C-brand

 

 


 

 

 



 

 

 

※ご注意: 具体的な性的描写有り。18歳以上の方の閲覧推奨。

 

カミサマがいるのなら。

――どうか見捨ててください、俺たちを。

                                                                                            (side Cloud)

 

 

レイプのことが公になった。

 

こうなる以前から、自分がよく噂の対象になっているのは知っていた。

いつだって何でもないふりを装いながら、本当は周囲の顔色を気にして、聞き耳をたてて。

ときおり聞こえてくる「淫乱」とか「やれる」などの言葉に、びくびくしながら暮らしてきた。

 

フリードの事件が起きて、その関係者が次々に処分されてから、

「噂」はこれまでと比べ物にならないほどに広まっていた。

ザックスのマンションの廊下や、神羅ビルの食堂、図書館、トレーニングルーム。

どこに行っても、自分が噂されているのがわかる。

その意図が嫌悪か侮蔑か涙憐か――わからないけれど。

自分が汚れているのは事実だし、人を殺めてしまった罪も変わらない。

 

でも、ザックスに受け入れてもらえたから。

彼は、自分がどんなに汚れても『綺麗だ』と言い続ける。

事実は違うけれど、彼だけがそう言ってくれればいい。

――その言葉で生きていける、そう思う。

 

 

 

 

今まで男達に犯された後は、冷たい床に転がっているか、汚いベッドに放置された。

そして目が覚めたとき、自分自身への嫌悪で、死ぬほど吐き気がした。

汚れていく体に、汚れていく心に、慣れることなんか無かった。

 

…でもあの朝、ザックスの腕の中で。

おそらく生まれて初めて、安らかな気持ちで目が覚めた。

柔らかいベッド、愛しい人の匂い。自分の髪を優しくとく大きな手。

優しい青の瞳が、自分だけを見つめていた。

 

でももしかしたら、これは夢から覚める夢≠ナ。

本当に目が覚めたときには、また汚いベッドの上かもしれない。

醜い男が自分の体を貫いているのかもしれない。

この甘い夢から覚めてしまうのが恐くて、何度も彼にすり寄った。

 

彼の熱でしか、現実を実感できなかったから。

 

 

 

 

1224日、クリスマス・イブ――神様の降誕祭。

ニブルヘイムでは、信仰深い土地柄、1年で一番のお祭りだった。

教会で祈りを捧げ、神父の説話を聞き、村長の邸宅に村中の人間が集まって立食パーティーをする。

クラウドの家庭は生活が苦しく、母は朝から晩まで紡績工場で働いていた。

それはイブの日も例外ではなく。

母には「幼馴染の家に行く」と嘘をつきながら、明かりと笑い声が漏れるその村長の家の窓を、

遠くから眺めていたのを覚えている。

 

誰か傍にいてほしくて、すがったのは「神様」と「神父」だった。

誰しも平等に愛してくれるという神様。そして自分を息子のように可愛がってくれる神父。

愛してくれるなら、傍にいてくれるなら、どんな存在でも良かったのだ。

でも自分にとって唯一の居場所だったその教会は、8歳のイブの日を境に、ただ悪夢を見る場所に変わった。

いつも優しく笑っていたその神父に殴られ、無理やり体を暴かれ。

性を全く知らなかったその時でさえ、ひどく背徳的な行為だということは理解できた。

…自分がこの世で、一番汚れてしまったという事実も。

 

――本当は今だって。

クリスマスなんて、その名前を聞くだけで吐き気がする。

手の中の十字架。オルガンの音色。神父の荒い息遣い。

聖なる夜≠ネんて、誰が言ったのか?

 

 

 

 

「クリスマスはさ、恋人と過ごすんだよ。」

ザックスと肌を重ねたあの朝、ベッドの中で彼にそう言われた。

腕枕をされているのが気恥ずかしかったけれど、ザックスはそれが夢だったんだと言って、やめようとしない。

「ゴンガガじゃ、そういう習慣なかったんだけど。ミッドガルではカップルイベントなの。知ってた?」

クラウドは首をふる。

故郷では村全体での祝事だったし、去年のクリスマスはフリードたちに暴行を受けていた時期だったから、

そういう街の慣習には関心がなかった。

 

「クリスマス・プレゼント。何が欲しい?」

「え?」

それはつまり、ザックスは自分と過ごすつもりなのだろうか。

「別に、ない…けど。ザックス、俺といてくれるの…?」

「ああ、遠征?24日の夜に帰れるから、イブから一緒にいられるよ。」

 

「…そうじゃ、なくて。恋人、とか………いないの?」

その言葉にザックスは硬直し、次の瞬間には上半身を起こして詰め寄ってくる。

「ちょ、待って、クラウド!恋人ってなに?!」

「………。」

「俺にはオマエしかいないんだって!…ってなんか安っぽく聞こえるけど、でもほんとに!ほんとだから!」

「………ザックスは、優しいね…。」

ザックスは何かを感じ取ったのか、小さくため息をつく。

それが少し恐く感じて、クラウドは毛布の中に潜ってしまう。

 

「クラ。わかった。」

「………。」

――それは、どういう意味。

「オマエにあげるプレゼント、決めた!もう絶対あげるって決めた!」

そう言ってクラウドを、毛布ごと抱き上げる。

「だから、待ってて?」

ザックスの膝の上で彼と目が合うと、目を細めて優しく笑う。

「この部屋で、俺を待ってて。」

 

 

 

 

イブ当日――

ザックスの帰還は、遅い時間になると聞いていた。

クラウドは雪の中、8番街に行く。ザックスに渡すクリスマス・プレゼントを取りにいくためだ。

――ザックスがファッション雑誌を見て、いいなと言っていた手袋。

ザックスは雑誌を見ても、「クラウドに似合いそう」とか「クラウドこれ欲しい?」とか、

いつも人のものばかり見ている節がある。

ファッションに興味がないわけじゃないのに、彼の癖のようなものらしい。

何でも「俺、クラウドマニアだから」と言っていた。

 

そんなザックスがその手袋に興味を示したのは、『今年は雪が降ったから手袋が必要だな』という

程度の意味だったのかもしれない。

でも、その手袋の写真を横目で盗み見ながら、クラウドはそれをザックスに嵌めて欲しいと思ったのだ。

シンプルな黒の手袋。ファーが控え目についたそれは、とても温かそうで。

男らしい見た目のザックスがつければ、そのファーの可愛いさが逆にとても似合うのではないかと。

想像するだけで、楽しくなった。

それを受け取ったときのザックスの優しい顔を、想像するだけで。

 

 

 

 

そのプレゼントを購入した帰り道、8番街で偶然ザックスを見かける。

とても綺麗な女の人と、一緒にいた。

その女性は、今までザックスが遊んできたような相手とは違う。

清らかで、柔らかく、凛とした――ザックスに似た雰囲気の人だと思った。

ザックスがその人を見る目は、とても優しく温かい。

(あの人がザックスの言ってた、特別な人?)

 

嫉妬など、もう感じない。……ただ、申し訳なかった。

きっとザックスは、自分を捨てたりはしない。

俺を待ってて≠ニ、そう言ってくれた。

ザックスは、優しすぎる人だ。だから汚れた自分を、敢えて選んでくれたのだ。

 

――他でもない、クラウドが生きていくために。

 

 

 

 

クラウドは雪の中、ただ立ちすくんで二人を見守っていた。

ザックスがその女性と別れて、遠くに見えなくなった後も、ずっと。

白く降り積もる雪は、故郷の村を思わせる。

孤独と醜い過去しか思い出せない、ニブルヘイム。

教会の鐘の音が響き、クラウドはその音を追いかけるようにスラムの教会に足を運んだ。

 

いつかザックスに、抱きしめられた場所。

あの時、ザックスは『二人の未来』を約束してくれようとした。

そして自分は。愛する故に、離れることを選んだのだというのに。

(結局俺は、ザックスの優しさにつけこんでる。)

 

教会の聖堂では、人々が祈りを捧げている。

クリスマス・プレゼント、何が欲しい?

彼にそう聞かれたとき――別にない、と答えた。

欲しいものなんて、ひとつしか思い浮かばない。

でもそれを欲しいと言うのは、あまりに彼が可哀想な気がしたのだ。

だって自分が望めば、ザックスは『NO』と言えないから。

(……そんな、優しすぎる人だから)。

 

さんざん神様なんかいないと言って。

この世に生を受けたことにすら恨んで。

サンタクロースを信じた子供時代すら、クラウドにはない。

そんな自分が今さら祈るのは、ずるいだろうか?

 

―――彼との未来がほしい≠ニ祈るのは。

 

 

 

 

どれぐらい時間が経っただろう。

クラウドはずいぶん長い間、聖堂のイスに座っていた。

聖歌隊やオルガンの音色を聞きながら、祈ることすら出来ず、ただずっとそこにいた。

「――今、何考えてる?」

隣に腰掛けた黒いコートの男に、そう声をかけられる。

 

「…ザックス。」

ザックスの髪や肩は、雪がかぶっていた。いったいどれほどの時間、外にいたのか。

どれだけ、クラウドを探し周ったのだろうか。

「家にいないから、心配した。捨てられたかと思った。」

ザックスの方を向けず、ただ彼の視線を体で感じていた。

 

「……それとも、捨てるつもりだった?」

ザックスは怒っている声ではない。でも悲しそうだった。

クラウドは正面の聖像を見ながら、答える。

「…アンタを捨ててあげても、いいよ。もう、生きていける。」

優しい彼が、クラウドを捨てられないというならば。

自分が捨ててあげてもいい。

あの日、ザックスに受け入れてもらえたから、もう自分は生きていける。

生きていける、はずだ。

 

「俺は、生きていけねえよ…。」

そう言って、ザックスが隣に座るクラウドの手を握る。

ザックスの手は、ひどく冷たかった。その手を握り返さずに、クラウドは言う。

「……クリスマスは、恋人と過ごすんだろ?」

「え?」

「ミッドガルではそういうイベントだって、ザックスが言ってた。」

「そう、だけど。…クラウド?」

「なのに、ここにいていいの?」

ザックスを纏う空気が、少し変わるのがわかる。

「俺は、オマエの恋人になれないって言ってんの?」

クラウドは、沈黙した。

 

「…なんで、離れようとする?俺に溺れてるって言ってくれたじゃん。それとも、神様が恐い?」

「違うよ。」

ザックスは、ニブルヘイムが戒律に厳しく、同性愛を禁忌としていることを知っているのかもしれない。

でもクラウドが恐いのは、いるかもわからぬ神様ではない。

「アンタの、幸せを奪うのが。恐い。」

クラウドはそう、正面をむいたまま言った。

きっとザックスの方を向けば、泣いてすがってしまうと思った。

 

 

 

 

いきなりザックスは立ち上がり、クラウドの手を強くひく。

深夜だからか、もう聖堂にはほとんど祈る人はいないが、それでも人目を気にして従った。

そのまま聖堂の脇にある、物置のような部屋に入る。

たぶん二人きりで話ができる場所を選んだのだろう。少し埃の臭いが鼻につく。

だがザックスは気にする風でもなく、部屋にクラウドを導いてからドアを閉める。

 

「どうしたら信じてもらえんの?お前しかいらないってこと。」

「あの人は?」

「え?」

「あのピンクの服の人。ザックスは、あの人といた方が幸せになれるよ。」

だって彼女は、ザックスと同じ匂いがする。きっと陽だまりの匂いだ。

 

「……見てたのか。たしかに大切だって思ってたけど、そういうんじゃないって。」

「俺を見捨てられないなら。もういい、十分だよ。」

「クラウド。」

ザックスに低い声で言われ、少し恐くなる。

きっと怒っている――当然だ。

何時間も雪の中を探すはめになった上、いきなり別れ話をされたのだから。

ザックスに肩を強く掴まれる。

(殴られる?)

殴られたっていいと思う。

いっそ憎まれでもしないと、すがり付きたくなってしまうから。

 

 

 

 

「――俺を捨てるぐらいなら、殺してほしい。」

殴られると思ったのに、その手はクラウドを力強く引き寄せ。

痛みすら感じるほどに、強く強く抱き締められる。

「どうしたら、傍にいてくれる?どうしたら…俺を許してくれんの?」

ザックスはクラウドの態度を、自分のせいだと思っているのか。

過去に、クラウドを無理やりねじふせたと。

「そうじゃない、そうじゃないよ…」

クラウドの手がザックスの首にかかる十字架に触ると、抱き締められた力が少し緩められる。

 

「俺のせいで、ザックスに恥ずかしい思いをしてほしくない。きっと誰にも祝福なんてしてもらえないよ。

……神様にも、誰にも。」

彼の眼を見て言う。

好きだけど、好きだから。男で、しかも汚れすぎた自分では、あまりに彼にふさわしくない。

彼はもっと、恵まれた人生を歩める人なのだ。

神様が用意してくれるような、そんな――祝福しか知らない道を。

 

 

 

 

「神様がいたって。逆らえる、お前のためなら。」

突然、ザックスの唇が自分のそれに押し当てられ、勢いでクラウドの背中が壁にぶつかる。

そのまま彼の舌が首筋におり、体中を愛撫し始める。

(…まさか)

ザックスが、クラウドのベルトを勢いよく引き抜く。

「ザックス!?…ちょっと待って…!」

「神様に見せ付けてやる。…神様なんかに、オマエを渡してたまるか。」

 

ザックスはクラウドのデニムを引き下げ、現れた下肢をそのまま口に含む。

いつかされたような、強引な口淫。

クラウドは思わず座りこんでしまうが、ザックスは放してくれない。

扉1枚挟んだ向こうは、聖堂で祈りを捧げる人達がいる。

クラウドは唇を噛んで、声を殺した。

その巧みな舌に、あっという間に上り詰め――彼の口内で果ててしまう。

彼の喉仏が動き、それを呑下したのがわかったとき、クラウドから涙が流れる。

 

「…クラウド、ごめんな。オマエだけは手放せない。俺のせいにしていいから」

そう言って、ザックスはクラウドの後肛に指をはわす。

強引だが、傷つけまいとしているのがわかる。

優しい動きで慣らそうとするその行為は、クラウドの知るザックスのままだ。

その指の動きに反応しながら、どうしようもなく悲しくなった。

……ザックスの、綺麗で長い指が好きだ。

その指が自分の髪をなで、唇をなぞり、体中に触れるのがたまらなく好きだった。

 

「す…き…」

「え?」

――ひと言、そう口から出てしまえば、もう止まらない。

「すきだよ…ザックス。」

「クラ」

――止まらない。すがってしまう。

「だから、汚したくなかったのに…幸せになって、ほしいのに……」

自分の人生なんか、とうに捨てている。彼の幸せだけを、願っているはずなのに。

クラウドから次々と涙が流れる。嗚咽が、止まらない。

 

ザックスの腕が、クラウドを抱き起こす。

そして優しく、慈しむように髪を撫で、クラウドの涙を舌でなめとる。

「また、乱暴なことしてごめんな……。痛かったか?」

返事ができず、ただクラウドは首を横に振る。

少しも乱暴なんかじゃない。世界で一番優しくしてくれる人だ。

 

 

 

 

「なあ、クラウド。俺に幸せになってほしいなら、」

ザックスの視線に捕まって、目がそらせない。

「オマエが俺を幸せにして。神様じゃなくって、他の女の子じゃなくって。オマエが。」

「……できないよ。」

自分は、人を幸せにする術を知らない。

「できるよ。オマエにしかできない。――ただ、俺を望んでくれればいい。」

…それだけで、人は幸せになれるのだろうか?

「オマエに選ばれることが、俺の幸せだから。それ以外はいらないよ。だから」

 

 

 

「――YESと言って。」

 

 

 

ザックスは、ポケットから小さな箱を取り出す。

箱から出てきたのは、銀のリング――それは二人の未来を『約束』するものだ。

 

クラウドの細くしなやかな薬指に、それがゆっくりとはめられる。

そしてザックスは自分の指にも、少し大きいリングをはめる。

その手でクラウドの手をとり、指輪にキスを落とす。

―――その全てに、見惚れていた。

 

「汝健やかなるときも、やめるときも」

ザックスが、いつかの誓いを再び口にする。

胸が痛い。目の奥が、熱い。

そういうのを何て言うのか、クラウドは知っている。それはきっと――愛しいと。

「その生涯を通じて。目の前の男を愛すると、誓いなさい。」

 

「……命令形かよ。」

クラウドが、呆れて言う。…せっかく見惚れていたというのに。

「だって。強引なほうが男らしいと思って!」

ザックスは、いたって真面目な顔だ。

 

クラウドは思わず笑ってしまう。

(――男らしくなくたって。)

「………………情けない、ザックスでいい。」

「え」

 

 

「情けない貴方を―――愛すると誓います。」

 

 

かっこよくて、かっこ悪い、この人が愛しい。ただもう、それだけだと思った。

好きだというこの想いだけで、本当に彼が幸せになってくれるというならば。

――自分ほど彼を幸せにできる者はいないだろう。

だってこの世界で、誰よりも自分が。

 

「クラ!!」

「ザックスは?……誓ってくれないの?」

「誓う!誓いまくります!可愛い貴方を、生涯愛すると誓います!!」

「なんだよそれ。うざい。」

「そのツンデレっぷりも大好きです!誓います!」

二人泣き笑いしながら、じゃれるようなキスを繰り返す。

 

 

 

 

「クラ…その」

ザックスが言い辛そうにしながら、頭をかく。

「もう二度とセックスできなくてもいいとか言った手前、大変言いづらいんですが。」

自分の下で張り詰めている、ザックスの下半身。

「……しょうがないよ。」

彼が高ぶっているのがわかると、クラウドまで顔が熱くなってしまう。

「さすがに、ここじゃ、その…嫌、だよな?なんか、無理やりっぽい雰囲気だし。埃っぽいし。ムードも何もないし」

ザックスは知らないけれど、ここはいつか神父に犯された場所とひどくかぶる。

でも、クラウドにとってはだからこそ、ここで。

「…いいよ。」

「え」

クラウドは、ザックスの首に手を回す。そして下手くそなキスをしてやる。

精一杯の、クラウドからの誘いだ。

 

それに興奮を感じたのか、ザックスは息を荒げる。

「ごめんクラ、俺マジ余裕ない。…はちきれそう。ちゃんと慣らしてやりたいけど…」

「……じゃあ、口でしてあげる。」

「え?!く、口で?!いやクラにそんなこと、させるわけには…」

「前にしゃぶれって言ったじゃん。すごい偉そうに。」

意地悪なことを言ってやると、ザックスが面白いくらいに慌てる。

「あの時は、ほんとごめん!つい欲望にまかせてドS発言を…!」

必死なザックスに笑って、クラウドは彼の下半身に手をのばす。

自分からすすんで、こんなことを誰かにする日がくるなんて、思いもしなかった。

でも、されるだけじゃなくて。――自分からも愛してあげたいと思う。

クラウドはザックスのそれを控えめに取り出すと、そのまま顔を埋める。

そして丁寧に舐め上げ、吸い付く。大きすぎて顎が痛いが、なんとか続ける。

 

「クラ…う…まじいい…いっちまう…!」

「…ひもひいい……?」

「口にいれたまま喋んなって…!マジやばい…!く…」

――余裕のない彼が嬉しい。

彼が自分にしてくれたオーラルセックスを思い出して、強く吸ってみる。

ザックスのほうを見上げると、彼が感じている顔が見えた。

「その上目遣い、天然なんか?マジくるんですけど…!あ、まじ出る!放してクラ!クラ!!」

――放してあげない。

 

すると彼が強引に放そうとしたため、少し口から出たところで、射精された。

口の中と顔に、ザックスのものがかかる。

「けほ!けほ!はあ…」

「クラ!!マジごめん!!まずいだろ?吐きだして!ここに、ほら!」

そう言って手の平を広げて、困った顔で焦るザックスがたまらなく好きだと思う。

コク、と頑張って飲み込むと、珍しくザックスが顔を赤らめる。

 

「やばい…最低だってわかってるけど。今のめちゃめちゃ興奮したかも。」

そう言ってクラウドの顔を拭いてくれるザックスは、すでに臨戦態勢だ。

クラウドの唇と、その周りを清めるように舐めるザックス。

彼の呼吸がかなりあがっているのがわかる。

「ごめん、クラ。やっぱり中にいれたい…いれさせて、クラ。」

「……ザックス、余裕ないね。」

「う、ごめん…!なんかオマエ見てると、童貞かってぐらい興奮する。」

 

彼の長い指で、秘部を丁寧に慣らされる。

「ざく、こんな…」

「ん?」

「こんな、男のにいれて、気持ちいい?嫌じゃないの?無理…しなくていいんだよ。」

セックスなぞしなくても、彼が傍にいてくれればいい。

彼は女好きで有名だし、やはり男の体は抵抗があるのではと思う。

 

「オマエね…今俺が、どんな気持ちかわかってないだろ。」

「どんな気持ち?」

「いれたいいれたいいれたい!今すぐクラにいれたい!って気持ち。」

「なにそれ。」

クラウドは、思わず噴出す。

「冗談じゃなく、もう限界。」

「え」

張り詰めたザックスが、クラウドの中に入ってくる。

「きゃあ!!なにこれ、ザックス、おっきすぎるよ!」

「オマエ、どんだけ煽り上手なんだよ…!マジやばいって。」

 

 

 

 

余裕のない彼が、好きだ。

鬱陶しいほどキスを繰り返す彼が、好きだ。

嫉妬深い彼が、好きだ。

泣き虫な彼が、好きだ。

 

――――彼の全てが、好きだ。

 

「ひあっ!あ…!ざく…!」

「クラ、愛してる。死ぬほど、愛してる…!」

「そんな突いちゃ、だめ…だめだよ!奥、ついちゃう、から…!」

これ以上は無理というほど、ザックスが奥に入ってきて。

どこからが自分で、どこからが相手なのか。

早くイかせてほしいのか、もっと繋がっていたいのか。

…わからない。

 

 

ただ愛して、愛されてるってことしかわからない。

 

 

もし神様がいるのなら、もう加護なんかいらない。

見捨ててくれてかまわない――そう思うのはあまりに背徳的かもしれない。

だけど。

「……カミサマの、決めた人生じゃなくていい。」

「え?」

「ザックスの――決めた人生がいい。」

「クラ…」

「……また泣くのかよ、ザックス。」

もう迷いはない。

 

 

 

 

聖夜に聞こえてくるのは、オルガンの音色と、愛しい人の息遣い。

そして愛してる≠ニいう甘い言葉。

 

背徳的で不道徳な二人―――

なんて眩暈がするほど、幸せなんだろうか?

 

 

 

――なあ、ザックス。

銀の指輪と未来≠くれて……ありがとう。

どうか生きるときも死ぬときも、貴方と共にありますよう。

愛してる。

 

愛してる。

 

 

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C-brandMOCOCO (2008.1.1)

 

 

 

 


 

 

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