C-brand

 

 


 

 

 



 

  

 

「赤ずきんを脱がさないで。」その後のお話。

前作はエロコメディでしたが、だいぶ雰囲気変わってシリアス?です。

ザックラ前提でセフィクラっぽい雰囲気もありますので、ご注意ください。

 

 

赤ずきんを脱がさないで。

番外編6

「可愛い君に、忠誠を。」

 

 

もう、抵抗することは出来ない。抵抗する意味もない。

ザックスのものであったはずのこの体、この心。

世界のどこにも彼がいないというのなら、汚れてしまおうと壊れてしまおうと、もう構わない。

 

むしろ、何かに罰してほしかった。誰かに咎めてほしかった。。

 

ザックスを殺してしまったこと、それを何かの形で償いたい。

あのとき彼が感じたであろう苦しみを、痛みを、絶望を、自分も共にしたかった。

 

 

「……いいのか。このまま犯すぞ。」

 

 

「好きにすればいい。」

少なくとも、今この世界でクラウドを『苦しめてくれる』ものは、セフィロスだけなのだ。

この悍ましい行為の後、自ら命を絶とうかと――

ただぼんやりと、そう思った。

 

痛みつけられ、辱められ、汚れて、そうして独りで死んでいく。

それでいいのかもしれない。それが今の自分に相応しい罰だ。

 

 

 

もっとも、彼の痛みはこんなものではなかったはずだけれど。

 

 

 

  


 

完全に四肢の力を抜いたクラウドが、もう抵抗するつもりがないことを悟ると、

男はそれ以上なにを言うでもなく、再び覆いかぶさってきた。

そうしてそのまま、体中を愛撫し始める。

(……?)

体中に触れる指先、肌にかかる吐息…それらに、奇妙な違和感を感じる。

昨日、男にねじ伏せられたときとはまるで違う。

どうして――

「どうして…そんな風にするの。」

 

セフィロスの美しく長い指が、クラウドの髪を梳いていった。それはまるで、撫でるようだ。

「……優しくされるのは、嫌なのか?」

「嫌だ。苦しめてくれないなら、意味がない。」

男は口元を釣り上げて不敵に笑おうとしたが、それに失敗したようだった。

 

 

 

「……なぜ、あいつがいい?お前ひとり守れない弱い男だ。あんな出来損ないの男の…

人でも狼でもない。ただの化け物のどこが――」

 

 

 

バシン!!

目の前にあるセフィロスの頬を、思い切り叩いた。そしてそのまま、男の胸倉をつかみ上げる。

人でも狼でもないと、いつも怯えていたザックスの心を知りもせず、そう侮辱されるのを許せるわけがない。

「ザックスは出来損ないなんかじゃない!強いし、優しい…かっこいい男だ。アンタなんかより、

ソルジャーなんかより、ずっと!」

「ソルジャーより?……お前は、何も知らないのだな。」

 

「え?」

「あいつの正体を知らず、本当に狼だか人間だかわからない化け物≠飼っていたとはな。」

「正体…って、なに…」

セフィロスは何を知っているのか。

 

「あいつの存在は、自然の摂理が生み出した結果だと思うのか?俺がただの狼を狩るためだけに

この森にやってきたと?それこそ不自然というものだ。」

 

意味がわからない、と言葉なく問うクラウドに、「不自然と人為的は往々にしてイコールだ」と

男はさもそれが真理のように言い切った。

つまり、ザックスの“不自然”ともいえる体の正体は――人為的なものだと?

「あいつは、神羅の実験体だ。『ソルジャープロジェクト』が生み出した、な。

俺はその回収にきた、それだけのこと。」

 

 

実験体?

 

 

「神羅って…村の研究所の……?」

ニブル村の外れには、その小さな村には似つかわしくない大きな研究所が建っている。

村人の多くはそこで働き、雇用という大きな恩恵を受けている。

クラウドの母も例外ではない。

もっとも母は研究員ではなく、神羅の研究所内にある食堂で働く、栄養士・調理師であるけれど。

 

「あいつの父親はソルジャー、母親は神羅の研究員だ。科学のために、女は自らの腹に

異生物細胞“ジェノバ”を埋め込んだ。そうして宿ったのが…あいつだ。」

セフィロスはもはやクラウドの体に興味を失せたのか、もとより大した関心もなかったのか、

ベッドの上のシーツをつかんでクラウドにかぶせた。

シーツの隙間から男を窺えば、セフィロスは窓から外を眺めている。

語られる言葉の意味がわかっても、その内容はあまりに唐突すぎて、頭がまわらない。

 

「結局、子が生まれて間もなくして――奴らは神羅から逃げ出した。そして、」

「二人とも始末された。」と。まるで報告書を読み上げるかのように、淡々とその事実だけを口にする。

「でも…その、赤ん坊、は…」

ザックスは、たしか記憶のある限りずっと森の奥にいたと言っていたはず。

親に捨てられ、家族も友人もなく、18年間独りぼっちだったと。

「母親が、その未来を悲観して子を殺した。…と、報告されていたたが、それは誤りだったようだ。」

ザックスは、捨てられたのではない。その存在を嘆かれ、疎まれていたわけではなく、

 

 

「子を殺したというのは、女の嘘だ。おそらく子供だけは助けようとしたのだな。」

 

 

「まあ、人間の考えることなど俺にはわからんが。」と、男は付け加える。

「ちょっと待って、ソルジャープロジェクトって、なに。アンタも、ソルジャーなんじゃないの?」

ソルジャーとは神羅の軍人であり、軍の中でも高い位に位置する者だと聞いたことがある。

それは、クラウドのような少年でさえ知っている周知の事実だ。

 

「特別な力を持つもの、といえば聞こえはいいが。要は、ソルジャーという人間兵器、

他でもない『化け物』を作り上げる、狂ったプロジェクトだ。俺もザックスも同じ、その研究で

作り出されただけの研究結果、お前たちとは細胞レベルで異なる。」

「化け物…?ザックスは、化け物じゃない。」

「化け物さ。――ソルジャーは皆。」

「ソルジャーとか関係ない。人でも狼でも、俺にとってはどうでもいい。

ザックスは…泣き虫で、かっこつけで、うるさくって、」

 

 

 

「世界で一番俺に優しくしてくれる…俺のトモダチだ。」

 

 

 

唯一のトモダチ、そして、誰よりも愛した人。愛してくれた人。

たった15年しか生きてきていないけれど、彼より自分を大事に想ってくれる誰かなど、

この先どれだけ待とうとも絶対に現れるわけがない。

彼への想いを口にするだけで、また頬を涙が伝う。想いが溢れて、止まらない。

 

 

 

「…お前に、そこまで言われるとはな。正直、あいつが妬ましい。」

 

 

 

機械のようだと思っていた男の唇から、想像もつかなかった言葉が紡がれ、そのことに少し驚いた。

振り向いたセフィロスのevergreenの瞳、それは長い睫毛の間で揺らめき、

彼とて感情があるのだとわかる。

そういえば瞳の色こそ違うが、ザックスも時折こんな風に、寂しそうな眼差しをすることがあった。

「お前は、そうやって。俺と向き合えば怯えた顔をする。化け物を見る目で、俺を見る。」

「だって…」

そんなつもりはなかった。

けれど、初めて会った時から、この男の持つ言いようのない雰囲気に圧倒されていた。

それは肉食獣に睨まれた小動物のように、防衛本能に近いものだ。

 

 

 

「…ザックスを愛しても、俺のことは憎むのか?」

 

 

 

「だって―――だって、アンタはザックスを…っ!」

意味がわからない。ザックスを苦しめた男を、死に至らしめたこの男を、どうしたら許せるというのか。

 

 

 

「死んでいない。」

 

 

 

 

「………え…?」

「生きていても、死んでいても。お前の心があいつの物だというのなら、もう隠す意味もない。」

「なに、どういう、こと…」

「あいつは、生きている。村の研究所で治癒を行っているところだ。」

「う、うそ…」

「お前が助けろと言ったんだ。だから、助けた。それなのに、俺に礼もないのか?」

 

 

 

 

ザックス ガ 生キテイル?

 

 

 

 

――そんなことが、

「連れてって!俺をザックスのところに!!」

「おい、落ち着け。」

「お願い!今すぐ!何でもする!何でもするから!」

彼の無事な姿を見たい。彼の笑顔を、もう一度。

「そんなことを言っていいのか?」

セフィロスが、すっと目を細めた。

 

「それならば――俺に、抱かれろ。」

男が一歩踏み出し、クラウドは思わずシーツで自らの体を庇う。

こんな布きれが、何の防衛も果たすわけがないけれど。

「言っておくが、無理矢理ヤらせろと言ってるわけじゃない。ザックスとするように、俺に愛を囁いて、

自ら足を開き、悦びの声をあげろ。」

「……どうして、どうしてそんな、」

どうして、そんな要求をしてくるのか。

この男であれば、今クラウドをねじ伏せることぐらいわけがないのだ。これまでそうしてきたように。

 

 

 

「俺に抱かれながら、俺を求めろ。笑え。……泣いてばかりでなく、」

 

 

 

それは、つまり、どういう意味なのか。

「つまり…アンタは、」

思い至る結論はひとつで、しかし、それはあまりに馬鹿馬鹿しい発想だ。

あり得ない、あり得ないだろう。

けれどもし、男がこの部屋にきた理由が、ザックスの小屋を調査にきたわけでもなく、

クラウドに悪意を持って待ち伏せしていたわけではなく、もっとシンプルな理由だとしたら?

ただ、クラウドに…そう、謝罪をしにきただけだとしたら?

 

 

 

「俺のことが、好きなの?」

「……さあな。誰かを好きになったことなどないから、わからない。」

 

 

 

ザックスによく似た、優しい眼差しで見つめられ――男の抱く想いに、気付いてしまった。

この男は、ザックスと同じ。

化け物さ。ソルジャーはみんな。

自分は、人でも何者でもないと。

寂しがりで、孤独に怯えてばかりいる…可愛そうなひと、なのだ。

 

 

 

 

「断る。」

 

 

 

 

クラウドがはっきりと拒絶の言葉を口にすれば、「だろうな」と男は静かに笑った。

「俺は、トモダチとそういうことしない。ザックスは、特別だ。」

「……ともだち?」

 

「でも、かぼちゃプリン食べたり、木登りしたり、図書館いったり…そういうのは、別にいいよ。」

「…クラウド、言っている意味がわからないのだが、」

 

 

 

「だから!アンタとトモダチになってやるって、言ってんの!」

 

 

 

「俺と、お前が……友人に、だと?」

「ただし、ザックスのとこに連れていってくれたら、の話だ。もしザックスが今、無事じゃないのなら…

俺は今すぐアンタと絶交する。」

「………絶交…。」

 

男は二、三度と『絶交」という言葉を反芻した後、耐えきれないように肩を震わせた。

セフィロスは腕で隠しているが、明らかに笑っている気がする。

「お前のようなやつは初めてだ」というのは馬鹿にされているのだろうか。

 

「お前は、俺の友人になれるのか?大事な飼い犬を撃った俺と?――お前を、犯した俺と?」

「許すとは言ってない。許せないけど…絶対、許せないけど…しょうがないだろ。

そんな、捨て犬みたいな顔をされたら。」

「捨て犬??」

 

 

 

「俺は、捨て犬は拾う主義なんだ。懐っこくてうるさいシベリアンハスキーも、

アンタみたいな性格の悪いドーベルマンでも!」

 

 

 

セフィロスは、今度は声をあげて笑った。もう腕で覆っていたって、隠しようがない。

「…それならば、俺に選択の余地はない。」

今までの笑い方とは、明らかに違う。

「お前を、ザックスのところへ連れていこう。」

本当に楽しそうに。…愛おし、そうに。

 

 

 

「――俺のご主人様が、そう言うのなら、な。」

 

 

 

毛並のいい美しい犬は、クラウドの前で従者のように、いや飼い犬のように、膝をついてみせる。.

そうして、その手の甲にそっとキスをした。

 

…忠誠と、親愛を誓って。

 

 

 

 


 

 

生温かい、液体の中に入っていた。

気持ちがいい。まるで、あの子を抱いているみたいに。

あの子の中に、入っているみたいに。

 

「ずいぶん、マヌケ面だ。」

すぐ近くで雑音が聞こえる。いや、人の話し声だろうか。

 

(うるさいな…もうちょっと寝かせてくれ。)

 

「おい、クラウド。本当にお前は、この犬がいいのか?おまえを散々泣かせておいて、にやけているぞ。

きっと如何わしいどこぞの女の夢でも見ているに違いない。」

 

(うるさいってば…女なんて興味ねえよ、俺にはクラウドがいるんだから!

あれ?今、なんて言った?たしかにクラウドって…)

 

耳元で、何かが聞こえてくる。

雑音じゃなくて、人の声でもなくて、なんだろう。

もっと脳を揺さぶるような、心臓を握りつぶされるような、

それでいて体中の血が勢いよく廻りだして止まらないような、

細胞のひとつひとつが「いとおしい」と泣き叫びたくなるような、

「ひっく…ひっく…」

 

 

 

――あの子が、泣いているみたいな、

 

 

 

(クラウド!!!)

我に返って目を見開くと、視界中が眩いばかりの緑の光で、何も確認することはできなかった。

ただわかるのは、自分の体が何か生温かい液体に浮かんでいること。

喋ろうとしても、ボンベのようなものをはめられていて、声にならない。

 

「ザックス…」

 

何も見えない。見えないけれど―――

きっと、この固い壁の向こうには、あの子がいる。

他でもないクラウドが、涙を流して、自分に寄り添っている。

 

ただもう、我武者羅に、目の前の壁を拳で叩き割った。

(しまった、)

この壁は、ガラスだったのだ。破片でクラウドに怪我をさせてしまったら、と。

そう気付いたときには手遅れ――

ガシャン!!

ガラスが砕ける音がして、目の前の壁が開ける。自分の体はその液体ごと流れていく。

 

 

「ザックス!!」

 

 

自分の体を抱き留める、柔らかいもの。

彼がガラスで怪我をしていないか、そもそもこの液体は彼が触れても害のないものなのか。

抱きしめ返すことに一瞬迷いが生じたけれど、お構いなしに相手はしがみ付いてくる。

「ざ、っくす…っ」

ぐすぐすと鼻を鳴らすその泣き声に、もう我慢なんて出来るわけがなくて、思い切り抱きしめ返した。

「クラ……クラウド!」

「ザ…ザックス…っ、痛いとこ、ないの?」

「全然、ないよ。俺は大丈夫だ。神羅の研究員に治療してもらったから。それより…」

 

しゃくりあげて、泣き続ける愛しい恋人。

その体や心に強いてしまった痛み、それを想うと、身がちぎれるように痛かった。

 

「泣かして、ごめんな…」

「ゆ、ゆるさ、ない…っ」

「うん、ごめん。クラウド大好きだよ。ごめんな。」

ただ謝ることしかできない自分は、なんて無力で滑稽なのだろう。

 

 

「死ぬまで、一緒にいるっていったんだから…約束守れよ、馬鹿犬…っ」

「――うん。大好きなご主人さまの、命令なら。」

今度こそ、こと切れる最後の一秒まで離さないと誓う。

だから、その震える唇にそっとキスをした。

 

…忠誠と、永遠の愛を誓って。

 

 

 

――可愛い、俺の赤ずきん。

 

ただ その涙を止めるために

 跪き許しを請う自分は、なんて滑稽なのだろう。

 

誰を支配するのでなく

お前を支配するのでなく

 

ただ、お前に支配されたいだけ。

 

 

 

NOVEL top

C-brandMOCOCO (2013.02.05

消したい、というか消えたい…><

最後のエピローグはザックスとセフィさんどっちなのか…たぶん二人ともです。

クラウドの可愛い?飼い犬が二匹になりました。

 

 

 

 


 

 

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