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トモダチ以上恋人未満。シリーズ3

 

 

※神羅時代、恋人未満なザックラ。

『初夢は、キミには言わない。』の続きです。ザックスのマヌケぶり要注意!

 

 

キミありき人生は、大吉

 

 

『あけましておめでとう』

世界中に、笑顔で挨拶したい気分!

だってだって幸せだから。だってだって、キミがいるから。

 

 

今年は良い年になりそうな予感。――いや、絶対良い年になる。

1月3日、元旦に比べれば人もまばらな神社の前。

社にもたれて、カイロを振りながらザックスは愛しい人を待つ。

 

 

 

 

大晦日はクラウドと年越しをして、一緒にカウントダウンして。

二人で腹筋が痛くなるほど、大笑いして過ごした。

彼といると、面白いぐらいにテンションがあがってしまって、話題がつきない。

初夢はもちろん、彼の夢を見た。

夢の中であんなことや、こんなことまでしてしまったことは、彼には内緒だ。

…放送に問題があるので、読者の方にも内緒だが。

(しかもクラウドと、ついについについについについについにキスしちまった!!)

 

――そう、今まで恋心(もとい下心)がありながら、『ただのトモダチ』の関係を

継続させてきた。

嫌われたくなくて、気持ち悪がられたくなくて、ろくなアプローチもできなかった。

…一度、酔ったクラウドにキスされたことはある。

ザックスとしては発狂したくなるほど大喜びしたが、お約束。

次の日には、彼はいっさい覚えていなかった。

 

そんな彼と、元旦早々、Aまでしてしまって(←古い)。

なんて良い新年の幕開けだろうか。

しかもこれから彼と、初詣――という名のデート。少なくとも、ザックスにとってはデート。

幸せすぎて顔が緩みきってしまう。

野良犬にまで侮蔑されるほどのマヌケ面で、クラウドを待つ。

 

 

 

 

「ザックス。ごめん、待った?」

「ぜ、ぜぜん!」

なぜそこで、どもってしまうのか。…いや、これは仕方がない。

なぜなら走ってきたクラウドは、グレイのファー付きダッフルジャケットに、

白×黒のボーダー柄ざっくりニット。

そしてスキニージーンズがその驚くべき足の細さ、長さを強調している。

何よりも深めにかぶっている白のニット帽の、何て可愛らしいことか!

究極のロリアイテム(ザックス談)であるボンボンまでついている。

 

道行く人は、みなクラウドを振り返る。

道行く野良犬まで、彼に見惚れる

 

「可愛い…」

「は?」

「可愛い可愛い可愛い!!」

「え?何?喧嘩売ってんの。」

拗ねてみせるクラウド、だが少し耳が赤い。(←寒さのせいかもしれない)

 

「手、つなご。」

「…何いってんの。やだよ。」

「寒いだろ?だから」

ザックスはカイロを握ったまま、クラウドの手をとる。

一緒にカイロを持っているような、そんな状態だ。

「……寒いから、いいけど。」

カイロに惹かれたのか、必死なザックスに同情したのか

クラウドはしぶしぶ妥協する。

(カイロ作戦、成功!)

 

 

 

 

クラウドは、神社に来たのは初めてだという。

彼の故郷の村は基本的に、十字架を祈りに使う宗教が信仰されている。

ザックスの場合は故郷も、またザックス自身も無神論者であるが、

イベント事として初詣には何度か来たことがある。

もちろん、女の子と。でもそれも、去年までの話だ。

 

「ザックス、あれ何?煙が出てる。」

クラウドは全ての物が珍しいのか、大きな目を輝かせる。

「あれはさ、え〜〜と、たしかありがたい煙で、悪いとことかに擦り付けると、

その持病が善くなるんだって。」

なんとも曖昧で無責任な説明だったが、クラウドは興味を持ったらしい。

その煙に手をかざして、自分の胸の辺りに持ってくる。

「胸?胸なんか、悪いっけ?」

 

(一度だけチラッと見たことあるけど、クラウドはキレイな乳首の色してんのに。

治す必要ないよな?)

などと、見当違いのことを考えてみるザックス。

クラウドは少し俯きながら言う。

「最近この辺、痛いから。」

「え!!なんか病気?!病院行ったのか?!」

さっきまで考えていた煩悩を心から後悔して、ザックスは慌てる。

「…違う、けど。あんたといると、この辺痛い。……………気がする。」

―――それは。

「クラ」

「アンタにも。」

 

クラウドはザックスの言葉を遮って、煙をザックスの頭に持ってくる。

「え、俺、頭?!」

アンタは頭を改善する余地がある。

そう言って悪戯っぽく笑うクラウド。

「ひでえ!」

クラウドにじゃれつこうとすると、うまく避けられてしまう。

 

?頭が悪い?と言われたのに、嬉しくてたまらない。

それこそ、頭が悪いという証拠なのかもしれないけれど。

おそらくクラウドになら、何を言われてもきっと怒りなんかわかない。

『頭が悪い』でも『顔がきもい』でも『この不能』でも。

(さすがにそれは切ないかもしれない。)

 

 

 

 

周囲からすれば、きっと二人はカップルに見えるだろう。

仲良くじゃれあう「男女」だ。

クラウドには言えないが、今この場で、彼を男と思っている者はいない気がする。

もともとユニセックスな顔つきだから、別に男としても見れないことはない。

身長も女の子にしては、少し高い。…だが。

男にしておくには、やはりキレイすぎる。

その透明感あふれる白い肌は、いったい何の基礎化粧品を使っているのだと

問いたくなる

くりくりした澄んだ目に、恐ろしく長い睫。きっとマッチ棒は5本乗る(まだ検証段階)。

それに、ピンクの柔らかい唇(ザックスは立証済)。

 

(……触りたい。キスしてえ。それ以上のことも。)

神様にお祈りにきているというのに、邪な煩悩が消えない。

「ザックスの番だよ。」

「え?」

彼とあんなことやこんなことをした初夢を思い出していると、クラウドに声をかけられる。

気付けば、おみくじを引くために並んでいたのが、ザックス達の番になっていた。

 

「お!俺、大吉!クラは?」

「えっと。……あ、。」

 

「ちょっと待て!」

いきなり、ザックスは巫女さん(おそらくバイトさん)に詰め寄る

「クラが凶なんてありえない!ね、神様紹介して?

「ちょ、ザックス?!」

「安心しろクラ!俺が神様に頼んで大吉にしてやる!

「あほか!」

 

――ここでザックスの名誉のために言っておきたい。

彼は、決してたちの悪いクレーマーではない

ただ、『クラウドのために何かしてあげたい』スイッチが入ってしまっただけなのだ。

愛だ。

 

 

 

 

結局クラウドに引きずられるように、その場を後にして。

「…クラ?怒ってる?ごめんな、なんか俺すごいテンパっちまって。」

クラウドは俯いたまま、何も喋らない。おそらく怒っている。

あんな恥ずかしい思いをさせたのだから、当然だが。

 

「クラ!ほらタコ焼き。食べるだろ?」

いたたまれず食べ物作戦に出たザックス。

食べ物の匂いに、クラウドは顔をあげる。少し頬が赤い。

「…食べる。」

そう言って食べ始める彼に、調子に乗って「あ〜ん」とやったら殴られた

不思議なことに、クラウドがタコ焼きを食べると、それだけでタコ焼きが別のモノのように見える。

まるでどこぞの貴族の、午後のティータイム

そこら辺の石段に座って、屋台のタコ焼きを食べているにもかかわらず、だ。

その証拠に、たこ焼き屋は長蛇の列

皆がクラウドの食べているタコ焼きを求めて、並び始めたのだ。

 

ザックス、あーん

言葉の意味を理解する前に、本能的に口をあける。

するとザックスの口にタコ焼きがひとつ、放り込まれる。

(え!!)

周囲の人間から、ため息やブーイングが聞こえるが、無視

「い、今のって。」

「……お腹いっぱいだから。」

そう言って顔を赤くする彼は、犯罪レベルの可愛さだ。

 

 

 

――もう、我慢できない!

 

 

 

ザックスはクラウドの顔を両手で引き寄せ、噛み付くようにキスをする。

一度唇を合わせてしまえば、もう止まらない。

唇の感触を味わうように、自分のそれをあらゆる角度で重ねる。

「ふ…あ…」

クラウドが息をしようと唇を開けた瞬間、ザックスは舌をすべりこませ、深く深く侵入する。

 

味は、タコ焼き。

色気も何もない。

だがザックスにとっては、この世で最も美味と言ってよい。

 

「や、やだ…!人、見てる!」

「見てないよ。誰も。」

「ほん、と…?」

「誰も俺達のことなんか、見てない。」

本当は、境内の全ての人間が二人に注目していたけれど。

クラウドはまさか自分が視線を集める人間だなんて、知らないだろうから。

 

そんな嘘をついて、またクラウドの顎を持って口内を味わう。

クラウドの逃げる舌を追いかけて、それをからめる。

「ふぁ、ん…んんっ」

クラウドはキスに応えることもできずに、ただされるがまま。

(間違いなく――クラウドは初めてだ。)

それを確信すると、嬉しくて仕方がない。

もっと欲しくて、好き放題クラウドの舌や唾液をからめとった。

 

 

 

 

どれぐらいキスをしていたか。

あまりに夢中になってしまい、唇を離したときはクラウドの呼吸はかなり乱れていた。

ぜーぜー息をきらし、まるで全力疾走をしたときのように苦しそうだ。

二人の唇が銀の糸で繋がったとき、どうしようもなく名残惜しいとザックスは思った。

「……凶だ。」

クラウドの肩が少し震えている。

「え?」

こんなの、大凶だ!

 

クラウドは、周りの人間全てが自分達に注目していることに気付いたのだろう。

3日とはいえ、参拝客で賑う境内で、あんなディープなキスをしてしまった事実。

神羅本社に近い神社だから、知り合いにも見られたかもしれない。

実際、参拝に並んでいるとき、ザックスは何人かのガールフレンドに

声をかけられていた。

クラウドはしばらく俯いて動かなかったが、次の瞬間には立ち上がり、

すごい勢いで駆け出した。

「ま、待てって!クラ!」

慌てて追いかける。本気で走っているようで、かなり速い。

彼は50メートル、5秒台だったか――

 

神社を出たところでザックスはやっと追いつき、彼の細い肩をつかむ。

クラウドは、息を乱し――目に涙をためていた。

「最低だ、あんな人前で。みんな見てた。」

「ごめん…どうしても、キスしたくて。」

 

「……恥かいた。」

「俺とキスするの、恥?」

さすがに人前であんなキスされれば恥ずかしいだろうが、

ザックスとしてはキス自体を否定された気がして、悲しくなった。

 

「アンタが。」

「え?」

アンタが恥かいちゃったじゃんか!

そう言って、顔を真っ赤にしてどなり散らす。

「俺が、恥?なんで?」

 

 

俺なんかとキスして。きっといい笑いもんだよ!ばかザックス!

 

 

それは、つまり。

「ザックスの知り合いの女の子たちだって、見てたかもしれないのに。彼女だって、

見てたかもしれない。」

――クラウドは、自分を心配しているのか。

「俺なんかとキスする悪趣味なやつって、噂されるんだ!」

?俺なんか?は彼の口癖で、それはとっても彼らしくて愛しいけれど。

だけどもっと――彼は自分の価値を知っていい。

 

「恥なもんか。」

ザックスは息を吸い込むと、これ以上ないほどの大声で。

 

 

 

「クラウドーーー!!

俺はオマエにフォーリンラブだーーーッ!!」

 

 

 

一斉に周りが騒ぎ出す。

「よ、色男」とか「熱いねえ!」とか「若い頃の旦那にそっくりだよ」とか

様々な歓声があがる。

ザックスはその観客達に、『どうもどうも』と景気よく笑顔を振りまきながら。

呆然とするクラウドに、抱きついた。――それこそ、痛いぐらいに強く、強く。

「は、はなせよ!」

「はなさない。」

「ザックス…?」

 

 

 

俺の人生の大吉。絶対に放してたまるもんか。

 

 

 

クラウドは顔を真っ赤にして、周囲の視線から隠れるようにザックスの腕の中に収まる。

「今年もよろしく」と耳元で囁くと、「ばかじゃないの」と彼が小さく笑った気がした。

 

 

 

 

僕を選んでくれるなら、貧乏くじなんて言わせない。

笑いがとまらないぐらい

キミも「大吉」にしてあげる。

 

 

 

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C-brandMOCOCO いただいた拍手に、心からの感謝をこめて。(20081230

 

 

 

 


 

 

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