C-brand

 

 


 

 

 



 

  

 

 *ご注意*

@    それは、死に至る病。」その後のお話です。

A    ザックスが、相変わらずクラウド大好き病発熱中!です。ますます頭悪いです。

B    ただの、おふざけです。ごめんなさい。

 

 

 

 

―番外編3

おそらく、今夜が峠です。

 

 

(チョコボが一匹、チョコボが二匹、チョコボが三匹…)

いったい、チョコボを何匹数えればいいのか。

(…チョコボが97匹、チョコボが98匹、チョコボが99匹…)

どうしても、眠れない。

(…クラウドが135匹、クラウドが136匹、クラウドが…ってなんでだ!

気付けば愛しい子の名前を繰り返している。

(これじゃ、眠くなるどころか…逆効果だっての!)

ベッドに入ってから、2時間は経った。だけど、少しも眠くならない。

 

――なぜってそれは、隣で眠るチョコボのせい。

 

「ん…ザック、」

すりすりと、寄り添ってくる小さな体。アンティークドールを思わせる、長い睫。

薄く開いた、形のいいピンクの唇。ふわっと肌触りのいい、柔らかな金の髪…。

いい香りがするのは、シャンプーの匂いなのか、彼独自のフェロモンの香りなのか。

(ちょ、そんなくっつかれたら…)

俺よりはるかに低い、クラウドの体温。無意識に暖を求めているのか、クラウドは俺の胸に顔を押し付ける。

それだけではおさまらず、仕舞いには足まで絡めてきて、完全に俺のことを湯たんぽ電気毛布だと勘違いしている。

(勃っちゃう、だろ!)

ここで理性を失うわけにはいかない。今が踏ん張りどきだ。

 

そう、今夜が峠。

 

俺は今、猛烈な痛みを腹の下に感じながら、そして異常なほどの動悸と発熱を伴いながら。

強烈なウイルスと闘っている。

その病原菌の名は、いわずもがな―――

 

男の子のスケベ菌ってやつだ。

 

 

 

 


 

事件は、4時間ほど前に遡る。

 

飲み会の後――

クラウドと二人、ほろ酔い気分で手を繋ぎながら(ポケットの中にいれて隠してたけど)、帰路についていた。

想いが通じ合ったばかりで、お互いどこか気恥ずかしいような、こそばゆいような。

二人の間にほとんど会話はなく、ときおり目が合うたびに、お互い慌てて目を反らしたりした。

 

照れくさくて、何を話したらいいかわからない。

「クラウドの手って、冷たいよな。」

今まで、ただの『友人』同士だったとき、どんな会話をしていただろう。

どんな話をすれば、クラウドは笑ってくれただろう。

互いの存在が『特別』になった今、妙に意識してしまって、他愛もないことばかり口につく。

「…俺、冷え症だから。ザックスは、いつも熱いよね。」

 

ポケットの中で、俺の手が汗を握るほどに熱いのは、カイロのせいだけではない。

「ソルジャーになると、体温の上昇が顕著になるんだよ。」

「え?そうなの?」

「うん。戦闘中とか、運動してるときとか。あと興奮したりすると、普通より体温が上がる。」

「……だから、あんなに熱かったんだ。」

「――え、」

呟くようにクラウドが言った言葉が、いつのこと≠指しているのか。

それを理解するのに反復遅れてしまい、聞き返すとクラウドが慌てて首を振った。

 

「な、んでもない!なんでもないから!」

耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしがるクラウドを見て、あの夜の記憶が脳裏をよぎる。

「…クラウド、もしかしてエッチなこと思い出しちゃった?」

わざと意地悪に掘り下げてみると、おもいきり足を踏みつけられた。

「いってえ!ひどいぞクラウド!家庭内暴力、反対!

…じゃあ離婚するか。」

「ちょ!それはダメ!!子供が可哀想じゃない?!

なんて、馬鹿みたいな夫婦喧嘩ゴッコをしながら、お互い肩でどつきあう。

俺が大袈裟によろけてみせると、クラウドが可笑しそうに笑ってくれる。

 

まだまだ、色気が足りない二人だけれど、今はそれでいいのかもしれない。

『恋人』同士として、愛を囁いたり、抱きしめたり、キスをしたり、それ以上のことをしたり――

それもすごくすごく魅力的なことだけど、こうやってふざけ合う『トモダチ』のやり取りも悪くない。

 

(焦る必要は、ないんだ。)

だって、こうしてクラウドと肩を並べているだけで、手を繋いでいるだけで、そしてこの子が笑ってくれるだけで。

胸のあたりが、じんわりと温かくなってくる。

(この子を、大事にしたい。)

セックスは、目的じゃない――

気持ちを確かめ合う「手段」のひとつだ。

だからいつか、そのとき≠ェきたら…優しく優しく、抱いてあげたい。

それが、何年後になってもいい。何十年後になったとしても、いい。

クラウドが俺を望んでくれるまで…どれだけだって、待ってあげたい。

 

 

 

 


 

「クラ、どうした?」

駅近くの、とりわけ人通りの多い繁華街にさしかかったとき、クラウドの歩くスピードが少し遅くなった。

どうしたのかとクラウドの様子を窺うと、どうやら彼は人混みが苦手で、飲み屋やカラオケの客引き、

それに週末をエンジョイしているサラリーマンや若者――とかく人の多さに酔ってしまったらしい。

さっきから通りすがりの人にぶつかってばかりいるし、俺が手を引いていても歩き辛そうにしている。

 

「近道、しようか。」

裏通りを指さしてそう提案したのは、他意があったわけではない。

ただ、そこを通るのが駅への近道だったし、人通りが少ない裏道の方が、クラウドにとって歩きやすいと思ったから。

それに少し急がないと、終電を逃してしまうかもしれない。

俺の言葉に、クラウドは少し意外そうな顔をした。

「裏道は絶対通るなって、いつもザックスが…」

昼間であっても、スラムの裏道は治安が悪い。

クラウドには常から口酸っぱく、裏道には絶対に近寄るなと言ってきた。

昼でさえ危険なのに、今は終電も間近な真夜中。

 

「俺が一緒のときは、大丈夫。ただし一人のときは、絶対入るなよ。」

「…危ない、の?」

恐怖というより、好奇心に近い聞き方。こんなに可愛くても、やっぱり男の子だ。

「危ない。男の場合は、間違いなく身ぐるみはがされる。女の子なんて、まさにそうだな。

比喩じゃなくて、身ぐるみも下着もはぎとられちゃうかも。」

よくわからない、というように首をかしげるその愛らしい仕草を見て、この子にはまだ早い情報だったと気づく。

「まあ、オマエはわかんなくていいよ。そのまんまでいい。」

「なんだよそれ!大人ぶって。…2歳しか、変わんないじゃん。」

「じゃあ、2年後に教えてやるな。それまで毎日牛乳飲んで、すくすく育つんだぞー」

「子ども扱いすんな!」

 

二人仲良くじゃれ合いながら、スラムの裏道を通り抜ける。

周囲の建物は、途端にいかがわしいピンクとか紫とか黄色とかの看板ばかりになって、

真冬だというのに不自然なほど露出したコスチュームを纏ったお姉さんや、唇にピアスをしたお兄さんたちが、

軽い調子で誘いをかけてくる。

「お兄さんいい男だね!可愛い子そろってるよ〜」

「うちは追加料金一切なし!さあ寄ってって!」

それらの誘いを、軽く手をあげて断っていく。

 

「…ここ。何の店?」

恐る恐るといった調子で、俺を見上げてくるクラウドは。

きっと、こんな店などには全く縁のない、清らかな生活を送ってきたのだろう。

「こっちは、お姉さんに体を洗ってもらう店。あっちは、たぶんセーラーとかナース姿のお姉さんに…」

「もういい!何も言うなばか!」

理不尽に罵られて、説明するのをやめた。

思った通り、クラウドにはまだまだ早い情報だったようだ。

ミニスカナース姿のお姉さんにウインクされて、クラウドは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「…まあ、いわゆるピンク街ってやつだな。」

キャバクラ、風俗、ホストクラブ、それにラブホテル。

俺にとっては見慣れた『夜の街』だけれど、クラウドにとってはまさに異次元だろう。

もはやクラウドは、エロい看板やエロいお姉さんたちを直視することも出来ないのか。

目をぎゅっと瞑ったまま、俺に手を引かれている。

周りを見ていないせいで、クラウドの足元はふらふらと覚束ない。

 

(…こんなんじゃ、ホテルに連れ込まれてもしょうがないぞ。)

 

その気になれば、すぐ目の前にあるラブホテルに、この子を何の苦労もせず連れ込めるだろう。

そして、そのまま何が起こっているのか理解が追い付けないだろう彼を、ベッドに投げ飛ばして、服を脱がせて。

嫌だ嫌だと泣く彼を、あの時みたいに…めちゃくちゃに犯すことだって。

…できるけど、できない。絶対に、しない。

 

 

大好きだけど、大好きだから―――この子を泣かすことは、絶対にしない。

この命に誓って。

いや命よりも大事な、クラウドに誓って。

 

 

 

 


 

 

「ねえねえ!ザックンでしょ?やだ〜すごい久しぶり!」

もう少しで、このいかがわしい通りから抜け出せる一歩手前でのことだった。

かしましい女の子の声――いつか聞いたことがあるのは間違いないけど、それはいつだっただろう。

金色の巻髪に、パールでキラキラしたアイメーク、濡れたような赤いルージュ。

なかなかの美人だと思う。とくに胸の谷間は素晴らしい。

 

「あー、ひさしぶり!」

相手に合わせて返事をするも、どうしても名前が出てこない。

(誰だっけ?ジェニーちゃん?リカちゃん?ティモテちゃん?)

なんか違う気がする。っていうか、それはどっかの人形の名前か。

 

「…その子、なに?そんな小さい子連れまわして、犯罪じゃない?」

彼女は、クラウドを見下ろすかのように視線をやって、鼻で笑う。

もともとモデルのように高い背丈なのだろう、それに加え10センチ以上のハイヒールのせいで

男であるクラウドよりも背が高かった。

「俺、こう見えて未成年だけど。俺を連れまわしてたオネーサンの方が、犯罪だって。」

どこの誰かは思い出せないが、たぶん何度か寝たことはあったと思う。

セフレだったかもしれないし、プロのお姉さんだったかもしれない。

 

「そうね。いけないこと、たくさん教えてあげたでしょ?…そんなお子様、相手にするなんて、

ザックスらしくないじゃない。お姉さんがっかり。」

 

そう言って笑う彼女の、唇の歪み方を見て。嫌な笑い方だな、と思った。

女をアピールするような、笑い方。

過去の自分が、どうして彼女と関係を持ったのか覚えてはいないけれど…

きっと、彼女の見た目「だけ」に興味を持ったんだと思う。

その金髪と白い肌、それにブルーアイが、『彼』を思わせるから。だけど――

以前は似ていると思っていたかもしれないけど、こうして見ると全然違う。

彼に似ているものを、無理やり彼女の中に見出していただけのような気がする。  

 

 

 

「手、繋いじゃったりして――まるで、お遊戯じゃない。」

 

 

 

彼女にそう指摘された瞬間、すぐさまクラウドの手が、俺のポケットから離れていく。

クラウドが今、どんな表情をしているかはわからなかったけど。

こんな他人の言葉に、いとも簡単に傷ついてしまう子だ。

…きっと今頃、泣きそうな顔をしているはず。

「お遊戯に見える?」

だから、離れていく手を、強引に捕まえて握り直した。

他人にどう思われても関係ない。

 

 

 

「今、命かけて恋愛してんの。…悪いけど、邪魔しないで。」

 

 

 

後ろから、彼女が「ばかじゃない子供のくせに」と。

俺を詰る言葉が聞こえてきたけど、気にも留めずにクラウドの手を引いて、歩き出した。

 

だけど、肝心のクラウドの足取りは重く、数歩歩くと立ち止まり、促すと数歩歩き、また立ち止まり…

「クラウド、ごめん。嫌な気分にさせたな。」

せっかく、お互いの気持ちが通じ合って、二人は幸せの絶頂にいたはずなのに。

俺が、この子を不安にさせてしまっている。

 

「…今のひと。ザックスの、彼女?」

 

せめて、「元彼女?」とか、過去形にして聞いてほしい。

今、クラウド以外の女の子に、よそ見できるわけがないっていうのに。

「彼女じゃないし、モトカノでもない。」

「…じゃあ、友達?」

クラウドが、諦めたような顔をした。俺が、嘘を言っていると思ったんだろう。

 

「最低、かもしれないけど。…何回か、セックスした子。それだけ。」

「それだけって…」

クラウドの目に、失望がうつる。他に言葉を選ぶべきだったかもしれないけど、

今までやってきた最低な過去は消せやしないし、クラウドに嘘をつきたくなかった。

 

「ごめん。俺、ほんとに最低だった。だけど、もう」

「じゃあ……は?」

「え?」

「俺は、なに?」

 

 

 

1回、セックスしただけの…それだけの相手って。俺も言われるの――」

 

 

 

そんなわけないだろ、と俺が答えるよりも先に。

クラウドに腕をひっつかまれ、そのまま近くの建物の中に引きずりこまれた。

「ちょ、どうした?」

ぐすぐすと鼻を鳴らすクラウドは、顔を窺うことは出来なくても泣いているのだとわかる。

「クラウド。な、どうしたの?泣かないで?」

「泣いてない!」

泣き声としか思えない震えた声で、そう言われてしまっては、引かれるその手に逆らうわけにもいかない。

(だけど、ここって…)

 

「ここ、どこかわかってる?」

「知ってる。」

「何するとこか、わかってる?」

「…知ってる。」

 

そこは、小さなテーマパークのゲートのようになっていて、偽物くさいショッキングピンクのモーグリのぬいぐるみが

大きな看板を持って立っていた。その看板には、「ラブリーソーサーへようこそ」と書いてある。

「クラウド、ここ、似てるかもしれないけど、オマエが行きたがってたゴールドソーサーじゃないんだぞ。

この門くぐっても、あるのはベッドだけで…

「知ってるってば!」

 

 

ラブリーソーサー

宿泊120ギル。休憩70ギル。

 

 

いわずもがな、ここはいわゆる大人の夢の国。

―――またの名を、ラブホテルと言います。

 

 

 

 


 

 

…まずい。あまりに、まずい。

泣くクラウドに手を引かれるまま、ついチェックインしてしまった。

そうして、エレベーターで最上階まで上がってきて、部屋に入って――

 

ザー…

 

クラウドは、シャワーを浴びている。

俺はというと、部屋の中を行ったり来たりしている。軽く50往復はした。

手持ちぶたさに耐えきれず、ついシャワルームの方に目をやって、失敗したと思った。

浴室は全面ガラス張りになっている。

下半分は曇りガラスだけど、上半分は丸見え。

クラウドのスベスベな背中とか、折れそうな腰とか、半分ぐらいまでだけど小さな尻までも見えてしまって、

どうあっても目をそらせない。

 

シャワーの湯気で、徐々にガラスがくもっていき、見えにくくなるんだけど…

その肌色のシルエットは、ますます俺の妄想をかきたて、興奮を誘う。

 

まずい。

 

今にも浴室に乗り込んでいって、無防備な彼に、後ろから襲い掛かりたい。

ガラスの壁に手をつかせて、腰をひき、そのままあの子の中に指を挿し入れて…

(ってやめろ!俺!)

すっかり妄想の中でクラウドを犯してしまった。

でも、しょせんは妄想――

満たされていない俺の下半身は、ボトムの中でこれでもかというほどに主張している。

 

まずい、まずい。

 

なんで、こんなことになったんだろう。

クラウドを大事にしていこうと、誓ったばかりなのに――

その理性が、もうすでに何それおいしいの?って開き直り始めているぐらい、ギリギリのところにいる。

 

「ザックスも、シャワーあびる?」

突然話しかけられ、はっとした。

シャワーを浴び終えたクラウドが、白いバスローブをまとって俺を見上げてくる。

(ほっぺた、ピンクだ…

上気して、仄かにピンクに染まるクラウドの頬…実は、ずっと前から知っていた。

クラウドは、酒を飲んだり、風呂上りのときに、異様なほどに色っぽくなる。

そう、まるでセックスのときを思わせる表情――

「ザックス?」

クラウドの鎖骨の上を、水滴が綺麗に零れ落ちていくのを目で追って、ごくりと喉が鳴った。

 

「クラウドッ!!」

 

もはや理性なんてものはかなぐり捨てて、クラウドをそのままベッドに押し倒した。

バスローブをおもいきり開いて、現れた白い肌に無我夢中でむしゃぶりつく。

「あ…ッ、…」

クラウドは、最初こそ怯えたような小さな悲鳴をあげたけれど、その後はほとんど何も喋らなかった。

抵抗する様子もない。だから、俺も止められない。

余裕なく愛撫を繰り返すうちに、クラウドが震えていることに気付いた。

違う、震えているんじゃなくって。…また、泣いているんだ。

 

「…ごめん、恐いか?」

こんながっつかれたら、誰だって恐いだろう。

クラウドは、涙をボロボロ流しながら、首をふる。

「ザックス、する、前に…教えて。」

「…なにを?」

考えてみれば、クラウドの髪も乾かしていない。

髪をそっと撫でたときに、そんな当たり前のことに気付いて、少し冷静になった。

 

 

 

「何回すれば…ザックスの、特別になれるの?」

 

 

 

(――え、)

クラウドが泣いている理由、クラウドが俺に体を開いている理由――それを、ようやく理解した。

体をあげるから心をくれと。そう縋り付くことが、彼なりの精一杯なんだってこと。

そうさせてしまったことが、悲しいし、悔しいし、もどかしかった。

 

「…しない。」

クラウドは、俺の想いを信じていない。

「俺は、オマエと絶対にセックスしない。」

俺との未来を、信じていない。

 

「俺じゃ、やっぱり、だめなんだ…」

 

体を丸めてすすり泣くクラウドを、毛布でそっと包み込んだ。

「オマエじゃなきゃ、だめだよ。そう言っただろ?」

「…そんなの、信じられないよ。もう…」

「だったら、別に信じてくれなくていい。」

突き放すような俺の言葉に、クラウドが目を見開いた。

そこから零れる涙を、そっと指でぬぐってやる。

 

「悪いけど、死ぬまで逃がす気なんかないから。

ずっと俺に付きまとわれたら、嫌でも愛されてるって気付くだろ。」

 

明るくストーカー宣言するな、と。鼻をすする彼に苦笑する。

いくら何でも、ストーカーはないだろ。

そういうの、恋人っていうんだろ?あるいは、夫婦っていうのかな。

「オマエのこと、好きだけど、大好きだから。今は絶対にしない。何年だって、何十年だって待ってやる。」

俺の一方通行でなくて、クラウドが、俺のことを本当に信じてくれるようになったら。

クラウドが、俺を心から欲しいと手をのばしてくれる日がきたら――

 

「…そのとき、もう俺がオジサンだったら?」

クラウドがまた、少しずれた可愛いことを言う。

クラウドが年齢を重ねていったとしても、この愛らしさは変わることはないのだろう。

少しずつ、色や形を変えていったとしても。…この気持ちの、煌めきは同じはず。

「クラウドなら、おっさんでもいいよ。俺もメタボになってるかもしれないし。

「ぶっ!ばかじゃない。」

 

「メタボな俺でも、好きでいてくれるだろ?」

「無理。」

 

そんな優しくない返事に、がっかりなんてしない。

だって、クラウドの俺を見る瞳が、すごくすごく優しい。

この子は、俺がメタボになろうと、しわしわのジイさんになろうと。

そうやって目を細めながら、俺にそっと寄り添ってくれるんだろう。

 

「終電出ちゃったから、今夜はここに泊まるけど。エッチはしない!」

そうだな、清く正しく、今夜はトランプでもしながら夜を明かそうか。

 

 

 

 

 

――なんていうほど、現実は甘くない。

 

 

 


 

ここで、冒頭に戻る。

 

(チョコボが1378匹、チョコボが1379匹、クラウドが1380…ってまたか!)

ベッドの上で、小一時間ぐらいカードゲームをして、さあ寝ようかというとき。

お約束の「俺はソファで寝るから」という展開になるはずが、ソファなんてものは、そもそもラブホにはないことに気付いた。

まあ、ベッドはかなり広いキングサイズだし。離れて寝れば、なんとか大丈夫だろうかと…

 

思った俺が馬鹿でした。

 

「んっ、ザックス…、さむい、よ…」

すりすりと、冷え症なクラウドが温もりを求めてすり寄ってくる様子は。

男としてその凶悪な可愛さは、いったいどういうことだ神様の胸倉つかんで問いただしたいほどだ。

興奮すると、ソルジャーの体温は上昇する。

そんなわけで、クラウドは味をしめてしまったのか(?)ますますすり寄ってくる。

 

ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラ…

 

何年だって、何十年だって待てるって?…そう言ったのは、どの口だ。

冗談じゃない、もはや10秒だって待てないほどに、この子が欲しくてしょうがない。

 

 

 

ザックス・フェア、人間兵器と謳われるソルジャー1ST。ついでに、18才健康男子。

――未知のウイルスとの、死闘は続く。

 

 

 

愛しいあの子を守るために、

スケベ菌と断固として戦っていきます。

(えっと、たぶん?きっと。お、おそらく…ごにょごにょ…

 

 

 

 

 

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C-brandMOCOCO (2011523

絶対ムリ。

 

 

 

 


 

 

 

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