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※ご注意: 露骨な性的描写・暴力表現有り。18歳以上の方の閲覧推奨。

 

その男は、まるで愛しい人そのもの。

                                                                            (side Cloud)

 

 

ピアスは、見つからなかった。

部屋の中もくまなく探したが、どうしても無い。

あれさえあれば、生きていけると思うほど、大事にしていたのに――。

…ふと、思いあたる。

ピアスは、「あの男」が持っているのではないかと。

あの夜、男はクラウドのピアスを何度も指で撫で、何度も甘噛みし。

男のその行動が、クラウドにとってはなおさら、相手がザックスのような錯覚に陥らせることになったのだ。

 

(あの男は誰…?)

フリードなら知っているだろうと、会いたくはないが彼の執務室へ行く。

するとそこで秘書に、フリードが入院している事実を聴かされた。

原因はわからないが、クラウドにとっては幸運なことだ。

 

 

 

 

結局、あの男の情報はわからない。

だがピアスの行方がわかるのは――突然だった。

夜中、クラウドが寝室で寝ていると、誰かが部屋にいるのに気付く。

フリードでなくても、その仲間たちだろうか。

ここ数日は、クラウドにとって平穏な日々が続いていたが、やはり悪夢は変わらない。

 

「誰…。」

寝室の中は暗闇で、相手の顔は全く見えない。

ただそこに誰かがいるという気配だけは、確実にあった。

「…また、5万でやりたい人?」

その何者かの影に向かって聞いても、答えはない。

この反応は、このザックスによく似た気配は――

「アンタ、こないだ、の…?」

返事はないが、クラウドには確信があった。

「ピアス!!返して!!…持ってるんだろ?」

クラウドは、叫ぶように言う。

 

あれは、クラウドにとって命よりも大事なものだ。

 

「……返してほしい?」

低い声が返ってくる。やはり、ザックスに似ている。

ザックスは自分に対し、こんな低く冷たい声なぞ、出さないが。

「…うん、今すぐ。」

「――嫌だって、言ったら?」

「……何でもするから。返して。」

「ふーん、何でもって、何してくれんの?」

 

男が望むことなんて、知っている。

この男は、初めからそれのためにピアスを盗み、またクラウドの前に現れたのだ。

「…ヤりたいんだろ?いいよ、そのかわり約束は守って。」

クラウドは震えそうになる声を、なんとか耐えた。

脅えている場合ではない。

(もう堕ちるところまで堕ちてる。どうってことはない。)

 

「いつも、そうやって。男を誘うのがお前の日常なのか?」

この男にどう思われようが、関係ない。

「だったら何?さっさとしてよ。明日早いんだ。」

クラウドは気丈に言う。

弱みを見せれば、ピアスを取り戻せない気がした。

 

男の影が、近付いてくる。

ベッドに乗り上げて、ベルトをはずす金属音が聞こえる。

「しゃぶれよ。」

あけすけなその言い方に、クラウドは嫌悪を感じるが、慣れている。

暗闇の中、クラウドはほとんど手探りで、男の自身に顔を埋める。

男が小さく呻いた。

 

口淫は、初めてではない。

今までさんざん、男達に命令された行為だ。

吐き気がするほど嫌悪を感じるが、なぜか――この男のは違った。

この男に近付くと、ザックスの匂いを感じる。

そして男の大きな手が、クラウドの頭を撫でる。

何度も何度も、いとおしむように優しく髪を梳く。

 

なんだかその男の行動が、この場に相応しくない気がして。

なぜか切なくなった。

「もう、いいから。」

男はそう言って、やんわりとクラウドの口をはずす。

暗くて見えないが、男のそれがかなり誇張しているのが感触でわかっていた。

「…飲まなくて、いいの?」

今までフリードたちは、クラウドに無理やり男のものを飲ませて楽しんでいた。

思わず聞いてしまった後で、羞恥を感じる。

「だって、まずいだろ。」

そう普通に返されて、クラウドは驚く。

 

「それより、服ぬいで。こっちきて。」

そう言いながら、男は自分の服を脱ぎ捨てる。

クラウドが渋っていると、強引に腕をひかれ、ベッドに押し倒された。

彼からは、自分の姿が見えているのだろうか。そんな迷いない動きだった。

(夜目がきくなら、ソルジャー…?)

フリードの繋がりならば、ソルジャーの可能性は高い。

 

「ゆっくり待ってる、余裕ない。」

そう言って、男は乱暴にクラウドのTシャツを脱がし始めた。

そして短パンを、下着と一緒に一気に取りさる。

「や、だ!」

 

覚悟していたとはいえ、全ての衣服を剥ぎ取られたことで恐怖がわく。

「…何でもするって言ったじゃん」

「言った、けど…」

恐いものは、恐い。

すると男が、クラウドのわき腹あたりを撫で上げる。

その指の感触に、つい反応してしまう。

 

「オマエ、すげえ敏感だな。」

体中を愛撫し始める。

「今まで何人の男を相手にしてきたの?」

「…いちいち、数えてない。」

そうクラウドが答えると、男はクラウドの下肢を握りこむ。

「やっ!」

器用にすられ、あっという間に熱をもつ。

「これからは、さ。」

「あ、あ、やめ、やめて!」

「俺以外に触らせないって、約束して。」

「や、いっちゃう、いっちゃうよ!」

「…約束、して?」

 

「ああっ!!」

あっという間に、男の手の中で果てた。

クラウドの出したものを、なめ取る音が聞こえる。

「…なんで、そんなの、なめるの。…まずいって言ったくせに…」

屈辱なのか、羞恥なのかわからない複雑な気持ちで、顔が信じられないぐらい熱かった。

「だってもったいない。お前の、すげえ甘い。」

 

そして男が後肛に指を這わす。

クラウドの体が硬直する。

くちゅ、と恥ずかしい音がして、男の指が入る。

ほぐしているつもりなのか、丁寧に中をかき回される。

出したくないのに、その指の器用な動きに、声が漏れてしまう。

「は、はあ、あ、いや…」

 

「――もう無理。我慢の限界。」

クラウドの足を肩に乗せ、男が少しずつ中に入ってくる。

そのすごい大きさに、恐怖でクラウドは声をあげる。

この間よりも、さらに張り詰めているような気がした。

「や、むり、大きすぎる……!」

「…それ、煽ってんぞ?」

ズンッ!

「ああっ!!」

 

一気に奥まで挿しこまれ、クラウドの体が強張る。

すると男が、余裕のない声をあげる。

「きつ…やばい、いっちゃうって!緩めろよ…!」

「や、いたい…痛いよ…!」

今まで、強引なセックスばかり経験してきた。

だから別に、少しぐらいの痛みは耐えられるし、訴えたところで何も変わらない。

でも、この男にそれを言うのは、何とかしてくれる気がしたからだった。

…ほとんど強引に犯されているというのに、おかしな話だが。

 

「痛い?ごめんな…もうちょっと慣らせば良かったか…。」

そう言って、男はクラウドに深く口づけてくる。

気をそらせようとしているのか。

クラウドの舌を吸い上げ、男の熱い舌が口内を出入りする。

正直、行為中にキスをされたのは、この男が初めてだった。

ただ突っ込んで果てることしか考えない男達しか、いなかったから。

 

「こないだも思ったけど。オマエ…キス、下手だな。」

キスに応えることを知らないクラウドは、ただされるがままだ。

「うるさい!そんなの、したことないんだからしょうがないだろ…!!」

精一杯、睨みあげて言う。

男はしばらく固まり、言葉を発さない。

「な、に…?」

「……それ、男を落とす技なの?それとも天然?」

そう言って、腰を動かし始める。

 

ズチャズチャ…

「あ、ひ、やめ…!」

男の張り詰めたそれが、出入りする。

挿入のときのような、痛みはもうない。

だがそのなんともいえない衝撃に、頭がおかしくなりそうだった。

男はその後もしつこくキスをしながら、律動を続ける。

 

「オマエ、本当に最高、だな…」

「ああっ!」

それは男たちによく言われてきた言葉だったが、低い声で囁かれるような声に、ドキリとした。

男の吐息が、耳にかかる。

これは、どこかで感じたデジャブ――。

それは、そうザックスに、触れるか触れないかのキスをされたときだ。

たった一度だけのキス――クラウドにとって人生で初めての、キスだった。

 

ザックスを感じ、クラウドの興奮を呼ぶ。

「なに、感じてくれてんの?」

硬度を持ったクラウドの下肢に、男が再び触れる。

「あ、アンタに感じてなんか、ない……!」

揺さぶられ、自身を擦られながらも、何とか言ってのける。

「じゃあ、誰を思ってんだよ。」

「きゃあ!」

 

突然、その男が乱暴に突き上げてきた。それまでは気遣うように動いていたのに。

まるで八つ当たりするかのように、何度も何度も突き刺す。

グチャ!グチャ!

「い、いや…!やだあ!」

「なあ、誰を想ってる?俺よりうまいの?」

「や、やめ…。壊れちゃう、よ…!」

「壊すんだよ。」

そう言って、腰を抱えられたかと思うと、一気に腰を打ち付けてくる。

パンパンパンパンパンパン!!!

 

「あ、だめ、だめ…!死んじゃう!」

「…はっ…!出る!」

「ひああ!!」

ズン!!

ありえないほど深くに突っ込まれたかと思うと、男の欲が自分の最奥で吐き出されたのを感じた。

そしてクラウドも、達する。

「あ、あ、あ…」

男に突かれて達してしまう事実に、改めて驚愕する。

 

抜かれると思った瞬間、急に体を反転させられる。

入ったままの男の契が、あらゆる壁をすり、信じられない快感を生む。

「やああ…!!」

そのまま、男の律動が再開されて驚く。

「ま、待って!もう嫌だ!」

1回で終わると思ったの?そんなわけないじゃん。」

「いやあ!」

パンパンパンパンパン!!

 

後ろから力まかせに腰を打ち付けられる。

乱暴な行為に見えても、クラウドの感じるところばかりを狙っているようで、

その器用な突き上げに気が遠くなる。

繋がったまま、顔をつかまれ、強引にキスをされる。

キスをするには無理な姿勢なのに、よっぽどキスが好きなのか。

「オマエ、キス好きだろ?」

そう男に言われる。

「は、それは、あんた、だろ…?あっ!」

腰の動きはそのままに、男が続ける。

「オマエ、キスすると中が動く。」

言われた意味を理解して、首筋まで赤くなるのを感じた。

 

 

 

 

終わりが見えない行為が続く。

もう何度イッたかわからない。

ふと、男が腰の動きをとめて、クラウドの体を抱き起こす。

男の胡坐の上に座るような体制になる。

クラウド自身の体重が乗って、これ以上ないほどに結合が深まる。

「んあ!」

男は動いていないが、ただ中に入っているというだけでものすごい衝撃だった。

考えてみれば、誰かの膝の上に座ってしたことなど、一度もない。

どうしたらいいのかわからず、ただ男の肩を掴んで耐えていると。

 

 

「…あのさ、クラウド。今、何考えてる……?」

男に抱きしめられる。

『クラウド』と男に初めて名前を呼ばれ、心臓が震えた。

その質問の仕方も――まるで彼そのものだったから。

 

 

「大事な、人のこと…」

クラウドから涙が流れる。

この男は、ザックスではない。

でもザックスの面影ばかりを探して、彼の幻影に抱かれている。

信じられないほど感じながら。

 

「誰?」

先ほどとは違う、落ち着いた声で聞かれる。

声色が変わると、こんなにもザックスと似ているというのに。

「…言わないよ。誰にも、汚されたくない、気持ちだから。」

「そんなに、好きなのか…?」

「――死ぬほど。」

迷いなく、そう思う。死ぬほど、愛してたから。

だから、離れたのだから。

 

「…もう、力でねじ伏せたりしない。約束、するから。」

「え?」

 

 

「だから――俺を選んで。」

 

 

何を言われたのか、理解が追いつかなかった。

いったいこの男は何を考えているのか。

「…何、言ってんの。無理だよ。」

「なんだってする。何からだって護ってやる。だから」

抱きしめられた腕に、力がこもる。

この腕は、まるで。

 

汝健やかなるときも、病めるときも

あの教会で力強く抱きしめられた日のよう――

 

彼との思い出が、鮮明に思い出される。

…あんなに大切な日々はない。

あんなに人を愛することは二度とない。

これからだってずっと。想うだけなら許してほしい。

 

クラウドははっきりと言う。

NOだ。」

「俺が入り込む余地は、ないの…?」

「ない。絶対に。」

 

 

沈黙が続く。

「…俺が手に入れられるのは、お前の体だけなんだな…」

悲しそうな声が響いた。

「……。」

この男に情などもつ義理はないのに、なぜか胸が痛んだ。

 

「じゃあ、さ。悔しいけど。俺とセックスしてるとき、オマエは好きなやつのこと考えていいよ。」

言ってることはむちゃくちゃだが、無理に明るい声を出しているように聞こえた。

「人を想うのは、自由だから。」

そう言う男の想いが、自分の抱く気持ちと酷似していて。

どうしようもなく切なくなった。

―――想っても、叶うことのないキモチ。

 

「…想うだけなら、自由、なのかな…」

「自由だろ。」

「背徳的じゃない…?本人が知ったら、きっと気持ち悪がられるよ。」

「なんで。」

「トモダチ、だから。」

自分を犯した見知らぬ男に、いったい何を話しているのか。

とても奇妙に思えるけれど。

「それなら、本人が知らなければいい。嘘もつき続ければ真実になるだろ。」

無意識なのか、その男はクラウドの髪に指を差し込んでとく。

「…それ、どっかの独裁者が言ってた。」

「あんまいい言葉じゃねーけど。」

そう言って笑う。

 

「ねえ、アンタ、誰…?」

「…オマエに恋する、ろくでもない男。」

冗談っぽくいうその言葉。髪をとくように撫でる手。汗と石鹸が混じったような匂い。

――それは全て、愛しい人そのものだ。

 

「俺の大事な人に似てるから、なんか嫌だ。」

「似て、るの…?」

男は、まさかな、と言いながら、クラウドをベッドに押し倒す。

「似てるんなら、俺のことそいつと思って感じてよ。」

さっきまでの真面目な雰囲気がなくなり、情欲にかられた声に戻っている。

 

 

再開される律動。

「ひゃあ、あ、あ…!!」

パンパンパンパン!!!

「は、はあ、く!」

 

想うだけなら自由

俺のことそいつと思って

 

――きっと、言われなくても。

初めから、この男をザックスと重ねていた。

ザックスに犯されていると夢想して、感じている。

今だって、そうだ。

 

 

「やああああ、や、やめ…!」

「クラウド、出る…!」

 

「あ……だめ…!いく…!ザックスッ!!!!」

 

 

――気付けば無意識に愛しい人の名を叫び、そのままクラウドは意識を失った。

 

 

 

 

――なあ、ザックス。

騙し、騙されて。俺たちって何やってたんだろうね。

 

だけど死ぬほど愛してた気持ち、それだけは結局偽れなかったなんて。

最後まで騙してあげたかったのに。

 

 

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C-brandMOCOCO (2008.12.6)

 

 

 

 


 

 

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