※ご注意: 露骨な性的描写あり。18歳以上の方の閲覧推奨。
――どれだけ長い間。ばかみたいに、泣いていただろうか。
時計の針がコチコチなる音が、やけに大きく響く。
少し冷静になったザックスが、今の状況に今さらながら慌てる。
ほとんど無意識だったが、ソルジャーの馬鹿力で、彼にしがみつくように泣きすがっていたのだ。
その間ずっとクラウドは、自分の頭を撫でてくれていた。
優しいその手の力が、どうしようもなく気持ちよくて。
…まるで幼い子どものように、甘えてしまった。
ザックスよりはるかに、細くて華奢なクラウドを相手に。
「えっと、その、ごめん。」
「………うん。」
クラウドを解放してやると、彼の頬についた汚れが目に入る。
機械オイルで、汚れたのだろうか――
ザックスは指の腹で、クラウドの白い頬についたそれを、拭ってやる。
クラウドの体に異常はないか、上から下まで視線を走らせる。
「怪我、してないの?」
血の臭いも消毒液の臭いもしなかったから、無傷だと思っていたが。
クラウドは見られるのが恥ずかしいのか、俯いて答える。
「してない。」
「そっか。ならいい。」
改めてクラウドが無事に帰ってきた事実に安堵し、ザックスは微笑む。
傷のひとつだって、クラウドの体についてほしくない。
それは別に、その美しい体に傷がつくのが嫌だとか、そういう願望とは少し違っていて。
ただ単純に、クラウドにわずかな痛みだって感じてほしくなかったから。
「……」
「……」
お互いが、無言。言いたいことはたくさんあるはずなのに、何から話したらいいのだろう。
「ごめん、クラウド。」 「ごめん、ザックス。」
同時に紡がれた、全く同じ言葉。
どうしてクラウドが謝るのか、ザックスは判断ができずに彼の顔を覗く。
クラウドは床を見たままで顔をあげようとしないが、小さな声で言葉を続ける。
「…心配かけて、ごめん。任務、黙って行って。」
「ああ、うん。マジで心配した。ハゲたらオマエのせいだぞ。」
ザックスの冗談めかした明るい声に、クラウドは安心したように顔をあげる。
「ザックスだって。いつも危険な任務行ってるだろ。俺だって………その、」
「知ってる。」
「え?」
「いつも、俺が帰ってくると、泣いてくれてたもんな。」
クラウドが大きな眼をさらに見開いて、そしてすぐにまた床を見てしまった。
耳まで赤くしてるから、彼がどんな顔をしているのか――ザックスにとっては明白だったけど。
「なあ、クラウド。こっち、見て。」
「いやだ!」
「―――顔、見たいよ。」
ザックスのまるで愛を囁くかのような低い声に、クラウドはびくりと肩を震わす。
「なんで、そんなこと言うの……?」
「だから、愛してるから。」
「……嘘つき。」
どれだけこの言葉を繰り返したって、なんだか薄っぺらに感じて歯がゆい。
――他に愛しさを伝える術があったなら。
クラウドの肩に手を置くと、彼はますます下を向く。
彼の小さな顔を両手で優しく包み、上を向かせると、涙で潤む宝石のような瞳と目が合った。
吸い込まれるように顔を近付けると、クラウドは目をぎゅっとつむる。
それは拙いながらも、キスを待つ仕草で。
ザックスはたまらなくなって、そのまま唇を重ねる。
最初は、ただ唇を押し付けるだけ。
でも、クラウドのあまりに無防備な唇に、本能的にザックスは舌を滑り込ませる。
そうした後で、拒絶されることへの恐怖がわいたけど、この甘い誘惑には勝てない。
そのままクラウドの舌を、必死で追いかける。
クラウドは応えようとはしなかった。
でも――拒絶もしない。
ただされるがままに、なっている。
急にクラウドの膝がガクリと折れ、床に崩れ落ちる。
「おい、クラ?!」
やはり怪我でもしていたのか――そう不安に思ったのも、つかのま。
クラウドは、息を乱して髣髴とした表情で見上げてくる。
まるで、キスに酔ったかのような、とろんとした瞳で。
「……そんなに、よかった?」
「ち、が…」
否定するクラウドの唇を、また奪う。
クラウドは、やっぱり拒絶しない。
ただ目をつぶって、ザックスのキスを受け入れている。
1ヶ月前は、受け入れてはもらえなかったキス。
今、彼に嫌がられていないという事実が、たまらなく嬉しかったし、また同時に困惑していた。
(このまま、続けていいのか――?)
クラウドの気持ちは、まだ何も聞いていないというのに。
名残おしいと思いつつも、唇を離そうとすると。ザックスの胸に置かれていた、クラウドの手に力が入る。
ザックスのシャツがぎゅっと掴まれ――それはまるで離したくない≠ニ訴えるようで。
その可愛い訴えに、思いが高まって、衝動を抑えきれない。
クラウドを愛したい。
クラウドに、愛されたい。
「わ…?!」
クラウドの体を抱きかかえて、ザックスの寝室まで運ぶ。
ベッドにそっと下ろしたとき、クラウドは一瞬、恐怖に怯える表情を見せた。
当然、一ヶ月前の行為と重なったのだろう。
ザックスはクラウドの頭を優しく撫でてやりながら、彼の頬に軽いキスをする。
わざと派手なリップ音をたてて、子どもをあやすように。
「ざ…ザックス…。」
「やり直したい。あんな最低なセックスじゃなくって。――ちゃんと、優しくしてあげたい。」
本当は、ずっとそうしたかった。
優しく、優しく愛してあげたい。
彼の白い耳元にそっと口付けて、そのまま首筋におりて愛撫する。
「やだ!やだやだ!!」
――本気の、拒絶だった。
恥じらいではなく、クラウドが本気で望んでいないとわかる。
ザックスはそれに傷つきながらも、彼の体の上から身を起こす。
無理やり体を繋げたいわけじゃない。
クラウドの心が、欲しいのだ。
「やっぱり、嫌だよな…」
あんな強引なセックスをしたのだから、当然だが。
今さら謝ったところで、許されることではない。
やはりもう、取り戻せないのだろうか――
「俺、風呂入ってないから…やだ。」
「え?」
顔を真っ赤にさせてクラウドが言う。
だが、ザックスの方も、思わず赤面してしまった。
「じゃあ……俺のこと、許してくれるの?」
「許すもなにも、ない。怒ってなんか…ないし。」
「怒ってただろ?一ヶ月、ほとんど口きいてくれなかったじゃん。」
「だって。」
クラウドが困ったように、見上げてくる。
「うん、オマエが怒って当たり前。あんな、痛いことされたんだから。…ごめん。」
「違う。」
「なに?」
聞き返しても、クラウドはなかなか答えようとしない。
言葉が見つからないのか、ただ困った顔をして。
それでも何かを伝えようとしているのを待つと、聞き取れるぎりぎりの小さな声で、クラウドが言う。
「……嫌われたく、なかったんだもん。」
心臓が、高鳴る。
これは、もしかして。
「重いって、言われたく、なかったんだもん。」
クラウドが見上げてくるその瞳には、涙がたまっていて今にも零れ落ちそうだった。
『重い』なんて――そんなの、自分の抱く気持ちほど、重いものがあるだろうか。
その重圧で小さな彼を、押し潰してしまいそうだというのに。
「そんなの、言うわけないじゃん。俺の方が、重いよ?」
「俺だよ。」
「絶対、俺だね!」
言い争いをしても、内容が内容なだけに、なんだか照れくさい。
どっちが相手を好きか、主張しているようなものだから。
思わず、ザックスに笑いがこぼれる。
それにつられたように、クラウドも笑うから。胸がキュン、と締め付けられるよう。
クラウドの笑顔を見たのは一ヶ月ぶりで、その嬉しさにザックスはさらに笑みを深める。
性的な意味はないが、クラウドを抱き寄せようと腰に手を回すと。
クラウドのカタチのいい小さなお尻を触ったとき、何か感じる違和感。
「なに?この箱。」
固いものがあたって、クラウドの軍服の後ろポケットからそれを抜き出す。
「あ…!ばか!返せ!」
「だーめ。」
クラウドがすごい勢いで起き上がって、ザックスに乗りかかってくる。
彼の体を左手で抱きかかえながら、右手を伸ばして箱を遠くに持っていく。
(この箱…)
――青い、箱。見覚えのあるそれは、あのお菓子屋の箱だった。
少し潰れているが、それはまだ未開封のようで。
そういえばあの日――彼が戦場に行った、ホワイトデーの日。
クラウドはあの店から出てきたのだ。おそらく、誰かへの贈り物であろう物を抱えて。
「…どうせ。」
「え?」
「重いって、思ったんだろ。」
クラウドはきまりが悪そうにザックスを睨むが、どこか泣き出してしまいそうに見えた。
(え?それはもしかしなくても)
「これ、俺に?ホワイトデーのお菓子?」
「ち、がう!返せ!!」
クラウドは顔を真っ赤にして、その箱をザックスから取り戻そうと必死になる。
「だめ。だーめ!これは俺の!俺がもらった!」
その青い箱に、ザックスがキスをすると、奪おうとしていたクラウドの手が止まる。
「甘いの、嫌いだって言った。」
「オマエがくれるんなら、甘いの好きになりそう。」
「重いの嫌いだって…言った。」
「オマエなら、好き。重いのが、好き。」
クラウドを腹に乗せたまま、その箱を丁寧に開ける。
甘い匂いがふんわりして。それはまるで、彼のような甘い甘い香り――
中に入っているのは、ホワイトチョコレートだろうか。
クラウドの白い指が、遠慮がちにそれをひとつ掴む。
そしてザックスの口元に運ばれる。
(これって、夢?)
そう思うほどに、ザックスにとっては甘いシチュエーションだった。
口に入れた瞬間、ふわりと周りを包むホワイトチョコレートのパウダーが溶けて、柔らかい感触。
「マシュマロ?」
「おいしく、ない…?」
甘いのは、苦手だったはずなのに。
その喉が痛くなるほどの甘いマシュマロが、信じられないほど美味しい。
おそらく一生忘れられないほどの、甘美なそれは。
そう、まるで――
「オマエの、味。」
「は?」
わからない、という顔をする彼に、「もう一個」とねだる。
クラウドがはにかんで笑いながら、またザックスの唇へとマシュマロを運ぶ。
「わ!」
クラウドの指ごと、食らいつく。
「こら!ザックス!指ごと食うな!」
まるで、犬を躾るようなクラウドの言葉。
それが楽しくて、おかしくて。
そのまま、クラウドの指を舐め続ける。
「や…。ザックス、犬みたい。」
くすぐったそうに笑うクラウド。
「好きだろ?犬。」
「うん。好き」
肯定の言葉に、ますます気分が楽しくなる。
「ザックスが――――。」
息が、止まるかと思った。
それほど、彼の告白が、死ぬほど嬉しくて。
止まらない。
愛が、止まらない。
心がひとつになったならば、もう抑えることなんかできない。
「や、やだって!風呂入ってないんだってば!」
「そうなの?いい匂いするけど。」
「い、や…ザックス、ほんとにや…」
本気で恥ずかしがるクラウドの軍服を、どんんどん脱がしていく。
野営テントで寝ていただろうクラウドを思えば、風呂にいれてさっぱりさせてあげたいという気持ちはある。
でも、今すぐひとつになりたくって。
そのまんまのクラウドと、ひとつになりたい。
「ざっく…す」
「うん、クラウド。」
なるべく怯えさせないように、優しく体中にキスを落として。
「きたない、から…お願い、舐めない、で…」
「やだ。おいしいから。」
たしかに、少し汗と砂の匂いだするけれど、好きな匂いだと思った。
それどころか、その匂いが異常な興奮を呼ぶ――
ザックスしか知らないであろうクラウドが、愛しくてたまらない。
彼の下着をずらして、そこから現れた下半身をほとんど無意識に口に含む。
「え…や…!」
クラウドの未来≠ェ手に入るなら、別にもう、彼にどんな過去があったっていい。
たとえ100人の男と経験があろうとも、101人目の男に選ばれたい。
(過去は他の男にくれてやる。その代わり、未来は誰にも渡さない。)
だからもう、クラウドの過去に拘る気は、ない。
ないのだけれど――はたしてクラウドは、いったいどれだけの『経験』があるのだろうか?
冷静に見てみれば、彼の性はとても幼い。
未発達で薄桃色の綺麗な性器は、とても同じ男とは思えない。
ザックスが少しそれを吸い上げただけで、あっという間にクラウドは上りつめる。
「ふあ…!」
あまりに、早い吐精。そしてその、恥らう仕草はあまりにうぶで。
どう見ても――遊んできたようには、見えないが。
ザックスはクラウドの薄い精を抵抗なく飲み込み、そのまま彼に口づけすると。
クラウドは、いやいやと首を横に振って、可愛く拒絶する。
「やだ…!にが、い…」
「そう?クラウドの、甘くてうまいけどな。」
そう笑って返すと、クラウドがその顔を腕で覆って隠す。
その羞恥に耐えられないという仕草は、あまりに清廉としか言いようがない――。
クラウドの白い尻に指を這わせて、その秘部を時間をかけてゆっくりほぐす。
一ヶ月前のセックスは、あまりに性急で、彼は悲痛な叫びをあげていた。
そのときのことを思えば胸が痛むとともに、中に入る感覚が思い出されて、抑えようのない欲が疼く。
(でも、絶対に痛くしない。)
本当は、ザックスの方がはちきれてしまいそうだったけど。
なんとか欲望を自制して、丁寧にクラウドの秘部を慣らしてやる。
「あ、あ……」
クラウドの声が甘くなってきたところで、ゆっくり彼の中へと入っていく。
「ん、は…は、ざ、」
「痛い?」
クラウドの中は緊張のせいか、ぎゅうぎゅうと締め付けてきて。むしろ痛みすら、感じる。
「クラウド、ちょっと、緩めて…?さすがに、きつすぎる。」
本当は早く、この張り詰めた自身を最後まで突き刺して、思い切り抜き差ししたい。
だけど、狭い肉壁を無理に押し広げて進むのは可哀想で、クラウドの頬をさすって優しく声をかける。
「む、りぃ…ザックスの、入ってきちゃ…」
「大丈夫。絶対、痛くしないから。力、抜いて。」
あまりに、狭いクラウドの中。
男を受け入れる側は、こんなに苦痛を伴うものなのだろうか。
一ヶ月前は、クラウドを気遣う余裕すらなくて、彼の痛みを無視したことが悔やまれる。
クラウドは、痛みに苦悶して、その額には汗が浮かんでいた。
「ごめんな…。やめよっか。」
キスは受け入れてもらえた。
好きだと、言ってもらえた。
それでセックスも合意を得たと思っていたが…どう考えても、クラウドが望んでいるようには見えない。
「やだ!抜かないで!」
クラウドから体を離そうとすると、ザックスにしがみつく様にして彼が叫ぶ。
「でも、痛いんだろ?…怖い、だろ。」
あんなことをされたのだ、体が拒絶していても仕方がない。
「痛くなんか、ない。俺だって、できるから…」
クラウドから、ぽろぽろと涙が流れる。
「…だから…捨てないで………。」
そのいじらしさに、ザックスの方が泣きたくなった。
泣きたいほどに、愛しくて――
涙がつい、目の端から流れそうになる。
その情けない顔を見られたくなくて、クラウドに唇を重ねる。
するとクラウドが、自分の足をザックスの腰に絡めて、必死で誘う仕草をする。
体ではなく、彼の心で、求められている。――その事実が、たまらなく嬉しい。
キスで少し力が抜けたクラウドの中に、ゆっくり、少しずつまた入っていく。
柔らかくて、あったかい。ザックスを放さないように、締め付けてくるそれは。
―――まるでクラウド、そのものだと思った。
彼の愛、そのもの。
「ざっくす…、きもち、いい?」
前に体を重ねたときにも、彼にそう聞かれたことを思い出して苦笑する。
「うん。気持ちいい。ありがとな…」
そう素直に返すと、クラウドが涙を流しながらも、微笑む。
自分のことより、ザックスのことばかり考えてくれるクラウド。
――なんて、真っ白なんだろう。
「…オマエも、気持ちよくしてあげるから。な?」
「あ…ざっく、ふぁ…」
優しく腰を動かす。クラウドの幼い性器を擦ってあげながら。
「ん!あ、ん、ざく…」
自分勝手な動きにならないよう、クラウドの反応をうかがいながら。
ゆっくり、そして深く、自身を抜きさしする。
スピードがない分、一回一回が重い挿出になって、確実にクラウドの感じる場所だけを突いていく。
クラウドからは苦痛の表情は消え、頬を上気させて、可愛く鳴く。
「あ!あっ!やあ!」
「クラ。中、すげえ動く。キモチいいの?」
クラウドの性器は、先走りの蜜で濡れていて、感じているのは明らかだった。
それを指摘されたのが、恥ずかしいらしい。
顔を歪めるその表情があまりに可愛くて、もっと恥じらう姿をみたいと思う。
「繋がってるとこ、見える?」
おそらくクラウドからは、抜き挿しされるザックスのオスしか見えないだろうが。
そのあまりに太く赤黒いモノは、二人の愛液に濡れててらてらと光り、いっそう迫力がある。
クラウドの足を折り曲げて、それを見せ付けるようにすると、クラウドが目を背ける。
「いや!そんなの、見せない、で…!ん、あ!あっ!」
わざと大きく腰を動かし、ずるずると出入りさせて。
「なんで?全部、見て欲しい。俺たちが愛し合ってるところ、全部。」
想像通り、クラウドは可愛く恥らってくれるから、ザックスはくすりと笑う。
「あ、い?愛…して、る?」
「うん、愛してる。」
――愛してる。体だけじゃない。かといって、心だけでもない。
クラウドを、ただ愛している。
ときどきザックスのオスの先端を、クラウドの奥深くにぐりぐりと押し付けてやれば、
我慢できずに、彼は甘い喘ぎ声を漏らす。
「やぁん!それやだ…!」
どこを突けば、クラウドが悦んでくれるのか、以前抱いたときからもう知っている。
嫌だ嫌だと首を振っても、彼の体は小さく震え始めて、達する寸前。
そしてザックスも、自分の腰の動きひとつで、彼が甘く喘いでくれるものだから。
もっとその声を聞きたくて、クラウドの最奥ばかりを、夢中になって突き上げる。
「なあ、クラ。中、出してもいい?」
「だ、め…!おなか、痛くなっちゃう…」
「じゃあ、後で俺が中、綺麗にしてやるから。ね?」
「や…そんなのむり!外にだして、おねが…っ」
「…ん、しょうがない、か。」
無理に中に出しても、しょうがない。
合意の上でないのなら、そんなのは暴力と変わらないのだから。
クラウドから引き抜いて、彼の白い腹の上を汚す。
クラウドも達したようで、その綺麗な性器からはびゅくびゅくと蜜が溢れていた。
白くて細い彼の腹の上を汚す、二人分の白濁の液。
それをザックスは、腹の上を撫でるようにして、手の平で混ぜあわせる。
なんだか、どうしようもない満足感。
体と、心がひとつになることへの幸福感。
「クラ、見てみ?俺とオマエの、すげえ量。」
ほとんどザックスのものだったけれど、それを優しく混ぜながら、クラウドに見せる。
「み、るく…?」
焦点が定まらないクラウドが、例の舌ったらずな口調で言う。
「……オマエのそれ、なんなの。すげえ誘い文句に聞こえるんだけど。天然?」
ザックスが苦笑すると。
「なんて、いうの…これ…」
「へ?」
「なんで、こんなの出てくる、の?」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。
(――まさか。まさか、まさか…)
口に出すのも怖ろしいことを、恐る恐る彼に問う。
「オマエ、まさか。何も知らないんじゃ…」
「……。」
「おい、クラ…?」
そのまま、クラウドは力なく、ぐったりしてしまった。
おそらく、眠りにおちたのだろう。
――朝。携帯の着信音で、目が覚めた。
慌てて飛び起きると、目の前には、変わらずクラウドが眠っていて安堵する。
すやすやと、可愛い寝顔を半分枕に押し付けながら。その可憐さに、顔が緩んでしまう。
……というのに、相変わらずけたたましくなり続ける着信音が、鬱陶しい。
クラウドが起きたらどうするんだ、と電話の相手を心の中で責めながら、通話ボタンを押す。
「ちょっとザックス!最近なんで連絡くれないのよ!」
「え?ああ、ごめん。」
相手がどの女の子かわからなかったけど、おそらくホワイトデーの日に会った子の声だったか。
クラウドが戦場に行ってから、どの女の子とも連絡をとっていない。
「私のこと好きなんでしょ?!だったら!」
「ちょっと待って。大きな声出さないで。電話越しでも、あいつが起きちゃうから。」
「は?!あいつって誰よ?!」
ますますわめき散らす女の子に、頭を抱えて、そのまま寝室を出る。
本当はもっと、ベッドの中で、幸せの余韻に浸っていたかったのに。
女の子をあしらって、なんとか電話を終わらせたとき。
かすかに、漏れる声が聞こえた。まるで、すすり泣くような――
「おい?!クラウド?!」
慌てて寝室のドアを開けると、クラウドがベッドの隅にちょこんと座っていた。
そして――。
「なんで、泣いてんだよ?どうした?!」
慌ててベッドに飛び込むように、彼に駆け寄る。
頬を伝う涙を拭ってやると、クラウドは唖然とした表情で、なにやら可愛く目を瞬かせる。
「ザックス…いた、の?」
「え?」
「彼女のとこ、行ったのかと思った……。」
それはつまり、ベッドに独り取り残されたと勘違いして、泣いていたのだろうか。
「電話してただけ。行かないよ。――どこにも、行かない。」
「うそ、ばっか…。」
「嘘じゃない。オマエが望むなら、お前の言うとおりにする。」
「……。」
「なあ、どうして欲しい?何でもしてやる。何でも、叶えてやる。」
きっと、どんなことだって叶えてみせる。
絶対叶うはずのなかったことが、今――叶おうとしているのだから。
「………ほんと、に…?それなら、」
「うん。」
「……他の、女の人のとこ、いかないで、ほしい。」
「わかった。いかない。」
「携帯で、話したりも、しないで。」
「わかった、話さない。」
「黙って任務に行ったりしないで。」
「わかった、行かない。」
「納豆食えって、無理やり食べさせるのやめて。」
「わかった、しない。」
「いっつもザックスの目覚ましうるさいんだ。ちゃんと自分で消して。」
「わかった。ちゃんと消す。」
「あと、あとは…」
「――あとは?」
命をくれと言われら、喜んで捧げる。
世界をくれと言われたら、この星を支配してみせる。
彼のためならば、きっとどんなことだって、できるから。
「…ぎゅって、して…………。」
それはなんて、真っ白で。欲のない、願いなのか。
確信した――クラウドは、本当は少しの汚れも知らないのだと。
真っ白でキレイな彼のままだったのに、ザックスに合わせようと、必死で嘘をついてくれたのだ。
「ザックス?なんで、また泣くの。」
「すっげえ、好きだから。ごめんな、クラ。」
壊れてしまいそうなほど、きつく抱き締めれば、きっと痛いだろうに彼も抱き締め返してくる。
その匂いが。
その味が。
彼の全てが、あまりに甘い。
それが愛の味なのだと知って、また泣いた。
――あのな、クラウド。嘘じゃない。
守りたい、汚したい、でも――守りたいんだ。
(そ う い う の を 、 愛 っ て 呼 ぶ ん だ ろ ?)
マシュマロみたいに真っ白な体。真っ白な、心。
俺の背中に回された震える手を、二度と放さないと誓った。
守るよ。…キミを、守るよ。
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