、この捻くれた性格のヤツが持ち主とは思えない。
そして、ふわふわ、つやつやな金髪。
多民族国家であるミッドガルでも、金髪はとにかく珍しい。
全然いないわけじゃないけど、今のところ俺の知っている金髪の持ち主は、
神羅の副社長と秘書課のお姉さん、それにクラウドだけだ。
実は、あの美人な秘書課のお姉さんは染めているのであって、本物のブロンドではない。
他のヘアを見たことがあるから、俺は知っている。(どこのヘアかは察してくれ。)
(こいつの髪は、地だよな…。すっげえキラキラしてる。)
そっと、その髪に手をのばす。
興味が引かれるのは、その珍しい金色だけじゃない。
ふわふわの猫の毛みたいに柔らかそうな手触り――
撫でてみたい、と思うのは動物愛護の精神からだ。他意はないぞ、誓って!
ジャラッ!
あ、そういえば。
「ん…、いた、」
俺の手首には、銀の手錠。そして、それはクラウドの手首に繋がっている。
クラウドの髪に手をのばした瞬間、当然ながらクラウドの手錠も引っ張られて、じゃらりと金属音が響いた。
それの音で、クラウドが眉をひそめる。
せっかく可愛い寝顔だったのに…俺にはわかる――
2数秒、このベイビーフェイスは、大魔神の如く形相に変わるだろう。
目をゆっくりと開いたクラウドの視線が、俺のそれと交わったとき。
状況を把握できないのか、数回目をぱちくりさせてから(睫毛がバシバシ音が鳴りそうだ)
その大きな瞳をこれでもかってぐらいに見開く。
「……え?な、んで………」
「よ!おはよーさん!」
無駄な努力かもしれないけど。
とりあえずは痴漢冤罪を訴えるために、笑顔で挨拶をしてみたものの――
バッチーン!!!!
「いってえええええ!」
「触るな変態!種馬ソルジャー!」
「ってえな!ばか野郎、ちげえよ!俺がオマエなんかに手ぇ出すわけねえだろ!」
勢いよく猫パンチ(ビンタ)を食らい、ついクラウドにむかって叫んだ。
言った後で、おまえ「なんか」って、あんまりいい言い方じゃないことに気づく。
クラウドは数秒間固まった後、昨夜の事件について思い当たったのか、視線を落とす。
「………」
痴漢だか強姦魔だかと間違えて俺をぶん殴っておいて、謝罪の言葉を言えないでいるクラウド。
でもその表情には、後悔の念が現れている。…本当に、素直じゃないニャンコ様だ。
「いや、今のは俺が悪かった。ごめん。」
「…え?」
「オマエなんか、って言った。本当に、そう思ってるわけじゃないから。」
…あれ?
なんで俺、クラウドに必死でフォローしてるんだ。まるで女の子相手にするみたいに。
クラウドも、そんな俺の発言に戸惑っているのか。視線をあっちにやったり、こっちにやったり…
その彼の仕草が、小動物みたいで可愛いな、なんて。
そんな考えを振り払うように、ゴホンとひとつ咳払いした。
「まあ、なんだ。これから一週間、一緒に生活するんだからさ。あんま喧嘩すんのはやめようぜ。」
少なくとも、この一週間だけは、仲の良い『トモダチ』ごっこしようじゃないの。
そう提案すると、クラウドがこくんと小さく頷いた。
…友好条約、成立、だな。
「オマエも、今日はオフだろ?」
連泊のミッションの翌日は、たいてい休暇になっている。俺もクラウドも休みのはずだ。
「とりあえず、ゆっくりメシでも食ってさ。その後は…そうだな、見たかったDVDたまってるし。オマエも見ねえ?」
せっかくの休日。
本当なら、女の子とデートしたいところだけど…この状況だ、まず無理だろうし。
かといって、隣にいながら二人全く別々のことやってるのも、味気ない気がした。
「……別に、いいけど。」
クラウドは相も変わらず、興味なさそうに頷くから。
俺も同じようにすました顔をしようとするんだけど――どうも顔が緩んでしまう。
なんか、少しだけ…本当に、少しだけだぞ?
ちょっと楽しみかな、なんて思う自分がいる。
こいつと、一緒にテレビ見たり、飯を食ったり、くだらない恋愛話なんかしたり…
今まで絶対に出来なかったことが、これから出来るっていうわけで。
結構、悪くない1週間になるんじゃない?
なんて思っていたのは、数分前の無知な俺。
「ザックス、トイレ長い!」
「おま…!そう言われると、出るもんも出ねえだろうが!」
しょせんは、死ぬほど相性の悪いルームメイト同士――
友好条約なんて、保たれたのは最初の数分だけだった。
起きて早々、こんなくだらない言い争いを繰り返している。
「クソするなら換気扇つけろよ!」
「だあッ!だからそう言われると、出るもんも出ねえっての!便秘になったらどうすんだ!」
可愛い顔して「クソ」なんて言うもんじゃない。
っていうか人が頑張って(?)きばってるときに、なんてデリカシーない子なのこいつは!
もちろん、トイレの中では手錠は外している。
クラウドは扉の外で待機しているわけだけど、便座から扉外まで1メートルと少しある。
だからクラウドは、ドアの隙間から腕をのばして俺と距離をとらないようにしているのだ。
もちろん、そんな状態だからトイレのドアは半開き。
覗こうと思えば覗くことも可能だ。いや、男のトイレタイムなんて、心から覗きたくないだろうけど。
後で選手交代(?)したとき、覚えてろよ…
想像はつかないけど、クラウドだって人間だ。大ぐらいするだろう。たぶん。
いくら可愛い顔してたって、アイドルじゃなし!(いやアイドルもするか?)
「早くしろ」とか「臭いから換気扇つけろ」とか、オマエが俺に言ったこと、そっくりそのまま返してやる!
…と、思っていたのに。
実際、クラウドの番になったとき、俺は一言も発することができなかった。
扉の向こうで、クラウドが大をしていたのか小をしていたのかはわからない。
わからないけど、少し開けたままのドアの隙間を、覗きたくて覗きたくて――
その葛藤に悶えるばかりで、クラウドに悪態つくのをすっかり失念していた。
もしも、この扉をあけたら、クラウドはどんな表情をするのだろう。
潔癖な彼のことだ、きっと、ものすごく怒るだろう。あるいは、恥ずかしがるかもしれない。
もしかすると、泣いちゃったりして…なんて考えるだけで、ごくりと喉が鳴る。
(…野郎のトイレ覗きたいとか、俺、変態くさい?)
いや、これはマニアの域だろう。
ジャーと水を流す音が聞こえて、クラウドがトイレから出てくる。
相変わらずつんとすましているけれど、その表情は少し気まずそうに見えなくもない。
さすがに、トイレを待たれるのは恥ずかしいらしい。
「換気扇つけろよ」とたっぷり嫌味を言ってやるつもりが、クラウドの後からはふんわりと石鹸の香りがした。
うーん…不思議なやつ。
ケンカをすれば、腹が減る。
朝飯を作るべく、クラウドを無理やりキッチンに連れ込むと、一人で手際よく料理を始める。
クラウドは俺の包丁さばきやフライパン返しを見て、驚いたようだった。
「……すごい。プロみたい。」
普段可愛げの欠片もないくせに、そんなキラキラした目で見つめられると。なんつーか、照れる。
「そうか?こんなの本気のうちに入らないけどね。半日煮込んだ俺特製ビーフシチューは、やばい美味いぞ。」
「…………クリームシチューは?」
「作ったことないな。」
俺の返事に、クラウドは少し眉を下げた。
そうか、こいつの好物はクリームシチューなのか。
いつも、コンビニのサラダやパンをぼそぼそ食べてるところしか見たことないから…知らなかった。
今度、練習しておこうか。
デミソースのオムレツ、シーザーサラダ、オニオンスープ、自家製バケット、フルーツのマチェドニア…
クラウドが横で見ているかと思うと、つい気合いが入って作り過ぎてしまった。
二人分の皿をテーブルに並べると、クラウドがらしくなく萎縮している。
「ごめん。なんか、俺の分まで…」
「俺が食うついでだし。一人でこんなに食えないし。…一緒に食った方が美味いし。」
そう、これは『ついで』だ。
クラウドが好きそうだな、と思ってオムレツに生クリームを入れてみたり、
俺はあんまり好きじゃないのにデザートまで用意したのも、あくまで『ついで』だ。
…いろいろ認めるのは癪だから、そういうことにしておく。
「いただきます…。」
黙って食べるのかと思えば、手を合わせて軽くお祈り≠してから食べ始める。
両親のしつけが良かったのかもしれない、意外だ。
「そういうのって、オマエの故郷の――ニブルヘイム、だっけ。あっちじゃみんなやるのか?」
胸の前で十字架をきり、祈りを捧げるその儀式――北の方の習わしなのだろうか。
ミッドガルでも、俺の故郷のゴンガガでも、それは見慣れないものだ。
「…俺の家、貧乏だったから。食事のときには、神様と作ってくれた人に感謝しなさいって……
母さんが、いつも言ってた。」
「へえ、いい母ちゃんだな。」
思ったことをそのまま口にしただけなのに、クラウドはそれを素直には受け取らない。
「……そうやって、みんな馬鹿にする。」
これまでも、誰かに揶揄されたことあったのだろう。
だけど、俺をそいつらと一緒にしないでほしい。
「馬鹿になんかしてねえよ。作った方は『いただきます』って言葉。すっげえ嬉しいもんだぜ。」
「………。」
俺も『いただきます』と軽く手を合わせてから、食べだした。
俺には祈る神もいないし、祈る言葉も知らない。
でも、クラウドが祈る姿は、とてもストイックで綺麗だと思った。
ついでに、オムレツを頬張るその表情は、なんともいえないほどに愛らしい。
一日中、ずっと一緒――なんて。
長い一日になると思っていたけど、気付けば時間が過ぎるのはあっという間だった。
海外ドラマのDVDを見たり、寮の売店まで買い出しにいったり、ソファでうたた寝したり…
もちろん喧嘩はたえない。
引っ張るなとか、くっつくなとか、そんな言い争いを何十回と繰り返している。
これまで生きてきて、人間関係で困ったことはない。
男友達でも、女の子でも、昔飼ってた猫でさえも、それなりにうまくやってきた。
だから、ここまで徹底的に誰かに嫌われるのは初めてだと思う。
まるで親の仇でもあるかのように、クラウドは俺を睨みあげて、
「見るな」「寄るな」「触るな」「引っ張るな」「バカ犬」そんな可愛くない言葉ばかり飛び出す。
(…俺が何したっていうんだ?)
黙っていればこんなに愛らしいのに、本当にもったいない。
(寝顔は天使、だな…)
今まさに、夢の世界にいるだろうクラウドは、先ほどまでの憎たらしさが嘘のようだ。
狭い二人掛けのラブソファの上。
さんざん狭い、暑苦しいと俺に文句を言ったのち、罵倒し疲れたのか眠ってしまった。
――あろうことか、俺の肩に寄りかかって。
「こっの、シャム猫め…」
さんざん人のことひっかいておいて、膝の上で丸くなるシャム猫さま。
人を下僕のように犬呼ばわりしておいて、寝言で「ザックス…」とか俺の名前呼んじゃったりする王子さま。
可愛くない、可愛くない、可愛くないったらない!
(……可愛く、ない?)
「おい、起きろよ。起きろって…」
これ以上肩を貸していたら、なんだか変な気分になってしまいそうで、慌ててクラウドを揺り起こす。
「や…、あと5分…」
「……あのなぁ。オマエ、天然かよ…」
『や』ってなんだ。そのイヤイヤする仕草、本当にこいつは男なのか。
「おい!起きろ!俺、そろそろ風呂に入りたいんだけど。」
「…ん、ふろ………?」
「昨日、科研でシャワー浴びただけだっただろ。久しぶりに湯を張ってのんびり――」
「…ん、一緒に、…風呂…はい、る…?」
寝ぼけ眼で、目をごしごしこすりながらそう返すクラウドの言葉。
それを聞いた瞬間、背筋が凍った。
(――しまった、)
トイレも、飯作るのも、DVD見るのも、売店に行くのも、昼寝するのも一緒だった。
そうせざるを得ない状況なんだから、当たり前のこと。
だから当然のことだけど――風呂に入る≠フだって、一緒だってことだ。
なんだこれは…新手の拷問か!!
男と風呂に入ったことはある。
軍の共同シャワールームは勿論、男同士で温泉旅行に行ったこともある。
女の子と風呂に入ったことも、当然ある。
ラブホのジャグジーや泡風呂で、体を洗ってあげたり、洗ってもらったり、それ以上のことしたり。
昔飼っていた猫と、風呂に入ったこともある。
あちこち引っ掻かれて大変だった。猫は風呂が苦手だからしょうがないけど。
クラウドと、風呂に入ったことは――…一度もない。
着替えを遠目で見たことはある。
それも、鏡越しに一度だけ、だ。(覗きじゃないぞ、たまたまだ!ほんとだぞ?!)
一度見たことあるんだから、クラウドが正真正銘の「男」だってことは知っている。おっぱい無かったし。
それはわかっているんだけど、理解はできても納得できない。
(…男、だよな…?)
だって、この白い肌。それに、ほっそいウエスト。すらりとした美脚…
クラウドが服を一枚一枚脱ぐたびに、それに注目してしまってガン見してしまう。
「…なに、じろじろ見てんのさ。」
「は?み、見てねえし!ただ貧相なおっぱいだな〜って思っただけで!」
慌てて誤魔化したつもりが、また言わなくていい余計なことを言ってしまった。
「…どうせ、俺は……アンタと違って、貧弱だよ。」
変態!とか種馬!とか。いつものように怒鳴られるのかと思ったら、クラウドは泣きそうな顔で俯く。
これは、自分の体に相当なコンプレックスを抱いているのかもしれない。
こんな細くくびれたウエストに、無駄毛もシミもいっさいない白肌――
女の子からすれば羨ましい限りだと思うけど。
でも、それを言ってしまえば、ますますこいつは落ち込むだろう。
何とフォローしたらいいか、無い頭で必死に考えてみる。
男が言われて嬉しいこと。それはやっぱり、
「でもさ、ほら!オマエにも立派なイチモツがついてんじゃん!」
そう俺が言ったのは、クラウドがボクサークパンツを脱いだ瞬間だった。
「りっぱ、な…?」
自分で言っておいて、疑問形に変わってしまう。
だってクラウドのソレ≠ヘ―――あまりに俺のものと違かったから。
とてもじゃないが、男のモノとは思えない。
綺麗な色、控えめなサイズ、それにキラキラした金色のヘア…
なんだこれは。いつかテレビで見たことのある、海の妖精クリオネがこんな美しさだったような…
こんな『男の象徴』がこの世にあるのか。
「嫌味か、下衆。」
冷たい…風呂場のタイルよりも冷たい視線と言葉を放った後、クラウドはバスルームへと入っていく。
繋がった手錠で引っ張られて、俺もパンツを脱ぎながら後を追う。
「下衆って…さすがにひどくない。」
そう文句を言いながら、クラウドの言葉は正しいのだと理解した。
何故ってそれは、俺の目の前を行くクラウドの後ろ姿――つまりは、小さくて、白くて、形のいいクラウドの尻。
それに食い入るように魅入ってしまって、どうあっても目が離せなかったから。
(俺って…下衆だったのか…。)
女の子の尻ならば、今までさんざん追いかけてきた。
でもそれは勿論、言葉のあやであって、数多の恋愛をしてきたという意味だ。
よもや、本当にそのまんまの意味で「尻を追いかける」ことになろうとは…
それを下衆と呼ばずして、なんと呼ぶのか。
こんなに可愛くないのに、尻はとびきり可愛いなんて、出来るなら知りたくなかった。
まさか男の体に目を奪われる日がくるなんて、女の子の胸よりもこの尻を揉みしだいてみたいなんて、
それに一日中一緒にいるのも結構悪くないかもなんて――本当、出来るなら、知りたくなかった。
一週間なんていわず、できるならずっと。
ずっと…なんだっていうんだ?
いっそ、一生繋いでしまえば
少しは愛してもらえるのか?
…なんて言っちゃう、俺って鬼畜?
俺が一生「下僕扱い」されるだろうから、
そんなのは願い下げだけどね!
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