C-brand

 


 

 

 



 

  

 

  

【ご注意】

@      ザックラ同室設定、相性最悪のルームメイトです。

ザックスがクラウドにメロメロ〜!な、いつものノリはありません。

A      とか言って、どーせそのうちデレッデレになるんですよね。ざっくん…

B      男女のベッドシーンあり。ご注意ください。

  

LIAR4

少なくともCカップ。

これは譲れない。

 

 

女の子は、やっぱり最初は顔に目がいく。その次はおっぱい。

男であれば、みんなそんなとこだろう。

最低でもCカップは欲しいところだ、そうじゃないと挟めないかもしれないし…

何を挟むのかって?答えは、「男の夢」だ。それ以上は言えん。

 

Bカップだと、少し心許ない。

Aカップはだめだ。揺れないおっぱいは寂しすぎる。

スレンダーな子は好きだ、ぽっちゃりよりも細い子の方が好みだし。

でも、おっぱいは欲しい。これは譲れない。

 

だから、Aカップどころかいわゆる「まな板」な男の胸なんて、当然興味ない。

興味ないっていうのに――自然と目がいってしまうのは、何でだ?

 

クラウドがシャンプーで髪を洗っている時。

自分も背中をガシガシと洗いながら、上から下まで観察してしまう。

(ほっせえ…ウエストとか、女の子より華奢じゃねえ?)

体重何キロだろう。50キロないんじゃないか…

(こいつ、赤ちゃんの肌か?!ミルク色っていうのか、真珠色っていうのか…)

シャワーの湯が、珠になって弾けていく。項から背、そして腰骨へ…

彼の体を転がる水滴は、まるでその一粒一粒が宝石のようでさえある。

(睫毛だけじゃなくって。……やっぱり、アンダーも金色なのか…)

まだ控えめにしか生えていない、クラウドの柔らかそうなアンダーヘア。

その金色が泡で見え隠れするたびに、余計に凝視してしまう。

 

(………どんな顔で、シタんだろ。)

とことん禁欲主義で、性になんて興味ありませんって顔をしていても。

クラウドのそこは、ちゃんと綺麗に剥けていた。

15歳であれば当然あるだろう性的興味で剥いたのか、生理現象の結果かはわからないけど。

どんな顔で、どんな声で、悶えるのだろうか――

それを思いうかべようと、脳をフル回転させてみるけども。どうしても想像できない。

俺のイマジネーションが足りないからじゃない。

クラウドが、その容貌も性格もあまりにストイックだからだ。

…良くいえば、まあ、清廉というのかもしれない。

 

(こいつって、童貞…?だよな?)

異性に関心などないどころか、そういった色恋話を疎む様子さえ見せるクラウドが、

セックスの経験があるなどまずあり得ないだろう。色も、信じられないぐらい綺麗だし。

(それに――処女、だよな?)

男なのだから、「処女」って言い方は語弊があるか。なら、なんて言うんだろう。

わからないけど、この小さな尻たぶを広げてみれば、

きっとそこには誰も触れたことのない可憐な蕾があるのだろう。

 

(って、何考えてるんだよ俺!これじゃまるっきり、変態だろ!)

入浴剤をどばどばと大量に入れて、クラウドの肌のようなミルク色に染まった浴槽へと飛び込んだ。

決して、自分の元気になりつつあるモノを隠すためだとか、そういう卑怯な意図はない。

「ザックス、引っ張るなよ!」

そう文句を言いながら、クラウドも湯へと浸かる。

当然だ、二人の手は手錠で繋がったままなのだから。

大の男が二人で入るには少し狭いバスタブ。(体積をとっているのは専ら俺だけど。)

俺の脚の間に、クラウドがちょこんと座っていて、身体が密着していないにせよ…

なんというか気恥ずかしい体制だ。

股間が触れないように気を付けないと。…これは、切実な問題。

 

ちゃぷん…

 

バスルームで、ゆっくりと流れる時間。

他に視線をやることも出来なくて、目の前にいるクラウドと目が合ってしまう。

クラウドの頬はミルク色の肌に綺麗なピンクがさしていて、

上目遣いで見上げてくるその瞳は、心なしか潤んでいる。

湯で濡れた髪は、いつもよりも長く感じて…本当に今、男と風呂に入っているのか自信がなくなってくる。

 

もしも、今目の前にいるのが女の子だったら。

ここで肩を抱き寄せて、膝の上に乗っけて、ゆさゆさヤっちゃうのかもしんないけど。

 

クラウドは、男だ。

それはいかに可憐な外見をしていようとも、曲げられない事実。

男同士、風呂に浸かっていれば、することは一つしかない。

つまり――『裸の付き合い』ってやつだ。腹を割って、互いにいろんな話をすること。

まあ、野郎同士で盛り上がる話題なんて、一つしかない。当然、『あっちの話』になるわけだけど…

 

 

 

 

 

「――で、クラウドは経験あんの?」

「………。」

「隠すことないぞ!誰だって、初めはみ〜んな童貞なんだからな。」

「………。」

「好きな子ぐらいいるんだろ?その子とチューぐらいはした?」

「………。」

「興味ないわけじゃないだろ?クラウドだって、いちおう剥けてんだからさぁ。」

「………下衆。」

 

腹を割って語り合うすつもりが、さっきから俺が一人で喋り続けている。

やっとこさ返ってきた返事が、本日2回目の「下衆」なんていう単語だ。

「オマエなぁ、俺がこうして腹を割って話そうってしてんのに。そういう態度はないだろ。」

「俺はそういう話が嫌いだ。興味ない。」

なんか、カチンときた。

今までも、それに一緒に過ごした今日一日だけでも、いったい何度聞いたことか。

クラウドの『興味ない』という一言。

それを言われてしまえば会話が続かないし、文句を言われる以上に癇に障る。

 

 

「そういう態度だから、友達できないんだろ。」

 

 

あ…今のって、ちょっとひどくないか、俺。

でも、俺の言ってることは間違っていないよな。

頭から他人を拒絶して、何に対しても興味がないと顔を背けていれば、世界は広がらないはずだ。

クラウドはきっと、「俺は一人が好きなんだ」とか「友達ごっこなんてガキじゃあるまいし」なんて言って

噛みついてくるんだろう。想像に難しくない。

…と思っていたのに。

 

「…友達、なんて…興味、ない。」

 

クラウドから返ってきた返事は、想像どおり可愛くないそれだったけど、でも。

その声色は、想像できないぐらいに弱々しかった。心なしか、語尾が震えているような気がする。

 

「どうせ俺は、つまんない人間だから…友達なんて、できないよ。こんな顔だから気持ち悪がられるし、

楽しいことのひとつも言えない。近づいてくる奴らは、みんな裏がある。友達になろうって言っておいて、

本当はそんなのが目的じゃないんだ。俺が、女みたいだから――」

「なんだよそれ。誰かに、そう言われたのか?」

「…みんな、そう言う。……………オマエみたいのは、慰み者にしかならないって、」

 

 

「ふざけんな!!」

 

 

「え…?ザックス、」

「誰だそいつは!誰がんなこと言った!俺がぶっ殺してやる!」

「…殺すって……、え?なんで、アンタが……」

腸が煮えくり返るとは、このことをいうのだろうか。

頭に血が上って、自分でも感情をコントロールできない。

 

「そりゃ、オマエは可愛いよ!それは認めるよ!でもな、それは撫でてみたいとか心が癒されるとかであって

ひっくり返っても気持ち悪いなんてあるわけねえだろ!だったら、化粧崩れてくる夕方6時以降の女の子たちは

どうなるんだ?汗くっさいソルジャーたちはなんなんだ?煙草のヤニが前歯にこびりついた教官たちはなんだ?!

それにお前がつまらないって?そいつらはオマエと話したのか?一度でもオマエとメシ食ったり、風呂入ったりしたのか?

つまんねえのはそいつらだ、俺はお前とメシ食って美味いし、楽しいよ!嘘じゃねえ、オマエは自分で言うほど

つまんなくなんかない、そんな奴らのいうこと間に受けてトモダチ作らねえなんてもったいねえだ…ろ…?あれ?」

 

まさに、『瞬間湯沸かし器』。

息継ぎすらせずに、一気に高ぶる感情を露にした後で―――クラウドが震えているのに気づく。

「……クラウド、てめ、笑ってやがるな?!」

「だって…何わけわかんないこと、言って…あははっ、お腹いた…!」

クラウドが声に出して笑う。…なんて、強烈に可愛い顔で笑うんだ。

 

「嘘に決まってんじゃん。バっカじゃない!」

「はああ?!」

「なんかムカついたから、アンタのことからかっただけ。俺がそんなことで悩むわけないだろ。」

「どうりで…ずいぶん殊勝だと……」

「ほんと、アンタって犬よしだね。」

犬よしって何ですか。お人よしの犬バージョンですか。可っ愛くねえ!

 

「マジになって損した!おら!もう出るぞ!のぼせる!」

半ば強引に手をひいて、湯船から上がると、クラウドの肌を見ないようにそのまま浴室から出る。

大きなバスタオルをクラウドの頭の上に放って、俺自身もガシガシと体を拭く。

タオルの中から、小さく呟く声が聞こえた。

 

 

「………俺なんかのことで、怒らないでいいよ。」

 

 

やられた、と思った。

こいつは、とんでもない食わせ物だ。ついでに、大嘘つき者。

 

 

本当は、全部嘘じゃないくせに――全部嘘だと嘘をついている。

 

 

 

友達が欲しいって、俺に、そう言えばいいのに。

俺は絶対に、こいつを泣かしたりしないし、拒絶したりしない。

こいつを泣かすやつらをぶっ飛ばしてやるし、腹をかかえるぐらい、いつだって笑かしてやるのに。

 

 

 

 


 

 

問題は、夜だ。

 

こればっかりは、深刻な問題。

男であれば、溜まるもんは溜まる。これは生理現象であって、避けようのないことだ。

(最後に女の子とエッチしたのって、3週間前だっけ…)

遠征に行く前だったから、確かそれぐらいだ。さすがに体に悪いものが溜まってるって感じがする。

風呂場でクラウドの体をじろじろ見てしまったのも、いわゆる欲求不満だったからかもしれない。

 

相手がクラウドでなくて、ただの男友達であれば、だ。

おふざけで一緒にAVでも見て、抜いたかもしれない。

あるいは、女の子の知り合いを何人か呼んで、楽しんだりしたかもしれない。

でも――今ここにいるのは、あのクラウドだ。どちらの選択枝もあり得ないだろう。

それこそまた『下衆』とバッサリ斬り捨てられてしまう。

 

(クラウドは…溜まんないのか?)

 

クラウドだって、一人エッチくらいしたことはあるだろう。

たとえば俺がミッションでいないとき、あるいは俺がベッドで爆睡しているときに、

一人であそこに手を伸ばして小さな声でイッたに違いない。

(見てみたい。聞いてみたい。むしろ…触ってみた……って馬鹿か!何考えてんだよ!)

男の一人遊びなんて、見ていて楽しいわけがない。

そのはずなのに、クラウドだけは例に漏れてしまうのは。これはただの好奇心故だろうか?

彼が、いつもすましてばかりいるから。

 

きっと、クラウドのことだ。

うつ伏せになりながら、あるいは横をむいて「く」の字に寝て、控えめにそこを慰めるのだろう。

もしかすると、今夜、同じベッドで…

俺の隣で横になりながら、毛布の下で、そんなことをするのかも―――

 

 

 

「だめだ!寝れねえッ!」

 

 

 

がばりと勢いよくベッドから起き上がると、クラウドが非難めいた声をあげる。

「うっさいな…せっかく眠れそうだったのに…。何なんだよ。」

クラウドがそう文句を言うのも当然――時刻は、0時半を回ったところだ。

0時にベッドに入り、クラウドはやっと睡魔にうとうとしていたところだったのだろう。

俺はというと、性欲魔にもんもんとしていたところだったけど。

 

「……エッチしたい。」

 

つい思ったことをそのまま口にすると、クラウドがさもぎょっとした表情をした。

「は…?!何いきなり…」

「いきなりじゃねえ。男なんだから、24時間ヤりたい、それが当たり前だ。」

24時間?!そんなわけ…」

「オマエは溜まんねえわけ?女の子と一発かましたいとか、そういうの全然ないの?これっぽっちも?」

いくらクラウドが女の子よりも可愛くっても、妖精のごとくストイックであっても。

生物学上、雄なのであれば、少しぐらい性欲はあるだろう。

15歳、多感なお年頃なはずだ。少なくとも俺はヤりたい盛りだった。

 

「そんなの、したくない。」

「嘘つけ!」

「嘘じゃない、俺はそういうのしたくない!」

男だって、女でさえも性欲はある。

「嘘だね!隠す方がかっこ悪いぞ、ガキじゃねえんだから。」

そうだ、クラウドが本物の妖精でない限り、そんなの絶対嘘に決まっている。

 

 

 

「嘘じゃない…俺は、好きな人じゃないと、そういうこと出来ない…。」

 

 

 

びり、と背筋を何かが流れた。

電流みたいな、痛くて、むずがゆくて、甘い痺れ――

クラウドと体を重ねる相手は、どれだけ幸せ者か。

この子の体だけじゃなく、この子の心までも手に入れられる、そんなどっかの誰かが。

…ひどく、妬ましいと思うなんて。

 

―――いったい、どうして、

 

俺は、クラウドと寝てみたいのだろうか。

(男なのに?)

男だけど、クラウドは限りなく性別の境界線が曖昧だ。

(男相手に、どうやるんだよ。)

経験したことのない世界だから、これはただの興味本位だろうか。

それとも、見目が綺麗だからって彼を「女の代わり」にしようとしているのか。

(―――――違う。そんなんじゃない。)

 

ブルブルブルブル…

 

思考を両断するように、ベッドサイドに置かれた携帯が振動した。

「誰だよ、こんな時間に…」

そう毒づいてみたけど、ちょうど良いタイミングのようにも思える。

危うく、クラウドに何かとんでもないことをしてしまいそうだった。

 

「もしもし?ああ、いや、起きてたよ。はは、そんなんじゃねえって。」

電話の相手は、女の子――名前と顔は一致している。

3週間前にエッチした彼女だ。性格には、彼女の一人というべきか。

「これから?いや、ちょっとそっちに行けない事情があって。駄目だわ。」

近くのホテルに部屋をとってあるから、今すぐ来れないかという誘い。

悪くない誘いだけど、俺はいけない。なんといったって、クラウドと手錠で繋がっている状況なんだから。

 

「え?俺んとこくるって?いや、それはまずいだろ――同室の奴もいるし。」

それならば俺の部屋に行ってもいいかとなおも食い下がる彼女に、さすがに困ってしまう。

たとえ来てくれたって、この状況だ。シたいことなんて出来やしない。

「来てもらえば?…前も、部屋に連れ込んでたじゃん。」

クラウドが、横で小さくそう呟いた。

 

そりゃ、前にも彼女の一人や二人や三人、連れ込んだことあったけど。

でもそれは俺の寝室に招いたのであって、共用のスペースを侵害したことはない。

今とは状況が違う。

今連れ込めば、当然クラウドと同じ部屋だし、しかも同じベッドで寝ているんだ。

さすがに、こいつと鎖で繋がれながら、素知らぬ顔で女の子とセックスなんて出来やしない。

 

 

「ザックスは、ザックスのしたいようにしなよ。…アンタが何をしようと、興味ない。」

 

 

またクラウドの『興味ない』だ。それを言われると、どんな悪態よりも腹がたつ。

まるで『アンタなんて眼中にありません』って宣言されているみたいで。

馬鹿みたいに、ガキくさい意地かもしれないけど。

 

 

「――じゃあ、部屋で待ってる。悪いけど、ゴムは途中で買ってきてくれる?」

 

 

そう女の子に告げて、電話を切った。

クラウドをじろりと睨むと、少し傷ついたような顔をした。

…いや、さすがにそんなのは俺の幻想か。

 

 

「オマエも交ざる?」

 

 

意地悪くそう問えば、当然拒絶の答えが返ってくる。

「……交ざるわけない。そんな、最低なこと…」

「そう?残念。お兄さんがいろいろ教えてあげようかなって、優しさで言ってんのに。」

少しの優しさもない言葉で、そう言う俺って最低。

でも、意地になっていた。悔しかった。

俺ばかりが、クラウドに振り回されていること。…クラウドに、惹かれていること。

こんなのって、あまりにアンフェアだから――

 

 

 

 


 

30分もしないうちに、彼女は俺たちの部屋にやってきた。

最初、彼女はクラウドを女の子と思っていたらしく、すごく不機嫌だった。

でも、今こうして手錠で繋がれている理由、それにクラウドが男であることが明らかになると、

彼女は声を出して笑った。そうして、赤いルージュで色づいた唇を色っぽく緩める。

 

「見られながらって、燃えるかも。」

「マリーちゃん、エッチだなぁ。」

「それって褒め言葉?」

 

彼女がベッドの上へと這い上がり、自らブラウスのボタンを外す。

そうして露わになった豊満な胸を見せびらかすように、少しずつブラジャーの紐を落としていく。

まるで、ストリップショーだ。

セックスに慣れた子でなければ、ここまで上手に「魅せる」脱ぎ方はしない。

 

「ねえ。キミは、私の体に興味ないの?」

相変わらず二人の手首は手錠で繋がったまま…

その腕以外は、全て毛布の中に身を隠してしまったクラウド。

それは羞恥心ゆえか、嫌悪感ゆえか…おそらくは後者の方だろう。

「そいつは、まだお子様だから。目に毒だろ、こーいうラブシーンはさ。」

そう言って、彼女の腰を引き寄せる。

クラウドに関心を寄せる彼女に、少しイラついていたかもしれない。

 

「もう、ザックス、せっかちね。」

そりゃそうだ。こっちは、溜まりに溜まって不健康そのものだ。

だけど、どうしてか――この子相手に出すものを出しても、

このずしりとたまったドス黒い何かは消化されないような気がする。

 

「ザックスみたいに、ワイルドなのもたまんないけど…この子も可愛い。」

よほど、クラウドの美貌を気にいったのだろう。

そう、クラウドは同年代の女の子よりも年上のお姉さんに好かれる『美少年』タイプだ。

「ねえ、3人でシてみない?」

そう言って、彼女が毛布から飛び出たクラウドの髪へと手をのばす。

それに、抑えがたい嫌悪感が走って、

 

 

 

「駄目だ。そいつに触るな。」

 

 

 

強い口調で、彼女に言ってしまった。

俺が不機嫌になった理由が、嫉妬だと思ったのだろう。慌てて彼女は俺の気を引こうとする。

「妬いた?」とか「冗談に決まってるでしょ」と、そう言い繕っているけど、

きっと本気でクラウドと寝てみたかったに違いない。

 

彼女にキスをされそうになり、それがどうあっても不快で――思わず唇に指を当てて拒絶した。

「お仕置きに、ちょっとオアズケ。」なんてそれらしいことを言ってみたけど。

キスをすれば完全に萎えてしまうだろう…自分の体だから、それぐらいはわかる。

彼女は俺の前で下着を脱ぎ、少しも恥じらいなど見せずに俺のベルトを緩める。

「ザックスの好きなこと、してあげる。」

いつも以上にサービス精神旺盛。きっと、ご機嫌取りなのだろう。

 

「じゃあ、挟んで。」

 

彼女がそのEカップはあるだろう豊満な胸で、俺の取り出したそれを挟んでみせた。

こういうことをしてくれる素人の子って、あんまりいない。

そうとう遊び慣れているのか、あるいはこういう仕事をした経験があるのかも。

やっぱり、女の子はおっぱい、これに限る。

少なくともCはないと――――

 

でも、なんだろう?あんまり気持ちよくなれない。

いや、それなりにあそこは反応するし、擦ればそれなりに硬くなる。

…だけど、それだけだ。

栗毛の巻き髪、ゆさゆさと揺れる胸、それに赤い唇、何から何まで、

(可愛いって、思えない。)

たとえそれが一晩限りだったとしても、これまでベッドを共にしてきた相手を、それなりに愛おしく思ってきたはずだ。

セックスは気持ちが良かったし、彼女達を可愛いと思ってきた。キスだって普通にしていた。

 

でも今夜はたぶん、この子相手に達することは出来ない。

さっきから、耳に聞こえてくるのは、彼女の息遣いでもその鼓動でもベッドが軋む音でもない。

きっと彼女には聞こえていないだろう――

たぶん、ソルジャーの聴覚でしか、聞こえない。

 

 

 

 

……小さな小さな、クラウドの泣き声。

 

 

 

 

 

「だめだ、これ以上やっても、たぶん無理。」

「え?なに?どうしたの、急に…」

「ごめん、俺、もうダメだ。体がついていかない。」

「疲れてるんでしょ?そういう時だって――」

彼女には悪いけど。

こんなところまで呼び出して、しかも恥をかかせてしまって、それは申し訳ない。

だけど、クラウドの言葉が…俺の体を、心を、支配してしまったから、

 

 

 

 

 

「俺、好きな子としか…こういうこと、もうしない。」

 

 

 

 

だから、出来ない。愛のないセックスはもう。

次の瞬間には、当然襲い掛かってくるビンタ――それを避けるほどKYじゃない。

甘んじてそれを受けると、爪が頬をひっかいて、かなり痛かった。

そんな爪で料理やりづらいだろうなぁ…なんて、どこかずれたことを考えながら、

彼女が部屋を出ていくのを大人しく待った。

 

 

 

 

 


 

 

シン、と静まり返った部屋で。また、クラウドと二人きりになった。

「ごめんな、クラウド。」

そう一言だけ謝罪した。

この子に汚いものを見せてしまったこと、傷つけてしまったこと。

そんな言葉で許される気がしなかったけど、それ以外に気の利いた言葉なんて何ひとつ見つからない。

 

「……彼女、怒っちゃったよ。」

 

まだ泣き声ともいえる声。

きっと、泣き顔を見られたくないのだろう。

毛布で顔を隠したままのクラウドに、苦笑した。

「誰のせいだと思ってんだ。」

「…俺、の、せい…?」

また声を震わせるクラウドに、ああ泣かすつもりじゃなかったんだけどと後悔して、慌てて訂正する。

 

 

 

 

「違うよ。オマエに、嫌われたくなかった、俺のせい。」

 

 

 

 

どうしてかわからないけど。

クラウドが、毛布の中で、嗚咽をあげながら泣き出した。

本当はその頭を撫でてやって、涙をそっと指で拭ってやりたかったけど、

他の女に触ったこの手でそんなこと出来るわけなくて、結局動けなかった。

 

 

今はただ、この鎖で繋がっている事実だけに、すがっていた。

 

 

 

 

 

 

大きなおっぱいや赤い唇もいいけれど

 

もしも、この手が君の涙を拭えるとしたら

それって何て素敵なことだろう。

 

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (20111226

クリスマスネタじゃなくてごめんなさい。

クラウドを泣かすなんてザックスじゃないやい><

  

 

 

 

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