*ご注意*
@ 「それは、死に至る病。」その後のお話です。
A ザックスが、相変わらずクラウド大好き病発熱中!です。頭悪いです。
B ただの、おふざけです。ごめんなさい。
―番外編4―
全力を尽くしましたが…残念です。
(クラウドが11003匹、クラウドが11004匹、クラウドが11005匹…)
もはや、頭の中はクラウドのことだけ。
(クラウドと11006発、クラウドと11007発、クラウドと…って俺、最低ッ!!)
心も体も、欲しているのはクラウドだけ――
風呂場かトイレで抜くか(風呂場はガラス張りだからダメだな)、ベランダで一服するか…
とにかく、この戦場から抜け出すしかない。
逃亡兵だと罵ってくれ、俺にはこれ以上戦えない。
クラウドを起こさないように、そっとベッドから抜け出そうとすると。
寝ていたはずの彼に、シャツの裾を引っ張られた。
「あ、悪いクラウド。起こしちゃった?」
「ザックス?どこ、いくの…」
「ちょっと、眠れないからさ。あっちで、煙草吸ってこようかと思って。」
女の子の前では、煙草を吸うのに遠慮したことがなかったけど、クラウドの前で吸う気にはなれない。
クラウドの体に悪い影響が出るのも、クラウドに煙草の臭いが染み込むのも嫌だった。
ここまでくると、初孫を可愛がるじいさんの気持ちに近いかもしれない。
…目にいれても痛くない、ってやつだ。
「ここで吸っていいよ。」
眠たそうに、目をごしごしこする仕草は、100点満点を上げたいほどに可愛い。
「んー、やめとく。オマエの身長が止まったら可哀想だし。」
冗談めかして言ったつもりが、クラウドは顔をむっとさせる。
その膨れっ面にも100点満点をあげたい。
だからこそ…これ以上一緒にいるのは、やっぱり無理だ。
「それに、オマエといるとムラムラするから。向こうで頭冷やしてくる。」
クラウドは俺の言葉の意味を、全部は理解していないのだろう、
俺のシャツが伸びきるほどに強く引き寄せて、行かせまいとする。
「あっちで、抜いてくるって言ってんの。わかる?」
はっきり言わないと、クラウドには通じまい。
情けない気がしたけど、体裁なんて気にしていられない。
これ以上乱れたバスローブ姿のクラウドを、直視するのはきつかった。
「えっ、あ、……。」
クラウドが思い当たったように、俺の下半身に目をやった。
ボトムの上からでも、悠々と主張している俺の馬鹿息子。
そんなにまじまじと見られると、さすがの俺も恥ずかしいし虚しくなってくる。
「……ここで、すれば?」
「え?」
「あっちじゃなくて、ここで抜けばいいじゃん。」
「え…っと、え?」
とんでもないことをクラウドが言い出すもんだから、反応するのが遅れてしまった。
「俺だって、男だし。それぐらい知ってる。俺は気にしないから、」
「いやいやいやいや!待て!俺が気にするだろ!」
好きな子の前で一人エッチなんて、どんな羞恥プレイだよ!
そういうのは、正直「見る方」が好きだし。
クラウドが一人エッチしてくれたら、やばい興奮するんだろうけど…ってそれは関係なかった。
「うるさいな!男だろ!こそこそヤんないで、堂々とヤれよ!それでもソルジャーか!」
ソルジャー関係ない!ってかクラウド、なんでそんなに男らしいんだ!
「無理!さすがに無理!」
涙目になりながら、クラウドから逃げるようにベッドから飛び降りる。
…そのとき、何かを踏んづけた。
ベッドの下に隠しておいたリモコン――
クラウドに見つかったら気まずいと思って、そこに忍ばせておいたのが失敗だった。
それを、自らの踵で踏んだ瞬間、
『あん!あん!そこ…いやあん!』
ベッドサイドに取り付けられた大きなテレビに映し出される、男女の絡み。
「…あ、」
ラブホに常備されているAVだ。
しかも、そのAV女優の子は、どこかで見たことがある――いや、それはさっき会ったばかりの、
「この人、さっきの…ザックスの、彼女じゃ…。」
「いや待て、彼女じゃねえし!」
「……でも、同じひと、だよね…?」
「…たぶん。」
どうやら、さっきピンク街で話しかけてきた女の子は、AV女優だったらしい。
なんとなく素人ではない雰囲気がしていたから、納得はいく。
『あ、そこ、いい!気持ちいいの…!』
男の指が下着の中をまさぐり、大袈裟によがる彼女を見たとき。
いつだったかベッドを共にした日のことを、うっすらと思い出した。
えらくトコ上手で、とくに騎乗位がすごかったような…かなり積極的な女だった気がする。
「ザックスも…この人としたんだ……。」
ぎくりとしてクラウドの方を振り返ると、案の定、彼は泣きそうな顔をしている。
「これからは、もう他の女と寝ないよ?」
こうしてAVを見ていても、過去のセックスを思い出しても。…少しも興奮を感じない。
クラウド以外の誰かを、欲しいなんて思わない。
もう永遠に、この子以外を愛せるわけがない――
「…そんなの嘘だよ。だって、したくなったらどうするの?」
「オマエのこと考えて、抜く。」
「嘘ばっか…部屋にいかがわしいDVD、いっぱい持ってるくせに。」
「いや、あれは昔使ってたやつで、今はオマエの写メをオカズにしてるし…」
ってこれは俺のトップ・シークレットだった!まずい!
「なんだよそれ!変態じゃん!気持ち悪いことすんな!」
「いや待て!変態じゃない、俺は恋するごく普通の健康優良男子であって…」
「黙れ変態くそ野郎!」
クラウド、どこでそんな酷い言葉を覚えてきたんだ!お兄ちゃんは悲しいぞ…
そりゃ、自分の知らないところで夜のオカズにされていたら、気持ち悪いかもしれないけど。
「…そもそも写真とか、こそこそしてるのって嫌だ。そういうの、ザックスらしくない。」
「はい。ごめんなさい。」
「全部消去するから、携帯よこせ。」
「え?!それは勘弁!マジで勘弁!俺の宝物だぞ?!」
「アンタに著作権はない!消す!」
強引に俺の携帯を奪い、フォルダチェックを始めるクラウド。
「パスワード、教えろ。」
「許してくれクラ!マジでそれだけは…」
「教えろ。」
「いやだ!」
この攻防戦は、クラウドの一言によって雌雄を決することになる。
「ザックス、意地悪しないで…」(上目遣い)
意地悪なんて、絶対しません!しませんとも!
こんな風に可愛く涙目で見上げられれば、もう何でもしてあげたくなってしまう。
たとえばあそこに象さんの落書きを描いて「象さん象さんお鼻が長いのね」を熱唱することだって朝飯前だ。
――クラウドが望むわけがないから、やんないけど。
「…0811。」
「え?」
「パスワード、0811≠セって。オマエの誕生日。」
瞬間、クラウドの頬がさっと綺麗なピンクに色づいた。
「…ばか。人の誕生日使うとか、著作権で訴えるぞ。」
そんな可愛い文句を言いながら、クラウドがパスワードを入れていき、フォルダを開く。
ここまでか――…
さようなら、俺の「クラウド・コレクション・2011」。全部消されてしまうのか…
「なにこれ?全部、普通の写真じゃん。」
「どこが普通なんだよ!すっげえすっげえ可愛いだろ!」
俺のコレクションを不可解と言わんばかりのクラウドに、
ついコレクター魂に火がついて、自分の宝物について熱く語ってしまう。
「このクラウドの笑った顔、やばいだろ?!こっちのすねた顔もいいし!これなんかほら、ニャンコみたいに丸くなって
可愛いだろ?それにこっちの写真なんか、」
「…ザックスのことだから、変な写真があるのかと思った。」
「変なって?」
「だから………その、裸の写真、とか。」
そう、俺のフォルダの中には、クラウドの寝顔とか、あるいはソファで雑誌を読んでいるところとか、
俺の作ったクレープに噛り付いているところとか、そんな日常のクラウド≠ホかりだ。
「裸、撮っていいの?!じゃあ今すぐ撮らせて!」
「いいわけあるか!」
「まあ、裸じゃなくてもすっげえくるけど。
クラウドの寝顔とか、笑った顔とか、すねた顔とか…全部俺の宝物なの。」
クラウドは知らないだろうけど――俺にとっては、クラウドのどんな一瞬だって特別だ。
「…悪趣味。」
精一杯、つれない態度をとろうとして。でも、どうしても優しい表情になってしまうクラウドに、愛しさが募る。
もう、どうしようもない。どうしようもないぐらいに、この子が好きだ。
胸の奥底がもどかしくてもどかしくて、お前が好きだと叫んでしまいそうなぐらいに――
「……写真じゃなくって、本物いるんだから。すればいいのに…」
「え?」
「ザックスはそれでよくても、」
「クラウド?」
「……俺は、何年も待てないよ…」
ドンガラガッシャーン!
そのとき聞こえてきたウェポンの叫びにも似た爆音は、「俺の理性が粉々に砕け散った音」だっただろうか。
何年?何十年?いやいやいや、
むしろ、一分一秒だって待てやしない。
好きな子を抱きたいと思うのは、自然の摂理だ。
肌を重ねて、唇を重ねて、比喩じゃなくクラウドと溶け合ってみたい。
彼を自分だけのものにして、自分は彼だけのものだと証明してあげたい。
クラウドが、ほんの少しでも俺を望んでくれるというのなら…
彼の優しさに、つけこんでもいいだろうか。
「―――クラウド、おいで。」
ベッドの上で、クラウドを自分の膝の間に引き寄せる。
そうしてそのまま、唇をそっと重ねようとしたとき。
「…どうすれば、いいの?」
「うん?」
「こういうの、したことないから…やり方わかんないよ…」
こんな可愛いことを言われるのは、俺の18年という未熟だけれどそれなりに長い人生において
間違いなく初めてのことだった。
キスの仕方がわからない、なんて。――ああ、神様!
ご家族の皆様、申し訳ございません。
全力を尽くしましたが…残念です。
(午前1時35分、俺の理性はこと切れました。)
|