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キミに贈る、5文字の言葉。

Call5.

 

 

キミを失ったこの世界を、愛せる日がくるというの?

(会いたいよ。ただ、会いたい。)

 

 

星を救う闘いから、5年。

ミッドガルは少しずつ再建が進んでいるものの、もとの繁栄の名残は、少しも感じられない。

この街の全てを一望できる、あの丘に。ひとり、黒衣の男の姿があった。

まるで、祈るかのように。…否、許しを請うように。

目を閉じて、その大地に刺さる大剣に寄り添っている。

彼こそが、地球を救った英雄――その人であるが、彼からそんな力強さなど、少しも感じられない。

その姿はあまりに儚く、美しく、夢うつつのよう。

まるで、今にも消えてしまいそうな。そんな危うさすら、彼にはあった。

 

英雄――クラウドのその手には、古い形の携帯電話が握られていた。

黒い二つ折り、厚みのあるそれは、小さくロゴが入っている。…『神羅』の文字。

そして、傷だらけの、チョコボの小さなストラップ。

それは、「10年前」にクラウド自身が、使っていたものだ。

 

ことの始まりは。

この、携帯電話だった。

 

 

 

 

 


 

 

クラウドが配達から帰ると、セブンスヘブンの店じまいをするティファとすれ違った。

「クラウド、おかえりなさい。」

「ただいま。…マリンとデンゼルは?」

「さっきまで、あなたを待ってたんだけど。もう遅いから、寝かせたわ。」

ティファの黒髪に手をのばし、耳にかけてやると、彼女は微笑む。

彼女の綺麗な黒い髪は、クラウドのお気に入りで、無意識に手を伸ばしてしまうことがある。

特に意図はないのだけれど。

 

「…クラウドのそういうところ、すっごい罪作り。」

悪戯っぽく笑うティファ。

彼女の笑顔を見ると、心がほわりと温かくなるようだ。

決して多くの言葉を交わすわけではないけれど、彼女とは、いい関係が続いている。

恋人ではない。でも――ただの仲間や友人というわけでもない。

いうなれば、家族のような関係。

 

それが、ティファにとっても、望むべき関係なのかはわからない。

彼女が、自分に想いを寄せているのは、かつて一緒に旅をしていた頃からわかっていたことだし、

女性としての当然の願望――

たとえば、「結婚」とか「子どもを授かること」とか。

そういう明確な幸せを、全く望んでいないわけがない。

 

それでも、クラウドがティファをはっきりと選ばないこと。

…つまりは、プロポーズをしないことに、彼女は不満を漏らすようなことは一度もなかった。

そしておそらくは、これからも、ないのだろう。

「彼女から」今以上の関係を求めてくることは、きっとない。

クラウドが心から望まないことを、望む人ではないのだ。

それは、裏返せば彼女の深い愛であって、彼女の愛し方なのだ。

 

ティファが、好きだ。

幸せになって欲しいと思う。できるなら、自分がそうできたらいい。

それは、激しい慕情ではないけれど、温かい気持ちだった。

恋ではなくて、愛といっていい。

こういう気持ちを――家族愛、と呼ぶはずだ。

 

 

 

 

 

「お客さん、来てるよ。クラウドに。」

クラウドの嵌めていたグローブを受け取ると、ティファはカウンターの端へ目配せする。

店に入った瞬間から、覚えのある気配がしたし、何より仄かに香る男用のコロンの香り。

それは、昔から変わらない匂いだ。

 

「…タークスか。」

「ずいぶん、他人行儀なおっしゃりようだぞ、と。」

そう言って、タークスの男は、肩を大げさにすぼませる。

それは、いつか見た親友の仕草を思い出させるもので、クラウドを不快にさせた。

「他人だろ。」

「あいかわらず、可愛くないな、このチョコボは。」

そう言って、赤毛のタークス――レノは、クラウドの目の前でチョコボのストラップを揺らす。

手に持っているのは、携帯電話。

それは、間違いなく。

「……なんで、アンタが持ってる。」

 

「これ、オマエのだろと。裏のIDナンバーが、オマエが一般兵時代のと同じだし、

何よりこの、乙女趣味全開なストラップ――」

「俺の趣味じゃない。」

レノから、携帯電話を奪おうとする。すると、それをかわされる。

「ザックスの、趣味だろ?」

その言葉に――その名前を出されたことに、頭がかっとなって。

レノの腕を掴んで、強引にその携帯電話を奪う。

 

レノは気にした風でもなく、続ける。

「オマエが10年前使ってた携帯。タークスが、回収してたんだぞと。」

「どこで。」

いつだったか――『彼』と二人、あの忌まわしい実験室から逃げ出すとき。

彼の携帯電話はあったが、クラウドのそれは見つからなかった。

 

「実家。」

「え?」

「オマエの、ニブルの実家。オマエの母ちゃんが、持ってたんだぞと。」

さすがに驚いて、クラウドは息を飲む。

「オマエの母ちゃんは、もう事切れてたけどな。…こいつを、握ってた。」

…そういえば。

記憶はおぼろげであるけれど、当時ニブルヘイムへ調査に行ったとき。

同僚たちは村の宿屋に泊まったけれど、クラウドだけは、実家に帰っていたのだ。

あの村が燃えた日――携帯電話は、家に置き忘れたままだった。

 

「…なんで、今さら?こんなの持ってくるんだ。」

10年も前に、回収されていたという携帯電話。今さら目の前に見せられても、

黒い憎しみや悔恨の念が、湧き上がってくるだけだ。

母が死んだこと。故郷を失ったこと。今だって、許せたわけじゃない。

だけど、誰を責めればいいのか、恨めばいいのか、今となってはわからない。

セフィロス、神羅、タークス――どれにも罪はあるけれど、一人だけが悪いわけじゃない。

愛憎や利益、それぞれの正義や信念。

そういうものが解けないほどに複雑に絡まって、悲劇は生まれたのだ。

 

(…違う、かな…)

もしかすると、一番罪深いのは、自分かもしれない。

何一つ守れなかった、弱い自分が。

親も、故郷も、憧れた人、想いを寄せた女性、そして何より――あの人を。

 

「さあな。罪の意識が、あるんじゃないのか。タークスも、人間だからな。…俺だって、たぶん、な。」

レノの言う『罪』それは…世界を混乱に陥れたことへの、自責の念だろうか。

それとも、一人の英雄を、死に至らしめたことへの――

 

クラウドが言葉を返さずにいると、レノは穏やかに笑って、その金髪を軽く撫でる。

それを、避けることもできたのに…しなかった。

レノの瞳は、とても優しい。

それは、10年前の「友人だった頃」と倒錯してしまいそうなほど。

あの頃と同じだけ、その瞳も、手の力も、優しかった。

こんな風に、歯車が狂う前は――レノとだって、よい友人だったのだ。

たくさんの話をして、たくさん笑った。『彼』と三人で。

 

10年経ったって。大切な思い出は、あるんだろ?この中にも。」

「…どうだったかな。」

 

誰よりも、自分たちを見てきたレノだからこそ。

きっと、わかっているのだろう。

この携帯電話には、幾多の思い出が詰まっていること。

その思い出たちは、数え切れないほどあって、クラウドにとっては重すぎること。

…抱えて生きることが、できなかったほどに。

今だって。それを受け入れられるだけの強さなど、自分にはない。

 

 

 

彼を失った世界を、愛する強さなど、ない。

 

 

 

 


 

 

ミッドガルが一望できる、丘の上で、今日も彼を想う。

「…ザックス。」

ザックスの墓標がわりのバスターソード。

その剣はすっかり錆びつき、長い年月の経過を思わせる。

最後に無事である彼を見たのは、5年前――

このバスターソードを背負って、戦いにいく姿だった。

あのときの光景が、瞼に焼き付いたように忘れられない。

「もう、引き摺るのは、やめたはずなのに…」

それでも、想わずにはいられない。

 

もしもあのとき、彼が自分を見捨ててくれたなら。

あのとき、一言でも彼に伝えることができたなら。

 

 

――彼は、死なずにすんだはずなのに、と。

 

 

 

 

 

携帯電話に揺れる、チョコボのストラップ。

それは彼と出会った最初の夏に、ザックスからクラウドに、贈られたものだ。

生まれて初めて、母親以外に貰った誕生日プレゼント。

とても嬉しかったから、鮮明に覚えている。

 

それはおよそ、10年前のこと。

夏の日差しが照る、ミッドガルの青い空の下――

二人お気に入りの、8番街の喫茶店で。

ザックスは、いつも同じコーヒーばかり飲んでいたように思う。

何でも、濃い豆がいいんだとか。

新しい物好きで、飽き性なザックスだけど、ここのコーヒーだけはいつも好んで飲んでいた。

「ほんとに惚れると、一途なの、俺。」

そんな風に言うザックスに、胸が跳ねたのを覚えている。

ザックスに想われる物が、想われる誰かが。――羨ましいと、いつも思っていた。

 

自分の目の前のテーブルには、色とりどりのケーキやタルトなどのスイーツが何十個と並べられ、

いったい何事かとザックスの方を見やると、彼は悪戯っぽく笑う。

15歳おめでとう。」

今日はオマエの誕生日だろ、と。

そう白い歯を見せて笑って、目の前でチョコボのストラップを揺らす。

 

色とりどりのケーキ。

光を集めてキラキラ光る、チョコボのストラップ。

夏の花みたいに、笑うザックス。

眩しかった。

とても、愛しかった。

それが永遠になればいいのに、と。――望んではいけないことを想うほどに。

 

時間は流れる。

町も世界も、変わる。

物は壊れる。

そして人は、死ぬ。

 

不変のものなど、どこにもありはしない。

 

ミッドガルの街は、かつての星の命運を巡る闘いで、すっかり退廃し、

二人がケーキを食べたあの店は、当然もうない。

チョコボのストラップも、すっかりくすんで、傷だらけだ。あのときのような輝きは、少しもない。

そして、ザックスは――

 

 

この世界に、いない。

 

 

 

 

 

 

携帯電話の電源を押してみると、軽やかなメロディを鳴らして、電源が入る。

少なからず、驚いた。

10年も前の、携帯電話…電池が入ること自体が、奇跡といっていい。

 

おぼつか無い手つきでメールボックスを開くと、そこにあるのはほとんどが「ZACK」の名前だった。

一緒に笑って、過ごしていた日々が思い出される。

 

 『今度の日曜、あいてるか?飯奢るからさ、食いにいこう。』

 『オマエ、なんか欲しいものとかある?別に深い意味ないんだけどさ。』

 『何もない、じゃ困るだろ!だから、別に深い意味はないんだけど…』

 『そう、女の子にプレゼント考えててさ!どんなのが喜ぶかなって。そーいう話。』

 

…そういえば、誕生日の前あたりに。

こんな風にザックスからのメールで、質問攻めにあったことがあった。

女の子にプレゼントを贈るから、何がいいかアイディアを出せと。

それを本気に捕らえたクラウドは、

「キラキラしてる可愛いもの。」

そう、自分なりに精一杯、女の子が欲しがるだろうものを想像して、返信したのだ。

 

それがまさか、自分への誕生日プレゼントだなんて知らなくて。

喫茶店で食べ切れないほどのケーキに囲まれながら、そのプレゼント――

『チョコボのキラキラした可愛いストラップ』を貰ったとき。

恥ずかしくて、たまらなかった。だけど、それ以上に嬉しかった。

…こんな女の子趣味なものを貰っても困ると、文句を言いながら。

 

光を集めて煌くチョコボは、まるで世界でひとつしかない宝石のよう。

 

「…ザックスは、何が欲しいの?」

素直にありがとう、と告げることもできず、クラウドは赤くなりながら聞く。

およそ一週間後の819日は、ザックスの誕生日なのだ。

自分だって、それなりにお祝いをしてあげたい。

もちろん、誕生日当日は恋人と過ごすのだろうけど…プレゼントぐらい、贈ったっていいだろう。

ザックスは、目を細めて笑う。

 

 

 

「キラキラしてる可愛いもの!」

 

 

 

クラウドの言葉を真似して言うザックスを、「ばかザックス!」と罵倒する。

「俺は真面目に聞いてるのに!ばか!ザックスのばか!」

ザックスへの仕返しのつもりで、クラウドは彼の飲むコーヒーを奪って、それを飲む。

だが、その苦さに、まだお子様舌のクラウドの顔は歪む。

ザックスはコーヒーを捕られたことを批難するどころか――

「クラウド用に、砂糖とミルクいれてやるよ。」とか言いながら、

甘くなったコーヒーをスプーンで掻き混ぜて、それを嬉しそうにクラウドに勧める。

ザックスはそうやって、すぐにクラウドを甘やかす。

それが照れくさいけれど、くすぐったくて。

 

「クラウド、俺さ。……本気だよ。」

「なにが?」

「さっきの、話。」

 

 

 

―――キラキラしてる可愛いもの。それが、欲しい。

 

 

 

それが、何を指すのか。

どうして、ザックスがそんなに幸せそうに笑うのか、わからなかった。

 

 

 

 

 

ケーキを食べて、映画を見て、夜景の見えるレストランで食事をして。

まるで、デートだった。

クラウドをエスコートするザックスに、始終、心拍数が上がりっぱなしだ。

「トモダチ」の誕生日を祝うには、少し大げさな気がしたから。

…何が普通か、なんて。

ザックス以外に、親しい友人がほとんどいないクラウドには、よくわからなかったけど。

 

「気合いれすぎたかなー。なんか俺、かっこわりい!」

そんな風に照れくさそうにザックスが笑うから、余計に勘違いしそうになる。

彼に、選ばれるような。

彼と、人生を歩いていけるような。

そんなことを自分が望むのは、あまりに図々しいことだと知っているのに――

 

ザックスが部屋の前まで送ってくれて、部屋の扉を閉じた後。

すぐになる携帯電話。メールの着信音。

 

 

From ZACK

Sub さっきも言ったけど

誕生日おめでとう。しつこいけど、もう一回言っておきたくって。

 

 

そして、クラウドが返信する間もなく、再び鳴る着信音。

今度は、メールではない。本物の、ザックスの声。

 

『――ていうか、何度でも言っておきたい。おめでとう、クラウド。』

 

「うん」とか、「しつこい」とか。

つれない返事を返しながら。本当は胸が張り裂けそうなほど、嬉しかった。

それでも、感謝の言葉ひとついえなかったのは、声が震えてしまいそうだったから。

――嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。

この人が、好きだと思った。

叶わなくても、この人を好きになって良かったと。

 

15歳の誕生日。

彼がおめでとう、と繰り返すから。

自分が生まれてきたことが、とても素敵なことに思えたのだ。

 

 

 

一週間後の、ザックスの誕生日――

彼の望む、「キラキラした可愛いもの」。それを贈ることは、結局叶わない。

なぜなら、その誕生日がくるより前に。

…ニブルヘイムへの遠征はきまり、悲劇は起こったのだから。

 

 

 

 

 


 

 

(結局俺は…アンタに、貰ってばっかりだ。)

なにひとつ、彼に与えることは出来ないまま。

彼の未来や幸福、可能性…彼の持つ全てのものを奪って、彼を死に至らしめた。

それだけではない。

彼の記憶すら奪って、まるで自分が彼になったかのように振舞って、生きてきたのだ。

(言いたいよ、ザックス…ごめんって、言いたい。)

謝罪の言葉。それに、伝えられなかった言葉、想い。

(――会いたいよ、)

 

それは、ほとんど無意識だった。

無意識に、携帯電話のアドレス帳から『ZACK』の名を選ぶ。

そして――発信ボタンを押す。

別に、何を期待していたわけじゃない。

ただ、指が勝手に動いたのだ。

 

だから、その声が携帯から聞こえてきたとき。

信じられなかった。

信じられるわけが、なかった。

 

 

 

 

 

 

『―――もしもし、』

 

 

 

 

 

 

(え?)

心が、震えた。

そんなわけはない。だって、彼は。

「…ザック、ス……?」

―――彼は、死んだのだ。

それを、クラウドはその目で見た。

 

あの日、この腕の中で、冷たくなっていくザックスを、確かに感じていた。

今だって、リアルに覚えている。

 

電話の向こうでも、息を飲んだのがわかった。

クラウドのことを、その声で認識したのだろう。

『嘘だ…オマエなわけ、ない。だって……』

その言葉。どこかで、聞いたような気がする。それは、どこだった?

 

「俺、だよ。本当に、ザックス、なの…?」

無意識に、クラウドは少し幼い口調になってしまう。

それは電話の相手が、あの人だからなのか。

『ほんとに?ほんとに、オマエなのか…?』

何度も、確認するように窺う言葉。

どこかで感じる既視感。このやりとりは、確かにどこかで――

 

「ザックス、俺、10年ぶりに携帯が見つかって。

それで俺、ザックスに電話かけて。でもザックスは――…!」

何から話したらいいのか、わからない。

いったい誰と、話をしているのか、わからない。

(ザックスが、生きている?)

そんなわけはないのに、もう頭が混乱して――

 

別人でもいい。

夢でもいい。

少しでも、夢を見させてほしい。

 

『クラウド、なんだよな…?!10年?どういうことだ?っていうかオマエ、どこからかけてるんだよ!』

電話の相手も、ひどく混乱している。その声につられて、クラウドの声も大きくなる。

「ザックスこそ、どこにいるんだよ!」

その男は、ザックスのわけがない。それはわかっているけれど。でも。

『どこって…詳しくは、言えないけど。盗聴、されてるかもしれないし。』

「盗聴?何?誰に?」

『神羅。』

「え―――」

 

神羅に、追われているという男の言葉。

この、デジャブは。

パズルのピースが、綺麗に嵌るように、ひとつの答えへと繋がっていく。

まさか。まさか――ありえない、けれど。まさか。

 

「ザックス…まさか…」

『ずっと、』

「え…?」

 

 

 

『ずっと…声が、聞きたかった……』

 

 

 

そのとき、全てが繋がった。

震える、彼の声――電話越しに聞こえるその声は、声を殺して泣いているのがわかる。

(ザックスは、ザックスは――)

あの、世界の最果て、山深く。

二人きりの旅。二人だけの、世界。

(過去に、いる。)

その孤独の中に、彼はいる。

 

『クラウド。夢でもいい…偽者でも、いいから。もう少しだけ、声を聞かせてくれ…』

(これが現実なら、)

そうだ、彼の近くには、今動くのことのできない自分がいるはず。

忌まわしい過去の自分が。

「……ザックス、信じられないかもしれないけど。」

何から話せばいいのかわからない。だけど、話さなくてはならない。

「―――俺は、未来にいる。夢でも、嘘でもない。だから、」

これから彼に起こること。彼のすべき選択。避けるべき選択。

 

「今から話すこと、よく聞いて――」

 

奇跡を起こしたのは、自分か、彼か、神様か…わからないけれど。

逃亡中のザックスと、電話が繋がった――

それは、運命に抗うことのできる、唯一のチャンス。

 

 

 

…そう、信じたかった。

 

 

 

 

 

――なあ、ザックス。

話したいことが、あるんだ。

たくさんあるよ。

 

「ごめんね」「ありがとう」「あいしてる」

 

そしてどうか、俺を見捨ててくださいと。

…その言葉を、どうしても伝えたかったんです、神様。

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (201025

ファンタジーです。なんだかわかりづらい設定ですみません!

 

 

 

 


 

 

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