C-brand

 

 


 

 

 



 

 

 

 

 

「赤ずきんを脱がさないで。」その後のお話。

前作はエロコメディでしたが、だいぶ雰囲気変わってシリアス?です。

ザックラ前提、セフィ→クラで鬼畜要素あり。ご注意ください。

 

 

 

赤ずきんを脱がさないで。

番外編 2

「黒い死神の猟銃」

 

 

 

オーーーーーン!

 

ひとつ、大きな声で鳴いた。

そうして、もうそれは鳴かないし、動かない。

 

「ザックス!ザックス!」

どんなにその名を呼んでも、彼は目を開いてはくれない。

「やだ…おきて、よ…」

震える手で頭を撫でてやっても、背をさすってやっても、

いつも煩わしいほどに揺れる尻尾が少しも動かない。

「嘘、嘘でしょ…ねえ、」

嘘であってほしい。嘘でなければならない。こんなのは、

 

「若い狼だな。ずいぶん毛並がいい。こいつは高く売れる――」

 

狩人が放つ、残酷な一言。

本来であれば、この男を責めなければいけないはずなのに、今はそんなことなどどうでも良かった。

ただ、最愛の人を助けてほしい。それが出来るのであれば、何でもいい。誰でも良かった。

「た、すけて…」

「何を?」

 

「ザックスを助けて!!!」

 

たとえば、最愛の人を助けることが出来るのなら。

悪魔に魂を売ることもできる。…この体を、売ることだって。

 

 

 

 

 


 

 

「ハロウィン?なんだそれ?」

「秋の収穫祭。自然や神様に感謝しなさい、っていうお祭りだよ。」

季節は晩秋――今夜はハロウィン祭だ。

これは宗教によって多様な意味を持つイベントのようだが、クラウドの住むニブルヘイム村では

農作物の収穫を祝う祭事であり、クリスマスやニューイヤーに次ぐ大きなイベントだ。

 

「へえ…人間の祭りって、いろいろあるんだな。」

興味津々というように、ザックスはクラウドの持つ籠の中のカボチャに手を伸ばした。

ザックスはこれまで村や町で生活していなかったのだから、人間の世俗行事に疎くて当然。

そうであるに関わらず、彼は人間社会の知識が豊富だ。、

むしろ村の外の世界を何も知らないクラウドよりも、はるかに様々なことを知り得ている。

村の図書館や研究所で、沢山の地誌や文献を読んだと以前言っていた。

 

人が好きなのだ、と。彼を見ていればわかる。

 

ザックスはいつだって、人間についての話を聞きたがった。

人間の生活、宗教、単なる世間話まで――

それがどんな些細なことでも、ザックスは目を細めて優しく聞いてくれる。

だからクラウドも、何でも彼に話してしまうのだ。ザックスの喜ぶ顔を、もっと見たくて。

 

「子供たちはね、大人にTrick or Treat≠チて言いながら、お菓子を強請るんだよ。」

「お菓子か悪戯か?=v

「うん、お菓子をくれなかったら悪戯するぞって意味。」

「はは!そりゃ恐い!」

 

ザックスは、そのカボチャ入りの籠を片手で軽々と持ち上げ、反対側の手でクラウドの手をとる。

「ザックス、自分で持てるよ。」

クラウドは男なのだから、自分の荷物ぐらい自分で持てる。

…彼は自分に甘すぎる、と常々思っていた。

「俺が持つ。クラウドは両手じゃないと持てないだろ?」

手を繋ぎたいし、と。そう言われて、顔が赤くなっていくのがわかる。

「…ばか。おばあさんの前では、そんなこと言うなよ。」

憎まれ口を叩きながら、それでもこの握られた手を離そうとしないのは。

ザックスの手が温くて気持ちいいからだ。

 

森の冬は早くやってくる――吐く息は、すでに白かった。

 

 

 

 


 

ハロウィンの夜は、おばあさんのところへお祝いにいらっしゃい――

 

そう大好きな祖母にいわれ、遊びに出かけることになった。

母は村外れの研究所で夜勤があり、今夜一緒に過ごすことはできない。

「一人で行けるかい?」

そう母に問われ、クラウドは大きく頷いた。

(一人じゃないし。)

世界一強くて、懐こくて、甘えん坊な『番犬』がクラウドにはいる。

 

ハロウィンの夜といえば、カボチャのお菓子だ。

それの材料として、小ぶりのカボチャを三つ籠に入れた。

重たいから二つぐらいにしたらと母には言われたけれど、それでは足りない。

両手でしっかりとその籠を抱き、森の向こうのおばあさんの家へと向かった。

 

 

 

 

「ザックス、もういる?」

森の入口、目印である大きな針葉樹の下で、そう声をかける。

「もちろん!」

頭上から声がしたかと思えば、木の上からほとんど音もなく地面へと舞い降りる影。

「こんなところで待っていなくても…ザックスの家に寄るのに。」

「ばっか、森の中でオマエ一人なんて危ないだろ!野犬や熊が出るし、モンスターもわんさかいる。

最近はハンターだって増えてきたみたいだし…。とにかく、クラみたいにちっちゃくて可愛い子、

一人には出来ないって!」

「可愛いって言うな!…昔から森で遊んでたけど、別に危なくなかったよ。」

 

幼い頃から、それこそ物心がついたときから、この森はクラウドにとっての遊び場だ。

母子家庭や女のような外見が原因してか、村の子供たちには仲間外れにされていた。

だからいつも一人で森に来ていたけれど、これまで一度だって、危ない目にあったことなどない。

…いや、一度だけ。狩人の男に、花畑で襲われかけたことがあったが。

あの時は、他でもないザックス(狼バージョン)が助けてくれたのだ。

 

「……あのな…だから、オマエが無事だったのは、俺がずっと付け回してたからであって…」

「え??」

「いや、待て待て!またストーカーって言うなよ?!そうじゃなくって、俺はオマエのこと守りたくって、

モンスターを追い払ったり、熊に食われそうになったりしてただけで…その…決してストーカーでは…」

「…まさか、10年間ずっと?」

「…………ハイ。すみません。」

素直に、感心してしまう。

よくもまあ飽きもせず、そんな番犬、もといボディガードを買って出てくれたものだと。

 

黙ってしまったクラウドに、ザックスは怯えるような目をして眉を下げている。

彼の方が頭二つ分は高い身の丈なのに、なんだか縮こまってしまっている。

耳も尻尾も垂れてしまって、すっかり捨て犬の表情――

もちろん、今は獣の耳も尾もついていないはずだから、あくまでイメージではあるけれど。

 

「……前にも言ったけど。俺は、陰から見られるのは嫌いだ。そういうのって、ザックスらしくない。

俺はザックスの顔を見て、一緒にアップルパイ食べたり、カボチャのプリン食べたいの!

俺が言いたいこと、わかる?」

少し怒りを含ませた口調で、そう彼を責めてみる。

本当に怒っているわけがないけれど。

 

「それは、つまり…?」

ザックスの黒い耳がピンと立った。(あくまでイメージだ。)

「今夜はハロウィンだろ。おばあさんの家で、俺にカボチャのプリン作って。」

よほど驚いたのか、彼はたっぷり10秒間停止した。

「……え?一緒に、クラのばあちゃんのとこ行って…いいのか?」

「カボチャ、3つあるし。こんなに食べきれないし。おばあさんには、ちゃんとザックスのこと

紹介するから…」

「クラウド!!!」

ザックスはクラウドをその腕の中におさめ、ぎゅうぎゅうと抱き締める。

『嬉しい』を全身で表すザックスは、いつも見ていてくすぐったい。

 

「俺のこと、ばあちゃんに何て紹介してくれるの?」

「……犬、拾っちゃったって。」

「ひど?!っていうか狼だし!」

「トモダチが出来たって、そう紹介すればいいんだろ。…わかってるよ。」

「トモダチ?恋人じゃなくて?夫婦もいいな〜!」

「きゃんきゃんうるさい!尻尾振り回すなよ!」

「いや、だから尻尾なんて出てねえって!」

 

わざと拗ねた顔を作れば、ザックスはひどく慌てる。

甘やかしてやれば、ザックスは破顔して嬉しそうだ。

握られた手に力を籠めれば、それ以上の力で握り返される。

 

 

 

 

 


 

枯葉を踏む二人分の足音は、まるで音楽のよう。

森の中は、二人だけの世界だった。

赤や黄に色づく木々も、落ち葉の隙間から顔を出すリスやウサギも、

風が吹くたびにはらりと落ちていく枯葉や木の実も、全て二人の為だけにあるのだろうか。

 

見上げれば、蕩けそうなほどに優しい笑顔―――

それがこそばゆくて、恥ずかしくて、ついずきんを深くかぶって自身の顔を隠す。

そうすれば、彼は声に出して楽しそうに笑う。何が可笑しいのだろう。

 

「クラウドのそれってさ、キスを待ってるの?」

「ちが…っ、そんなわけあるか!」

ずきんを更に深くかぶって俯けば、くすくすと笑うザックスに腰を引き寄せられる。

 

「そうなの?食ってくださいって、誘われてるかと思った。」

 

その囁かれると、ザックスに軽々と抱き上げられてしまう。

彼の左手にはカボチャの籠が持たれているから、右手だけで、だ。

なんて力強い腕――なんて、優しい視線。

触れるだけのキスをされ、すぐに唇は離れていく。

「これ以上は、やばいな。…マジで食いたくなる。」

「ばか。早くおばあさんのところに行かないと、心配するだろ…」

 

そう言って、降ろしてもらってすぐに歩き出したけれど。

鼓動が早い。顔が熱い。息が上がる――

 

ザックスと出逢ってから(正確には再会してからということになるのか)およそ一年が経つ。

その間、彼と体を重ねたのは、一度ではない。

最初にそういう行為をしたのは、おばあさんの家でだった。

その後は、彼の住む小さな小屋で逢瀬を重ねては、幾度となく肌に触れ合った。

 

…ザックスは、きっと知らないだろうけど。

その行為が、クラウドだって嫌いじゃない。

ザックスに何度も愛を語られるのも、何度も口づけされるのも、体中を優しく撫でられるのも、

それに、奥深くを激しく貫かれることでさえも。

こんなに全身全霊で愛されて、嫌だと思うわけがない。

 

 

 

 

「気のせいかもしれないけど。オマエ、今めちゃくちゃエロイ顔してるぞ。」

「………知らない。」

「上目遣いとか、涙目とか、りんごホッペとか。反則だろ。」

そんなの知らない。ただ…好きなのだから、身体が勝手に求めてしまうのだ。

そう仕向けたのは、他でもないザックスのくせに。

ザックスがいつだって、あんな風に優しく愛してくれるから――だから、悪いのだ。

 

「クラウド。どうしても嫌だっていうなら、やめるけど。」

ちゃんと逃げ道をくれるところが、臆病だけれど優しい証拠だと思う。

「ばあちゃんちに行く前に、俺んとこ寄って。…今、すっげえお前に優しくしたい気分。」

「……一回だけ、だよ。遅くなれないし……」

「りょーかい!!」

 

「優しくしたい」なんて言うけれど。

彼が優しくないときなんて、果たして一度だってあっただろうか。

 

 

 

 

 


 

 

パーーーーン!

 

 

 

それは、突然のことだった。

大きな発砲音と同時に、鳥が数十羽空へと飛び立つ。

決して遠い場所から聞こえたわけではない。

むしろ二人のいるすぐ近く、数十メートル先から…この方向は、泉があって、その近くには。

「ザックスの家の方?!…この音って、」

それは、自然の中で生まれる音ではない。――銃声だ。

 

嫌な音だ、と思った。

銃声を聞いたことは何度かあるが、こんなに近くで耳にしたのはいつぶりだったか。

(そういえば、ずっと昔に…)

確かに、この音を聞いたことがある。

おそらく生まれて初めて銃声を聞いたあの時、驚いて駆け寄れば、そこにいたのは――

(そうだ、あのとき、ザックスが撃たれてたんだ。)

おぼろげではあるけれど、確かに当時の記憶が蘇る。

10年前に、この泉の畔で、血まみれのザックスと出逢ったこと。

 

「…ザックス?ちょっと…真っ青じゃ…」

彼を見上げれば、まるで血の気が引いていて、唇も真っ青だった。

手に持っていた木の籠が、彼の左手から抜け落ちて。ごろりとかぼちゃが地面を転がった。

「わりい…っ、なんか、勝手に震えてきやがる…」

「ザックス…大丈夫?手、冷たいよ…?!」

もはや立っていることも難しいのか、がくりと膝を地について、乱れた呼吸を繰り返す。

 

パーーーン!!!

 

もう一度、銃声がした。今度は先ほどよりも更に近い。

「やめろ…っ」

「ザックス!」

 

パーーーーーン!!!

 

三度、その音を聞いたとき。考えるより先に、体が動いていた。

草木をかきわけて、音のする方へとクラウドは飛び出していく。

 

 

 

 


 

ドン!

 

大きな黒いものと勢いよく衝突し、クラウドはその反動で落ち葉の上を転がった。

硬く、大きい影。まさか熊かモンスターかと、肝を冷やして顔を上げたとき、

「こんな森の奥で、赤ずきんか。…まるで、お伽話だな。」

低く存在感のあるその声。その男は、クラウドの傍で肩膝をついた。

 

「アンタ、誰…」

「ハンターだ。そういうお前は?まさか童話の国から出てきたわけじゃあるまい。」

「…クラウド。」

見知らぬ人間であるに関わらず、そう名乗らざるを得なかったのは、

このハンターと名乗る男に言いようのない恐怖を感じたからだ。

荒々しいわけではないのに、クラウドの拒絶を許さない『無言の強制力』がこの男にはある。

 

「クラウド、か。ニブル村の子か?こんな森の奥で何をしている。」

その男の、銀の糸のようにすべる長い髪、血の気のない白い肌、深い影を宿す緑の瞳――

ミステリアスで、冷たく、美しい男。

これまでクラウドが出逢ってきたハンターとは(むしろ人間とは)、その容貌が大きく違う。

男が立ち上がれば、それは見たこともないほどの高い背丈で、あのザックスより遥かに高い。

蛇に睨まれた蛙のように、あるいはミドガルズオルムに睨まれたチョコボのように、

身動きひとつ出来なかった。

 

「いた…っ」

地面に転がった際、岩に頭をぶつけたのだろう。

額から血が流れ、頬を伝うのがわかった。

「せっかくのアンティークドールが、それでは台無しだな。」

男の左手首に嵌った白銀のブレスレットの石――

それがチカリと瞬いて、瞬間緑色の光に包まれた。

そうして…不思議なことに、みるみる傷が治っていく。

(ま、ほう…?)

本で読んだことがある。

これは、不思議な力を宿すマテリアというもので、今彼が放ったのは癒しの類の『呪文』なのだろう。

 

「…それで?先ほどの質問だ。お前は何をしている?」

頬に残る血痕を、男は自身の袖口で拭う。

ただそれだけなのに、彼に触れられた瞬間、背筋を何かが駆け上った。

「おばあさんちが、この先に…あって、」

声が震えてしまって、うまく言葉が紡げない。

これは、何なのか。まるで、本能で感じる、警鐘――

 

「そう怯えるな。俺は別に、モンスターでも狼でもない。」

「おおかみ…?」

「この辺りに、出没するのだろう?ギルドの依頼でそう聞いた。」

それは、心臓が早鐘のように、

 

「おおかみ、を、殺す、の…?」

「若い狼がいい。毛皮も肉も、高く売れる。」

 

 

「やめろ!!!!」

 

 

男の長い猟銃を奪いにかかるが、その腕はびくともしない。

男はまったくの無表情のまま。

「なんだ?お前は…」

「狼に手を出すな!森から出ていけ!!」

無表情だった男の口元が、少し緩んだ。

 

「いい顔をするな。なかなか悪くない。」

 

瞬間、男の大きな手が、クラウドの細い首をわしづかむ。

もがいてもその手に解放されることはなく、クラウドの足が地から離れた。

「ぐ…っ、あ、」

苦しい。痛い。息が、できない――

「まるで、犯している気分だな。可愛い子だ。」

意識が、もう…

視界が白くなっていくその時、遠くで、彼≠フ声を聞いた気がした。

「やめろ」と、そう言ったのだろうか。

 

 

 

オーーーーーン!!

 

 

 

悲鳴にも似たその鳴き声と同時に、あがる銃声。

地面に叩き落とされたそのとき、何が起きたのか理解できずに、

ただ目の前に横たわる「それ」を見ていた。

 

火薬の臭いが、むせ返るよう、

 

「…………ザク…?」

これは、ザックスではない。

さっきまで彼はダークグレーのジャケットを着ていたし、黒いデニムを履いていた。

赤いストライプのマフラーを巻いていたし、背にはボディバックを背負っていた。

 

ここに横たわったまま、動かないのは――― 一匹の、黒い狼。

 

「…ザックス、なの…?」

ザックスではない。ザックスであっては困る。そんなことがあっていいわけが、

「ザックス!!!!」

ザックスじゃない――

だけど、だけど、他にいったい誰がいるというのか。

…クラウドを助けようと、銃を持つハンターに飛びかかってくる狼なんて。

 

「やだ…おきて、よ…」

震える手で頭を撫でてやっても、背をさすってやっても、彼は力なく倒れこんだまま…

「嘘、嘘でしょ…ねえ、」

もはや、すがるような気持ちで繰り返した。

この人を助けてくれるなら、神様にでも悪魔でにもすがりたい。

それが、見知らぬ男であっても――

 

 

 

 

「若い狼だな。ずいぶん毛並がいい。こいつは高く売れる。」

 

 

 

 

ザックスを撃ったこの男を。本当であれば、今、詰るべきなのだろう。

でも、そんなことは出来なかった。考えもしなかった。

ただ、彼を助けること、頭の中はそれしかもう、

 

「た、すけて…」

「なにを?」

「ザックスを助けて!!」

 

男の持つマテリアの力――それがあれば、ザックスは助かるかもしれない。

撃たれているのは、腹だ。心臓じゃない。きっとまだ助かる。絶対に、助かる。

「お願い!ザックスを助けて!!何でもする!幾らだって払うから!」

どんなことだって出来ると思った。

死ねと言われれば死ねるし、誰かを殺めろと言うならばそうする。

金を用意しろというなら、どんな手を使ってでも支払う覚悟がある。

 

――彼より大事なものなど、きっとこの世にない。

 

「こいつは、お前のペットか?」

「俺の…トモダチ、だから、」

人生で初めてのトモダチ。そして、初めて愛し、愛された唯一の人。

「お願い、します…その石で、ザックスを治して…っ!」

 

その男は、ふっと笑った。

それは血が凍りつくほどの、恐ろしく冷たい笑みだった。

「見返りに、お前は俺に何をくれる?」

「金は、今はないけど…幾らでも払う!一生かけてでも払う!」

「金なんて、つまらない。おまえを前にすれば、な。」

それならば、何を差し出せばいいのか。

早く、早くしなければ取り返しのつかないことに―――

 

 

 

 

「脱げ。」

 

 

 

 

言われた言葉が理解できずに、反復遅れて聞き返す。

「え…?」

「こいつを助けたいなら、俺を満足させろ。今、ここで。」

それは、つまり――

「どうした?その意味もわからないほど、子供なのか?お前は。」

意味はわかる。これはつまり、この男に体を開けと言われているのだ。

 

ザックスを撃った、この男に。

 

だけど。それが、いったいなんだと言うのだろう。

ザックスが今、目の前で消えてしまおうとしている。

それより恐ろしいことなんて、この世にあるというのか?

 

 

 

 

「ザックスを――――助けて。」

「助けるさ。お前が、いい子ならな。」

 

 

 

 

 

 

 

――大好きな、狼さん。

愛する人の前で、

愛する人を傷つけた男に汚されるなんてこと。

 

こんなの、どうってことないよ。

 

貴方の尊い命に比べれば、

なんて安い犠牲だろうか。

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (201213

セフィさまファンの方…本当すみません…

次回18禁です。

 

 

 

 


 

 

 

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