※ご注意: かなり露骨な性的描写あり。18歳以上の方の閲覧推奨。
「あ、あ、あ!」
――苦しい。
「クラ…オマエ、すげえ、いい…なにこれ。」
何がいい≠フかわからない。
「気持ち、いい?ざっくす、気持ちいいの…?」
こんな吐き気がするような醜い行為が、本当にいい≠フだろうか。
「やばいいい…!おまえ、どれだけ遊んできたんだよ。」
ザックスの膝の上で、必死に腰を動かす。
どうすればいいのかなんてわからないから、ただザックスがイイという声に従って、腰を上下に揺らすだけ。
クラウドの後肛には、ザックスのぬらりとした雄がめり込んで。
ネチネチと卑猥な音をたてながら、出し挿れが繰り返される。
――こんなところに、男のものを挿れて大丈夫なのか。
ザックスは当然のように、そこに入れるのを望んだけれど、クラウドからすればまさに驚愕だった。
誰も触れたことがないような場所に、ザックスの驚くほど張り詰めたモノを突っ込まれて、恐くないはずがない。
でも、ザックスが望むなら。
どんなことだって、できると思った。
部屋の中で繰り返される、濡れたような音と、ベッドがきしむ音。
ザックスの上で腰を動かし続けるけど、初めて男を受け入れたそこから感じる快感なんて、あるわけもなく。
ただ張り裂けそうな痛みと、内蔵を抉るような圧迫感に耐えるだけだ。
…それでも。うっすら目を開けたときに、ザックスが感じている顔が見えると、嬉しいと思う。
いつもより色の深い彼の瞳と目が合うと、また激しく唇を貪られ。
舌と舌とが絡み合う。
本当は。
キスすらも、したことがなかった。
キスがただ唇を合わせるだけでなく、まさか口を開いてするものだったなんて。舌を使うなんて。
故郷のニブルヘイムは宗教色が強く、性モラルに対して厳しく教育されてきた。
だからキスどころか女の子と付き合ったこともないし、情報も与えられないから知識も無かった。
「セックス」が子供を作る行為だということは知っていたけど、それはどうやってするものなのか、
想像すらできなかったし、また自分とは関係のないことだと認識していた。
子ども、だったのだ。――心も、体も。
ザックスを好きだという気持ちだって、別に彼に性的な興奮を覚えていたわけではない。
ザックスといると楽しい、嬉しい、切ない。
彼のことを考えると胸がぎゅっと締め付けられるような――芽吹いたばかりの、恋という感情。
それが今、自分はザックスと。想像の範疇をはるかに超えた行為をしている。
戸惑いと恐怖、それに羞恥から、思わずザックスのキスを拒絶する。
胸を押しやって、無意識に顔を背けると、ザックスが小さく舌打ちした。
――恐い、と思った。本当に目の前の男は、ザックスなのだろうか。
少なくともクラウドの知るサックスは、いつも笑っていたのに。
いつだって、この世の誰よりも、優しくしてくれたのに。
突然、ザックスに腰を力強くひっつかまれ、ザックスが急に下から突き上げてくる。
「んあっ!んあっ!や、やめ」
「気持ちいい?今までも、こうやって男に突かれて喜んでたんだろ?」
ザックスがクラウドに覆いかぶさり、主導権が全て彼のものになる。
「こう、やってさ!」
「あぁぁぁ?!いた、いた…ぃ!」
ザックスが、クラウドの膝裏を持ちあげて、思い切り腰を打ち付けてくる。
まるで、怒りをぶつけるかのような、激しい挿出。
「ざっく…や、め」
まるで、凶器だ。太くて鋭利なザックスの凶器によって、ずぶずぶと挿されている。
「俺は嫌で、他の男はいいのかよ?なあ、」
ザックスが体重を乗せるように、奥深くに突き刺す。
「きゃあん!」
全身に、電流が流れるみたいに、甘い痺れが走った。
「…へえ?ここがいいんだ?」
「あ、あ、だめ、そこや…」
恐いほどの快感に、頭を左右に振って、やりすごそうとする。
でもザックスはそれに気をよくしたのか、その泣き所を狙って執拗に突き続ける。
「は、あ、あ、やめ…!ざく、」
「もっと突いてほしいの?」
「ちが…!あぁっ?!いや!そんなにしちゃ…だめぇ!」
泣けば泣くほど、ザックスは強く腰をうち続ける。
恐い。あまりに恐かった。奥を挿されたときに感じるこの快感が。
どうにかなってしまうほどに、気持ちが良かった。
顔を涙でぐちゃぐちゃに濡らしながら、自分の中を突き上げるその熱をただひたすらに感じていた。
その熱の塊で、このまま突き破られてもいいと思うほどに。
――頭が真っ白になって。我慢できない、と思った瞬間。
何かが、ザックスの胸から腹にかけてとび散る。
「クラ、男に突かれていっちゃったんだ?」
「あ、あ、あ…」
体が痙攣したようにがくがくして、重い倦怠感に襲われる。
何か言葉を発するのも億劫に感じるほど。
(今、出たのはなに…?)
何か得体の知れないものが自分の、まだ発達しきれていない下肢から飛び出たのだ。
自慰すら経験したことがなかったクラウドは、その不可解な自分の体に恐くなる。
「後ろに突っ込まれてイクなんて、本物の淫乱だな。」
(…淫乱……?)
ザックスに、ひどいことを言われているという自覚はあった。
でも、そう言われたとき。こういうのを淫乱と呼ぶのだと、妙に納得もできた。
ザックスになら、どんなことをされても、結局は受け入れてしまうのだ。
奥深くを犯されているとき湧き上がってきたものは、恐怖より戸惑いより、何よりも信じられない悦びで。
ザックスに求められているのだという事実が、クラウドの幼い性を興奮させていた。
もう終わったのかと思ったら、急にザックスが再び腰を動かす。
達したばかりの中を擦られ、またおかしくなるほどの快感に悲鳴をあげる。
「いやぁぁーっ」
「ひとりでイっちゃうなんてひどくない?俺も出していいでしょ?」
「だ、す…?」
今さっき飛び出た、白いもののことだろうか。
「ざっくす、の…ミルク…?」
他になんと例えたらいいかわからずそう口にすると、ザックスの動きが一瞬止まる。
「……おまえ、ほんと煽るのうまいな。」
そうため息をついたと思ったら、脚を胸につくほど折り曲げられ、ますます打ち付ける勢いが増す。
「あん!あん!い、やぁ!たすけ、てっ」
このまま中に、あの白いモノを出されてしまうのか。
…そんなことをして、大丈夫なのか?お腹が痛くなったりしないのだろうか。
急に恐怖を感じて、揺すられながらも必死でザックスに懇願する。
「なか、やだ!こわい、よ…!」
「なに言ってんの。ほ〜ら、クラの大好きなミルクだぞ?こぼすなよ!」
「いや!いや!いやだー!」
暴れようとした瞬間、ズンッ、とザックスに信じられないほど深く突き刺され。
その瞬間、中で何かが勢いよくはじけた。
「い、や…、や…」
泣くクラウドに構わず、ザックスは中でビュービューと出し続ける。
奥が、熱い。ザックスによって注がれているものが、クラウドの全身に広がっていくよう。
それがまるで。
――愛のようだ、なんて。
思考がまとまらない頭の片隅で、そんな風に考えてしまった。
そして、クラウドは。絶対に思ってはいけないことを思ったのだ。
ザックスに愛されたい、と。「本当の意味」で。
何度も何度も体を貫かれ、ザックスに体を解放されたのが、いつだったのかはよくわからない。
気付けばクラウドは気を失っていて、目が覚めたのは頭に響く音のせいだった。
それは、ザックスの目覚まし時計。
目覚ましを止めようと、体を起こしかけたとき、自分の腹に腕が回されていることに気付く。
後ろから、抱き締めるように、捕えているように。
ザックスはクラウドを胸に抱いたまま、眠っていた。
クラウドが目覚まし時計を止めたとき、その上から大きな手が重なる。
ザックスが、起きたのだ。
目が合うけれど、お互いが無言。
まだおぼつかない意識の中で、もしかしたら昨日のことは夢だったのかと思う。
いや、夢だったらいいと。
だが、ベッドのシーツには行為の後がまざまざと残り、現実からの逃避は許されなかった。
何よりも、クラウドの下半身に残る痛みが、昨夜の行為が現実であったことを物語っている。
まるで、まだ何かが入っているような生々しい感覚。
「おはよ…」
先に口を開いたのは、クラウドだった。
普段やかましいほどに喋るザックスが、ただ困惑したような顔でこちらを黙って見つめている。
その空気に耐えられなかった。
ザックスもおはよう、と言おうとしたらしいが、少し唇を動かしただけで声は発せられなかった。
眉が下がり、悲しそうな顔をしている。
それはあからさまな、後悔≠表していた。
トモダチである自分と、肌を重ねてしまったことへの。
愛のないセックスをしてしまったことへの。
そんな顔をしてほしくなかった。
ザックスにそんな顔をされるほど、自分が惨めで、恥ずかしくなってくる。
愛してもらえるわけもないのに、ザックスをためして、誘って。
ザックスが言ったように、淫乱そのものの姿をさらけ出して。
「ごめん…」
搾り出すように、ザックスが言う。
謝罪の言葉なんて、少しも望んでいなかった。
「なんで、謝るの?よくなかった?」
ばかみたいに自分のキャラでないなと思いつつ、気丈に言い放つ。
悪かったのはザックスではないと知ってほしくて。
ザックスは再び沈黙する。
何か言葉を必死で探しているようで、それが悲しいと思った。
今、自分は愛のないセックスをしたことへの言い訳を、彼にさせようとしているのだ。
この後、彼は何と言うのだろうか。
そんなつもりじゃなかったんだけど、とか、でもオマエのこと好きだよ、とかだろうか?
優しい彼は、何かクラウドのために優しい言葉を言ってくれるのだろう。
「俺、ごめんな…あんなひどくするつもりじゃなくて。でも、信じてもらえないかもしれないけど、俺。
オマエのこと、好きなんだ…その、トモダチじゃなくって。」
(やっぱり)
やはりザックスは、クラウドが思ったとおりの優しい男だ。
そして、あまりに残酷な。
あるわけもない愛を偽ってくれて、それがいったい何になるというのだろう。
ピリリリリリ!
ザックスの携帯が鳴る。
ザックスはそれを無視しようとしたけれど、あまりに着信がやまない。
しょうがなく、といったかんじで、ザックスが電話に出る。
電話ごしの女性の甲高い声が、クラウドにも聞こえてくる。
「ザックス!20分も待ってるんだけど!いつまで待たせるのよ?」
「あ〜ごめん忘れてて…。今日、ちょっと無理だ…え?そう言われても。だから無理だって。また今度…」
ごめん、だから、といつまでも話が終わらないザックス。
どこにでも行けばいい、と思った。
きっとザックスは、この状態のクラウドを残しては行けないと、気を遣っているのだろう。
でもそんな半端な情なんていらない。
クラウドはベッドからおりて部屋を出ようとするが、力が入らずもつれて、思わずベッドから転げおちる。
しかも足の間から何かがどろりと伝ってくる。
「クラウド!」
とたんザックスが電話をベッドに放り投げ、クラウドに駆け寄る。
「クラ、平気?痛いのか?」
まるで泣きそうな顔で、クラウドの傍でかがみこむ。
――ザックスはどこまでも優しくて残酷な男。
オマエが好きだと言ったその口で、他の女性にも愛を囁き。
大丈夫?と背を撫でるその手で、他の女性を抱くのだ。
泣きたくなった。
彼を自分のものにしたい、なんて考えたことなどなかった。
そんな大それたこと、思うわけがない。
それなのに、この溢れ出るどろどろした気持ちはなんだろう。
苛立ちを誤魔化すように、足に力を入れて、なんとか立ち上がる。
するとそれを支えるように、ザックスがクラウドの腰に手をまわす。
「触るな!」
思わず、クラウドは叫んでいた。
嫌悪感ではない。自分が裸であることへの、羞恥心でもない。
ただ、他の女に触れたその手で自分も抱かれたのかと思うと。たまらなく胸が締め付けられて。
湧き上がる悲しみに、我慢できなかった。
「クラウド…ごめん、ほんとにごめん。」
(だから謝ってほしくなんかない!)
「…俺が、したかったからしただけだよ。最近、欲求不満だったからさ。」
ヨッキュウフマン、と同僚が話していたのを思い出して、必死で口にする。
「ほんとに、そうなの…?」
ザックスの瞳が失望に満ちるのがわかる。
「本当に、俺以外の男と、してきたの?」
何か言葉を発すれば、震えて言葉にはならない気がして。ただ小さく頷いた。
「………そっか。」
静かにザックスは言って、そのまま自分の脱ぎちらかした服をつかみ、部屋から出て行った。
他の女性の、ところへ。
ザックスは、その後。
深夜になっても帰ってこなかった。
その日は、クラウドは訓練だったにもかかわらず、初めて休んだ。
何をする気力もわかず、そして体の調子が芳しくない。
特に腹の調子が悪い。間違いなく、昨夜の行為のせいなのだろう。
ザックスのいなくなった部屋で、クラウドはただ呆然と、彼のことを考えていた。
もともとは、ただの小さな意地だった。
少しでもザックスの余裕をなくしてやりたくて、興味をひきたくて。
――それで全てを失うとも知らずに。なんて浅はかだったのか。
ザックスのトモダチの位置も、ザックスの笑顔も。全て失ってしまったのだから。
リビングの床には昨夜のチョコレートが散らばっていた。
生チョコレートが入った、青い箱を手にとる。
ザックスが以前くれた、誕生日ケーキ…。
あの頃に戻れたらどんなにいいだろう。
ただ彼を好きで、ケーキひとつで死んでもいいと思えたような、無知な自分のままだったら。
…本当は、気付いている。
こうなって、変わってしまったのはきっとザックスではない。
ザックスは、帰ってきたときやっぱり笑って、いい友達≠フふりをしてくれるに違いない。
そういう、無駄に優しい男なのだ。そこがたまらなく好きなのだけれど。
変わったのは、自分だ。
もうそんな「トモダチ」では我慢できない、貪欲な想いを知ってしまったのだから。
「――それ、俺の。」
はっとして顔をあげると、ザックスがリビングの入口に立っていた。
彼が帰ってきたことも気付かないとは、よほど呆然としていたのだろう。
クラウドの手元には、ザックスの生チョコレートが握られていて、少なからず焦った。
もともと昨夜の喧嘩の、そして行為の原因は、このチョコレートだったのだから。
そのチョコにクラウドが嫉妬し、ザックスに投げつけなければ、こんな事にはならなかったかもしれない。
「えっと、ごめん。」
とっさにチョコレートをガラスのローテーブルの上に置こうとすると。
「そうじゃなくて。それ、俺が買ったやつ。おまえに。」
耳を、疑った。
そんなクラウドに構わず、そこのチョコレートケーキうまいって言ってだだろ?だから、と続けるザックス。
ザックスは――覚えてくれていたというのか。
誕生日に、一緒にケーキを食べたこと。
その小さな、けれどクラウドにとっては何ものにも変えがたい、大切な思い出を。
おもむろに、その包みを解く。
中には綺麗に敷き詰められた生チョコレートが入っていて、かすかにオレンジリキュールの香りがした。
食べていいか、とも聞かずに、そのチョコレートをひとつ口に運ぶ。
口に入れた瞬間、ふわりと口の中に甘い香りが広がる。
濃厚なミルクの甘さと、カカオのほろ苦さが胸をしめつける。
そして舌で少し転がしただけで、あっというまに溶けて消えた。
それは、悲しいほどにあっというまの――
「…ありがと、ザックス…。」
そうクラウドが言うと、ザックスが目を細めて笑う。
クラウドの大好きな、この世で一番優しい笑顔だ。
その自分に向けられた笑顔と、このチョコレートだけでもう、十分だと思った。
甘い夢は、もう十分だと。
ザックスが、小さな思い出を覚えていてくれただけで、もう――。
好きだから。
嫌われる前に、終わりにしたかった。
彼の笑顔を失う前に、自由にしてあげたかった。
だから。
「あのね、ザックス。好き―――だったよ。」
そうクラウドが言うと、ザックスが息を呑む。
そんな驚いたような顔をしなくても大丈夫なのに、と思う。
ちゃんと終わりにしてあげるから。
「だから」
絶対に泣かない。泣いてすがったりしない。
これ以上、この人を失望させない。
「………だから、ばいばい。」
またひとつチョコレートを食べながら、小さく笑ってサヨナラを言った。
初恋はチョコレートみたいに甘く、苦く―――あっというまに溶けて消えた。
―――あのね、ザックス。
大好きだったよ。…大好きだったから。
他の女を抱いたその手で触らないで、なんて言わないよ。
俺を捨てないでって、泣いてすがったりも、しないよ。
だからお願い、頼むから俺の心から出ていって。
俺がアンタの嫌いな『重い女』になってしまう、その前に。
まるでチョコレートみたいだね。
甘い思い出だけを残して――
この恋も、跡形もなく消えてしまえばいい。
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