C-brand

 

 


 

 

 



 

 

 

 

*ご注意

1.「お菓子の家で暮らそうか。」 その後のお話。相変わらずシリアスです。

2 BLはもちろん、近親相姦等、非道徳な要素が多いのでご注意ください。

3.露骨な性描写が入ります。18歳以上の方の閲覧推奨。

 

  

お菓子の家で暮らそうか。 

<in the CANDY HOUSE-U>       

 

こんなご馳走を食べたのは、丸一年ぶり――

 

コルネオの屋敷では、まともなものを食べていない。

通常の食事は、一日二回。それも、ぎりぎり飢えを凌げる程度の、粗末な穀物のみ。

 

コルネオの一番のお気に入りであったクラウドは、それこそ主の気が向いた時だけ、

人並みの食事を与えられることもあった。

食事に関しては、他の少年たちに比べてクラウドは恵まれていたかもしれない。

だが、それは例外なくコルネオの食事の付き添いであって、その食事の後には醜い行為が待っている。

男の舐めるような視線を向けられて、食欲など生まれるわけもない。

 

「うまい?これ、クラウド好きだったよな。」

生クリームの入ったオムレツ。

二人が家族≠ニしてかつて暮らしていた時間は、二年にも満たない程度だというのに…

そんな細かいことまで、よく覚えているものだ。

いちいちザックスは、クラウドに感想を求めてくるけれど。

ザックスの作るものだ、どれもとびきり美味しいに決まっている。

監禁されていた間に、胃もだいぶ小さくなってしまって、あまり多くの量は食べられなかったけれど、

それでも、もう入らないというほどに沢山食べた。

 

デザートには、手作りの小さなクリスマスケーキも出てきた。

そういえば、一年前――おやつを食べているとき、必ずザックスの分…

たとえばケーキの上に乗っている苺だとか、チョコプレートだとかを、よく強請ったものだ。

ザックスの食べているものなら、何でも特別な気がした。

それに、あれが欲しいとワガママを言ったときの、しょうがないなと笑う優しい兄が好きだった。

 

「ほい、苺な。」

別に今は強請ってなどいないのに、自分の分の苺をクラウドのケーキ皿に乗せるザックス。

「本当は、もっと凄いのあるんだけど。それは、明日のお楽しみ!」

ザックスが、何かを企んでいる。

それが一体何なのか、クラウドにはわからないけれど、きっとザックスが考えることだ。

彼の狙い通り、自分は驚いて目を瞬かせてしまうのだろう。

彼はいつだって、クラウドの驚くことも、喜ぶことも知っていた。

 

 

 

だけど、きっと、知らない。

 

 

 

クラウドが、本当に望んでいること。

そのたったひとつのことは、知らない。

――そしてそれが決して手に入らないことを、クラウドは知っている。

 

 

 

 

 


 

「……お風呂、入ってくる。」

カップの紅茶が無くなったところで、そう一言残して、クラウドはバスルームへと向かう。

小さな二人がけのソファで、食後のお茶を飲みながら、肩を抱かれ――

その密着感に我慢できず、どこでもいいから逃げ出したくなったのだ。

別に、嫌なわけじゃない。

ただ、こんなにも無条件に甘やかされることに、戸惑いを覚えていた。

どうやって反応を返したらいいか、わからない。

兄に甘えていた日々は、あまりに遠い過去のことで、もう甘え方も忘れてしまった。

 

白で統一されたバスルームの中には、小さな猫足のバスタブがあった。

小さいと言っても、以前住んでいたストライフ家の屋敷や、コルネオの屋敷の風呂に比べればであって、

クラウドにとっては十分すぎる大きさだ。

コルネオの屋敷にいたとき、風呂に入るのはあの男の相手をさせられる時で、

風呂場のタイルを踏む感覚が、まるで処刑台へと向かう囚人のような気分にさせられた。

処刑台――と言っても、死ぬことは叶わない。

いっそ、殺してくれるというならそっちの方がどんなにいいだろうかと、いつだって考えていたというのに。

 

 

 

バスタブの中で、湯は張らずに。シャワーを頭上から浴びて、体を洗った。

何度も何度も、体中を洗う。

繰り返し繰り返し洗って、繰り返し繰り返し流す。

そうやって洗っても、流しても。まだ汚れている気がして、また洗った。

 

 

 

「おい、クラウド。大丈夫か?ちゃんと生きてる?」

 

 

あまりに長時間、バスルームを占領していたからか、ザックスがガラス越しに声をかけてくる。

無心で洗っていたが、その声で我に返った。

「…へ、いき。だから、」

だから放っておいてくれと。そう言おうとして、失敗する。

声が、震えてしまった――目敏いザックスが、それに気づかないわけがない。

次の瞬間には案の定、ザックスが扉を勢いよく開ける。

「なんで、泣いての。」

「……泣いて、ない。」

「なんで、こんな……」

 

ザックスの視線が、自分の体に向けられる。

咄嗟に両手で隠すけれど、二本の腕では隠しきれない。

「なんでこんなこと、すんだよ…っ」

ほとんど、無意識に、だった。

――その体は全身をこすり過ぎて、ところどころ皮剥けして出血している。

浴槽に浅くたまった湯は、その血液で薄っすらと赤く染まっていた。

 

 

 

「だって…洗わないと、汚い。」

 

 

 

「この…馬鹿野郎!!」

いつにないザックスの怒鳴り声に、びくりと肩が震えてしまう。…怖い。

今までこんな風に、彼が自分に対して声を張り上げたことなど、一度だってなかったのだ。

濡れるのもお構いなしにザックスがずかずかと入ってきて、肩を力強くつかまれたとき、

殴られるのを覚悟して身構えた。

コルネオやその部下に、幾度となく殴られてきたクラウドにとって、それは条件反射だった。

 

バシャン!

 

「こういうこと、すんなよ!……頼むから…」

殴られると思ったのに、ザックスは浴槽の中でクラウドを抱きしめ、その場に座り込む。

今までクラウドの頭上をうっていたシャワーが、今度はザックスの頭部や肩を勢いよくうった。

「…濡れ、ちゃうよ。」

「別にいい。」

「お願い、はなして。」

「離すもんか。」

頑なにザックスは、クラウドの体をその腕から解放しようとしない。

 

 

「一生、離したくない。一分だって一秒だって…離せねえよ。」

 

 

クラウドの擦り剥けた肌を、そっと撫でる。

少し沁みたけれど、その触れられた部分から、何か剥がれ落ちていくような気がした。

「大丈夫、お前は、すっげえ綺麗だから。」

それが、真実でないことぐらいわかっている。

「お兄ちゃんって、本当に、嘘つきの常習犯だよ。」

「嘘じゃない。」

「嘘でもいい。…嘘でもいいから、お願い、」

 

 

 

「騙して………」

 

 

 

零れてしまいそうな涙を必死に堪えて、ザックスを見上げた瞬間、当然のように唇を奪われる。

「もう、俺のことだけ考えて。俺の指だけ、覚えてて。」

そう言って、胸に、腹に、背中に、腿に。彼の指が、触れる――

それは性的な意図よりも、むしろ癒すかのような、そんな慈しみを感じた。

 

もっと、触ってほしい。

ザックスに触られたところだけが、彼の色に染まっていくかのような錯覚を覚えた。

 

 

 

彼に、汚されるような。彼に、洗われるような。

 

 

 

ザックスの指が、クラウドの胸の飾りに触れる。

「あっ」

少し掠めただけなのに、大袈裟なぐらい大きな声が出てしまって、あまりに恥ずかしい。

思わずザックスに背を向けると、背後から彼に抱きしめられ、

今度は確かな狙いを持ってそこに手が伸びていく。

「やっ、そんなとこ…っ」

胸の飾りを執拗に撫でていた指が、それを摘まむ。

そうして軽くこねくられて、全身が震えあがった。

 

「…いつのまに、こんな可愛い体になったの?」

 

ザックスの言葉通り、クラウドは、1年前とはその体つきを変えていた。

以前はアンダーすら生えていなかったクラウドが、今は薄らとではあるけど、

金色のそれが生え始めている。それは、髪と同じキラキラ輝くほどの、見事な金色だ。

その柔らかいクラウドの恥毛を指で撫でながら、少し悪戯っぽい声色で彼が言う。

「ここ、やっぱり金色なんだな。」

「や…」

「兄弟、なのにさ。似てないよな、俺たち。」

 

 

あまりに似ていない二人――

だからこそ、まるで互いに無いものを埋め合うように、欲しがってしまうのだろうか。

 

 

ザックスの裸を最後に見たのは一年前。

その時からすでに成長の速かった彼は、成人男性にほど近い体躯だった。

今はさらに引き締まった筋肉がつき、彼が兵士なのだと思わせる。

体つきだけじゃない、その表情だって、どこか大人びて…羨ましいほどの余裕を感じる。

 

 

ザックスも、クラウドも――やはり、変わった。互いの知らない一年が、こんなにももどかしい。

 

 

「元から可愛かったけど。本当に、とびきり美人になったな。」

「嬉しく、ない…っ」

「こんなに色っぽくなっちゃうなんて。さすがに、想定外。」

ザックスは、そう言うけれど。

クラウドにとっては、ザックスこそが理想だ。

それに比べ、こんな痩せ細った体。…こんな汚れきった体。

こうして愛しい人にさらけ出すこと自体、拷問といっていい。

 

「見ないで、」

「無理だろ。勝手に目がいっちゃうし。」

「やっそこ、さわらない、で!」

「無理だよ。触りたくってしょーがない。」

多少は成長したとはいえ、未発達の幼い性器をやんわりと握られ。

それを可愛がるかのように、優しく撫でられる。

「ひ…!そんな、の」

 

体中の熱が、そこに集中していく。

彼はただ、そこを右手で握って、その感触を確かめている風な程度だというのに。

ただそれだけの刺激で、そこが反応してしまう。

 

それは、初めての感覚だった。

コルネオにそこを執拗に掴まれたり、乱暴に擦られたりしたことがあったが、

性に未発達なクラウドはそれが苦痛であるこそすれ、快感などでは決してなかった。

そこが反応しないことに、腹をたてた男が。よく自分を殴りつけたものだ。

 

「あっ、あ…っ!待って、ま、」

「ちょっと、握ってるだけだよ?クラって、すごい敏感なんだな。」

自分にだって、わからない。どうして、こんなに体が熱くなるのか。

「ん、あっ、あっ!、」

「可愛い。すっげえ可愛い。」

ザックスの手の平が、先ほどよりもそれをしっかりと握りこみ、ゆるゆると上下に揺れたとたん、

どうしようもない疼きが走って、腰がびくびくと動いてしまう。

「やっやっ!指、だめ、」

 

「クラって、もしかして……」

ザックスが、少し驚いたような、戸惑ったような声で何か言うのが聞こえた。

だけどもう、その指の動きが今のクラウドにとっては全てで、彼の言葉が理解できない。

「もしかして、お前まだ、」

「あぁっッ!!」

ザックスの指先が、クラウド自身の先端に軽く爪をたてただけで、

排尿感のような、それ以上に本能的な強い刺激にかられて何かが弾けた。

 

(信じ、らんない…)

 

自分のお情け程度についている、男の印から。

クラウドを犯した男たちと同じものが飛び出たのだ。

セックスに嫌悪を抱くことしかできなかったクラウドは、自身を慰めたことがない。

男との行為を想像するだけで、吐き気さえする。

実際、男に犯されている最中に、ものを吐いたり失神したりすることも多くあった。

――それなのに。

 

相手がザックスだというだけで、こんなにも簡単に上りつめてしまうなんて。

 

「クラ、出したの初めて…?」

あまりに早い吐精、それに、少ないけれど粘性の強いその体液。

精を吐き出すことが初めてであっただろうことを、ザックスも感じたらしい。

「……ごめ、汚いの、だしちゃ…」

ザックスの手の平に残るその白濁液に視線をやって、申し訳なさに居たたまれなくなる。

こんなもの、触りたくもないだろう。自分の経験からして、そうだったから。

 

「すっげえ、純度100パーセント?」

そう、ふざけたことを言いながら、あろうことかザックスが。その白い体液を――

「やだ!そんなの汚い!」

「言っただろ。全部、俺のものにしたかったって。」

何の抵抗もなく、それを舐め上げるザックスに、驚愕する。

「…こんなの、ずるい。」

 

あまりに、ずるい。

クラウドばかりが、彼に肌をさらし、恥ずかしいところを見られ、触られ、汚いものをまき散らして。

「俺ばっか、なんてずるい…」

「それでいいの。クラウドを甘やかしたいだけだから。」

そう、ザックスは言うけれど。

それならば、そのボトムの前をパンパンに張りつめているものは、いったいどうするつもりなのだろう。

 

「それ、どうするの…」

ザックスの下半身を指して、そう尋ねる。

自分で聞いておきながら、露骨な質問だったと赤面してしまう。

「後で、お前のこと考えて抜く。」

この男は、少しもオブラートに包もうとしない。

「そんなの、ずるいよ。俺ばっか、」

先ほどの恥ずかしい醜態を思い出して、思わず涙ぐむ。

「ちょ、泣くなって!な?」

よしよし、と頭を撫でてくるザックスのその余裕すら、悔しくて。また涙が滲む。

 

 

 

「俺ばっか、好きでずるい…」

 

 

 

ザックスは驚いた顔をして、彼にしては珍しく頬を染める。

「それって、どう考えても俺のセリフ。」

そうして、後ろから覆いかぶさるように、再び抱かれる。

「……挿れないから。俺のこれ、挟んでもいい?」

意味がわからず、聞き返そうとしたその瞬間――

突然、何か≠ェ、腿の間からヌルリと侵入してきた。

「…え?えっ?!」

 

自分の腿の間を、前から見下ろすと。黒い大きな塊が両足の隙間から飛び出している。

「なに、これ…?」

聞いたあとで、それはあまりに馬鹿馬鹿しい質問だったと気づく。

これは間違いなく、猛ったザックスの――

「足、閉じててな。」

ゆっくりと、そうして次第に激しく。

自分の幼い性器とは比較にならないほどの、巨大で赤黒いそれが、

クラウドの細くて真っ白な腿の間を、繰り返し抜き挿ししていく。

「あっ、あっ、あ…っ!」

 

 

――まるで、本当にザックスに貫かれているよう。

 

 

けれどその肉の先端は、絶対に自分の奥底には届かない。

いっそそこを犯して、汚して、ザックスの色に染めてもらえたらどんなにか――

そう考えて、やはり無理だと思い直す。

「クラ、クラ、」

 

 

これ以上は、届かない。汚れた体。弟であるという事実。

 

 

…これ以上は、絶対に許されない。

せめて今だけは、実の兄との行為に溺れたくて、目を瞑って受け入れた。

バスタブに手をつき、足をきつく閉じ、尻をあげて。

ザックスがどうすれば動きやすいか、それだけを考えて。

 

ザックスの指が、クラウドの小さな尻の双璧を開く。

「……?」

決してその中心の蕾には触れず、けれどその手は尻を掴んだまま。

「…なに?」

思わず後ろを振り返ると、ザックスが彷彿とした表情でそこを凝視している。

それがたまらなく恥ずかしくて、腰をひねって抵抗した。

「やだ!なに見て…!」

「滑った勢いで、ここにうっかり入っちまいそうだなと思って。」

瞬間、ザックスの腰の動きが激しくなり、幾度となく撃ち込まれた。

「やばい、クラウドのここ、可愛い。」

クラウドの尻は、やはり割り広げられたまま。――ザックスの視線を感じるまま。

 

「あっ!あっ!あぁん!」

まるで本当に挿入されているかのように、あられもない喘ぎ声をあげてしまう。

おそらくは、ザックスも。同じように、倒錯しているのだろう。

息を乱して、無我夢中でそれを突き入れてくる。

 

 

 

「お前のここに、挿れたい―――」

 

 

 

そう、ザックスが後ろから唸るように言う。

だけど、彼はそうしない。……できやしないのだ。

 

「おにい、ちゃん…!」

そう呼ぶ通り、彼は自分の兄であって。

二人は血を分けた兄弟で、その体を繋げることは許されない。

それを、二人は知っている。

「おにいちゃん!おにいちゃん!」

呼べば呼ぶほどに、その距離は遠く、手に入らない人であると実感した。

「……っ!」

ザックスが達した瞬間、やっぱり腹の中に求めているそれが流れ込むこともなくて。

彼の荒い息使いを聞きながら、クラウドはただ、涙を流した。

 

…それは、言いようのない喪失感。

 

 

 

 

 


 

二人、狂おしいほどに欲しいものがある。

けれどそれを手にいれるには、あまりに背徳的で、モラルを逸脱している。

 

「クラウド、風邪ひいたりしてないよな?」

ベッドの上で髪を乾かしていると、ザックスがそのタオルを奪ってふいてくる。

「平気……。」

ザックスを直視できなくて、膝を抱えて蹲る。

「クラ、さっき…酷いことして、ごめんな。怖かった?」

「どうして、そう思うの。」

 

「だってお前、さっき泣いてたから。」

 

怖かったから泣いたわけじゃない。

ただ、悲しかっただけだ。

彼が兄で、自分が弟であるという事実が。その屈強だからこそ断ち切れない絆が。

無条件の、繋がりが――

 

 

 

誰よりも近いのに、誰よりも遠い。絶対に手に入らない、ひと。

 

 

 

「お兄ちゃんのせいじゃ、ないよ。」

髪を乾かしていたザックスの手が、ぴたりと止まる。

「あのさ、クラウドに、ひとつだけ約束してほしいんだけど。」

そういって、唇が触れ合ってしまうのではというほど、顔を引き寄せられる。

「おにいちゃん…?」

「クラウド。」

ザックスの指が、そっと唇に触れる。

その指がそれ以上言わないで≠ニ言っている――

 

 

「クラウド。お兄ちゃんじゃない。…ザックスって、呼んで?」

 

 

「ざ…」

声に出そうとして、躊躇した。

…この人を、そう呼んでいいのだろうか?

 

 

兄でなく、家族じゃなく、ただザックス≠愛していいのだろうか。

 

 

「怒られる、よ。」

「誰に?」

「神様に。それに…お義母さん、に。」

兄は、静かに首を横に振る。

「怒られない。誰にも、クラウドを責めさせない。俺が、守るから。」

 

たとえば、世界中の人間に疎まれたとしても。

神様や、義母に責められたとしても。

…ザックスはきっと、その言葉どおりクラウドを守ってくれるのだろう。

 

 

 

二度と、会いたくないと思っていた。

(ずっとずっと、迎えにきてくれるのを待ってた。)

 

裏切り者、だと思った。

(世界で唯一の、ヒーローだった。)

 

信じていなかった。

(信じていた。)

 

憎んでいた。

(大好きだった。)

 

期待すればするほど、自分があまりに惨めで、それを否定することしか出来なかった。

だけど、もしもひとつ、期待してもいいならば。

欲しいものを、欲しいといってもいいならば――

 

 

 

「クラウド。俺のせいにして、いいんだよ。」

逃げ道をくれる、優しい人。

「アンタのせいに、するよ。」

「いいよ。」

「アンタのせいで、俺は…」

 

たった一人の、大事な人を失う。世界で一番優しいこの兄を、失う。

 

 

 

兄弟という繋がりを捨てることへの恐怖と、後悔と、そして喜びに涙を流して。

もう何の約束も絆も存在しない―――恋人≠フ名を、呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (2010.10.16

次、R30目指していいですか…(どんだけ!)

 

 

 

 


 

 

 

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