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【 ご 注 意 】

*「美 女 と 野 獣」 パロディです。とかいって、原作童話どこいった。

*たぶん、ただのERO童話になります。18歳以上の方の閲覧推奨(予定)。

*ザックスが、最初ちょっと?かなり?鬼畜気味です。ごめんなさい…

*のんびり、亀更新。

 

 

昔々――ニブル山の古城には、

醜く凶暴な、一匹の野獣が棲んでおりました。

 

Story1.生贄の少年

 

 

 

ニブル山の麓にある村――ニブルヘイム=B

冬になれば辺りは深い雪に覆われ、周囲から隔絶される、とても小さな村だ。

 

その田舎村には似つかわしくない、美しい少年がそこにはいた。

少年の名は、クラウド・ストライフ。

その美貌は誰の目で見ても明らかで、透き通るような白い肌に、けぶるような金髪。

そして零れそうな大きな瞳は、この世のどんな希少な宝石よりも眩く輝き――

彼の美貌を前にすれば、村一番の踊り子であろうと、ハンカチを咥えて敗北を認めるだろう。

 

クラウドは、村で唯一の図書館で、司書の仕事をしている。

この小さな村において、男たちはみな年頃になれば大きな町へと出ていくのが常であったが、

母親の体が弱く病気がちであることから、クラウドは16歳になった今でも村から出ようとはしなかった。

父は10年以上前に、戦争で他界している。

女手ひとつで育ててくれた母と、その愛情をうけて育った息子。

二人は寄り添うように、細々と暮らしている。

生活は豊かではないけれど、二人は幸せだった。

 

それでも、食うには最低限の金はいる。そして、病気がちな母の療養にも、やはり金は必要だった。

クラウドの勤める小さな図書館は、地元の地誌や歴史書がほとんどで、需要などないに等しい。

役場から支払われる賃金は気持ち程度のもので、それで生活など到底できる金額ではない。

クラウドは独学で学んだ知識に基づいて、薬草や生薬などを売って生計をたてている。

 

ニブルヘイムは、無医村だった。

 

 

 

 


 

「クラウド!お願い、すぐに来て!」

「どうしたんだ?」

クラウドが常の勤務を終え、図書館から帰宅すると。

自宅の扉の前で幼馴染のティファが、血相をかえて飛びついてきた。

「ニックが、熱だして苦しそうなの。早く診てあげて!」

医者がいない――もとより、『医学』自体の知識が薄いこの村において。

『病気』は、科学や生命学を根拠とするところではなく、神の怒りや悪魔の所業と考えられていた。

家族や知人が病気になれば、神に祈りを捧げたり、悪魔祓いをしたり…

そういったことが、当然のように行われている。

クラウドは16歳という若い年齢でありながらも、その風習や儀式に違和感を持っている

村で唯一の人間だった。

 

神様を、信じていないわけではない。

だが、多くの文献を読み、歴史を知り――医学の入口を、クラウドは見出していた。

人の体を救えるのは、占いではない、儀式ではない。…知識だということを。

 

「こないだ、私がお腹痛かったとき。クラウドが治してくれたじゃない。

ニックも、クラウドなら治せるんじゃないかって…」

ティファは、村で唯一、クラウドに賛同してくれる女の子だった。

医学の知識、むしろ、「外界の知識」を持ち込むことに嫌悪を抱いている村人たちは、

クラウドに対して批判的であり、冷遇されていたけれど。彼女だけは、違っていた。

 

 

 

 

ニック・マルコーは大地主の息子で、クラウドより4つ年上の、とても体格のいい青年だった。

年頃になれば皆、町に働きに出る者がほとんどである中で、

彼は裕福であるため親元でのらりくらりと暮らしていた。

小さい頃から、クラウドのことを女のような外見だと批判したり、貧乏人だと罵ったり…

正直、あまり良好な関係ではない。

 

良好どころか――つい数週間前には、クラウドの女のような外見に興味を抱き始めたのか

金を出すから相手をしろと言ってきた。クラウドが図書館で勤務中のときに、だ。

クラウドには強いられようとしている行為の意味などわからなかったが、

その荒い息遣いがあまりに不快で、とにもかくにも拒絶の態度をとれば。

あろうことか、力に訴えて襲い掛かってきたのだ。

積んであった本を投げつけ、死にもの狂いで抵抗して逃げだした。

あの時は、それでなんとかことなきを得たが…あれからニックには、絶対に近づかないようにしている。

 

その、力強く、荒々しいほどだった青年が。

 

病を患い、倒れたという。

それも、ただの風邪や腹下しなどではない。

彼の寝室で、その姿を前にしたとき、クラウドは自身の目を疑った。

「これは…」

(いったい、なんだ?)

「なに、これ…どうしちゃったの?!」

一緒に彼の部屋にやってきたティファは、あまりの恐ろしさに泣き出してしまった。

「ティファは、部屋から出て行った方がいい。感染るかもわからないし。」

「うつ、る…?」

ティファはガタガタと震え、クラウドにしがみ付く。もはや、立っているのもやっとだ。

彼女が怯えるのも、仕方のないことだ。

 

クラウドは、ティファの肩をさすりながら、ニックの部屋を後にした。

(…こんな病気、見たことない。)

クラウドの独学で得た薬草学程度の知識では、手の施しようがない。

「クラウド、ニックの、あの体…。なおせ、ない、の…?」

ショックで声まで震えあがっているティファに、申し訳ない想いで頷く。

「…ごめん。俺じゃ、治せないよ。」

 

斬り傷や膿にきく薬草ならば、知っている。

腹下しや風邪にきく漢方薬も、知っている。

だけど、あんな病気―――治療法なんて、果たしてあるのだろうか?

 

彼の体は、到底、普通の状態とは思えなかった。

体中が赤黒く腫れがあり、皮膚はところどころ壊死して――

あの健康的な青年の面影など微塵もない。

これは、まるで…

 

 

「こんなの、崇りじゃない!」

 

 

ティファが泣き叫んだ言葉―――

その言葉に、クラウドの背筋が凍った。

それが、まことの「崇り」のように人々に襲い掛かることを、そのとき漠然と想像してしまったから。

 

 

 

 


 

五日ほどの高熱に苦しんだ後に、ニックは死んだ。

そうして、まるで悪夢の連鎖のように――同じように村人が4人も死亡した。

高熱に苦しむ人は、11人いる。

彼らも、そう遠くないうちに…ニックと同じ末路が待っているのだろう。

 

 

 

「崇りだ」「呪いだ」と。

 

 

 

いつからか、皆が口をそろえて…目に見えない「何か」に、怯えるようになった。

次は、自分の番かもしれない。自分の家族かもしれない、と。

襲いくる病魔に、誰しもが怯えていた。

 

そうして――5人目に命を落とすことになる、村の長老が死に際に叫んだ言葉。

それが、ニブルヘイムの運命を変えることになる。

他でもない、クラウドの運命を。

 

 

 

 

「村一番の、清らかで美しい体を野獣に捧げろ…!」

 

 

 

 

信仰の深さや村の慣習とは、ときに恐ろしいものだ。

古来より、厄災を避けるためには「美女の生贄」が必要だと信じられていた。

長老の言葉に不義を申し立てる者などいないし、村中の人間がそれに賛同した。

…ただ一人を除いては。

それは、ストライフ夫人だった。

なぜなら、その生贄として名前があがったのが――他でもない。最愛の息子『クラウド』だったから。

 

 

 

 


 

『野獣』は、ニブルヘイムを囲うニブル山の頂上にたたずむ、古城を棲家としている。

…と、古くから言い伝えられてきた。

何百年もの間、この小さな村に語り継がれてきた伝承――

それが、ただの言い伝えなのか、事実なのか。知る者はいない。

 

何故ならば、その野獣の姿を見た者はいないのだから。

いや、見た者は「生きていない」、と言ったほうがいい。

実際、噂を聞きつけた他国の賞金稼ぎが、それを捕らようと試みたこともあったが、

無事生きて帰ってきた者は一人としていなかった。

生きて帰ってきた者はいないのだから、そこに野獣がいたのだと証言できた者は当然いるわけがない。

だがしかし、その事実こそが「野獣」は実在するのだという、確かな裏付けでもあった。

 

それは、あくまで噂の域をこえないが――

なんでも、その野獣は二目と見れぬ醜い姿・カタチをしているという。

その野獣と視線を合わせただけで、その恐ろしく醜悪な野獣の形相に、大の男が発狂してしまうほどだと。

 

 

 

―――化け物、

 

 

 

いつからか、村人たちはそう呼び、その存在を恐れた。

彼らが恐れたのは、化け物の姿だけではない。

化け物特有の人為を超えた能力――それが、恐ろしかったのだ。

山火事を発生させることも、雷や暴風雨を起こすことも、そして大量に「人を殺す」ことでさえも、

その化け物には出来るのだという。

実際に、5年前――隣村では50人近い人間が、謎の死を遂げた。

 

どこから出た噂か、それは「野獣」のもつ超人的な力によるものだと言われ、

人々はますますソレを恐れるようになる。

 

そして、その悪夢のような厄災は、再びやってきた。

冬の寒さが厳しくなってきた頃、村の者が一人、また一人と死んでいく――

 

それは、腹をすかせた化け物の怒り。…「崇り」なのだ。

 

 

 


 

 

「…村で一番の器量よしといえば、ストライフのところの奥さんじゃないか。」

化け物に捧げる生贄として、最初に名が出たのは、美しく聡明なクラウドの母だった。

「何をいうか。生贄は、処女でないと意味がない。清らかで若い体――」

「この村に、若者は少ないだろう。思いつくのは、ティファぐらいしか…」

「だめだ!あの子は、村長のお嬢さんだぞ!」

村人は生贄に差し出す女を誰にするか、苦悩していた。

「待てよ、一番の器量よしといえば。………あの子、じゃないか。」

 

生贄となる若い体は、清らかで健康的なそれでなくてはいけない。

そして、村一番の美しい容姿=B

それらの条件であるならば―――「女」である必要は、別になかった。

 

 

 

 

ドンドンドンドン!

 

玄関の扉が、力任せに叩かれる。

「おい!息子を出せ!」

「お前らは、村を見殺しにするのか!」

 

がシャン!

 

石の礫で、窓が割られる。

「お前さえいなければ、親父が助かるんだ!」

「頼む!村から出ていってくれ!」

 

 

「お前は、生贄だ!クラウド!!」

 

 

部屋の隅で。母は、息子を抱きしめたまま絶対に離そうとしなかった。

ランプの明かりを消し、息子を毛布で包み。

「耳を貸すんじゃないよ。大丈夫、大丈夫だから。」

クラウドの肩を、背を、何度もさすった。

「でも、母さん。誰かが生贄にならないと…」

そうでなければ、もう皆、恐怖から逃れられない。

それが、正しいことでなかったとしても――

「馬鹿いうんじゃないよ!」

暗闇で、母の表情は見られなかったけれど。

 

「たとえ、何人の人間が死んだって。…アンタの命の方が、大事なんだよ。」

きっと、母は泣いているのだと思った。

 

 

 

「おい!火を、持ってこい!」

 

 

 

(え――…?)

ぞわ、と鳥肌がたった。

窓の外、夜の闇に、いくつもの炎が浮かぶ。

村人たちが手にしている松明、それがクラウドの家に向かって投げ込まれる――

 

「やめろ!!」

クラウドは、母の腕から抜け出て、家の外へと飛び出した。

「母さんも、家も関係ないだろ!俺が、」

「クラウド!待ちなさい!」

母が後ろから叫ぶが、もはや、クラウドにはそうするしか選択肢がなかった。

 

 

「俺が、生贄になればいいんだろ…!」

 

 

「馬鹿をおっしゃい!行かせるもんですか!」

母が、自分を奪うように抱き寄せようとするのを。クラウドは渾身の力で突き飛ばした。

生まれて初めて、親に手をあげてしまった。

母は背を地面に強く打ち、痛みに小さく呻く。

 

「クラウド、待って!生贄なんて、そんなのおかしいよ。クラウドが、一番そう思ってるんでしょ?!」

人集りを掻き分けて、飛び出してきたティファに、クラウドは緩く笑う。

「何かに、すがりたいって気持ちは。きっと、普通のことなんだよ。」

「やだ!クラウドが行くなら、私も行く!一緒に行くから…!」

彼女の優しさは嬉しいけれど、こんなことに巻き込むなんて、絶対に出来るわけがない。

「ティファ。母さんのこと、頼んでもいい?ティファにしか、頼めないから…」

 

まるで小さな子供のように、泣いてすがるティファ。

そして、地を這いながら、クラウドに死にもの狂いでひたすら手をのばす母。

 

 

「母さん、ティファ。……また、ね。」

 

それが、嘘であることは知っていた。

生贄になるということは、その野獣に「食われる」ということ。

もう二度と、母にもティファにも会うことはないのだろう。

自分の『死に場所』へ向かうため――クラウドは、馬にまたがる。

 

「…いってきます。」

目指すは、古城。かの野獣のいる住処へ。

後ろから喉が枯れるのではないかというほど、自分の名を呼ぶ母の声が聞こえた。

泣き崩れる、ティファの声が聞こえた。

それが、悲しくて、嬉しくて。…そしてやっぱり、悲しかった。

 

 

 

 


 

ニブル山は、高度を増すごとにひどい吹雪になった。

深い、深い雪―――もはやこれ以上、馬で進むのは無理だろうかと思えてきたころ。

鬱蒼とした針葉樹に囲まれた、古城が現れた。

ひどく、荒れ果てた概観。

茨が城を取り囲み、不気味な闇をまとっている。

その城の下にようやくやってきたとき、連れていた馬が突然暴れだす。

そして――逃げ出してしまった。

(この城に、怯えてるのか?)

寒さと見えない不安で、クラウドの肩が震える。

 

それでも。一歩一歩、雪を踏みしめて城に近づく。

城門は固く閉ざされていたけれど、歪んだ鉄格子の隙間から、

クラウドは細い体を滑り込ませて侵入することができた。

 

ギー…

 

城の重いドアを開けると、そこは真の暗闇だった。

クラウドの視界には、その闇以外は何も見えない。

「あの…すみません、」

 

こんなに広い城なのに、召使の一人もいないのだろうか?

噂の「野獣」はどこにいるのか。

クラウドはおそるおそる、奥へと進む。遠くから、わずかな反響音がした。

「あ、の…?」

 

その音の方へと、足を運ぶ。

螺旋階段を上り、腐った床をぎしぎしと踏みしめながら、廊下を進む。

月明かりもほとんどなく、手探りで。

「うわ?!」

床がいっそう痛んでいたのか、足場が少し割れて、思わずクラウドは躓いた。

 

「い、た…」

 

そのとき、ふと――視線を感じた。

まるで射抜かれるような、そんな、痛いほどの視線。

捕食者に狙われた獲物のように、クラウドの背筋に冷たい汗が伝う。

恐る恐るクラウドが見上げた先には、青い双つの灯が暗闇に浮かんでいた。

いや、違う。それは、肉食獣のそれのように、闇に潜む眼=B

 

 

 

「……オマエは、誰だ。」

 

 

 

低く、唸るような声。

まるで親の敵でもあるかのような、憎しみすらこめられているような。

それはまるで、殺意にも似た――

 

 

 

そんな、冷たく、悲しい声だった。

 

 

 

 

愛しい、俺の野獣――

 

あのとき怯えていたのは、俺じゃなくって。

本当は、アンタの方だったんだろ?

 

独りぼっちが、恐かったんだろ?

 

 

 

 

 

 

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