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【 ご 注 意 】

*「美 女 と 野 獣」 パロディです。とかいって、原作童話どこいった。

*のんびり、亀更新。

*暴力表現あり、苦手な方はご注意ください。

 

 

人々は、化け物を討つために

火を焚きました。

 

さあ、「魔物狩り」の始まりです。

 

Story9.魔物狩り

 

 

 

クラウドの小さなベッドの上――

そこに野獣が一匹、横たわっていた。

男の高い身長では、このクラウドのベッドでは窮屈そうなものだが、

『く』の字で横になっている為なんとか収まっているようだ。

 

「…やっぱり。俺、部屋戻るよ。オマエが寝れないしさ…ゲホゲホッ!」

「いいから、黙って寝てろ!」

「ゲホッ、ゲホッ!で、でも…」

「もともと俺のせいなんだ。ちゃんと、責任とりたい。」

「責任って…なんかクラウドって、ときどきすっげえ男らしいよな。」

 

クラウドの熱がすっかり下がって、ベッドから起き上がれるようになったとき。

入れ替わりのように、今度はザックスがベッドに倒れこむことになった。

三日間、付きっきりで看病をしてくれていたからか。

あるいは、あの夜、幾度も交わされたキスのせいか――

 

 

 

クラウドの風邪が、ザックスに感染ってしまったのだ。

 

 

 

「んな顔、すんなって。オマエのせいじゃないよ。」

「でも…俺が、ザックスに。………ああいうことしてって、言ったから、」

もともと、クラウドからキスを強請ったようなもの。

あの後も、毛布にくるまれるクラウドの頭を、彼は何ども撫でながら――

ほとんど一晩中、二人はキスをしていたのだ。

 

「風邪ぐらい、どうってことねえよ。それにさ、正直いうと、」

「なに?」

 

「オマエとキス出来て、マジでもう、死んでもいいかなって思ったし。」

 

「……っ」

よくもまあ、そんな恥ずかしいセリフを口に出来るものだ。

死んでもいい、とは少し違うけれど――

クラウドだって、たぶん、あの時同じような想いを抱いていた。

 

全てを 捨ててもいい≠ニ。

そう思ったのだ。ザックスのように、素直にそれを伝えることは出来ないけれど。

 

「…やばい。そういう顔されると、」

「え?」

 

 

 

「また、欲しくなる。」

 

 

 

「ンン…ッ、ふ…ッ」

クラウドの唇を優しく食む、ザックスの歯。そうして味わうかのように口内をなぞっていく舌。

(きもち、いい…)

何度唇を重ねても、まだ欲しいと思う。

この浅ましい欲を、きっと彼に見透かされている。

だからザックスは、クラウドに惜しみなく『これ』をくれるのではないだろうか。

 

「ゲホゲホゲホッ!!!!」

 

「ザ、ザックス、大丈夫…?!」

「わりいクラ…咳こんじま…っ」

「いいから、我慢しないで咳してよ。ね?」

ザックスの背を、そっと上下に撫でてみる。ゆっくり、ゆっくりと。

 

「クラウド。それって…手当て≠オてくれてんの?」

「こうすると、楽になるんだろ?ザックスみたいには、いかないかもしれないけど…」

「いや。なんか、すっげー楽になった、かも。」

 

暗闇の中で、ザックスの吐息がふっと漏れ――彼が優しく笑ったのがわかった。

こういう風に笑う、ザックスが好きだと思う。

あのとき、光の中で見たザックスの笑顔。今もあんな風に、白い歯を見せて笑ったのだろうか。

 

 

 

(ザックスが、楽になりますように…)

 

 

 

彼の背を撫でながら、そう、何度も祈ったけれど。

本当はわかっている。

「ゴホゴホ…ッ、」

祈りなどで、人を救えるわけがないこと――

もしクラウドが魔法を操れる術を知っていたならば、その知識があったならば、

彼の苦しみを取り除いてあげることが出来たかもしれないのに。

 

 

 

 

 


 

 

「…えっと、お粥?」

 

「そう、俺が作るから。ザックスはこのまま寝てて。」

「クラウドの手料理食えるって、それは嬉しいけど。でも…クラウドって、料理出来るの?」

正直なところ。元来不器用であるし、母親が料理好きだったのも原因して、

クラウド自身はほとんど台所に立ったことがない。

そうは言っても、全くの経験がないわけではないのだ。

料理はしたことがないけれど、手伝いぐらいはしたことがある。たとえば、

 

「猪を狩ったことはある。鳥を撃ったこともある。」

 

「あのう、クラウドさん。それって、料理じゃない気が…」

などと心配そうなザックスをベッドに無理やり寝かしつけ、クラウドはランプを片手にキッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

普段、一日三食の食事の調理はもちろん、後片付けでさえもザックスがやってくれていた。

食器を運ぼうとしただけで、「暗いから、転んだら危ない」といつも止められた。

要は、この男に甘やかされていたのだ。

 

だから、クラウドは初めて入るキッチン――

城自体は古い作りであるに関わらず、水回りは見たこともない器具や機器が揃っている。

鍋ひとつとってみても、村で使っていた土を焼いただけの歪な容器でなくて、

見たこともない美しい艶のある…おそらくは金属のようなもので出来た、均衡のとれた形をしていた。

キッチンに隣接した低温のセラーの中には、たくさんの野菜や果物、米や小麦、水。

それに洋酒までも揃っていて、その種類と量に驚いた。

しかもそれら全てが、衛生的に管理されている。

 

(ザックスが作ってくれる料理って…魔法じゃなかったんだ。)

おそらく料理は、彼の趣味だったのだろう。

いつもあまりに美味しく、美しい料理ばかりを振る舞われていたから、

てっきり魔法などを使った物なのだと、勝手に思い込んでいたのだ。

少し考えれば、わかることではあったが――

『焼きたてのスコーンを作る』などという、そんな便利な魔法も錬金術もあるわけがない。

 

米を洗い、ザックスに教えてもらったように鍋に火をかけ、しばらく熱する。

「…なんだ、楽勝じゃん。」

ここに至るまでの過程で、何度も鍋をひっくり返し、あれだけ整えられたキッチンを

散らかしてしまったけれど…それはザックスに見つかる前に片付けておけばいい。

それより早く戻って、ザックスにこの作った粥を食べてもらいたい。

そう思って鍋を両手に持ったとき、ランプとその鍋とを同時には運べないことに気付いた。

鍋は片手で持てる重さではないから、ランプを置いていくしかないのだ。

 

(ランプなくても、大丈夫かな。)

 

この城にやって来てまもない頃は、この小さなランプが唯一の明かりで…

これ無しではどこにも行けなかった。

夜寝る時でさえも、この小さな明かりをつけて寝るのが常だった。

 

…たぶん、怖かったのだ。

その見えぬ闇の中から野獣が現れ、いつかのように殴られ辱められるのではないかという恐怖。

あるいは、何か得体のしれぬものが闇に紛れているのではないかという不安。

それは“闇”に対する、人の持つ本能的な恐怖なのだろう。

 

でも、今は――闇の中に潜むのは、あの男だと知っている。

 

広い城で、クラウドが迷子になったのではないか、

あるいは愛想を尽かして城から出ていったのではないかと心配ばかりしている…臆病な野獣。

だから、以前のように暗闇は恐くない。

部屋の位置や階段の数もすっかり覚えていて、ランプがなくても移動はそれほど困難ではなかった。

長い廊下を抜け、半地下にあるクラウドの部屋へと続く、その階段へと差し掛かった時、

 

 

 

 

「―――ザックスか。」

 

 

 

 

後ろで、声がした。聞いたことのない男の声だ。

闇の中で動く影――ギシリギシリと、傷んだ木の廊下を踏みながら近寄ってくる。

(誰……?)

 

見えない視界。何者なのだろうか?

この城にいるわけがない誰か、その侵入者は、ザックスにとって敵なのか味方なのか。

人なのかモンスターなのか。

彼がかつて言っていたように、「賞金稼ぎ」である可能性もある。

 

ザックスほどではないが、高い背丈。

男が歩くたびに何か金属音がして、武器を所持していることがわかった。

動くことができず、息をすることもできず…背中に冷たい汗が伝った。

(ザックスを殺しにきたなら…これ以上行かせない。俺が――)

戦う術などクラウドは知らなかったけれど、ここで逃げ出すわけにはいかない。絶対に。

 

 

 

「ザックス、久しぶりだな、と!雪が酷くて少し予定がずれたけど…いつもの食糧、持ってきたぞ。

外の荷台に積んであるから、お前も手伝えよっと。」

思っていたよりも、男の軽快で明るい話し方。それに少し、安堵した。

「お代はいつもどおり、育てたマテリアな。あと、手間賃にさ、あったか〜いコーヒーでもいれてくれよ。

こっちは雪の中きてやったんだ。鼻水が止まんないんだぞ、と。」

少なくとも、この男はザックスの敵ではない。おそらくは、知り合いの商人か友人か――

クラウドが男に声をかけようとした、そのとき。

 

 

 

「…お前、誰だ?」

 

 

 

男がクラウドのすぐ傍まで歩み寄ってきたとき、その身の丈で目の前にいるのが

ザックスでないことに気付いたらしい。

男のの言葉は、先ほどまでの軽い雰囲気ではなく、唸るような声だった。

そう、いつかのザックスのように。

 

ドカッ!!

 

「お前…人間だな。ザックスを、殺しにきたか。」

「…あっ、い、た…っ」

名乗ろうとしたその瞬間に、顔にすごい衝撃を受け、階段の柱に体を打ち付けられる。

持っていた鍋は当然床にぶちまかれ、その中身が左手にかかりその痛みに悶えた。

 

「賞金稼ぎか?お前らのせいで、俺たちがどんな目にあってきたか…」

「な…に、」

「たしかに、神羅は、世界に取り返しのつかないことをしたさ。でも俺たちにだって、

仲間がいたし、家族がいた…。お前ら人間が俺たちを人殺しと呼ぶんなら、お前らだって

同じじゃねえか。―――見境なく、ソルジャー狩りしやがって!」

 

 

 

 

ソルジャー狩り?

 

 

 

 

バキッ!

「…っ!!」

「タークスにも勝てないで、ソルジャーを殺れると思ってんのか?なあ、」

何かはわからないが、金属のような固い武器で肩を殴られる。

骨が砕けたような、嫌な音がした―――

 

「へえ?どんな顔してるかと思ったら……ずいぶん可愛い顔してんだな。」

男の手元で灯るライター…その小さな明かりで、クラウドからも男の表情が見えた。

痩せた面立ちに、蒼白い肌、緑の鋭い瞳。そして、赤い髪。

 

「女?いや、女だったら、泣き喚いてるな。ずいぶん肝の据わった僕ちゃんだこと。」

 

顎を乱暴に捕らわれ、抵抗しようとするものの…肩を殴られたせいか、利き腕が全く上がらない。

左手は持っていた鍋で火傷を負ったらしく、もはや感覚がなかった。

「俺は、賞金稼ぎじゃない…っ!」

「はは!生き延びようと必死だな。言っておくが、タークスに命乞いは無意味だ。

ザックスなら、情けをかけたかもしれないが――俺はあいつのようなお人好しじゃない。」

蒼白い顔をした男は、酷く冷たく笑った。

 

 

 

 

「お前らに、全部奪われた。妹も、ダチも…おまえら人間≠ノ殺されたんだ。」

 

 

 

 

ライターの火が消えた。

床に顔を押し付けられ、身体中の痛みに気が遠くなりそうだった。

「……お前らが俺の妹にしたのと、同じことしてやろうか。」

「…っ?!や、なにす…」

着ていた衣服を引きちぎるように剥かれ、抵抗しようとすればするほどに、

おそらく骨が割れているのだろうその肩に激痛が走る。

「いや、だ…はなせ…っ!」

「あいつも、泣きながら抵抗したはずだ。それをお前らは…お前ら人間は――」

 

 

 

――オマエら人間を、許すことはできない。

 

 

 

聞こえてきたその言葉は、男の声なのか、ザックスの声なのか。

わからないけれど、それがリフレインのように何度も何度も頭の中を木霊する。

頭を、支配していく――狂いそうだ、と思った。

男の悲しみ、ザックスの悲しみ。男の憎しみ、ザックスの憎しみ。

それが頭の中を渦巻いて、言葉の刃が容赦なくクラウドを切り刻んでいく。

 

 

 

本当、人間って。どーしようもねえ生き物

 

殺してやりたいって、そう、何度も思ったからな…

 

人間に刺されても、撃たれても、燃やされても――死なない

 

 

 

 

…ザックス ハ 人間ニ 刺サレテ 撃タレテ 燃ヤサレタ。

 

 

 

 

「…ザック、ス、ザックス…!」

もう、耐えきれず――顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら、その名を呼んでいた。

彼に、この命を助けてほしいからじゃない。怪我を治してほしいわけでもない。

 

二度と砕けた腕が動かなくなったとしても、構わない。だから、せめて一度だけでいい、

一度だけでいいから、あの人を思い切り抱きしめてあげたかった。

 

 

可哀想で、可哀想で、可哀想で…ただただ愛しい、クラウドの野獣を。

 

 

 

 

 

愛しい、俺の野獣――

 

世界を敵にまわしても 構わない。

アンタに火をつける人間がいるなら

その誰かを俺は手にかけるだろう。

 

そうして 火の中に飛び込んで

その体を抱き締めたら

 

ふたり燃え尽きるまで

絶対に離してやらない。

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (2012924

レノさんが荒れててすみません…

怒ってるときは、少し口調変えてみました。

 

 

 

 


 

 

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