C-brand

 

 


 

 

 



 

 

 

 

※ 暴力的な表現を含みます。オリキャラ「フリード」視点。

  フリードの救いがないという意味で、ある意味とても重いです。ご注意ください。 

 

 

例えば、人生をやり直せたら、                     (side Fried)  

 前編

 

 

 

 

愛していたわけじゃない。だからといって、憎んでいたわけでもない。

ただ、今まで生きてきた19年間、これほど何かに執着したのは初めてだった。

何かを、欲しいと思ったのは。

 

 

…誰かを、欲しいと思ったのは。

 

 

 

 


 

 

最初はただの、「友人」だった。

…少なくとも、俺はそう呼んでいた。

 

親が軍属だったから、というそれだけの理由で。

とくに何かやりたいことがあるわけじゃなし、敷かれたレールを容易に歩んで士官学校を卒業した。

神羅軍に入隊したのは、1年前――18歳のときだ。

 

兵寮のルームメイトは、わずか14歳の少年だった。

ミッドガルでは稀有なプラチナブロンド、北方独特の陶器のような白い肌。

ガラス細工のようにキラキラ光色を変えるアイスブルーの瞳は、

いつか零れ落ちてしまうのではないかと思うほどに、大きい。

ミッドガル育ちの自分が、これまで目にしたことがないほどの美少年…

大都市であるミッドガルには洗練された若者が多く集まるが、そんな磨かれた若者達と比べても、

また映画女優やグラビアアイドルと比べても、比較になどならない。

「美少年」というよりも、ボーイッシュな「美少女」のようだ。

それほどまでに、愛らしい容姿。そして、俺の常識を超える異質さ――

その瞳に初めて見上げられたとき、言いようのない衝動に駆られたのを今でも覚えている。

 

「俺、フリード。フリード・オルバティラだ。」

「……クラウド・ストライフです。」

 

初めて顔を合わせたとき、よろしくと言って手を差し伸べると、彼はそれに応えようとしなかった。

年上である自分へのその敬意のなさに、それなりに腹がたった。

「お前さ、そういう態度じゃ友達できねえぞ?」

思ったことはすぐ口にする。

そういう性格だから、別に批難したわけじゃなく、親切心でもなく、ただ思ったことを言葉にした。

「握手、知らねえの?お前の故郷じゃそういう文化がないのか?」

「……。」

イエスともノーとも言わない。

ただ、美しすぎるほど整ったその無表情が、少しだけ強張ったような気がした。

 

どう見ても、ミッドガル近辺の出身ではない。

その見た目から察するに、遠い北の土地の出なのだろう。

もしかすると、本当に「握手」を知らないのかもしれない。

あるいは、そういう文化を知っていても、不慣れなのかもしれない。

 

「握手ってのはさ、さあ友達になりましょう、って時にするわけ。こうやってさ!」

 

少し強引に、彼の手をとって握手をすると、クラウドは驚きに目を見開いた。

そうすると大きなぐりぐりのビー玉が、目から零れてしまいそうで。

 

「……ともだち…」

 

まるで生まれて初めて知ったかのように、その単語を復唱する。

「そ、友達!」

おそらくは。実際、初めてなのだろう。

人と握手を交わしたのも、友達≠ェできたのも。

 

無表情であるはずのクラウドのその眼元が、少し緩んだ。

たったそれだけのことが、たまらなく嬉しかった。本当に。

 

 

 

 

 

 

 

たとえばもし、人生の「いつか」に戻れるのだとしたら―――

俺はこのとき、この瞬間に、戻りたい。

 

彼が俺に微笑い返した、この瞬間に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

神羅兵は、士官学校出身者がその多数を占めている。

士官学校では、兵士としてある程度の基礎を3年の時間をかけて育成される。

軍に入隊することで、さらに高等な訓練、それに実践での経験を積むことになる。

だが中には――士官学校を卒業することなく、入隊を許可される者もいる。

身体能力が秀でていたり、特殊な才気があったり…一部の者だ。

クラウドは、若干14歳であるのだから、当然士官学校は出ていない。

いわゆる特待入隊者、彼は上層部に認められた「一部の選ばれた者」なのだ。

 

そういう者が、奇異な目で見られたり、嫉妬の対象になるのはよくある話だ。

クラウドはたしかに、14歳という年齢にしては身体能力が高い方ではある。

でも兵士として3年間育成された者たちに比べれば、全てにおいて劣っているのは当然だった。

何よりもその年齢、その容姿――

体つきも見目もまるで少女で、どう見ても兵士としての能力があるわけがない。

特待入隊者でありながら、その実力も体力も基礎知識もまるでない。

つい数週間前に田舎から出てきた、文字通りただの「子供」なのだから、それは当たり前のこと。

 

有態に言えば、そう、あいつは「落ちこぼれ」だ。

軍内において、クラウドの存在はあまりに浮いていた。

 

 

 

 


 

入隊して1か月が過ぎた頃。

同期の連中では、皆それなりに親しい者ができている中で、クラウドはいつも一人でいた。

一方で、俺の周りには自然と多くの仲間が集まる。

小さい頃も、士官学校時代も、俺はいつも人の輪の中心にいる。

そういうタイプの人間だった。

 

「あいつってさ、いつも一人でいるよな。」

一般兵で騒がしい食堂で、いつものように仲間同士で食事をしている時。

仲間の一人が指さした先、窓際の一番隅っこの席で(隙間風で寒いから、皆そこには座らない)

彼が一人で食事をとっていた。

この時間に食堂にいること自体、珍しい。

いつも時間をずらして、人の少ない時間に行っていることを俺は知っている。

それに野菜定食かサラダを控えめにつつくぐらいで、まるでウサギみたいな食生活をしていることも…

きっと、知っているのは俺だけだ。

故郷のニブルヘイムでは、貧しかったため肉を食べるという習慣があまりなかったらしい。

 

食生活も見た目も、ウサギそのものだ、と。

つい数日前、そう彼に言ったとき(思ったことをそのまま口にしてしまった。そういう性格だ。)

クラウドが、少し拗ねた顔をした。「悪い悪い!」と素直に謝れば、今度は彼の眼元が緩んだ。

無表情だとばかり思っていたけど、よくよく見ればそんなことはない。少し分かり辛いってだけで。

とくに眼元を綻ばせたときの表情は、何とも言えないほどに優しい。

 

「いつも一人でいてさ、俺たちなんかに興味ありません、って顔してる。」

「ああ、ストライフ?なんつーか、めっちゃ浮いてるよな。」

「ガッコ出てないんだろ?訓練ついてこれんのかよ。」

あの体つきをみれば一目瞭然だけど、こないだの体術の訓練もまるで女のような成績だった。

体力、それに腕力のハンディキャップは、たとえ彼が成長していったとしても限界があるだろう。

体格などはしょせん、遺伝によるところが大きいのだから。

 

「愛想ないしな。挨拶も返さねえし。」

挨拶を返さないと文句を言う奴は多いけど、実は、少し待てば小さな声で返してくれる。

嬉しいときには、眼元を綻ばせることだってある。

他人との付き合い方を知らない彼は、人との接触にひどく戸惑っているだけだ。

それを知っているのは、辛抱強くクラウドの反応を待てる者のみ。……俺とか。

 

「声かけづらいよな。あの見た目、さすがにオンナノコすぎるっていうか。」

「実は女だったりしてな!そしたら、そっこー孕ませちゃうんだけど!俺。」

「うわっ!おまえ鬼畜!」

クラウドが女だったら…そんな風に思っていたのは、俺も同じだった。

もしあいつが女だったら――同じ部屋にいて、何もしないわけがない。

「あいつって、見た目エロイよな。なんつーか男寄せ?装備してるんじゃね。」

「何だそれ!新種のマテリアかよ!」

仲間うちで、クラウドが揶揄されるのを聞きながら。

俺の中で、少しずつ気持ちが傾いていくのがわかる。

 

こいつらと、同じことを思っていないわけじゃない。俺だって同じようなものだ。

だけど、同じであることが不満でもあった。同じになりたくないと思っている。

だって俺はあいつの、

 

 

 

「おーいクラウド!!」

 

 

 

大きな声で、隅っこに腰かけているふわふわの金髪に向かってその名を呼ぶ。

驚いたのは、俺の仲間だけじゃない。

呼ばれた本人も、例のでっかい目をまた零れそうなぐらい見開いている。

「お前も、こっちにきて混ざんねえ?お前の好きなチョコあんぞ!」

クラウドはよほど戸惑っているのだろう。

本当に自分に話しかけているのかと、きょろきょろ周りを見渡している。

…その反応、可愛いかもしれない。

 

「…俺。この後、報告あるから……」

小さな声でそう言い残して、クラウドは席を立った。

慌てているのか、フォークを落としたり人とぶつかったりしている。

その反応を見れただけでも、満足だった。

 

 

「ちょ!フリード!お前、いきなり呼ぶからびびっただろ!」

「てかクラウド、って呼び捨てかよ!いつからそんな仲良しさんだオマエ」

「なになに?あいつ、チョコ好きなの?やっべえ萌えるかも!」

さっきまでクラウドを批難していた連中が、興味深々とばかりに俺に問う。

それが、たまらなく気持ちがいい。

他の連中より、クラウドを知っていること。

クラウドの好きな食べ物も、夜遅くまでそして早朝から自主訓練に励んでいることも、

彼は器用に見えて不器用であることも、孤独を好むようで実はひどく寂しがりであることも。

俺だけがあいつの「本当」を知っている。

 

たぶん、みんな。クラウドを知りたいと思っている。クラウドに魅かれている。

―――親しくなりたいのだ、要は。

 

 

 

俺は、そんなクラウドの「友達」だ。あいつにとって、きっと初めての。

 

 

 

 

 


 

 

上層部の、期待通りというのか。判断通りというべきか。

いつからか、クラウドは兵士として成長を見せるようになった。

まるで乾いたスポンジが水を吸い込むような勢いで、急速に変化していく。

「才能」とか「魅力」とか、そういう凡庸でない何かを彼が持っていること。

その隠れた何かに、俺もすぐに気が付いた。ずっと、彼を見ていたから。

 

俺自身、同期の中で体力も成績も突出している自覚があった。

幼少時代から要領がいい。世渡りも人並み以上にうまい。

同期の中で最初に「ソルジャー」になるのは、間違いなく俺だろう。

それは自他ともに認める事実だ。

クラウドが、そんな俺に――羨望≠フ眼差しを向けていることを知っていた。

それが得意であったし、気持ちが良かった。

 

クラウドは、俺の弟よりも幼い。

可愛がってやりたいという気持ちは確かにある。

 

だけど――少しずつ、ではあるけれど。

自分の中で何かが歪んでいくのを自覚した。

それは「焦り」か。「嫉妬」と呼ぶべきものか。

クラウドの持つ才能に、どうしようもない焦燥感を覚え始めた。

 

なんといっても、クラウドはまだ若い。

…この子が俺と同じ年齢に至ったとき、どれほど開花しているか。

射撃や魔法の訓練では、正直なところ彼にすでに叶わない。

5年後…いや1年後には、もしかしたら。

クラウドはもう、自分を追いかけてはいないだろう。俺が彼の背中を追うようになる。

そんな日がくる。いずれは必ず。

 

別に、クラウドが憎いわけじゃない。

ただ、恐かった。

今、独りぼっちでいるこの少年が、数年後誰もが振り向く美人になり、誰もが羨む才気を持ち、

皆を引き寄せる唯一の存在になっている。

そのとき彼の人生に、俺はいるのだろうか。

 

言いようのない、焦燥感―――…

 

 

 

 

 


 

歯車が狂いだしたのは、そんな時だった。

 

 

最初は、酒の勢いだったと思う。

俺の部屋で仲間たち数人と酒を飲みながら、男同士のいわゆる「おふざけ」でAVを見て。

皆のテンションがあがり、コールガールでも呼び込むか、と提案があった。

そのとき違法でない常習性のないドラッグを、俺を含めて数人がやっていた。

それも男同士のおふざけの一環だった。

 

「やっぱ、金髪の子がいいよな。」

「ば〜か、ブロンド女は高いぜ。ミッドガルじゃ珍しいしな。」

「巨乳だけは譲れねえ!」

「黙れ人妻マニアめ。俺は処女の子とヤりてえよ〜」

「ぎゃははマニアはてめえだ!」

そんな野郎同士のやり取りの中。

俺が口にした言葉で、全てが始まったような気がする。他でもない、俺の一言で。

 

 

 

「俺は、クラウドとヤりてえな。」

 

 

 

シン…と、室内が静まり返った。

「男だろ」とか「冗談!」とか。それこそ「マニアめ!」と皆が笑い飛ばすだろうと思った。

そうすれば、ただのシャレで終わったかもしれない。

「………。」

だけど、誰もそうしなかった。

あるのは、奇妙な…あまりに奇妙な沈黙だった。

 

――狂気≠ニ、そう呼ぶものかもしれない。

 

ごくりと、誰かの喉が鳴る音が聞こえる。

「いいな…それ。」

「そこらの女じゃ、足元にも及ばねえもんなぁ。」

「ブロンドだし、肌真っ白だし、ほっせえし、」

「処女っぽいしなぁ。清純っての?俺あーいうのやばいかも。」

「そうか?めちゃくちゃエロイ体してね?何も知らないって雰囲気がさ、むしろ男を誘ってるっていうか…」

「男相手にどうやんの?挿れるとこないじゃん。」

「突っ込めればどこの穴だって同じだろ。具合がいいかどうかは、ヤってみなきゃわかんねえけど。」

 

「――試すか。」

 

もともと、俺が提案したことではあったけど。

どうしてもクラウドを犯したかったかというと、そういうわけじゃない。

でも、じゃあそんな気はなかったかというと、答えはノーだ。

酔っていた、薬でハイになっていた。…だからこそ、口にしてしまった紛れもない本音=B

そのたった一言で、周囲が狂気に色づいていく。

世界が黒い色へと、くすんでいく。

 

そして、彼を―――…

 

 

 

 

 

「いやだ!触るな!やめろ…っ!!」

クラウドの寝室に侵入し、ベッドに押さえつけ、集団でレイプした。

いったいその細い体のどこにそんな力があるのかと思うほど、彼は強い力で抵抗する。

…だから。

それは、ますます暴力的な行為になった。

嫌がるクラウドが、苦しいと叫ぶクラウドが、痛みに悲鳴をあげるクラウドが。

可愛い、と思った。

それは歪んでいようとも、恋≠ノ似た気持ちだった。

…人を好きになったことなんてないから、果たして本当に似ているのかわからないけど。

 

「トモダチ、だろ?」

 

クラウドの顔を強くベッドに押さえつけ、そう彼に問う。

だから大人しくしろと、そう無茶苦茶な論理で彼に行為を強要する。

彼が、一瞬、全身の力を抜いた。

そうして振り返った瞳は、何ともいえない失望に満ちている。

 

「と、もだち…って、なに……」

 

すがるように。いや、おそらくすがっていたのだ。

俺の、最後の良心に。

友達になろうと言って交わした、最初で最後の約束に。

 

 

 

「俺のオモチャかな。」

 

 

 

クラウドが、目を伏せた。

涙が一筋流れて、ベッドに染みを作る。

 

友達って、何なのか?

そんなこと、俺が知るわけがない。

この小さな子を4人の男で押さえつけて、痛みつけ、興奮に酔っている仲間たちが友達なのか。

あの日、よろしくと言って手を握ったとき、俺たちは友達になったのか。

わからない。わからないし、もう何も考えたくない。

 

 

 

 

ひとつ、嫌でも理解できるのは。

俺は、この子を永遠に失ったということだ。

 

 

 

 

…初めから、手に入ってなどいなかったのかもしれないけれど。

 

 

 

 

 

 


 

 

――1年。

 

俺は予定どおり、同期の中で一番初めにソルジャー3rdへと昇進した。

新たなソルジャーの仲間もできて、毎日楽しくやっている。

 

クラウドは、どうしているだろうか?

 

1年前、数回に亘ってクラウドに暴行した。

行為はエスカレートし、暴力はいっそう酷くなった。

何回目の時だったか、こっちが一人だったのもあって、クラウドに返り討ちにあったことがある。

まともな勝負であれば、クラウドに負けるわけがないけど、そのとき俺は酒を飲んでいた。

それが敗因だった。

 

全治2週間の怪我。

俺は肋骨にヒビが入る怪我を負い、退院したときにソルジャー試験があって、合格と同時に部屋を移った。

あれから、クラウドとは会っていない。

もう会うこともないと思っていた。

クラウドの人生に、俺の人生が交わることはないと――それが望みであったし、恐ろしくもあった。

 

 

俺は、どうしたいのか?

 

 

あれからおよそ1年がたった、春先のことだ。

大きなミッション中、敵兵の捕虜になるという事態に陥った。

その監禁牢の中に、偶然にも――あいつクラウド≠ェいた。

こっちはメットをかぶっていたから、クラウドは気付いていないだろう。

「おい!こいつ、連れていこうぜ!」

敵兵によって、彼が別室に連行されそうになったとき、何かが胸の奥底から這い上がる。

今更、なんだというのか。

 

こいつを、助けたいと思うなんて――

 

 

 

「待てよ!」

 

 

 

そう叫んだのは、俺ではない。

先ほどまで最も拷問を受けていた、部隊のリーダー…ソルジャ―2ndの男。

――『ザックス』だ。

 

「そいつ、まだガキじゃねえか。すげえ出血してるし、ほっとくと死んじまう…。そもそもそんな少年兵、

何の情報も知らされてねえよ。拷問なら、俺が代わりにいくらでも受けるから…」

だからその子を放してくれと。

そのソルジャーの言葉に、敵兵達が一斉に嘲笑う。

「馬鹿が!!てめえじゃ出来ねえ様なことをするんだよ!」

俺もメットの下で、思わず嘲笑ってしまいたくなった。

 

馬鹿な奴――

こいつら敵兵の目的は、クラウドに性的虐待を加えることだ。

なぜ、そんなことも解らない。

流石に死ぬかもしれないと思うほどに、敵兵に殴られるそのソルジャーを前にして、叫び声が聞こえた。

 

「やめろ!」

 

クラウドが、その男をかばう声、

「…や、めて、ください。俺は、大人しくするから……」

「いい心構えだな、お嬢ちゃん。じゃあまずは、俺から相手してもらおうか?」

「はは、ぶっ壊れるなよ!」

クラウドは敵兵に引きずられて、鉄のドアの向こう側へと消えていく。

 

この扉の向こうで。

クラウドは、俺がしたようなことを――いや、それ以上の屈辱を受けるのだろう。

「や…め…、」

床に突っ伏しながら、意識を混濁させているソルジャーが、声にならない声で呟く。

 

(こいつに、あの子は助けられない。)

 

そうして、このソルジャーはここで死ぬ。

クラウドも、この男を助けることなど出来なかったのだ。

 

おそらくは俺自身も、助かりはしないだろう。

そうだというのに、それでもその状況で、後ろ暗い悦びを感じていた。

 

 

 

 

(なあクラウド…泣いてくれるか?)

 

汚され、堕ちて、絶望して、泣けばいい。

他の男のために体を張って、そのせいで死にたいと思うほどの屈辱を受け、

そうして結局は誰も助けることなどできずに、無意味に死んでいけばいい。

孤独の中で、孤独のままに。

 

手に入らないものは、粉々に砕けて壊れてしまえ、

 

いっそ、誰の目にも映らないように。誰のモノにも、ならないように。

だっておまえは俺の、

 

 

 

(俺だけの『トモダチ』だっただろ?なあ、クラウド――)

 

 

 

愛しているわけじゃない。憎んでいるわけでもない。

どちらにも酷く似ていて、どちらにも酷く似つかわしくない。

 

 

それはただただ、狂おしいぐらいの、執着だった。

 

 

 

 

 

 

 

――なあ、クラウド。

お前を幸せになんかさせない。

 

…俺が、倖せに出来ないなら、

 

 

 

 

 

 (番外編3へ) (後編)

 

NOVEL top

C-brandMOCOCO (20111111

サイト3周年です。ありがとうございます。

暗いの更新してすみません…><

 

 

 

 


 

 

 

inserted by FC2 system